縁結びオメガと不遇のアルファ

くま

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25.情報

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「君たちは結局弥生をどうしようというんだ。」
佐藤は板垣の机前にあるソファにドサッと腰掛ける。
「BMCOの基本はバース性をあらゆる方向から保護することが基軸です。だから、弥生さんを不当な扱いや命の危機から保護するのが俺たちの仕事です。」

「先ほどの話では十分不当に扱われているように感じたが?他ならぬ君たちに。」
「それはですね、あくまでマッチング課の方ですよ。マッチング部の方は最初の立ち上げの理念なんて存在が髪…違った、紙より薄くなってお偉い議員様や官僚達にこうしろああしろと注文をつけられているわけです。」

それは、弥生に関してだけでなく他の話を聞く時にも感じたことではある。
会うはずだった相手が変わっていて、その相手は別の人間とお見合いしていた。と、しかも、オメガ側にはアルファの方の都合と言っていたと聞く。

その二人は後日、板垣が偶然を装い引き合わせたが婚姻届を出す際もマッチング課が違法だと一時差し止めた。
何度も、役場の人間と話をしてようやく婚姻届を出せたと言っていたが、おそらくそれも、頭の薄い奴らの仕業だろう。

「それを君が抑えているのか。」
「まあ、そこより上の方々に話を通して黙るように言って貰ってるだけなんですがね。」

佐藤は簡単に言うが、そこを黙らせる事が出来る上の方にはどんなに富裕層の人間でもおいそれと会うことは出来ないし、要望を通す事さえできない。

「BMOCの権限を出して徹底的にやるわけにはいかないのか?」
「それが出来れば苦労しませんよ、あくまで極秘機関なんです。知っているのは国のトップ連中とBMOCを立ち上げた数人程度です。まあ、その数人も今は隠居中ですけど。」
「君の権限は?」
「ズバッといきますね。マッチング対策課では一般職なのであまり権限はありませんが、BMOCの方は色々と。」
「その色々が聞きたいんだが。」
「まあ、そうですね。まず、各省の情報の閲覧や要請、実地では犯人の取り締まり、議員等国家に所属する人間の拘束、場合によっては指揮を執ることもあります。」
「恐ろしい権限だな。」

「まあ、俺の権限で自由に動かせる人間は限られますが、調べ物から護衛まで幅広く使っていただけますよ。ただ、上部への要請はあくまで要請止まりと言うことは覚えておいてください。」
つまり、こちら側の要請が通らない場合もあると言うことか。
「さて、そこまで権限を持っている君がいるということは、我々は出しゃばらない方がいいんじゃないか?」
「何言ってるんです?BMCOはあくまで極秘機関ですよ、大手を振って行動出来ないから俺のように擬態して動いてるんじゃないですか。」

「つまり、擬態場所を提供しろと?」
「いえいえ、こちらとしてはいざという時の頼みの綱くらいに思っていてほしいですね。さて、こちらの情報は提示しましたよ。次は板垣さんの番じゃないですか?」
「そうだな、Mとしては当初から一貫として弥生の安全確保と日常に第三者の介入がないようにする事は変わらない、今回は役場関係が弥生自身の縁組みを邪魔しようとしているのを阻止する事も考えている。」
「まあ、そうでしょうね。」
「君自身は弥生と蒼紫氏が一緒になることに異論はないのだろう?」

「勿論です、そこがうまくいくように手を回してたんですよ。」
「ちなみにどんなことをしていたか聞いても?」
「そうですね、まず、西園寺側の妹の方の戸籍抹消、と言ってもまったく関係ない他者の家に生まれたように書き換える予定でした、西園寺の企業関連は不正が発覚する前にダメ人間の処理と同時に不正事態をなかったことにして、後は弥生さんにたとえ思い人が出来たと言っても縁結びが発動するという実績を作って貰い、マッチングの方は黙らせる事が出来るでした。」

妹の戸籍抹消は思ったより早く蒼紫と会長が妹を放逐して関係性がつながったままになり、企業関係の不正を明らかにした上で処置したためもみ消せず、弥生と蒼紫のマッチングが早く決まってしまい縁結びの実績が作れず、今か。

相当各方面に手を回していたのはわかったが、それが徒労に終わったとは災難と言うしかない。
それらが、実際出来ていれば弥生の休暇中には蒼紫と婚約が決まっていただろうに。
「……そうか、災難だったな。」
「まったくですよ、回した手は徒労に終わるし、弥生さんには恨まれるし。」
「弥生のことだ、恨んではないだろう。」
「恨んでなくても嫌われたかもしれないじゃないですか。」

それも、ないだろうとは思うがあえて言わなかった。
今日の弥生はずいぶんと思い悩んでいたんだからこれくらいの仕返しはいいだろう。

「とりあえず明日からの事を話そうか。」
「そうですね、向こうの部屋で待機している方もそろそろ、我慢の限界でしょうし。」
と奥の扉を見た。
仁がドアを開けると出てきたのは、蒼紫だった。
「いつから気付いてたんだい?」
「入ってきた時に人の気配がありましたから。」
「だ、そうだよ。」
蒼紫は「そのようですね」と言うと佐藤の向かい側に腰掛けた。

「で、何か案はあるかい?」
「とりあえず、マッチングの方は西園寺と弥生さんが付き合っても不利益が生じないということを納得させれば次のアクションまでの時間稼ぎになると思います。」
実績を上げて口出ししているお偉いさんに、口出しするなとくぎを刺すことは出来るだろうが。
「時間稼ぎをしたところで2人の間を邪魔しようとする動きが止まるとは思えないが。」
佐藤はニッと悪く笑う。
「千堂をはじめとした、マッチングに圧をかけている連中の表沙汰にしたくない事を色々掴んでいますから。」
「弱みをつかんだところで大人しくなるとは思えないが。」
「掴むだけじゃそうでしょうけど、検挙となるとそうでもないですよ。」

板垣はため息をつくと「無理だろう。」と言った。
「憲法五十条ですね。」
板垣と西園寺が言うように現行犯逮捕以外の検挙は不逮捕特権がある。

だが、佐藤は奴らを逃がすつもりはない。
「要は過去にしなければいいんです。」
「弥生を巻き込むのは」

「西園寺さんには悪いですけど、弥生さんは当事者ですから否応なしに巻き込まれますよ。ですが、今回は別件に同じメンバーが関わってます。一名を除いてはね。」

「その一名は影響力が強いと言ってた奴じゃないだろうな。」
「鬼頭ですよ。」
「古株の大物議員じゃないか、千堂とは別の派閥だな。」
「こちら側についてくれてる議員と張り合ってる、お年の割には好戦的なかたです。」

「はぁ、こちら側の議員は教える気にならないんだろう。」
「そんな事ないですよ。透谷議員です。」
「ずいぶん、すんなり教えてくれるんですね。」
「まぁ、巻き込みまくっている上に情報は共有しないと先に進みませんからね。」
透谷議員は総理大臣も務めたことがあり、落ち込んでいた党の支持率を回復させた人物だ。
透谷議員の功績は内政外交にも活かされ、広く顔が利く。
「祖父が引く訳だな、そこに出てこられればたとえ影響力のある西園寺うちでも強く出られない。」

「透谷議員は弥生ファンでもありますから今回ノリノリで手伝ってくれてます。透谷議員も2人の成婚を望んでますよ。」
「話がそれたな。」
「そうですね。とりあえずこちらとしては実績を作るのが最善と思います。相手をこちらでと思ってたんですが、協力してもらえるということなので、相手を準備してもらっていいですか?」

「それはいいが、身内が出ない方がいいか?」
「どういう事です?」
「弥生のマッチングの実績作りなら、身内だと後々出来レースを疑われるかもしれないだろう。」

「いえ、そのへんは大丈夫だと思います。ただ、社会に出ているアルファで相手がいない事がはっきりしていれば問題ありません。」
要は、弥生に会った後に相手が出来ればいい。
「それなら、1人心当たりがあります。」
「誰だい、それは。」
「全く相手を作る気配すらなく、身内である我々も諦めている親戚が一人。」

「もしかして彼かい?」
板垣も心当たりがつくほど知っている人らしい。
「優秀な男で私の手伝いをしてもらっています。恋人は作らず人の世話ばかりしているのは有名らしいので適任でしょう。」
「ああ、確かにそれなら実績になりますね。明日にはセッティングできそうですか?」

「ああ、あいつには借りがあるからどうとでもなるだろう。」
「じゃ、決定ですね。どういう形かはそちらにお任せしますが、最低でも1日はその彼と2人きりの時間を作って下さいね。俺はマッチングの担当者としてサポートしますから邪魔だけはしない様に。」
釘を刺して佐藤はさっさと出ていこうとしたが振り返り、「その人には縁結びの事は内緒にして下さいね。」と言って帰って行った。

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