縁結びオメガと不遇のアルファ

くま

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64.案内

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 篠宮が仕事に向かった後、弥生は用意されたデザートの甘さに癒されていた。
 なんだか、今日、いや篠宮と再会してからの時間があまりに濃厚すぎて疲労感がすごい。

 目の前にはにこにこと弥生を見つめる二人からどんな質問が飛ぶのか怖い反面、こんなだったとコイバナのような話もしたい気もするが深掘りされるとちょっと困る。
 何せ、出会ってまだ総合計1日たっていないのだから。

 うずうずしている二人に改めて「お付き合いすることになりました。」と報告すると、にこにこしていたのがぱぁぁと擬音が聞こえる位輝いた。
 母がこほんと軽く咳ばらいをしたのをきっかけに質問タイムに入る。
「きっかけは?」
「中庭で」
「ここからの事でいいのよ。」
 どうやら中庭の件は昨日聞いているのでいいらしい。
「全部話したんだ。オメガの機能が停止したベータと変わらないオメガだって。」
「弥生ちゃん。」
 重い話に変わりそうな予感に美穂が気遣うように弥生を呼ぶ。
 弥生は笑顔で大丈夫と頷くと話をつづけた。

「彼は若いからそれで諦めてくれたらと思って言ったんだけど、諦めてくれなかった。
 いいって言ってくれたんだ。話をしてたら不思議な感覚だった、まるでずっと前から俺の事を知っている様に俺の事をわかってくれてて、嫉妬深いって言ってもうれしいって。」
 弥生が紅茶を一口飲む。
 いいかと思った決定打の一つ、彼がベータに見られるアルファということはデリケートな話になる為、弥生から話すわけにはいかない、そのうち蒼紫の方から話してもらうことにして当たり障りないでも、本当にそう思っている言葉で二人に伝える。


「俺の事すごく大事に思ってくれてるのがわかって、それで、この人と一緒になってもいいかなって。」
 二人ともが頷く。
「俺、彼と一緒になっていいよね。」
「当り前じゃない!」
「そうですよ、運命的な出会いじゃないですか!逃がしちゃだめですよ。」
 応援してくれる二人に話は弥生は満足して紅茶を含むと「で!キスはしたの?」母の思いがけない追求に含んだ紅茶を吹きそうになって、なんとか飲み込んだ。
「何言ってるの?しないし!?」
「あんたこそ何言ってるの、思いが通じあったら速攻でしないといつするのよ!?」
「しないから!?」
「ねぇねぇ、弥生ちゃん。」
「んんっ!何かな、美穂ちゃん。」
「いっぱいキスしてもらった?」
「!?してない!?してないからね!?第一なんでキス!?」

 やたらキスにこだわる2人が分からない。
 ちなみに母のキスはディープなやつで、美穂ちゃんのキスはバードキスというのがなんとなくわかってしまう自分を呪った。
 わからなければここまで反応しなかったのに。

「だって、気持ちが通じあったら初めてのキスはやっぱり大人のキスでしょう。」
「いやいや、普通最初は軽いやつでしょ!?」
「そうですよ、知子さん。最初は至る所に所有権を主張する為にいっぱいキスしてあとを残すんですよ。」
 美穂ちゃんのキスが思ってたのと違う!?
「ない!ないからね!誰にそんな事聞いたの?」
「え?一瑠。」
「え?佐藤君?」
「母さんはお父さんからそういわれたけど。」
「え?父さん」
 自分の常識が怪しくなってきた。
 世間一般ではそれが常識なんだろうか?
 母さんのがベータの常識? で、美穂ちゃんのがアルファの常識?
 え?そうなの?

「失礼いたします。」
 混乱しかかった時にかかった声に助けられた。
「そろそろ、ご案内させて頂いてよろしいでしょうか?」
「あら、すみません、つい話に花が咲いちゃって。」
「いえ、急がせる様で心苦しいのですが。」
「とんでもない、こちらこそよろしくお願いします。」
 では、と渡されたのは四つ折りのパンフレットだった。
「こちらパンフレットのサンプルになります。」
「サンプルですか?」

「はい、コンセプトまで決まってますがなにぶんお店が出来上がっていませんのでイメージを使った店舗紹介となっています。」
 へえ、と3人でパンフレットに目を通していく。「お店が入ったら写真が変わるんですか?」
「はい、実際に撮影されたものに変えられます。」
 パンフレットは見ているだけでも楽しいが、店舗を実際に案内してくれるという。

 3人でパンフレット片手に東堂についていくが、パンフレットを見た後から美穂の様子が少しおかしいのが気になった。
 東堂と母が先を行くあとをついていく弥生は顔を寄せ小声で話しかけた。
「美穂ちゃんどうしたの?」
「ここ、病院もはいるって。」
「そうだね。」
 一番最後のページに書いてあったが弥生は他のページが気になってさらっと流してしまった。
「産婦人科と小児科が入るけど、誰でも利用できるといいんだけど。」
 ああ、と納得した。
 病院によってはオメガお断りも多い。
 美穂は市内のオメガOKの所で二人を産んでるが、産婦人科は年々減っていてオメガOKの所が急に駄目になる事もあるという。
 もしかしたら、美穂のかかっている病院も難色を示し始めたのかもしれない。
「そうだね。そこも聞いてみようか。」
「うん。」
 美穂は不安そうにうなずく。

 カフェから出て順番に案内してくれている中にはまだ内装も出来ていない店舗もあったが、概ね完成に近い状態だった。
 美穂の気にしていた病院は総合施設では珍しく少し奥にあり、2重扉で遮られ、はっきり病院部分との区切りが分かるようになっていた。

「施設内に溶け込む形ではないんですね。」
「はい、今回こちらに入るのは産婦人科と小児科ですので、患者さんが気兼ねなく利用できる様になっています。
 院内に入る方法は2種類、病院専用の駐車場からとこちらの施設内からとなっています。
 こちら側から入って頂くと託児所があり診察を受ける間利用していただける様になっています。」
「病院専用の駐車場は混雑時に使用出来ないんじゃないですか?」
「そちらの駐車場は病院利用者のみが利用できる様にパスで管理されている為一般のお客様は入る事ができません。」
「パス?」
「はい、診察券がパスカードのかわりになっていて駐車場出入口の機械にかざして頂くことで遮断機が上がる様になっています。」
「あ、あの。」
「はい。」
「診察は誰でも受けることができますか?」
「勿論です。」
「それが、オメガでもですか?」
 美穂が下を向いて小さい声で発した質問を東堂はちゃんと拾っていた。
「勿論です。当施設はどなたでも不自由なく利用していただけるように企画されています。病院部分に関してはオメガの医師も看護師もおりますので、安心してご利用頂くことが可能と自負しています。」

 次の説明に入った東堂の話を真剣に聞く美穂にさっきまでの不安は消えていた。
 喜々として質問し、母も一緒にはしゃいでいる。

 一体誰がこの施設を建てているかは知らないが、欲しかったものが揃っているこの施設の完成が今から楽しみで仕方なかった。
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