縁結びオメガと不遇のアルファ

くま

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49.お宝

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「はい、口開けて。」
 弥生が外出から帰ってすぐ受けるはずだった診察を受けたのは佐藤と話が終わってからだった。

「じゃ、上脱いで横になって、腹部も触診をしますよ。」
 一つ一つ説明を受けながら指示通りにしていく。
 痛みがあれば言ってくださいと言われていたが、特に痛みもなく順調に診察は終わった。
「とりあえず、あざも順調に消えていってるし、内部の異常は触診では見当たらないから明日病院での最終検査クリアしたら次は地元のかかりつけ医に引き継ぐから帰ったら診察受けてね。」
「はい、ありがとうございます。」
 今は個人病院との連携が進んで来ている事もあって、重篤以外ではかかりつけ医に経過を引き継ぐと説明があった通り、今後弥生も地元のオメガの医師のいる病院に通う事になる。

 佐藤が先生に紹介状の話をしているうちに弥生は軽食を頬張る。
 動かなすぎて食欲がわかなかったが、今日は中庭までの散歩と久しぶりの面識のない人と会話したことで小腹がすいたからだが、どう考えても小腹以上の量が用意されていた。
「これ準備したのって佐藤君?」
 ついてくれている看護師の青年高見君に聞くと「そうです。止めたんですけど。」と申し訳なさそうに言った。
「いいのいいの、佐藤君いつもこうだから。」
 多分余ったら自分の腹のなかに入れる算段で注文したのだろう。

 しかし、ラインナップがすごい。
 サーモンとアボカドのクラブハウスはパンの配分より中身がボリューミー。
 カツ丼はダブルで肉の量が半端なく。
 カツカレーは大盛り。
 ミックスピザにハンバーグ定食。
 ちなみにどれを食べてもお腹いっぱいになるため、ハンバーグ定食についてるサラダとコーンスープを頂いている。

「弥生さん、何ちまちましたものを食べてるんですか、やっと食欲出たんですからガッツリいかなきゃ駄目じゃないですか。」
「佐藤君、心配かけた俺も悪かったけどこの量は別の病気になるから。」
 デブになるのと胃を壊すのがどちらが早いかいい勝負かもしれない。
「え?もしかしてもう食べれないとか言わないでくださいよ。」
「あのね、まだ15時だよ。夕飯じゃないんだから。こんなに食べたらほんとに夕飯入んないから。」
 仕方ないなぁ、と佐藤が残りを食べていくが、一口が大きいので気持ちいいはやさでたいらげていく。

「あ、弥生さん、記憶がないときの買い物ですけど。」
 そういえば、状態が落ち着いたら話がしたいと聞いて一体どんな恐ろしい買い物をしたのかと戦々恐々としていたが、フリーマーケットでの総額1万円くらいの買い物だった。

 意味不明なものは2点ほどあったけど、後は自分らしいラインナップでほっとした。

 ただ、なんで状態が落ち着いたらということになっているかというと
「買い取り希望の人がいるんだっけ?」
 そう、その買い取り希望の人たちも商品と一緒に訪ねてくる。
 なぜ、自分が買ったものを他人が持っているかは謎だが、記憶がないので考えるだけ無駄だと受け入れている。
 約束が17時なのでまだ時間に余裕があるはず。
「申し訳ないんですが、一時間だけでも早めてもらっていいですか?」
「?いいけど。」
「なんか、もう下にきて不審者なみに落ち着かない様子らしくって。」
「別に、すぐにでもいいけど。」
 佐藤は眉をひそめ「その恰好はやばいですから。」と着替えを要求してきた。
 白の襟付きシャツに紺のイージーパンツの何がやばいのか分からないまま、着替えの後上がってきてもらう事になったが、髪を整えている最中にドアがノックされた。
「弥生さん。」
「佐藤君どうしたの?」
 まだ、準備始めて15分程だが随分困った様子に心配になる。
「すみません、1時間って言ったんですがもう部屋に入ってきてもらってていいですか?」
「別にいいけど。」
 いつも警備関係上こういった事は厳しいのに珍しい。
「ホテル側から苦情が入って、ちょっと収拾つかなくなってきてるらしくて。」
「そうなの?いいよ入ってもらって。」
「もうほんとにすみません。」
「あはは、いいって。」
「ま、説明もあるんで呼びに来ますからそれまでゆっくりしててください。」
「ん、分かった。」

 部屋の扉を閉めると佐藤は目線で吾妻に合図を送る。
 招き入れられ、ぞろぞろと入って来たのは20代の青年から、上は初老の男性まで様々で、2人一組で来ている。
 その中から一組が佐藤の前に進み出た。
 西園寺の秘書東堂の甥で弥生の両親を迎えに行った男だ。
「佐藤さん。」
「東堂さん、お疲れ様です。」
 東堂は疲れた様子を見せないが、フロアでゴタゴタがあった事は聞いている。
「いえ、力不足で申し訳ありません。」
「仕方ありませんよ。全くどこから漏れたのやら。」
「紹介します、彼女は今回サポートをしてくれる富田さんです。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。今回の詳細は?」
「頭に入れてきています。柊様がご挨拶された後、別室で商談だと。ただ、一組飛び入りがありますがいかがされますか?」
「商品ごとの順番で、優先は元々お招きしている方々です。」
「かしこまりました。」
 入ってきた面々は一部を除き各分野で西園寺と深く関わりのある人間達だ。
 は、一組は板垣の頼んだアンティークウェアを鑑定したSTAGEステージの代表2人。
 どこの紹介でもないもう一組は秋山画廊から来ている、どこからか絵画の情報が漏れて押しかけてきてホテル側から苦情が来るきっかけになった客人だ。

 佐藤が集まっている面々の前に進み出ると軽く手を上げると静かになった。
「さて、皆様お集まりいただきありがとうございます。今回持ち主の補佐を務めてさせて頂く佐藤と申します。これから、お持ちいただいた商品の交渉の場を設けさせていただきたいと思います。」
「おい。」
 不躾に呼んだのは50半ばの恰幅の中年男性で、問題を起こした秋山画廊の店主だった。
「……何か?」
 冷たく視線を送られてじろぐが、すぐに佐藤を睨み返した。
「こっちは商品を見せてもらっていないんだが、それでどうやって交渉しろと?」
「今回、関係者にはすでにお手元に商品が届いているはずです。商品を見た上で交渉をしたいと申し出があった方々に来ていただいているのですが、あなたはなぜこの場にいらっしゃるのでしょうか?」
「それじゃあ、出来レースじゃないか!交渉も何も不当だ!」
 この爺、不当だと叫べば何でもいう事を聞くと思ってるのか?
 とは思ったがここで返事してさらに騒がれるとホテルに迷惑がかかる。
 今後使用禁止という事態は避けたい。
「失礼ですが、お名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
 ここで名乗らなければ即効で追い出せるが、そううまくはいかなかった。
「秋山画廊の秋山だ。まさか、知らないなんて事はないだろう。」
「申し訳ありません、勉強不足で。」
 心の中で舌打ちしつつにこやかに対応する。
「日本画壇を牽引してきた、画廊の一つで理事も務めている秋山画廊を知らんのか!?」
 初耳だが、それをいうと話が進まないので黙っておく。
「そうでしたか、それで今回はどちらからのお話なのでしょうか?」
「そんな事言えるわけなかろうが、機密事項だ機密事項!」
 この時点で不審極まりない。
 第一不当も何も今回は主に鑑定を請け負った関係者しか知らない交渉会だ。
 その情報を知っている時点でおかしい。
 ここからどうやってこの不審者を追い出そうかと考えていると吾妻が近づき耳打ちをした。
 佐藤は眉を顰めるがすぐに感情を消し去り秋山に向き直った。

「秋山様、今回は絵画の方のご購入を考えられているという事でよろしかったでしょうか?」
「ふん、他に何があるというんだ。」
「絵画はBurtonバートの方と競って頂く事になりますが。」
「かまわん。」
 これにぎょっとしたのはBurtonの代表達だ。
 オークション会社の絵画専門部で今回鑑定を受けてくれた人達だが、今日は売ってもらえるかどうかの交渉に来ているのに、まさかここで競れと言われるとは思っていなかったのだろう。

「それでは、当初3番手という事でしたが少しお時間頂く事になりますので順番を最後にさせて頂きます。その他の方の順番はそのままですのでお待ちの間はこのリビングで待機して下さい。」
 佐藤はざわめくリビングをそのままに弥生の待つ寝室に移動した。
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