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24.感情
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就業時間も過ぎたはずの会社の社長室と書かれた部屋に佐藤はノックをする。
「どうぞ」と招かれた部屋の中には弥生が皇居に散歩に行く前に姿を消した人がいた。
正面のデスクに座る相手は小憎らしいほど座っているだけで絵になる。
「よく来たね、番犬君。」
佐藤は聞き慣れた揶揄に動揺さえしない、その様子を満足気に見ながら「それで?説明とやらを聞こうじゃないか。」と余裕さえ漂わせる板垣は、至って楽しそうだ。
逆に佐藤の顔は表情が乏しい。
「その前に約束してください。」
「なんだい?」
「そちらの情報も開示する事と他言無用であること」
「あはは、なんだそんな事か。安心したまえ、ここから先は協力していくんだ、情報の共有は当然だよ。それに、うちは口が硬いのが売りだ。」
佐藤は持っていたカバンの中から資料を取り出すと板垣に渡した。
板垣がファイルをめくるのと同時に話し始める。
「弥生さんの保護を始めたのが担当者の不正発覚後に、国からの賠償という事になってますが、本当は違います。
保護を始める前から彼は国に目をつけられていた。なぜ、目をつけられたかは国が極秘に行っている調査のことを話さないといけません。」
「極秘調査か……。」
板垣は目線で先を促した。
「アルファの減少を受けその原因の解明と対策として開始したのが50年前です。」
「50年前、結構前の話だな。」
「はい、その調査でもアルファ出生率減少の原因は全く分かりませんでした。が、ある時を境に状況が変わってきます。12年前アルファが1年に5人も生まれた。」
「12年前……、弥生がマッチングに登録した2年後か。」
「そうです。ですが、その時点では彼の存在は判明していなかった、判明したのはアルファを生んだ側の調査が進んでからです。出産したオメガ・ベータにはまったく共通点がなかった、ただ、アルファの方にはありました。
それが、弥生さんの存在です。彼とマッチングを行ったアルファに限り成婚率、アルファの誕生が高い事がその後の追跡調査で確認されています。」
「偶然ではないのか?」
「いえ、今、日本では同じオメガを伴侶としているアルファでもベータの出産が多い。50年の調査の中でアルファの生まれる割合がどんどん下がり16年前から4年間は0です。」
「0か、それが一気に5人なら注目されるのもうなずけるな。」
「アルファが一人誕生するだけでも経済に与える影響は測り知れない、彼を取り込みアルファの成婚率を上げようと考えましたが、彼が利己的な人間ではない事は調査でわかっていましたからなかなか接触出来ませんでした。そこに降って湧いたのが担当者の不正です。当時元担当者は彼の縁結び効果に気がつくと本人に内緒でアルファ側から大金を受け取り彼とのマッチングを斡旋していた。」
「それはそれは、ずいぶんな公僕もいたもんだ。」
「ですが、その男のおかげで突破口が開けた。当時勤めが難しいほどの数のマッチングを組まされた彼は大金と引き換えだったことを知って登録を解除した、当時の事はよくご存じでは?何せMの立ち上げメンバーなんですから。」
「ああ、知っているとも。」
憔悴した弥生を支える為に立ち上げたM。困惑と疑念に満ちた目で見られた時には流石にショックを受けた。
「しかし、そこでまた問題が持ち上がった、それが今でも人混みが苦手な理由である誘拐事件です。」
眉をひそめ、佐藤を睨みつける。
「まさかと思うが、誘拐が君たちの仕業と言うんじゃないだろうね。」
Mにとっても苦々しい事件、、まだ弥生にも知らせず内緒で立ち上げたため護衛の存在も秘密だった。近くで警護が困難な状態だった所を突かれ、まんまと誘拐されてしまった。
板垣の視線も佐藤は気に留めた様子もなく鼻で笑うと「まさか」と否定した。
当時誘拐犯は警察の早い対応ですぐ検挙されたが、依頼を受けた寄せ集めの素人で大元まで行かなかった。
「ただ、国の人間と言えなくもないです。こちらの情報を誤って理解し自身の利益の為に動いた千堂………ある議員です。」
「言い直した所で名前を言ってるが。」
「スルーして下さい。」
つい、と言うより計算されたと感じるタイミングだったが深くは追及しなかった、佐藤に口を閉ざされると今後の事に影響が出る。
「曽祖父の時代からの議員だな。今代はパッとしないが。」
「だからこそ焦ったんでしょう。とにかく、我々はそれを利用して彼に近づくチャンスを得た。
ところが最初についた担当者はとにかくマッチングをすすめ、それが彼の為だと洗脳に近いやり方で行動を制限し始めた。
仕事を辞め将来に向けてマッチングに専念するべきだと仕事まで取り上げようとした結果、彼は不信感を抱きマッチングに消極的になった。その事に危機感を覚えた上が俺達を派遣しました。
我々が望むのは彼を介したマッチングでのアルファの出生率の上昇。
ところが西園寺の登場で危うくなってきた。
アルファの執着は自身を鑑みてよくわかっているでしょう。」
「まぁ、それはアルファ全体に言えることだろうが。」
「西園寺の囲い込みに加えて、縁結びの危機。
中には国が決めた相手複数と過ごさせるべき等とふざけた事を言い出すやつまで出ている始末です。
もっと最悪なのが、”血を繋げ”です。」
あまりのいい様に板垣の顔が曇る。
「それは蒼紫氏と成婚すれば叶うんじゃないか?」
「西園寺は駄目です。各界の影響力が強すぎてこちらの思うように動かない。特に今回の事で危険視されています。”縁結びオメガ”を独り占めする気ではないかと。」
それはそうだ、国からしたらアルファの出生率の要になるのに、それを一人のアルファに囲い込まれてはかなわない。
そこに弥生の意思が全く含まれないのは、一人の犠牲で大勢が恩恵に預かるからだろう。
「それで?君たちの要望は?」
「俺たちは彼が運命を持った状態でも縁結びの効果が出て、西園寺の囲い込みがなければいい。」
「もしそれが叶わなければ?」
「………。」
沈黙した佐藤との間にピリピリした空気が漂う。
「では、これは君が判断しての行動か?」
「……俺の判断ですね、今ここに俺がいることは上は知らない」
「待ちたまえ、今後協力していくというのにそれでは何も出来ないだろう。」
ここで、佐藤の表情が変わった、不可能などないというような不敵な笑みを浮かべ「大丈夫ですよ」と断言する。
「たかだか、役場の一職員が断言できる理由があるというのかい?」
「そうですね、たかだか一職員なら不可能でしょう。」
そういえばと思い当たる。
この男、どんなに調査してもその素性がつかめなかった。
表面的な情報は出てくる。
どこの高校を出てどんな経歴で弥生の担当になったかまで詳細に。
しかし、中学時代から以前の事は不明。
それどころか判明している高校時代からも、
友人関係も不明。
学校生活も不明。
就職後も記載されている部署で彼の事を知っている人間はいない
弥生の所に行くまでの間の私生活での状況も不明。
経歴だけが紙面上で作られただけのような不自然さにひどく胸騒ぎを覚えた。
「君は誰なんだ?」
「……俺は50年前政府が作った、誰からも、どこからも介入を受けない極秘機関、バース管理対策機構(Birth Management Countermeasure Organization)通称BMCOに席を置いています。」
「聞いたことがない。第一君バースマッチング対策課じゃなかったか?」
都市伝説並みにささやかれていることは知っていたが、あくまで娯楽の噂程度だと思っていた。
「極秘ですからね。そうそう知られては困ります。今の課に席を置いていますがBMCO所属はかわりません。と言っても今の課の人間からしたら東京からの左遷くらいに思われてますが。」
「独立機関か。」
「そうです、バース性を管理するために作られた機関ですよ。」
「まるで商品管理のような物言いだ。」
「まあ近いものはあるでしょうね。」
「それに感情が加われば商品などと言えないのではないのかい?」
「どうでしょうね、BMCOでは対象に感情移入を禁じてます。」
「君には当てはまらないようだが?」
佐藤は鼻で笑うと「そうですよ。」と認めた。
あまりに簡単に認めたから板垣も言葉を失う。
先ほどまでの張り詰めた空気はなくなり、いたずらに成功したように笑う佐藤は何でもないことの様に言い放った。
「感情あってこそ対象をまもれるんです。それを捨てたらだれも救えないでしょう。」
「どうぞ」と招かれた部屋の中には弥生が皇居に散歩に行く前に姿を消した人がいた。
正面のデスクに座る相手は小憎らしいほど座っているだけで絵になる。
「よく来たね、番犬君。」
佐藤は聞き慣れた揶揄に動揺さえしない、その様子を満足気に見ながら「それで?説明とやらを聞こうじゃないか。」と余裕さえ漂わせる板垣は、至って楽しそうだ。
逆に佐藤の顔は表情が乏しい。
「その前に約束してください。」
「なんだい?」
「そちらの情報も開示する事と他言無用であること」
「あはは、なんだそんな事か。安心したまえ、ここから先は協力していくんだ、情報の共有は当然だよ。それに、うちは口が硬いのが売りだ。」
佐藤は持っていたカバンの中から資料を取り出すと板垣に渡した。
板垣がファイルをめくるのと同時に話し始める。
「弥生さんの保護を始めたのが担当者の不正発覚後に、国からの賠償という事になってますが、本当は違います。
保護を始める前から彼は国に目をつけられていた。なぜ、目をつけられたかは国が極秘に行っている調査のことを話さないといけません。」
「極秘調査か……。」
板垣は目線で先を促した。
「アルファの減少を受けその原因の解明と対策として開始したのが50年前です。」
「50年前、結構前の話だな。」
「はい、その調査でもアルファ出生率減少の原因は全く分かりませんでした。が、ある時を境に状況が変わってきます。12年前アルファが1年に5人も生まれた。」
「12年前……、弥生がマッチングに登録した2年後か。」
「そうです。ですが、その時点では彼の存在は判明していなかった、判明したのはアルファを生んだ側の調査が進んでからです。出産したオメガ・ベータにはまったく共通点がなかった、ただ、アルファの方にはありました。
それが、弥生さんの存在です。彼とマッチングを行ったアルファに限り成婚率、アルファの誕生が高い事がその後の追跡調査で確認されています。」
「偶然ではないのか?」
「いえ、今、日本では同じオメガを伴侶としているアルファでもベータの出産が多い。50年の調査の中でアルファの生まれる割合がどんどん下がり16年前から4年間は0です。」
「0か、それが一気に5人なら注目されるのもうなずけるな。」
「アルファが一人誕生するだけでも経済に与える影響は測り知れない、彼を取り込みアルファの成婚率を上げようと考えましたが、彼が利己的な人間ではない事は調査でわかっていましたからなかなか接触出来ませんでした。そこに降って湧いたのが担当者の不正です。当時元担当者は彼の縁結び効果に気がつくと本人に内緒でアルファ側から大金を受け取り彼とのマッチングを斡旋していた。」
「それはそれは、ずいぶんな公僕もいたもんだ。」
「ですが、その男のおかげで突破口が開けた。当時勤めが難しいほどの数のマッチングを組まされた彼は大金と引き換えだったことを知って登録を解除した、当時の事はよくご存じでは?何せMの立ち上げメンバーなんですから。」
「ああ、知っているとも。」
憔悴した弥生を支える為に立ち上げたM。困惑と疑念に満ちた目で見られた時には流石にショックを受けた。
「しかし、そこでまた問題が持ち上がった、それが今でも人混みが苦手な理由である誘拐事件です。」
眉をひそめ、佐藤を睨みつける。
「まさかと思うが、誘拐が君たちの仕業と言うんじゃないだろうね。」
Mにとっても苦々しい事件、、まだ弥生にも知らせず内緒で立ち上げたため護衛の存在も秘密だった。近くで警護が困難な状態だった所を突かれ、まんまと誘拐されてしまった。
板垣の視線も佐藤は気に留めた様子もなく鼻で笑うと「まさか」と否定した。
当時誘拐犯は警察の早い対応ですぐ検挙されたが、依頼を受けた寄せ集めの素人で大元まで行かなかった。
「ただ、国の人間と言えなくもないです。こちらの情報を誤って理解し自身の利益の為に動いた千堂………ある議員です。」
「言い直した所で名前を言ってるが。」
「スルーして下さい。」
つい、と言うより計算されたと感じるタイミングだったが深くは追及しなかった、佐藤に口を閉ざされると今後の事に影響が出る。
「曽祖父の時代からの議員だな。今代はパッとしないが。」
「だからこそ焦ったんでしょう。とにかく、我々はそれを利用して彼に近づくチャンスを得た。
ところが最初についた担当者はとにかくマッチングをすすめ、それが彼の為だと洗脳に近いやり方で行動を制限し始めた。
仕事を辞め将来に向けてマッチングに専念するべきだと仕事まで取り上げようとした結果、彼は不信感を抱きマッチングに消極的になった。その事に危機感を覚えた上が俺達を派遣しました。
我々が望むのは彼を介したマッチングでのアルファの出生率の上昇。
ところが西園寺の登場で危うくなってきた。
アルファの執着は自身を鑑みてよくわかっているでしょう。」
「まぁ、それはアルファ全体に言えることだろうが。」
「西園寺の囲い込みに加えて、縁結びの危機。
中には国が決めた相手複数と過ごさせるべき等とふざけた事を言い出すやつまで出ている始末です。
もっと最悪なのが、”血を繋げ”です。」
あまりのいい様に板垣の顔が曇る。
「それは蒼紫氏と成婚すれば叶うんじゃないか?」
「西園寺は駄目です。各界の影響力が強すぎてこちらの思うように動かない。特に今回の事で危険視されています。”縁結びオメガ”を独り占めする気ではないかと。」
それはそうだ、国からしたらアルファの出生率の要になるのに、それを一人のアルファに囲い込まれてはかなわない。
そこに弥生の意思が全く含まれないのは、一人の犠牲で大勢が恩恵に預かるからだろう。
「それで?君たちの要望は?」
「俺たちは彼が運命を持った状態でも縁結びの効果が出て、西園寺の囲い込みがなければいい。」
「もしそれが叶わなければ?」
「………。」
沈黙した佐藤との間にピリピリした空気が漂う。
「では、これは君が判断しての行動か?」
「……俺の判断ですね、今ここに俺がいることは上は知らない」
「待ちたまえ、今後協力していくというのにそれでは何も出来ないだろう。」
ここで、佐藤の表情が変わった、不可能などないというような不敵な笑みを浮かべ「大丈夫ですよ」と断言する。
「たかだか、役場の一職員が断言できる理由があるというのかい?」
「そうですね、たかだか一職員なら不可能でしょう。」
そういえばと思い当たる。
この男、どんなに調査してもその素性がつかめなかった。
表面的な情報は出てくる。
どこの高校を出てどんな経歴で弥生の担当になったかまで詳細に。
しかし、中学時代から以前の事は不明。
それどころか判明している高校時代からも、
友人関係も不明。
学校生活も不明。
就職後も記載されている部署で彼の事を知っている人間はいない
弥生の所に行くまでの間の私生活での状況も不明。
経歴だけが紙面上で作られただけのような不自然さにひどく胸騒ぎを覚えた。
「君は誰なんだ?」
「……俺は50年前政府が作った、誰からも、どこからも介入を受けない極秘機関、バース管理対策機構(Birth Management Countermeasure Organization)通称BMCOに席を置いています。」
「聞いたことがない。第一君バースマッチング対策課じゃなかったか?」
都市伝説並みにささやかれていることは知っていたが、あくまで娯楽の噂程度だと思っていた。
「極秘ですからね。そうそう知られては困ります。今の課に席を置いていますがBMCO所属はかわりません。と言っても今の課の人間からしたら東京からの左遷くらいに思われてますが。」
「独立機関か。」
「そうです、バース性を管理するために作られた機関ですよ。」
「まるで商品管理のような物言いだ。」
「まあ近いものはあるでしょうね。」
「それに感情が加われば商品などと言えないのではないのかい?」
「どうでしょうね、BMCOでは対象に感情移入を禁じてます。」
「君には当てはまらないようだが?」
佐藤は鼻で笑うと「そうですよ。」と認めた。
あまりに簡単に認めたから板垣も言葉を失う。
先ほどまでの張り詰めた空気はなくなり、いたずらに成功したように笑う佐藤は何でもないことの様に言い放った。
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