39 / 87
33.解決
しおりを挟む
膝の上で握り絞められた手をゆっくり開いていく。
「弥生。」
砂紋祖父君を睨みつけていた目がこちらに向き、、その瞳に自分が映し出されたのが確認出来てふっと微笑む。
「弥生、傷が出来てしまいます。」
「……ああ」
素直に開かれた手のひらは爪で傷がつき血が滲んでいた。
「弥生、私に任せてもらえますか?」
怒りに震え、言葉が出なくなってしまった弥生の姿が痛ましい。
アルファの威圧をならすという名目で過去行われていた訓練は、特殊な職業に就く場合を除き違法になっている。
砂紋祖父君が生きてきた時代ではどうか知らないが、、家庭内といえ殺人未遂罪、亡くなれば殺人罪が適用される。
懲役なしの実刑で、たとえ家族の擁護があっても変わることはない。
それどころか、擁護した側も教唆、幇助も懲役なしの実刑だ。
弥生が目をつむり蒼紫の肩に頭を預ける。
蒼紫は肩を優しく引き寄せると軽く頭にキスを送る。
それだけで、こわばっていた弥生の体から少し力が抜けた。
「砂紋さん、あなたは何か勘違いなさっておられる。」
目の前の老人は鼻を鳴らし、黙り込む、蒼紫からの威圧が少しは堪えているようだった。
「私があなたをここに案内したのは、お孫さんが誘拐されたと受付で騒がれていたからです、決して彼を責めさせる為ではない。」
「やはり、お前さんはオメガにうまく遊ばれるような男じゃの、そんな唐のたったオメガなんぞにそそのかされてかばっておる。」
老人は突然哀れむような表情にかわる、慈悲さえ感じるその表情は何も知らない人間が見れば好々爺だ。
「砂紋に逆らえばお前さんもお前さんの家族も困ることになるのはわかっておるじゃろう。」
まるで、出来の悪い子供をなだめすかせるような声だが、内容は脅しだ。
「どういうことです?」
「砂紋の家が何をしておるか知らぬわけじゃなかろう。」
砂紋家は代々医師の家系だ。
日本でも有数の大病院で、常に最先端の技術を提供する病院を持っている。
たとえどんなに上位のアルファでも病院にはかかる。
病院は権力者でもおいそれとは手の出せない分野なのだ。
それを盾に脅しをかけてきたのは余程麗華に執着しているか、先ほど垣間見せた弥生に対する情欲か。
「何を仰っているのか分かりませんね。」
「そうか、でははっきり言ってやろう、そのオメガと麗華を渡せば口を聞いてやってもよいと言っておるのじゃ。」
どうやら、この老人は自分の立場がわかっていないらしい。
「なるほど。」
この返事を了承と受け取ったのか上機嫌で弥生に手を伸ばそうとするのを軽く威圧を放つことで止める。
指先に走った静電気の様な痛みに伸ばした手を引いた老人は、キッと蒼紫を睨みつけた。
「なにをする!?」
「砂紋さん、病院の事を出せば相手が大人しく言う事を聞くとは思わないほうがいい。」
今まで通用していた手が利かず怒る老人に現実を突きつける。
「すでに現役を退いたあなたは、誰かの診療を拒むように病院の方針を持っていく事はできませんよ。それどころか相手にさえされないでしょうね。」
「そんな事はないわい!?」
「息子さんはとても賢い。ベータありながら実権を握ると同事にあなたを医院長という立場を取り上げた。」
「あの青二才のどこが賢い!愚かなだけじゃ!」
顔を真っ赤にして怒る老人は自分の置かれた立場が信じられずあがいているだけ。
だから、蒼紫は印籠を渡す。
あなたの振りかざす権力は、夜露のように消え失せたのだと。
「ご存じですか?あなたの選んだアルファはすでに伴侶がいる、それでも今回のお見合いを受けたのは息子さんに恩がありそれを返す為だ。」
「フン、麗華と一緒になれば部長(診療科を統括する責任者)にまで上げてもらえるからだろう。」
「違います。彼は伴侶に恥ずかしい真似はしない、あくまで他の見合いを持ち込ませない為の時間稼ぎですよ。だからこそ、彼女に嫌われるように話を持っていった。」
事実はこうなのですよ、と教えても目の前の老人の頭には言葉がまるで雑音のように通り抜け、まだ理解できない。
変化があったのは弥生だった。
蒼紫の言葉に弥生が顔を上げ、ほんとうに?と問いかけるような視線を向ける。
蒼紫が安心させるように手の甲を撫でてやると、ふわりと笑って再び蒼紫の肩に顔を埋めた。
すべて任せると決めた以上、口を挟まないと決めているらしいその仕草に頼られていると自信がつく。
「あなたは、麗華さんをある人に嫁がせることで実権を取り戻そうとしたようですが、今後そんなことはできないと思ってください。」
「ふん!お前さんのたわ言は聞き飽きたわい!」
「繋がっていた教授は妻にした女性を次々と自分の研究の実験台にして死なせた、マッドサイエンティストだ。」
弥生に動揺が広がるのをなだめるようにキスを送る。
それだけのことで弥生の中に広がった不快も不安も払拭されていく。
「今頃捜査員が確保に向かっていますよ。」
「そんな、そんな馬鹿な事は……。」
「かの教授は警察関係者にも伝手があり、見逃されてきたようですが、少々やんちゃが過ぎたようですよ。彼の研究所から女性の遺体が発見されました。言い逃れもできないでしょう。」
愕然とした表情をする老人に「悪縁を結ばずに済んでよかったですね。」と締めくくった。
膝をつき座り込む老人から視線を弥生に向ける。
片手を両手に変え優しく抱きしめ、終わったと耳元で囁けば花開くような微笑みを返してくれた。
ノック音が聞こえ、入室を許可すると男性と黒服たちは入ってきた。
「失礼します。」
入ってきた男性に向き合う形に座りなおし、にっこり微笑んだ。
「お久しぶりですね、恭一郎さん。」
「西園寺様には当院に格別のご寄付を賜りありがとうございます。」
「いえいえ、子供たちの未来とオメガの方たちの治療に役立てていただけるなら本望ですよ。」
恭一郎と呼ばれた男は老人のところに行き「お父さん」と呼んだことで、麗華から父親に兄弟がいないと聞いていたから彼が麗華の父だとわかる。
そして、その関係もわかる気がした。
「帰りましょう。」
恭一郎は座り込む老人に寄り添うことなく立ったまま見下ろし、冷たい目で、声で、話しかけたからだ。
「きょういちろう。」
「あなたには、あなたにふさわしい場所を用意いたしました。そこでゆっくり過ごされるがいい。」
「おまえ、なに、何を言っとる。」
「言葉のままですよ。」
恭一郎は話すことはなくなったとばかりに老人を連れて行くように命じた。
「この度は大変ご迷惑をおかけしました。」
「恭一郎さん迷惑などかけられた覚えはありませんよ。」
「いえ、父の事はこちらが手を打つ前に出し抜かれてしまって、こちら側の医師が見合い相手だったこともあって急遽対応してもらいましたが、あのホテルから外に連れ出してもらった事はいくら感謝しても足りません。」
「あなたは、麗華さんのお父さんで間違いありませんよね。」
「はい、はじめてお目にかかります。砂紋恭一郎といいます。」
礼儀正しく頭を下げる恭一郎に「柊弥生です。」とあいさつする。
「座ったままで申し訳ありません。」
「とんでもない、父の威圧を浴びられたのでしょう、本当なら横になっていただきたいくらいです。」
「いえ、蒼紫がいてくれたのでたいしたことにならずに済んだので大丈夫です。」
申し訳なさそうにする恭一郎の心使いはうれしいが、それよりも聞きたいことがある。
「麗華さんの事ですが、お聞きしてもいいですか?」
「はい、なんでも聞いていただいて結構です。」
「今後、砂紋家の方では麗華さんの事をどうされるおつもりですか?」
「……失礼、どうとは?」
思っていた質問ではなかったのか少し言い淀んで聞き返された。
「麗華さんの病院はそちらに統合されるんですか?」
「いえ、それはありません、将来的には麗華がそれを望み申し出ない限りは統合という事にはならないでしょう。」
「結婚を勧めたりは?」
弥生の気になるところはそこだ。
麗華は独身主義と言っていたが、今日の事でそういうようになった経緯がわかった気がした。
想像でしかないがおそらく、背中の傷が原因だろう。
「麗華の結婚はこちらから進める事はありません、麗華から申し出があればですが。」
「そうですか、……よかった。」
「聞かれないのですか?」
「何をでしょう?」
「私の父が麗華にしてきたことを。」
弥生は首を横に振った。
麗華が話したくないことを他から聞くのは間違っているような気がする。
「それは、麗華さんが話したくなったときに話してくれると思うので。質問に答えてくれてありがとうございました。」
ハッとした表情をしたあと頭を下げると「ありがとうございます」と礼を言われた。
恭一郎が部屋から出ていくと、ほうと吐息をつく。
「終わったね。」
「ええ、終わりましたよ。」
二人で顔を合わせて微笑み合い、自然と唇が触れ合った。
「弥生。」
砂紋祖父君を睨みつけていた目がこちらに向き、、その瞳に自分が映し出されたのが確認出来てふっと微笑む。
「弥生、傷が出来てしまいます。」
「……ああ」
素直に開かれた手のひらは爪で傷がつき血が滲んでいた。
「弥生、私に任せてもらえますか?」
怒りに震え、言葉が出なくなってしまった弥生の姿が痛ましい。
アルファの威圧をならすという名目で過去行われていた訓練は、特殊な職業に就く場合を除き違法になっている。
砂紋祖父君が生きてきた時代ではどうか知らないが、、家庭内といえ殺人未遂罪、亡くなれば殺人罪が適用される。
懲役なしの実刑で、たとえ家族の擁護があっても変わることはない。
それどころか、擁護した側も教唆、幇助も懲役なしの実刑だ。
弥生が目をつむり蒼紫の肩に頭を預ける。
蒼紫は肩を優しく引き寄せると軽く頭にキスを送る。
それだけで、こわばっていた弥生の体から少し力が抜けた。
「砂紋さん、あなたは何か勘違いなさっておられる。」
目の前の老人は鼻を鳴らし、黙り込む、蒼紫からの威圧が少しは堪えているようだった。
「私があなたをここに案内したのは、お孫さんが誘拐されたと受付で騒がれていたからです、決して彼を責めさせる為ではない。」
「やはり、お前さんはオメガにうまく遊ばれるような男じゃの、そんな唐のたったオメガなんぞにそそのかされてかばっておる。」
老人は突然哀れむような表情にかわる、慈悲さえ感じるその表情は何も知らない人間が見れば好々爺だ。
「砂紋に逆らえばお前さんもお前さんの家族も困ることになるのはわかっておるじゃろう。」
まるで、出来の悪い子供をなだめすかせるような声だが、内容は脅しだ。
「どういうことです?」
「砂紋の家が何をしておるか知らぬわけじゃなかろう。」
砂紋家は代々医師の家系だ。
日本でも有数の大病院で、常に最先端の技術を提供する病院を持っている。
たとえどんなに上位のアルファでも病院にはかかる。
病院は権力者でもおいそれとは手の出せない分野なのだ。
それを盾に脅しをかけてきたのは余程麗華に執着しているか、先ほど垣間見せた弥生に対する情欲か。
「何を仰っているのか分かりませんね。」
「そうか、でははっきり言ってやろう、そのオメガと麗華を渡せば口を聞いてやってもよいと言っておるのじゃ。」
どうやら、この老人は自分の立場がわかっていないらしい。
「なるほど。」
この返事を了承と受け取ったのか上機嫌で弥生に手を伸ばそうとするのを軽く威圧を放つことで止める。
指先に走った静電気の様な痛みに伸ばした手を引いた老人は、キッと蒼紫を睨みつけた。
「なにをする!?」
「砂紋さん、病院の事を出せば相手が大人しく言う事を聞くとは思わないほうがいい。」
今まで通用していた手が利かず怒る老人に現実を突きつける。
「すでに現役を退いたあなたは、誰かの診療を拒むように病院の方針を持っていく事はできませんよ。それどころか相手にさえされないでしょうね。」
「そんな事はないわい!?」
「息子さんはとても賢い。ベータありながら実権を握ると同事にあなたを医院長という立場を取り上げた。」
「あの青二才のどこが賢い!愚かなだけじゃ!」
顔を真っ赤にして怒る老人は自分の置かれた立場が信じられずあがいているだけ。
だから、蒼紫は印籠を渡す。
あなたの振りかざす権力は、夜露のように消え失せたのだと。
「ご存じですか?あなたの選んだアルファはすでに伴侶がいる、それでも今回のお見合いを受けたのは息子さんに恩がありそれを返す為だ。」
「フン、麗華と一緒になれば部長(診療科を統括する責任者)にまで上げてもらえるからだろう。」
「違います。彼は伴侶に恥ずかしい真似はしない、あくまで他の見合いを持ち込ませない為の時間稼ぎですよ。だからこそ、彼女に嫌われるように話を持っていった。」
事実はこうなのですよ、と教えても目の前の老人の頭には言葉がまるで雑音のように通り抜け、まだ理解できない。
変化があったのは弥生だった。
蒼紫の言葉に弥生が顔を上げ、ほんとうに?と問いかけるような視線を向ける。
蒼紫が安心させるように手の甲を撫でてやると、ふわりと笑って再び蒼紫の肩に顔を埋めた。
すべて任せると決めた以上、口を挟まないと決めているらしいその仕草に頼られていると自信がつく。
「あなたは、麗華さんをある人に嫁がせることで実権を取り戻そうとしたようですが、今後そんなことはできないと思ってください。」
「ふん!お前さんのたわ言は聞き飽きたわい!」
「繋がっていた教授は妻にした女性を次々と自分の研究の実験台にして死なせた、マッドサイエンティストだ。」
弥生に動揺が広がるのをなだめるようにキスを送る。
それだけのことで弥生の中に広がった不快も不安も払拭されていく。
「今頃捜査員が確保に向かっていますよ。」
「そんな、そんな馬鹿な事は……。」
「かの教授は警察関係者にも伝手があり、見逃されてきたようですが、少々やんちゃが過ぎたようですよ。彼の研究所から女性の遺体が発見されました。言い逃れもできないでしょう。」
愕然とした表情をする老人に「悪縁を結ばずに済んでよかったですね。」と締めくくった。
膝をつき座り込む老人から視線を弥生に向ける。
片手を両手に変え優しく抱きしめ、終わったと耳元で囁けば花開くような微笑みを返してくれた。
ノック音が聞こえ、入室を許可すると男性と黒服たちは入ってきた。
「失礼します。」
入ってきた男性に向き合う形に座りなおし、にっこり微笑んだ。
「お久しぶりですね、恭一郎さん。」
「西園寺様には当院に格別のご寄付を賜りありがとうございます。」
「いえいえ、子供たちの未来とオメガの方たちの治療に役立てていただけるなら本望ですよ。」
恭一郎と呼ばれた男は老人のところに行き「お父さん」と呼んだことで、麗華から父親に兄弟がいないと聞いていたから彼が麗華の父だとわかる。
そして、その関係もわかる気がした。
「帰りましょう。」
恭一郎は座り込む老人に寄り添うことなく立ったまま見下ろし、冷たい目で、声で、話しかけたからだ。
「きょういちろう。」
「あなたには、あなたにふさわしい場所を用意いたしました。そこでゆっくり過ごされるがいい。」
「おまえ、なに、何を言っとる。」
「言葉のままですよ。」
恭一郎は話すことはなくなったとばかりに老人を連れて行くように命じた。
「この度は大変ご迷惑をおかけしました。」
「恭一郎さん迷惑などかけられた覚えはありませんよ。」
「いえ、父の事はこちらが手を打つ前に出し抜かれてしまって、こちら側の医師が見合い相手だったこともあって急遽対応してもらいましたが、あのホテルから外に連れ出してもらった事はいくら感謝しても足りません。」
「あなたは、麗華さんのお父さんで間違いありませんよね。」
「はい、はじめてお目にかかります。砂紋恭一郎といいます。」
礼儀正しく頭を下げる恭一郎に「柊弥生です。」とあいさつする。
「座ったままで申し訳ありません。」
「とんでもない、父の威圧を浴びられたのでしょう、本当なら横になっていただきたいくらいです。」
「いえ、蒼紫がいてくれたのでたいしたことにならずに済んだので大丈夫です。」
申し訳なさそうにする恭一郎の心使いはうれしいが、それよりも聞きたいことがある。
「麗華さんの事ですが、お聞きしてもいいですか?」
「はい、なんでも聞いていただいて結構です。」
「今後、砂紋家の方では麗華さんの事をどうされるおつもりですか?」
「……失礼、どうとは?」
思っていた質問ではなかったのか少し言い淀んで聞き返された。
「麗華さんの病院はそちらに統合されるんですか?」
「いえ、それはありません、将来的には麗華がそれを望み申し出ない限りは統合という事にはならないでしょう。」
「結婚を勧めたりは?」
弥生の気になるところはそこだ。
麗華は独身主義と言っていたが、今日の事でそういうようになった経緯がわかった気がした。
想像でしかないがおそらく、背中の傷が原因だろう。
「麗華の結婚はこちらから進める事はありません、麗華から申し出があればですが。」
「そうですか、……よかった。」
「聞かれないのですか?」
「何をでしょう?」
「私の父が麗華にしてきたことを。」
弥生は首を横に振った。
麗華が話したくないことを他から聞くのは間違っているような気がする。
「それは、麗華さんが話したくなったときに話してくれると思うので。質問に答えてくれてありがとうございました。」
ハッとした表情をしたあと頭を下げると「ありがとうございます」と礼を言われた。
恭一郎が部屋から出ていくと、ほうと吐息をつく。
「終わったね。」
「ええ、終わりましたよ。」
二人で顔を合わせて微笑み合い、自然と唇が触れ合った。
124
あなたにおすすめの小説
塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた
雪兎
BL
あらすじ
全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。
相手は学年でも有名な優等生α。
成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに——
めちゃくちゃ塩対応。
挨拶しても「……ああ」。
話しかけても「別に」。
距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。
(俺、そんなに嫌われてる……?)
同室なのに会話は最低限。
むしろ避けられている気さえある。
けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、
その塩対応αだった。
しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。
「……他のαに近づくな」
「お前は俺の……」
そこで言葉を飲み込む彼。
それ以来、少しずつ態度が変わり始める。
距離は相変わらず近くない。
口数も少ない。
だけど――
他のαが近づくと、さりげなく間に入る。
発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。
そして時々、独占欲を隠しきれない視線。
実は彼はずっと前から知っていた。
俺が、
自分の運命の番かもしれないΩだということを。
だからこそ距離を取っていた。
触れたら、もう止まれなくなるから。
だけど同室生活の中で、
少しずつ、確実に距離は変わっていく。
塩対応の裏に隠されていたのは――
重すぎるほどの独占欲だった。
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた
まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。
手の届かない元恋人
深夜
BL
昔、付き合っていた大好きな彼氏に振られた。
元彼は人気若手俳優になっていた。
諦めきれないこの恋がやっと終わると思ってた和弥だったが、仕事上の理由で元彼と会わないといけなくなり....
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
普通のβだった俺は
りん
BL
普通の大学生として過ごす白瀬凪が、αの先輩に絡まれる話
凪は普通の大学生だ。βで、容姿も中身も平均値ぐらいだと認識している。ある日、大学でもよく噂されている先輩に声をかけられる。先輩の独特の雰囲気と空気に、次第に巻き込まれていく凪。
※オメガバ系で結構ご都合な設定ありかもです!地雷だったらごめんなさい!!
ヒートより厄介な恋をα後輩に教え込まれる
雪兎
BL
大学三年のΩ・篠宮湊は、何事も理屈で考えるタイプ。
ヒート管理も完璧で、恋愛とは距離を置いてきた。
「フェロモンに振り回されるのは非合理的」
そう思っていたのに――。
新学期、同じゼミに入ってきた後輩は、やたら距離の近いα・高瀬蒼。
人懐っこくて優秀、なのに湊にだけ妙に構ってくる。
「先輩って、恋したことないでしょ」
「……必要ないからな」
「じゃあ俺が教えますよ。ヒートより面倒なやつ」
余裕のあるα後輩と、恋に不慣れなΩ先輩。
からかわれているはずなのに、気づけば湊の心は少しずつ乱されていく。
これは、理屈ではどうにもならない
“ヒートより厄介な恋”を教え込まれる物語。
元ヤンオメガは平穏に生きたい!〜中華風異世界に転生したら、過保護な最強生徒会長に溺愛されて番にされました〜
水凪しおん
BL
現代日本で喧嘩ばかりしていた不良の青年は、交通事故から子供をかばって命を落とした。
目を覚ますと、そこは中華風の文化が息づく架空の国「龍凰帝国」。
彼は、名門校・天耀学舎に通う華奢なオメガの少年「飛燕」として転生していた。
亡き祖母との「今度こそ真っ当に生きる」という約束を守るため、波風を立てずに平穏な学園生活を送ろうと心に誓う飛燕。
しかし、理不尽な身分制度がはびこる学園で、弱者が虐げられるのを黙って見過ごすことはできなかった。
「オメガだからって、舐めんじゃねえぞ」
我慢の限界を迎え、前世で培った喧嘩の腕と無意識に発現した気の力で、アルファの不良たちをぶっ飛ばしてしまった飛燕。
退学を覚悟するが、その現場を学園の絶対的支配者である生徒会長のアルファ「蒼龍」に見られてしまう。
怒られるかと思いきや、蒼龍は飛燕の強さと真っすぐな瞳に強烈に惹きつけられ、彼を生徒会役員に任命。
そこから、冷酷無比と噂される生徒会長による、異常なまでの激甘・過保護な溺愛生活が始まってしまった!
「お前は俺の宝だ。髪の毛一本すら、誰にも触れさせはしない」
最高級の食事を与えられ、少しの怪我でも大騒ぎされ、休日は密室に閉じ込められて甘やかされる日々。
理不尽な身分制度を壊そうとする最強の生徒会長と、彼に愛されすぎている元不良のオメガ。
喧嘩上等の華奢な少年が、最強の番として絶対君主の隣で幸せを掴む、中華風異世界オメガバース開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる