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67.末路
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篠宮は実海棠と入れ替わりに部屋から出る時に耳元に近づき沙苗に聞こえない様に耳打ちした。
「次はない。」
自分の伴侶が何をしたか報告を受けていた実海棠はびくりと肩を揺らすと沙苗のところに駆け寄った。
最後の人間が出てドアが閉まる瞬間。
沙苗の悲鳴が響いたがドアが閉まるとさほど気にならない音に変わった。
「蒼紫様。」
「東堂か、あの女は?」
「先ほどまで喚いていましたが今は大人しくなっています。」
「あの女の運命が弥生の幼馴染だったとはな。」
研究所からさらに山奥に建てられた別荘では二人の女の悲鳴くらいは全く周りに影響しない。
前の持ち主が何を思ってこんな不便なところに建てたのかは知らないが、悲鳴もほとんど漏れないような作りになっていることからろくでもない理由だろう。
シャワーもついている主寝室でまとわりつくオメガのにおいを洗い流すと深く息を吐いた。
「弥生は?」
「柊様は無事皆様と合流なさったようです。」
「アパートの周りを彷徨っていた男の素性はわかったか?」
「近所の高校生でした、ベータですがバイということを隠さず公言し男オメガを落とすのだと息巻いているようです。」
「……いらないな。」
「は。」
東堂は素早く電話で指示をとばす。
これで、弥生の近くをその高校生がうろつくことはないだろう。
これで何人目か……弥生は地元では人気が高い。
オメガと蔑視するような会話をするのに、完全に見下しているのではなく表現の一つとして使っている人が多かった。
彼らは彼らなりに、オメガだから”助けないといけない”と”オメガだから”という言葉を使っている。
”オメガだから”という言葉に傷ついている心情など考えないものが多いのには閉口したが、今まで積み重ねてきた"信用"が弥生がここで生きていきやすくしているのは接触してみてわかった。
たまに、弥生のやさしさに付け込もうとしている者がいたのは少々お灸を据えているので今後弥生を利用しようなどとは考えないだろう。
「それで?」
「はい、水万里輝夜はどうやらいまだ妄想の中にいるようです、言い分としましては、自分は西園寺の婚約者ですべての場所で優遇されるべきだと。」
どういう言い分なのか、自分から浮気し”運命”と出会って”破棄”という流れはきれいさっぱり女の頭から消え去ってしまっているらしい。
「頭がおかしいのか、いや、もともとおかしかったな。」
沙苗並みの疫病神であの二人のせいで何度会社が倒産の危機に陥り、敵対的買収の憂き目に遭ってきたか。
「沙苗から弥生の情報が伝わったと思うか?」
「おそらくは、もともと、自分の都合のいいことしか興味のない方ですから聞いても忘れている可能性もありますが。」
「自分が不利になるようなことはやたら覚えがよかったように思うが。」
「ご自分が不利になる場合でしょう。もともと、ご自身に過剰な自信をお持ちの方ですから相手が男とわかった時点で記憶から抹消されている可能性が高いですね。」
「二度と好き勝手できない様に。」
「はい、水万里の運命はいかがいたしますか?」
弥生の幼馴染は弥生への暴行罪にバース法が適用され5年の実刑判決が出て服役中だ。
以前、犯罪は法に任せるといっていたこともあって、幼馴染は放っておいたが……
「東堂。」
「はい。」
「運命というのはいついかなる時も共にいるべきだと思わないか?」
「はい、その通りかと。」
水万里を警察に突き出したところで、開店前の施設内に勝手に入り騒いだだけではたいした罪には問えない。
「バース法には伴侶は希望があれば一緒に刑を受ける事ができるとあったな。」
まだ、バース法が制定されて間もない明治の初め、武士の撤廃で生きていくために犯罪に走るものも多くその中には伴侶持ちのアルファもいた。
軽犯罪で数カ月の投獄中に伴侶のオメガが害される事件が多発。
当時オメガは軽視されていたこともあり、保護する人間もいなかった。
その事を重く見た政府は、オメガを保護するために夫婦同じ部屋を与え刑を一緒に受ける事ができるようにした。
オメガを特別に保護すれば不満を抱くものによって反乱がおきる。
それを防ぎつつ、伴侶のアルファに恩も売れ。
オメガと一緒の部屋を与え四六時中いっしょにいる状況を作ることでオメガの安全も確保できるという法だった。
今の世に合わず、その法を利用するものはいない、忘れられた法だ。
「そう言えば、男の母親は精神科に入院していたか。」
「はい、言っている事が支離滅裂で精神異常が確認された為病院の方に。」
「家族愛というのも美しいものだと思わないか?」
「はい、ではそのように。」
これで、水万理は愛しいアルファと一緒にいることができ。
母親は息子が出所したあと嫁も一緒に暮らす事ができる。
幼馴染の方は寝取るほど愛しい伴侶と、息子思いの母親と一緒に過ごす事ができる。
ただ、場所は病院の別棟という事になるが、その方が世間に迷惑が掛からないだろう。
「蒼紫様、板垣ご夫妻がホテルに到着されたと。」
「明後日の予定じゃなかったか?」
マンション側と施設側の警備面はイタガキセーフティ株式会社が全面的に請け負う形になっている。
「こちらの予定では明後日に現場の視察と警備の打ち合わせが入っています。」
すでに施設の警備は板垣の所から入っているから、今回の事がそこから報告という形で上がっていても不思議ではないが、恐らくそれはないだろう。
あそこで見聞きしたことは施設完成までは重要機密事項として扱われるために、親会社にも報告出来ない旨を理解した上で警備に入ってもらっている。
ただ、警備上どうしても親会社の力が必要ならこちらから申し出る形で板垣の方に話がいく。
今回はその申し出が出ていない状況で板垣夫妻が動いたのは不可解だ。
「サプライズで明後日まで秘密にしておきたかったんだが。」
今、蒼紫がここにいることを知るのはごく一部だ。
佐藤やMのメンバーが蒼紫の行方を探しているのは知っていたが、弥生と自然な形で出会いを作る為にバレないよう周囲の人間を動かし巧みに隠れていた。
「連絡を取ってみるか。」
「かしこまりました。面会は今日されますか?」
「そうだな………、いや、ビデオ通話でいいだろう。」
蒼紫は、差し出されたスマホを受け取り早速番号を入力した。
「次はない。」
自分の伴侶が何をしたか報告を受けていた実海棠はびくりと肩を揺らすと沙苗のところに駆け寄った。
最後の人間が出てドアが閉まる瞬間。
沙苗の悲鳴が響いたがドアが閉まるとさほど気にならない音に変わった。
「蒼紫様。」
「東堂か、あの女は?」
「先ほどまで喚いていましたが今は大人しくなっています。」
「あの女の運命が弥生の幼馴染だったとはな。」
研究所からさらに山奥に建てられた別荘では二人の女の悲鳴くらいは全く周りに影響しない。
前の持ち主が何を思ってこんな不便なところに建てたのかは知らないが、悲鳴もほとんど漏れないような作りになっていることからろくでもない理由だろう。
シャワーもついている主寝室でまとわりつくオメガのにおいを洗い流すと深く息を吐いた。
「弥生は?」
「柊様は無事皆様と合流なさったようです。」
「アパートの周りを彷徨っていた男の素性はわかったか?」
「近所の高校生でした、ベータですがバイということを隠さず公言し男オメガを落とすのだと息巻いているようです。」
「……いらないな。」
「は。」
東堂は素早く電話で指示をとばす。
これで、弥生の近くをその高校生がうろつくことはないだろう。
これで何人目か……弥生は地元では人気が高い。
オメガと蔑視するような会話をするのに、完全に見下しているのではなく表現の一つとして使っている人が多かった。
彼らは彼らなりに、オメガだから”助けないといけない”と”オメガだから”という言葉を使っている。
”オメガだから”という言葉に傷ついている心情など考えないものが多いのには閉口したが、今まで積み重ねてきた"信用"が弥生がここで生きていきやすくしているのは接触してみてわかった。
たまに、弥生のやさしさに付け込もうとしている者がいたのは少々お灸を据えているので今後弥生を利用しようなどとは考えないだろう。
「それで?」
「はい、水万里輝夜はどうやらいまだ妄想の中にいるようです、言い分としましては、自分は西園寺の婚約者ですべての場所で優遇されるべきだと。」
どういう言い分なのか、自分から浮気し”運命”と出会って”破棄”という流れはきれいさっぱり女の頭から消え去ってしまっているらしい。
「頭がおかしいのか、いや、もともとおかしかったな。」
沙苗並みの疫病神であの二人のせいで何度会社が倒産の危機に陥り、敵対的買収の憂き目に遭ってきたか。
「沙苗から弥生の情報が伝わったと思うか?」
「おそらくは、もともと、自分の都合のいいことしか興味のない方ですから聞いても忘れている可能性もありますが。」
「自分が不利になるようなことはやたら覚えがよかったように思うが。」
「ご自分が不利になる場合でしょう。もともと、ご自身に過剰な自信をお持ちの方ですから相手が男とわかった時点で記憶から抹消されている可能性が高いですね。」
「二度と好き勝手できない様に。」
「はい、水万里の運命はいかがいたしますか?」
弥生の幼馴染は弥生への暴行罪にバース法が適用され5年の実刑判決が出て服役中だ。
以前、犯罪は法に任せるといっていたこともあって、幼馴染は放っておいたが……
「東堂。」
「はい。」
「運命というのはいついかなる時も共にいるべきだと思わないか?」
「はい、その通りかと。」
水万里を警察に突き出したところで、開店前の施設内に勝手に入り騒いだだけではたいした罪には問えない。
「バース法には伴侶は希望があれば一緒に刑を受ける事ができるとあったな。」
まだ、バース法が制定されて間もない明治の初め、武士の撤廃で生きていくために犯罪に走るものも多くその中には伴侶持ちのアルファもいた。
軽犯罪で数カ月の投獄中に伴侶のオメガが害される事件が多発。
当時オメガは軽視されていたこともあり、保護する人間もいなかった。
その事を重く見た政府は、オメガを保護するために夫婦同じ部屋を与え刑を一緒に受ける事ができるようにした。
オメガを特別に保護すれば不満を抱くものによって反乱がおきる。
それを防ぎつつ、伴侶のアルファに恩も売れ。
オメガと一緒の部屋を与え四六時中いっしょにいる状況を作ることでオメガの安全も確保できるという法だった。
今の世に合わず、その法を利用するものはいない、忘れられた法だ。
「そう言えば、男の母親は精神科に入院していたか。」
「はい、言っている事が支離滅裂で精神異常が確認された為病院の方に。」
「家族愛というのも美しいものだと思わないか?」
「はい、ではそのように。」
これで、水万理は愛しいアルファと一緒にいることができ。
母親は息子が出所したあと嫁も一緒に暮らす事ができる。
幼馴染の方は寝取るほど愛しい伴侶と、息子思いの母親と一緒に過ごす事ができる。
ただ、場所は病院の別棟という事になるが、その方が世間に迷惑が掛からないだろう。
「蒼紫様、板垣ご夫妻がホテルに到着されたと。」
「明後日の予定じゃなかったか?」
マンション側と施設側の警備面はイタガキセーフティ株式会社が全面的に請け負う形になっている。
「こちらの予定では明後日に現場の視察と警備の打ち合わせが入っています。」
すでに施設の警備は板垣の所から入っているから、今回の事がそこから報告という形で上がっていても不思議ではないが、恐らくそれはないだろう。
あそこで見聞きしたことは施設完成までは重要機密事項として扱われるために、親会社にも報告出来ない旨を理解した上で警備に入ってもらっている。
ただ、警備上どうしても親会社の力が必要ならこちらから申し出る形で板垣の方に話がいく。
今回はその申し出が出ていない状況で板垣夫妻が動いたのは不可解だ。
「サプライズで明後日まで秘密にしておきたかったんだが。」
今、蒼紫がここにいることを知るのはごく一部だ。
佐藤やMのメンバーが蒼紫の行方を探しているのは知っていたが、弥生と自然な形で出会いを作る為にバレないよう周囲の人間を動かし巧みに隠れていた。
「連絡を取ってみるか。」
「かしこまりました。面会は今日されますか?」
「そうだな………、いや、ビデオ通話でいいだろう。」
蒼紫は、差し出されたスマホを受け取り早速番号を入力した。
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