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33.5の5砂紋家の事情
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車で待機中にパソコンの画面と音声に集中していると「蒼紫様」と東堂が声をかけて来た。
他を気にする様子を見せたが情報は共有しておいた方がいい。
蒼紫は先を促した。
「砂紋様ですが、本家の方で動きがあったようです。」
「本家……病院か。」
「はい、かねてより医院長には砂紋様の祖父君が就かれていましたが、1週間前にお父上の恭一郎様になっているようです。」
という事は実質砂紋家のトップは砂紋の父に変わったという事か。
「今回の見合いは候補が2人、1人は昔から病院と関係の深い間島教授で、もう一人は少し前に病院に入った医者です。」
「待て、間島といったか?」
「はい。」
板垣は眉間に皺を寄せて聞き返す様子に尋常じゃない雰囲気を感じる。
「なにか引っかかる事が?」
「仁」
名前を呼ばれた伴侶の方が会話を引き継ぐ。
「間島教授はバース性のフェロモンに関することの研究で一時は名を馳せられましたが、人権を無視した研究内容が物議を呼び今では医学会から追放処分を受けたはずです。当方より何度か彼に目をつけられた人間を警護した事があります。」
「警護を雇えるという事はそれなりの家の人間が狙われたという事か。」
「彼の人はオメガとアルファから生まれたベータにまで興味があるらしくてね、私の友人も砂門の病院に行った時に珍しい症例で目をつけられたらしい。」
「つきまといに加え家の方にも相当嫌がらせがあったようです。」
「たちが悪いな。」
「自分の興味のためなら命さえも犠牲にする事を厭わない御仁だよ。」
「すでに何人もの人間が犠牲になっています。」
「何人も?」
その話が本当ならなぜ問題になっていない?
命に関わることだ、名が売れ、危険な人物という事ならすでに警察沙汰になっていてもおかしくない。
「まさか。」
「病院もグルだろう。」
板垣の言う通り病院もグルなら不審な点があっても警察が踏み込めないのは分かる。
死因に問題がなければ警察はそれ以上踏み込めない。
「誰が犠牲になったか分かりますか?」
「ああ、彼の歴代妻達そして子供達だよ。」
「そうか、それで表沙汰になりにくいのか。」
「家族の事は外部から干渉出来ないからね。」
蒼紫は少し考え東堂に指示を出す。
「教授の奥方全員の洗い出し、病院の取引関係をすべて押さえろ。後、今回見合いをした医者も調べろ。手段は何でもいい。1時間以内だ。」
「随分急がせるね」
「彼女があちら側の手に落ちれば間島の所に連れて行かれるでしょう。それまでになんとかしなければいけないので。」
蒼紫は映し出されている画像に視線を移す。
そこには砂紋の令嬢と楽しそうに買物をしている弥生の姿が映っていた。
その様子にふっと笑みが溢れる。
弥生にはこちらにきて随分辛い思いをさせてしまった。
だからこそ、ここから先できうるかぎり笑顔でいられるようにしたい。
「それに、弥生が随分楽しそうなんです。心許せる相手なのでしょう。そんな人が辛い立場に立たされれば彼は黙っていられないはずです。」
病院に必要な消耗品、医薬品、ベッドや車椅子等の道具類に至るまで西園寺が押さえれば、交渉の切り札で使うことが出来る。
「ならば警備関係にはこちらから手を回しておこう。」
「いいんですか?」
「なにをいう、切り札は多ければ多い程いい。」
板垣の言葉に仁はどこかに電話を掛け始めたが、最後の電話で蒼紫にスマホを差し出した。
「西園寺様、千堂警視からお話がしたいと。」
拒む理由もないため代わると協力の礼をいわれ、蒼紫も今後の協力を惜しまない旨を伝えた。
これで警察にも協力を仰ぎやすくなる。
佐藤が動けない場合も手が打てるようになるのは都合がよかった。
次々入る報告のピースを状況に当てはめていくと見えてきたのは親子の実権争いだ。
敗者は祖父の方。
今回の見合いを仕組んだのは祖父だろう。
彼女は見合いは医者との一つだけだが、その後、間島の研究所に行く手配がされていた。
間島は医学会では爪弾き者だが、その研究は薬業界では金のなる木だ。
病院で薬が手に入らないなんてことになれば、どうなるかなんて想像出来る。
おそらく祖父君は生け贄として令嬢を間島に渡し、その見返りに力添えを頼んでいると思って間違いないだろう。
そして、見合い相手は父親の派閥だ。優秀で病院に入ってそう経ってないにもかかわらず輝かしい功績を残している。
祖父君にとっては目の上のコブだが、あえて令嬢との見合いを仕組んだのは間島に渡した後、彼女の死後その罪をなすりつける為だろう。
彼女が被害者になる事が前提だが、分かった上で間島に引き渡そうとしているなら人格を疑う。
彼女に好まれない様な態度を取ったのは、振られてその場で別れてその後接点を作らない為だ。
医師はそうする事で今後、”つきまとい”の疑いをかけられる事を回避したかったのだろう。
「蒼紫様。」
電話を終えた蒼紫に東堂がスマホを渡してきた。
「砂紋恭一郎さまが少しお話がしたいと。」
電話口でこちらの要件が終わるのを待っていただろう、恭一郎に代わる。
そこで語られたのは決して外に出ない内部情報だった。
砂紋の祖父君の病院内での患者の事を考えない横暴なふるまいに、麗華への数々の仕打ち。
今現在、医院長を追い落としたが日が浅くいまだに祖父君を仰ぐ人間がいる事。
見合い相手の医師はすでに伴侶がいて、今回一芝居打ったが見張りがいたため連れ出すことができず困っていた所に、ホテルから連れ出してくれたことへの礼、そして、今後砂紋の家は西園寺に全面的に協力すると誓うこと。
蒼紫はそれに、巨額の寄付と向こう5年間の消耗品の寄付を申し出て、2つ頼みごとをした。
一つはオメガに対して今最も必要と思われる支援をすること、
これは医療のスペシャリストだからこそ、医療面で足りていないことがわかると思っての頼み事だ。
もう一つはこちらから祖父君の動向がわかり次第連絡をした際速やかに祖父君を回収する事。
こちらが祖父君を排除することは容易いが、弥生との結婚条件に犯罪者は容認できない記載がある以上少しでもリスクを減らす為でもある。
家族が迎えに来ればそれは犯罪でも何でもない。その二つを頼み電話を切った。
「おや、そろそろ帰ってくるようだよ。」
モニターをみると佐藤がこちらへの道を通ってこちらに向かっている状態が分かる。
「ちょうどキリがついたのでよかった。」
「おや、彼には言わないのかい?」
「そんな事はないですよ。準備が整い次第お話します。」
「準備、ね。」
これからする事を佐藤は心よく思わない事はわかっている。
強行するにはすべての準備が整ってからにしなければ、彼の事だ、絶対に邪魔してくる。
板垣には蒼紫の思惑等が筒抜けのようだが、面白そうに笑うだけだった。
他を気にする様子を見せたが情報は共有しておいた方がいい。
蒼紫は先を促した。
「砂紋様ですが、本家の方で動きがあったようです。」
「本家……病院か。」
「はい、かねてより医院長には砂紋様の祖父君が就かれていましたが、1週間前にお父上の恭一郎様になっているようです。」
という事は実質砂紋家のトップは砂紋の父に変わったという事か。
「今回の見合いは候補が2人、1人は昔から病院と関係の深い間島教授で、もう一人は少し前に病院に入った医者です。」
「待て、間島といったか?」
「はい。」
板垣は眉間に皺を寄せて聞き返す様子に尋常じゃない雰囲気を感じる。
「なにか引っかかる事が?」
「仁」
名前を呼ばれた伴侶の方が会話を引き継ぐ。
「間島教授はバース性のフェロモンに関することの研究で一時は名を馳せられましたが、人権を無視した研究内容が物議を呼び今では医学会から追放処分を受けたはずです。当方より何度か彼に目をつけられた人間を警護した事があります。」
「警護を雇えるという事はそれなりの家の人間が狙われたという事か。」
「彼の人はオメガとアルファから生まれたベータにまで興味があるらしくてね、私の友人も砂門の病院に行った時に珍しい症例で目をつけられたらしい。」
「つきまといに加え家の方にも相当嫌がらせがあったようです。」
「たちが悪いな。」
「自分の興味のためなら命さえも犠牲にする事を厭わない御仁だよ。」
「すでに何人もの人間が犠牲になっています。」
「何人も?」
その話が本当ならなぜ問題になっていない?
命に関わることだ、名が売れ、危険な人物という事ならすでに警察沙汰になっていてもおかしくない。
「まさか。」
「病院もグルだろう。」
板垣の言う通り病院もグルなら不審な点があっても警察が踏み込めないのは分かる。
死因に問題がなければ警察はそれ以上踏み込めない。
「誰が犠牲になったか分かりますか?」
「ああ、彼の歴代妻達そして子供達だよ。」
「そうか、それで表沙汰になりにくいのか。」
「家族の事は外部から干渉出来ないからね。」
蒼紫は少し考え東堂に指示を出す。
「教授の奥方全員の洗い出し、病院の取引関係をすべて押さえろ。後、今回見合いをした医者も調べろ。手段は何でもいい。1時間以内だ。」
「随分急がせるね」
「彼女があちら側の手に落ちれば間島の所に連れて行かれるでしょう。それまでになんとかしなければいけないので。」
蒼紫は映し出されている画像に視線を移す。
そこには砂紋の令嬢と楽しそうに買物をしている弥生の姿が映っていた。
その様子にふっと笑みが溢れる。
弥生にはこちらにきて随分辛い思いをさせてしまった。
だからこそ、ここから先できうるかぎり笑顔でいられるようにしたい。
「それに、弥生が随分楽しそうなんです。心許せる相手なのでしょう。そんな人が辛い立場に立たされれば彼は黙っていられないはずです。」
病院に必要な消耗品、医薬品、ベッドや車椅子等の道具類に至るまで西園寺が押さえれば、交渉の切り札で使うことが出来る。
「ならば警備関係にはこちらから手を回しておこう。」
「いいんですか?」
「なにをいう、切り札は多ければ多い程いい。」
板垣の言葉に仁はどこかに電話を掛け始めたが、最後の電話で蒼紫にスマホを差し出した。
「西園寺様、千堂警視からお話がしたいと。」
拒む理由もないため代わると協力の礼をいわれ、蒼紫も今後の協力を惜しまない旨を伝えた。
これで警察にも協力を仰ぎやすくなる。
佐藤が動けない場合も手が打てるようになるのは都合がよかった。
次々入る報告のピースを状況に当てはめていくと見えてきたのは親子の実権争いだ。
敗者は祖父の方。
今回の見合いを仕組んだのは祖父だろう。
彼女は見合いは医者との一つだけだが、その後、間島の研究所に行く手配がされていた。
間島は医学会では爪弾き者だが、その研究は薬業界では金のなる木だ。
病院で薬が手に入らないなんてことになれば、どうなるかなんて想像出来る。
おそらく祖父君は生け贄として令嬢を間島に渡し、その見返りに力添えを頼んでいると思って間違いないだろう。
そして、見合い相手は父親の派閥だ。優秀で病院に入ってそう経ってないにもかかわらず輝かしい功績を残している。
祖父君にとっては目の上のコブだが、あえて令嬢との見合いを仕組んだのは間島に渡した後、彼女の死後その罪をなすりつける為だろう。
彼女が被害者になる事が前提だが、分かった上で間島に引き渡そうとしているなら人格を疑う。
彼女に好まれない様な態度を取ったのは、振られてその場で別れてその後接点を作らない為だ。
医師はそうする事で今後、”つきまとい”の疑いをかけられる事を回避したかったのだろう。
「蒼紫様。」
電話を終えた蒼紫に東堂がスマホを渡してきた。
「砂紋恭一郎さまが少しお話がしたいと。」
電話口でこちらの要件が終わるのを待っていただろう、恭一郎に代わる。
そこで語られたのは決して外に出ない内部情報だった。
砂紋の祖父君の病院内での患者の事を考えない横暴なふるまいに、麗華への数々の仕打ち。
今現在、医院長を追い落としたが日が浅くいまだに祖父君を仰ぐ人間がいる事。
見合い相手の医師はすでに伴侶がいて、今回一芝居打ったが見張りがいたため連れ出すことができず困っていた所に、ホテルから連れ出してくれたことへの礼、そして、今後砂紋の家は西園寺に全面的に協力すると誓うこと。
蒼紫はそれに、巨額の寄付と向こう5年間の消耗品の寄付を申し出て、2つ頼みごとをした。
一つはオメガに対して今最も必要と思われる支援をすること、
これは医療のスペシャリストだからこそ、医療面で足りていないことがわかると思っての頼み事だ。
もう一つはこちらから祖父君の動向がわかり次第連絡をした際速やかに祖父君を回収する事。
こちらが祖父君を排除することは容易いが、弥生との結婚条件に犯罪者は容認できない記載がある以上少しでもリスクを減らす為でもある。
家族が迎えに来ればそれは犯罪でも何でもない。その二つを頼み電話を切った。
「おや、そろそろ帰ってくるようだよ。」
モニターをみると佐藤がこちらへの道を通ってこちらに向かっている状態が分かる。
「ちょうどキリがついたのでよかった。」
「おや、彼には言わないのかい?」
「そんな事はないですよ。準備が整い次第お話します。」
「準備、ね。」
これからする事を佐藤は心よく思わない事はわかっている。
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