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第4章 二度目の外出
28 情報紙を買うところまで
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この国の、少なくともポアノンの建物は全部が煉瓦色だろう。
最初の外出でそう思っていたのだけれど、他の建築様式もあるようだ。
昨日歩いた川沿いの道から右折して1ブロック先。
ウッドテラスに針葉樹っぽい樹木が一本生えていて、横にやはり木材を多用した2階建てながら大きな建物が建っていた。
そこそこ人がいて賑わっている。
『リラノ商業施設です。小劇場と雑貨店、喫茶店が入っています。
「此処にも喫茶店があるんですね」
ニナが言う通りのようだ。
ただ此処、何か微妙に私達と違う気がする。
何が違うのだろう。
ちょっとだけ考えて、周辺にいる人々の違いだと気付いた。
年齢層は老若男女それぞれいて、強いて言えば若い人がやや多いかなという感じ。
しかし服装がちょっと違う雰囲気だ。
ぱっと見で目立つのは、大雑把に言えば男女ともにジャケット風の上着に脛くらいまでの長さのパンツという格好。
形やコーディネートも、日本で知っているジャケットやパンツとはちょっと異なる。
前回公設市場で多く見かけた服装とも違う。
ブラウスに相当する服の襟部分にぐるっと首回り全体に広がるレースっぽい飾りがあるとか。
ジャケット袖の肘から肩部分が膨らんでいるとか。
足に長く厚手の靴下をはいて短い革靴とあわせていたりとか。
よく見るとそれ以外の服装の人もいない訳ではない。
でもTシャツとワンピースの合いの子の上に上着という、私達や公設市場に多かった格好の人は、少数派だ。
何となくどういう場所か理解出来た気がする。
私なりの言葉に直すと、こんな感じだ。
「おしゃれな場所とか、流行のスポットという感じがする」
「そうかもしれません。今の私達には、まだ関係ない場所という気がします」
ニナが言う通りだろう。
うなずいて、横目で見ながら通り過ぎる。
それから何ブロックかは、煉瓦色の大きな建物が続いた。
『近くの商店等の倉庫です。運河経由で船から荷物を直接運べる為、商店や小規模事業主の倉庫または商品開発場所として多く使用されています』
港に巨大倉庫がない代わりに、こういった小規模な倉庫に直接荷物が運ばれている訳か。
そんな事を思いつつ、ニナととりとめない事を話していると、左側にまた周囲と趣が違う建物が見えてきた。
「今度は壁が白色ですね。エルンがあるヌローラ商業施設のようです」
ニナが言うとおり、建物全体が白っぽく、つやつやしているように見える。
「通常の建物と同様に土で仕上げた後、貝や海草の灰を使って使用した仕上げ剤を塗って再度焼いたものです。汚れや苔がつきにくく、高級な商店や宿屋、金持ちの住宅等でよく使用されます」
高級な施設、もしくは高級に見せかけた施設という訳か。
見た限り、そこそこ賑わっている印象を受ける。
「賑わっているように見えます。若い女性が主なようです」
ニナの言うとおり若い女性、此処の年齢で言えば40歳以下、地球だと20代後半までの女性がほとんどだ。
一方で雰囲気は、先程のリラノ商業施設とは違う印象。
「服装は私達とそう変わらない人が多い気がする。さっきの施設ほど尖っていない感じ」
高級そうな造りをした普及型モール。つまり日本にもよくあった、普通の人用の店。
私はそう見たのだけれど、どうだろう。
「確かにここの方が、普通の人が多いように見えます。ここなら私達が入っても、問題は無さそうです」
ニナも私と同じような判断をしたようだ。
そして此処までくると、もうすぐ先が公設市場。
自動車なんて無い、たまに人力の荷車が走っている道には信号も横断歩道もいらない。
道を渡って、公設市場の南中央口から入る。
◇◇◇
お金を下ろしたら公設市場の東口から出て、通りを渡って1ブロック東の本屋へ。
お互いが何を買うかは、割と簡単に決まった。
「情報紙は立ち読み禁止のようです。なので何を買うか、決めておきたいと思います。私は1紙に絞りきれなかったので、『プリール』と『ペルメラ』の2紙を買おうと思っていますけれど、チアキは何を買おうと思っていますか」
ニナは2紙買うつもりのようだ。
確かに1週間に1紙、ニナと交換しても2紙では少ない気がする。
でもペルメラというのはどんな情報紙だっただろうか。
調べた時に名前は出てきたけれど、思い出せない。
『『ペルメラ』は書評紙です。毎週第1曜日に発行されますが、首都トリエノク発行の全国版なので、ポアノンに到着するのは4曜日となります』
書評紙か。それは思いつかなかった。
でも確かにそれは楽しいかもしれない。
「私が考えたのは、『プリール』、『ナヒルカ』、『ネレノーラ』のどれか。ニナが『プリール』を買うなら、『ナヒルカ』と『ネレノーラ』を買おうかなと思う」
「ニュース専門紙ですか。確かに面白そうですし、この国を知る参考になりそうです。それでは買って、読んだら食事配給の時間に交換でいいでしょうか」
「それでいいと思う。食事の配給はどうせ一緒に行こうと思うし」
情報交換の時間としてちょうどいいのだ。回数的にも時間的にも。
「それではお願いします。あと2紙あるので、急いで読もうとか思わなくても大丈夫です。自分のペースで読み終わったら、渡してくれれば」
確かに2紙あれば、そういう余裕も生まれるなと思う。
「わかった。ありがとう」
書店は市場から歩いて3分程度と、かなり近かった。
そして思ったより大きいというか広い。
日本でいうと、小さめのスーパーくらいはあるだろう。
今の私では手が届かない位の高さまで棚があり、本が詰まっている。
「まず一通り見てから、情報紙を買おうか」
「そうですね」
という事で、2人でざっと見て回る。
内容は小説が半分で、あとはノンフィクションや学問入門・解説系、趣味系、実用系といったところだろうか。
なお実用系には『めざせ9割! 義務教育卒業試験』なんてのもあった。
『この国の公務員や企業では、義務教育学校卒業試験の点数が、職員採用の基準となっています。また私企業も似たような形で採用しています。
社会に出た後その現実に気付いて、転職を狙って試験の受け直しをする者が一定数います。そういった者の為の参考書です』
価格はどの本も、前に調べた通り300C以上。
基本的にはハードカバーで、新書や文庫みたいなものは無いようだ。
そして今日の本題である情報紙も、大量というか多種類あった。
まず情報紙用に、高さ2mくらい、幅1mくらいの棚が横に6つ並んでいる。
1つの棚は上下5段、左右に4紙だから、20種類分。
同じ情報紙が横2列とか3列に並んでいる場所もあるけれど、それでも80紙くらいはあるだろう。
買い方は、知識魔法で確認済みだ。
ここから取って、会計に持って行けばいい。
ただ種類が多いし目がそこまで慣れていないオーフ標準語だしで、どこに目的の『ナヒルカ』と『ネレノーラ』があるかわからない。
ここは素直に知識魔法に頼ろう。
『『ネレノーラ』は、奥から2番目の棚、上から3段目の左から2つめです……』
知識魔法頼りで、何とか『ネレノーラ』も『ナヒルカ』も確保。
どちらもA4程度のサイズの紙20枚くらい、紙の両面に記事が印刷してあって、糊か何かで左上側を接着している。
無事確保したので会計へ。
どちらも10Cで、合計20C。
正銅貨2枚で支払って、魔法収納へと仕舞う。
最初の外出でそう思っていたのだけれど、他の建築様式もあるようだ。
昨日歩いた川沿いの道から右折して1ブロック先。
ウッドテラスに針葉樹っぽい樹木が一本生えていて、横にやはり木材を多用した2階建てながら大きな建物が建っていた。
そこそこ人がいて賑わっている。
『リラノ商業施設です。小劇場と雑貨店、喫茶店が入っています。
「此処にも喫茶店があるんですね」
ニナが言う通りのようだ。
ただ此処、何か微妙に私達と違う気がする。
何が違うのだろう。
ちょっとだけ考えて、周辺にいる人々の違いだと気付いた。
年齢層は老若男女それぞれいて、強いて言えば若い人がやや多いかなという感じ。
しかし服装がちょっと違う雰囲気だ。
ぱっと見で目立つのは、大雑把に言えば男女ともにジャケット風の上着に脛くらいまでの長さのパンツという格好。
形やコーディネートも、日本で知っているジャケットやパンツとはちょっと異なる。
前回公設市場で多く見かけた服装とも違う。
ブラウスに相当する服の襟部分にぐるっと首回り全体に広がるレースっぽい飾りがあるとか。
ジャケット袖の肘から肩部分が膨らんでいるとか。
足に長く厚手の靴下をはいて短い革靴とあわせていたりとか。
よく見るとそれ以外の服装の人もいない訳ではない。
でもTシャツとワンピースの合いの子の上に上着という、私達や公設市場に多かった格好の人は、少数派だ。
何となくどういう場所か理解出来た気がする。
私なりの言葉に直すと、こんな感じだ。
「おしゃれな場所とか、流行のスポットという感じがする」
「そうかもしれません。今の私達には、まだ関係ない場所という気がします」
ニナが言う通りだろう。
うなずいて、横目で見ながら通り過ぎる。
それから何ブロックかは、煉瓦色の大きな建物が続いた。
『近くの商店等の倉庫です。運河経由で船から荷物を直接運べる為、商店や小規模事業主の倉庫または商品開発場所として多く使用されています』
港に巨大倉庫がない代わりに、こういった小規模な倉庫に直接荷物が運ばれている訳か。
そんな事を思いつつ、ニナととりとめない事を話していると、左側にまた周囲と趣が違う建物が見えてきた。
「今度は壁が白色ですね。エルンがあるヌローラ商業施設のようです」
ニナが言うとおり、建物全体が白っぽく、つやつやしているように見える。
「通常の建物と同様に土で仕上げた後、貝や海草の灰を使って使用した仕上げ剤を塗って再度焼いたものです。汚れや苔がつきにくく、高級な商店や宿屋、金持ちの住宅等でよく使用されます」
高級な施設、もしくは高級に見せかけた施設という訳か。
見た限り、そこそこ賑わっている印象を受ける。
「賑わっているように見えます。若い女性が主なようです」
ニナの言うとおり若い女性、此処の年齢で言えば40歳以下、地球だと20代後半までの女性がほとんどだ。
一方で雰囲気は、先程のリラノ商業施設とは違う印象。
「服装は私達とそう変わらない人が多い気がする。さっきの施設ほど尖っていない感じ」
高級そうな造りをした普及型モール。つまり日本にもよくあった、普通の人用の店。
私はそう見たのだけれど、どうだろう。
「確かにここの方が、普通の人が多いように見えます。ここなら私達が入っても、問題は無さそうです」
ニナも私と同じような判断をしたようだ。
そして此処までくると、もうすぐ先が公設市場。
自動車なんて無い、たまに人力の荷車が走っている道には信号も横断歩道もいらない。
道を渡って、公設市場の南中央口から入る。
◇◇◇
お金を下ろしたら公設市場の東口から出て、通りを渡って1ブロック東の本屋へ。
お互いが何を買うかは、割と簡単に決まった。
「情報紙は立ち読み禁止のようです。なので何を買うか、決めておきたいと思います。私は1紙に絞りきれなかったので、『プリール』と『ペルメラ』の2紙を買おうと思っていますけれど、チアキは何を買おうと思っていますか」
ニナは2紙買うつもりのようだ。
確かに1週間に1紙、ニナと交換しても2紙では少ない気がする。
でもペルメラというのはどんな情報紙だっただろうか。
調べた時に名前は出てきたけれど、思い出せない。
『『ペルメラ』は書評紙です。毎週第1曜日に発行されますが、首都トリエノク発行の全国版なので、ポアノンに到着するのは4曜日となります』
書評紙か。それは思いつかなかった。
でも確かにそれは楽しいかもしれない。
「私が考えたのは、『プリール』、『ナヒルカ』、『ネレノーラ』のどれか。ニナが『プリール』を買うなら、『ナヒルカ』と『ネレノーラ』を買おうかなと思う」
「ニュース専門紙ですか。確かに面白そうですし、この国を知る参考になりそうです。それでは買って、読んだら食事配給の時間に交換でいいでしょうか」
「それでいいと思う。食事の配給はどうせ一緒に行こうと思うし」
情報交換の時間としてちょうどいいのだ。回数的にも時間的にも。
「それではお願いします。あと2紙あるので、急いで読もうとか思わなくても大丈夫です。自分のペースで読み終わったら、渡してくれれば」
確かに2紙あれば、そういう余裕も生まれるなと思う。
「わかった。ありがとう」
書店は市場から歩いて3分程度と、かなり近かった。
そして思ったより大きいというか広い。
日本でいうと、小さめのスーパーくらいはあるだろう。
今の私では手が届かない位の高さまで棚があり、本が詰まっている。
「まず一通り見てから、情報紙を買おうか」
「そうですね」
という事で、2人でざっと見て回る。
内容は小説が半分で、あとはノンフィクションや学問入門・解説系、趣味系、実用系といったところだろうか。
なお実用系には『めざせ9割! 義務教育卒業試験』なんてのもあった。
『この国の公務員や企業では、義務教育学校卒業試験の点数が、職員採用の基準となっています。また私企業も似たような形で採用しています。
社会に出た後その現実に気付いて、転職を狙って試験の受け直しをする者が一定数います。そういった者の為の参考書です』
価格はどの本も、前に調べた通り300C以上。
基本的にはハードカバーで、新書や文庫みたいなものは無いようだ。
そして今日の本題である情報紙も、大量というか多種類あった。
まず情報紙用に、高さ2mくらい、幅1mくらいの棚が横に6つ並んでいる。
1つの棚は上下5段、左右に4紙だから、20種類分。
同じ情報紙が横2列とか3列に並んでいる場所もあるけれど、それでも80紙くらいはあるだろう。
買い方は、知識魔法で確認済みだ。
ここから取って、会計に持って行けばいい。
ただ種類が多いし目がそこまで慣れていないオーフ標準語だしで、どこに目的の『ナヒルカ』と『ネレノーラ』があるかわからない。
ここは素直に知識魔法に頼ろう。
『『ネレノーラ』は、奥から2番目の棚、上から3段目の左から2つめです……』
知識魔法頼りで、何とか『ネレノーラ』も『ナヒルカ』も確保。
どちらもA4程度のサイズの紙20枚くらい、紙の両面に記事が印刷してあって、糊か何かで左上側を接着している。
無事確保したので会計へ。
どちらも10Cで、合計20C。
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※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
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