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48.はつ恋
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佐藤が弥生の部屋を訪ねるとリビング部分では今回専属でついている医者、看護師、Mからの護衛でついている吾妻が難しい顔でお茶を飲んでいた。
変な雰囲気に首をひねる。
「どうしたんですか?」
「どうしたって、彼部屋にこもって診察させてくれないんだけど。」
ああ、と納得する。
寝室のドアをノックするが案の定返事はない。
「弥生さん、入りますよ。」
防犯上鍵のかかっていない寝室に勝手に入っていく。
ベッドでミノムシになってる弥生を見てついくすりと笑ってしまった。
ベッドの横に腰掛けミノムシ弥生にそっと手を置く。
「弥生さん、どうかしましたか?」
何も言わない弥生を心配してなかった。
恐らく今まで経験したことのない、突然の好意を持った接触に戸惑っているだけだ。
「中庭の男、調べましょうか?」
「やめて!」
必死の叫びにリビングのメンバーが様子をドア入口まで見に来る。
「調べようと思えば、俺でもMでも、あの男の今日の朝食のメニューまで調べられますよ。」
「やめて、やめてよ。調べないで。」
すがりつく弥生の頭を撫でる。
「わかりました。じゃあ、なんでミノムシになってるんです?」
何も言わずにミノムシに逆戻りになろうとするのを布団を引っ張って防止する。
「……はじめてだった。」
「弥生さん自身に向けられる色好い感情がでしょう。これからは、そういうのにも慣れていかないと、弥生さん?」
どうも様子がおかしい。
まさか、と「もしかして初キスでした?」
記憶喪失になる前、蒼紫とはキスをしているのをみた事があるが、それも唇ではなかった。佐藤が見た以外でしていても恐らく唇ではなかっただろう。
でも、弥生も32歳さすがに1回くらいあるはず。
「………。」
沈黙が答えだった。
「マジですか。保育園とかでお遊びとかも?」
「…………。」
「小、中、高、くらいはモテたでしょう。」
アルファはもちろんだが、オメガもその美貌で人気がある。
事故チュウを狙ってくるバカもいるくらいだ、はつ恋くらい経験してても……
「もしかして初恋もなしですか?」
はぁ、と溜め息をついて首だけ布団から出し話をする体勢になったので、佐藤も手を離した。
「俺、幼馴染がいるんだ。」
知ってます、そいつは今牢屋の中。
「その幼馴染がクズで保育園から中学まで一緒だったんだけど、俺そいつに、ドジで、嘘つきで、淫乱っていうのを広められちゃってて。」
「はぁ!?」
「俺、園児のときから先生や保護者を誘惑する最低オメガっていうレッテル貼られたんだよ。」
「園児が誘惑するわけないでしょう。」
「うん、でもそれが当時の常識だったんだよ。言い出したのが町唯一のアルファだからね。アルファ様のいう事はたとえ、あり得ないような嘘でもホントの事になる。」
「そいつも同じ園児でしょう。信じます?そんな事。」
「信じるというより、なんかアルファのいう事は絶対だったんだよ。だから、どんなにオメガの俺が否定しても誰も信じてくれない。」
高校は町外だけど、そこにも町内からいってる人が多くて噂が蔓延してて駄目だった。と悲しそうに言った。
佐藤が町に赴任した時に感じた事がある。
やたら、引っ越しの日に遠巻きにチラチラ見られ目が合えば気まずそうに去っていく重苦しい雰囲気はよそ者に対する警戒で仕方ないと思っていたが、それはオメガに対しての偏見による好奇と警戒だったのだろう。
引っ越し作業中も寄せられる冷たい態度にイライラした記憶がある。
そして、引っ越し中に弥生が訪ねてきた。
その時は、こちらのことがバレたのかと最初はヒヤッとしたがそうではなかった。
近所の挨拶を優先して欲しいと頭を下げられた。
本当は予定していなかったが、弥生に言われて近所を1軒1軒妻と子を紹介して回り、その後、集会の時もよろしくと頭を下げ、そこで溺愛ぶりを見せつけた。
無事挨拶を終えたことを偶然を装って近づいて報告すると、よかったと喜んでくれた。
「もしかして、引っ越し当日に訪ねてきたのもその関係ですか?」
「うん、前から噂があったんだ。オメガの親子が男を漁りに来るって。」
「なっ」
「だから急いで行ったんだよ。伴侶をなくしたオメガなら辛い思いをすると思って、でも、隣に佐藤君いてほっとしたんだ、ちゃんと守ってくれる人のいるオメガだったって、ただ、田舎だから一歩間違うととんでもない方向に話が行っちゃうから。」
「それで、挨拶周りっていうことだったんですね。」
「うん。」
と返事をした後、横になろうとする弥生を再び引っ張って起こす。
「話は終わってませんよ。」
「いい感じに区切りがついたじゃん。」
「そう思ってるのは弥生さんだけです。」
仕方なさそうに座り直す。
「俺はあの人と関わりたくない。」
「そんな事思ってもないでしょう。」
「思ってるよ。佐藤君、俺はあの人の隣に誰か立つ未来を見たくないんだ。」
「縁結びしたわけじゃないじゃないですか。」
「縁結びは自分でコントロール出来るものじゃないってわかってるでしょ。」
佐藤は入り口に向かって追い払うような仕草を見せると、集まっていた3人はその場を離れた。
「そうですけどね。弥生さんマッチングやめなかった理由は別に強要されてただけじゃないでしょう。諦めてたところもあるかもしれませんが、もしかしたらって思う事だってあったんじゃないんですか?」
佐藤は痛い所をついてくる。
確かに諦めてたけど、一筋位の希望は持ってもいた。
ただ、それがここまで怖いことだと思わなかっただけだ。
「今ここで肉食女子みたいにガツガツいかなくてどうするんですか。」
「俺みたいな年増がガツガツいくと引かれちゃうから。」
「何言ってんですか、今のうちにガツガツいかないとあっという間に40ですよ。」
「うっ。」
「第一、世の中見てくださいよ。結婚してるってわかってるのにモーションかけてくる三十路なんてごまんといますよ。」
「え?かけられた事あるの?」
「美穂には内緒ですよ。」
驚きの事実判明で弥生は美穂にかかってきた、不穏な電話を思い出したが言っていいものか悩む。秒間、悩んだ結果、言わないことにした面倒くさすぎる。。恐らく、佐藤の事だそのガツガツした人に関しては解決済みだろうし、下手に突かない方がいい。
「へー、ソウナンダ。」
棒読みで視線をずらすとビリっと首筋に静電気が走ったような痛みが走った。
「?」
首筋を撫でてふと、佐藤の方をみるとにこやかでも、目が笑ってなかった。
「ど、どうしたの?佐藤君。」
「今はいいです。」
「え?」
「後で吐いてもらいますよ。」
どうやら弥生の態度で分かったらしい。
逆らえない雰囲気にコクコクと頷いた。
「でも、そんなに嫌ですか?」
「ごめん。」
この瞬間にもあの人が運命と出会っていて、もう婚約してましたという事もありうる。
少し時間を一緒に過ごしただけなのにこんなにも気になる。
幸せになってほしいけど、欲しくない。
誰かとなんて嫌だと心が叫んでる。
「こんな事今までなかったのに。」
「一目惚れでしょ、相手に恋人ができて欲しくないなんて典型じゃないですか。」
佐藤の指摘に返す言葉が見つからずに体育座りで顔を伏せる。
「ま、その気になったら言ってください。帰ってからでもかまいませんから。」
そんな日はきっとこない。
この気持ちが経験した事がなさ過ぎて持て余してる時点で、あの人との未来なんて考えられなかった。
変な雰囲気に首をひねる。
「どうしたんですか?」
「どうしたって、彼部屋にこもって診察させてくれないんだけど。」
ああ、と納得する。
寝室のドアをノックするが案の定返事はない。
「弥生さん、入りますよ。」
防犯上鍵のかかっていない寝室に勝手に入っていく。
ベッドでミノムシになってる弥生を見てついくすりと笑ってしまった。
ベッドの横に腰掛けミノムシ弥生にそっと手を置く。
「弥生さん、どうかしましたか?」
何も言わない弥生を心配してなかった。
恐らく今まで経験したことのない、突然の好意を持った接触に戸惑っているだけだ。
「中庭の男、調べましょうか?」
「やめて!」
必死の叫びにリビングのメンバーが様子をドア入口まで見に来る。
「調べようと思えば、俺でもMでも、あの男の今日の朝食のメニューまで調べられますよ。」
「やめて、やめてよ。調べないで。」
すがりつく弥生の頭を撫でる。
「わかりました。じゃあ、なんでミノムシになってるんです?」
何も言わずにミノムシに逆戻りになろうとするのを布団を引っ張って防止する。
「……はじめてだった。」
「弥生さん自身に向けられる色好い感情がでしょう。これからは、そういうのにも慣れていかないと、弥生さん?」
どうも様子がおかしい。
まさか、と「もしかして初キスでした?」
記憶喪失になる前、蒼紫とはキスをしているのをみた事があるが、それも唇ではなかった。佐藤が見た以外でしていても恐らく唇ではなかっただろう。
でも、弥生も32歳さすがに1回くらいあるはず。
「………。」
沈黙が答えだった。
「マジですか。保育園とかでお遊びとかも?」
「…………。」
「小、中、高、くらいはモテたでしょう。」
アルファはもちろんだが、オメガもその美貌で人気がある。
事故チュウを狙ってくるバカもいるくらいだ、はつ恋くらい経験してても……
「もしかして初恋もなしですか?」
はぁ、と溜め息をついて首だけ布団から出し話をする体勢になったので、佐藤も手を離した。
「俺、幼馴染がいるんだ。」
知ってます、そいつは今牢屋の中。
「その幼馴染がクズで保育園から中学まで一緒だったんだけど、俺そいつに、ドジで、嘘つきで、淫乱っていうのを広められちゃってて。」
「はぁ!?」
「俺、園児のときから先生や保護者を誘惑する最低オメガっていうレッテル貼られたんだよ。」
「園児が誘惑するわけないでしょう。」
「うん、でもそれが当時の常識だったんだよ。言い出したのが町唯一のアルファだからね。アルファ様のいう事はたとえ、あり得ないような嘘でもホントの事になる。」
「そいつも同じ園児でしょう。信じます?そんな事。」
「信じるというより、なんかアルファのいう事は絶対だったんだよ。だから、どんなにオメガの俺が否定しても誰も信じてくれない。」
高校は町外だけど、そこにも町内からいってる人が多くて噂が蔓延してて駄目だった。と悲しそうに言った。
佐藤が町に赴任した時に感じた事がある。
やたら、引っ越しの日に遠巻きにチラチラ見られ目が合えば気まずそうに去っていく重苦しい雰囲気はよそ者に対する警戒で仕方ないと思っていたが、それはオメガに対しての偏見による好奇と警戒だったのだろう。
引っ越し作業中も寄せられる冷たい態度にイライラした記憶がある。
そして、引っ越し中に弥生が訪ねてきた。
その時は、こちらのことがバレたのかと最初はヒヤッとしたがそうではなかった。
近所の挨拶を優先して欲しいと頭を下げられた。
本当は予定していなかったが、弥生に言われて近所を1軒1軒妻と子を紹介して回り、その後、集会の時もよろしくと頭を下げ、そこで溺愛ぶりを見せつけた。
無事挨拶を終えたことを偶然を装って近づいて報告すると、よかったと喜んでくれた。
「もしかして、引っ越し当日に訪ねてきたのもその関係ですか?」
「うん、前から噂があったんだ。オメガの親子が男を漁りに来るって。」
「なっ」
「だから急いで行ったんだよ。伴侶をなくしたオメガなら辛い思いをすると思って、でも、隣に佐藤君いてほっとしたんだ、ちゃんと守ってくれる人のいるオメガだったって、ただ、田舎だから一歩間違うととんでもない方向に話が行っちゃうから。」
「それで、挨拶周りっていうことだったんですね。」
「うん。」
と返事をした後、横になろうとする弥生を再び引っ張って起こす。
「話は終わってませんよ。」
「いい感じに区切りがついたじゃん。」
「そう思ってるのは弥生さんだけです。」
仕方なさそうに座り直す。
「俺はあの人と関わりたくない。」
「そんな事思ってもないでしょう。」
「思ってるよ。佐藤君、俺はあの人の隣に誰か立つ未来を見たくないんだ。」
「縁結びしたわけじゃないじゃないですか。」
「縁結びは自分でコントロール出来るものじゃないってわかってるでしょ。」
佐藤は入り口に向かって追い払うような仕草を見せると、集まっていた3人はその場を離れた。
「そうですけどね。弥生さんマッチングやめなかった理由は別に強要されてただけじゃないでしょう。諦めてたところもあるかもしれませんが、もしかしたらって思う事だってあったんじゃないんですか?」
佐藤は痛い所をついてくる。
確かに諦めてたけど、一筋位の希望は持ってもいた。
ただ、それがここまで怖いことだと思わなかっただけだ。
「今ここで肉食女子みたいにガツガツいかなくてどうするんですか。」
「俺みたいな年増がガツガツいくと引かれちゃうから。」
「何言ってんですか、今のうちにガツガツいかないとあっという間に40ですよ。」
「うっ。」
「第一、世の中見てくださいよ。結婚してるってわかってるのにモーションかけてくる三十路なんてごまんといますよ。」
「え?かけられた事あるの?」
「美穂には内緒ですよ。」
驚きの事実判明で弥生は美穂にかかってきた、不穏な電話を思い出したが言っていいものか悩む。秒間、悩んだ結果、言わないことにした面倒くさすぎる。。恐らく、佐藤の事だそのガツガツした人に関しては解決済みだろうし、下手に突かない方がいい。
「へー、ソウナンダ。」
棒読みで視線をずらすとビリっと首筋に静電気が走ったような痛みが走った。
「?」
首筋を撫でてふと、佐藤の方をみるとにこやかでも、目が笑ってなかった。
「ど、どうしたの?佐藤君。」
「今はいいです。」
「え?」
「後で吐いてもらいますよ。」
どうやら弥生の態度で分かったらしい。
逆らえない雰囲気にコクコクと頷いた。
「でも、そんなに嫌ですか?」
「ごめん。」
この瞬間にもあの人が運命と出会っていて、もう婚約してましたという事もありうる。
少し時間を一緒に過ごしただけなのにこんなにも気になる。
幸せになってほしいけど、欲しくない。
誰かとなんて嫌だと心が叫んでる。
「こんな事今までなかったのに。」
「一目惚れでしょ、相手に恋人ができて欲しくないなんて典型じゃないですか。」
佐藤の指摘に返す言葉が見つからずに体育座りで顔を伏せる。
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