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第一部エピローグ 一斉到達度確認試験
54 判明した事項というか、犯罪内容
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タブレットの時刻表示は、15時過ぎ。
16時ちょっと前に部屋を出て食事を取りに行くので、今から科目を進めるには微妙に時間が足りない。
ならという事で、タブレットをポチポチとタップ。
掲示板にあった『この事案を捜査した結果判明した事項』について、まだ読んでいない。
なので余ったこの時間を使って、読んでおこうと思ったのだ。
『捜査の結果、次のような状況が明らかになりました。
プライバシー保護の為、当事者についてはそれぞれ犯人A、犯人Bという形で表記します』
被疑者ではなく、犯人という表記が気になった。
これは知識魔法で事実を確認可能だからだろうか。
それともこの施設の生徒は国による保護がされていないからだろうか。
保護されていないから、裁判による判決が不要だ。
つまり捜査終了段階で犯人と自動的に決定し処分が可能。
もしそうならなかなか無慈悲なシステムだ。
なんて事を思いつつ、まずは『事案の概要』について読んでいく。
『事案① 扇動と脅迫、強要
2月10日12時ころ、犯人Aは食堂で昼食を食べている被害者Zの言動により『この生徒が外出を許可されている事』、『奨学金が週に300C入る事』、『他にも何人か外出が許可され、奨学金を貰える生徒がいる事』を知りました。
犯人Aは、自分と同じグループの者及び周囲の者に対し『同じ生徒なのに不平等だ』『我々にも同じ権利がある』等と扇動し、更に自分のグループ員及び周囲の者で被害者Zを取り囲み、被害者Zに対して自分達に無い権利を主張、奨学金を渡すか自分達の望む物を購入してくるよう強要しました。
更に被害者がその場から逃げた後、校門から入ってきた被害者Yを視認。同様に取り囲み、被害者Yがその場から逃げるまで不当な要求を行いました。
当該事案の詳細についてはこちらです』
これは最初に、エトの馬鹿が起こした事案だろう。
被害者Zがエトで、被害者Yがニナだ。
しかし自然発生ではなく、意図して扇動した奴がいたという訳か。
なかなか面倒な奴がいたものだ。
そう思いつつ先を読み進める。
『事案② 組織化
2月10日14時ころ、犯人Aは、食堂で同じ出身の者同士で話し合っているグループそれぞれのリーダー格である犯人B、犯人Cに対し『学習が進まない者に対しても、外出や奨学金を貰える権利がある』旨を説いて、協力者としました。
なおその際、他のグループのリーダー格である犯人Dにも話を持ちかけていますが、犯人Dはこれを断っています。
なおその後犯人A、犯人B、犯人Cのグループが犯人Dのグループに罵声を浴びせる等嫌がらせをした件については、犯人Dらが即座に指導員に訴えた結果、魔法的措置により犯人A、犯人B、犯人Cのグループに対して犯人Dのグループ員に対する魔法的接近防止措置、及び一定以上の音量による話しかけ防止措置を取りました』
この書き方だと、犯人Aは意図してゾンビ共を組織化した様だ。
そんな事を考えて実行する暇と頭があるなら、真面目に学習を進めろ。
そう私は思うのだけれど、違うのだろうか。
『事案③ つきまとい等
以降、犯人A、犯人B、犯人C、及びそれぞれのグループ員、合計8名は、施設の門の出入りを確認したり、外出可能な者と判明した被害者Yに仲間になる様つきまとったりといった行動を繰り返しました。
具体的には朝、夕の食事配給時、運動の為に寮から外出した際に近づき、仲間になる様にと声をかけています。なお被害者Yは毎回申し出を断るとともに、もう声をかけないよう要請しています。
この声かけは合計41回確認されました。1回ごとの詳細についてはこちらです。なお毎回、施設からは注意の連絡を各実施者宛てに出しています。また声かけを行った者に対し、被害者Yに直接に触れる事と、一定以上の音量で話しかける事を魔法的に禁止しています。
またグループ員に指示し、被害者Yの寮室を1日2回訪問させ、勧誘させようと試みました。なお被害者Yはどの訪問に対しても、寮室の扉を開けず、応答しませんでした。
これは合計20回確認されています。1回ごとの詳細についてはこちらです。こちらも毎回、施設からは注意の連絡を各実施者宛てに出しています。
また犯人Dも独自に被害者Yに対し、朝、夕の食事配給時、やはり仲間になる様に要請しました。
これは合計19回確認されています。1回ごとの詳細はこちらです。これも毎回、施設からは注意の連絡を犯人D宛てに出しています』
この被害者Yは間違いなくニナだろう。
しかし部屋訪問だけで20回か。
ニナが何回か私の部屋に避難してきたのも当然という気がする。
あと注意の連絡を受けたりとか、魔法であれこれ禁止された時点で、これはまずいと気付かないのだろうか。
まあそれでも大丈夫だと判断したからこそ、こんな感じになったのだろうけれど。
『事案④ 脅迫、つきまとい、その他事案
これら犯人A、犯人B、犯人Cの方針に疑問を持った被害者X、被害者W、被害者Vは、それぞれグループを脱退しようと決意しました。
そして犯人A、犯人B、犯人Cは、脅迫及び暴力で脱退を阻止しようとしました。
これらについての詳細はこちらです。
本件で傷害行為を行った犯人Bは、3日間の自室謹慎処分となりました。また犯人A、犯人B、犯人C及びそのグループ員については、自室を出る事が出来る時間を7時30分から16時30分までに制限しました』
エトの時やニナの時と違い、自室謹慎処分や時間制限なんて具体策が出てきた。
つまりはまあ、それほど酷い何かがあったという事だろう。
傷害行為とか書いてあるし。
見ると怒り以上に疲れを感じそうだから、詳細は見ない。
見なくても問題は無いだろうし、事実関係は変わらないから。
『事案⑤ 掲示板関連1
2月18日10時、食堂に掲示板が開設され、書き込みが可能となりました。
犯人Aは犯人B、犯人Cと共謀し、自分達のグループ員を増やし、または自分達のグループを優位にする為、掲示板を独占しようと企て、周囲のテーブルを占拠し、近づく者に対する執拗な声かけを行いました。
実施したのは犯人A、犯人B、犯人C、及びそれぞれのグループ員です。これらの者には即時警告を出すとともに、書き込み時以外は掲示板に近づけない様、特殊魔法で対策をしました』
何というか、そんな事までしていたのか……
これはもう、反社会的勢力という奴ではないのだろうか。
社会というか施設だから、反施設的勢力だけれども。
『事案⑥ 掲示板関連2
掲示板占拠に失敗した犯人Aらは、嘘の書き込みによりグループを増強しようと企み、グループ員に大量の書き込みを行わせました。ですがその大半は事実と異なる記載であった事から、施設が逐次消去した結果、残ったのは1割程度となっています。
なおその後、独自魔法による遠隔書き込みに対し、施設に苦情を申し入れたのは、犯人Aに指示されたグループの1名です』
何でもかんでもやっているな、本当に。
それだけの労力を学習に使えばと思うのだけれど、きっとそういった事が無理な性格なのだろう。
いい加減食傷気味だけれど、半ば惰性で先を確認する。
『事案⑦ 不正侵入他
2月19日の掲示板書き込みから、20日に外出を伴う実習が行われると確信した犯人Aは、犯人A、犯人B、犯人Cのグループ員のうち、犯人Cを含む6名に対し、2月20日7時から共用棟2階の第一教室を見張るよう命令しました。
なお第一教室を指定したのは、前回の実習が第一教室を使っていた事からです。7時というのは、それより早い時間には召集はないだろうと考えた事と、7時30分以前は自分やグループ員が部屋から出られない事からです。
また偵察魔法はこういった時に備えて、部下に使えそうな魔法を調べさせ、何人かに覚えさせておいたものです。また犯人Dも同様の事を考え、2月20日、自身に隠蔽魔法をかけて共用棟2階に侵入していました』
そんな検索なんて事をする手間暇があれば……
何回も思ったそんな事を思いつつ、更に先を見る。
『特別科目の授業を開始する為に指導員が教室に入ったところ、侵入者1名と監視者6名の存在を確認しました。
指導員が教室内からの退去と監視の停止を求めた結果、犯人Dはこれに応じて教室から出ました。しかし残り6名は警告に従わなかった事から、施設管理者権限で寮室内にいた6名の身柄を確保。
更に調査の結果、これらの指示が犯人Aから出ている事が確認された為、犯人A、犯人B、犯人C、及びこの時点で活動していたグループ員全員を魔法的に拘束。更に犯人Dも確保しました。
調査の結果、犯人A、犯人B、犯人Cは通常の教育では更生不能と判断され完全矯正処分が決定。犯人D、及び犯人A、犯人B、犯人Cらのグループ員のうち行動が悪質だった者5名を、自室謹慎処分としました』
これで事実関係は終わりか。
そう思ったのだけれど、説明はまだまだ続いている。
『次は犯行の動機についてです……』
はあ、そう思いつつ、先を読んでしまう。
◇◇◇
そして16時過ぎ。
私は例によって夕食の配給で、ニナと一緒に列に並んでいる。
「疲れた表情をしていますけれど、何かあったのでしょうか?」
「何というか、疲れるものを読んでしまって」
犯人Aの犯行の動機が、私が想像出来る範囲を超えていた。
『自分の現在の待遇や今後の生活を良くする為、施設に負荷を与えて影響力を確保する』なんて発想は、私の頭では浮かんでこない。
反社会的というか何というか……
「理解出来ないものは、理解しない方がいいという事もあると思います。もちろん科目や課題は別ですけれど」
ニナ、私が何を読んで疲れたのか、わかって言っている気がする。
でも確かにそれが正しいのかもしれない。
性格や志向がナチュラルに反社会的なんてのは、理解出来ない方が正しいのだろう。
「確かにそうだね。考えすぎないようにする」
「ええ。此処も静かで安全になりました。今はそれで充分です」
やっぱりニナ、わかっているな。
そう思いつつ私は頷いた。
16時ちょっと前に部屋を出て食事を取りに行くので、今から科目を進めるには微妙に時間が足りない。
ならという事で、タブレットをポチポチとタップ。
掲示板にあった『この事案を捜査した結果判明した事項』について、まだ読んでいない。
なので余ったこの時間を使って、読んでおこうと思ったのだ。
『捜査の結果、次のような状況が明らかになりました。
プライバシー保護の為、当事者についてはそれぞれ犯人A、犯人Bという形で表記します』
被疑者ではなく、犯人という表記が気になった。
これは知識魔法で事実を確認可能だからだろうか。
それともこの施設の生徒は国による保護がされていないからだろうか。
保護されていないから、裁判による判決が不要だ。
つまり捜査終了段階で犯人と自動的に決定し処分が可能。
もしそうならなかなか無慈悲なシステムだ。
なんて事を思いつつ、まずは『事案の概要』について読んでいく。
『事案① 扇動と脅迫、強要
2月10日12時ころ、犯人Aは食堂で昼食を食べている被害者Zの言動により『この生徒が外出を許可されている事』、『奨学金が週に300C入る事』、『他にも何人か外出が許可され、奨学金を貰える生徒がいる事』を知りました。
犯人Aは、自分と同じグループの者及び周囲の者に対し『同じ生徒なのに不平等だ』『我々にも同じ権利がある』等と扇動し、更に自分のグループ員及び周囲の者で被害者Zを取り囲み、被害者Zに対して自分達に無い権利を主張、奨学金を渡すか自分達の望む物を購入してくるよう強要しました。
更に被害者がその場から逃げた後、校門から入ってきた被害者Yを視認。同様に取り囲み、被害者Yがその場から逃げるまで不当な要求を行いました。
当該事案の詳細についてはこちらです』
これは最初に、エトの馬鹿が起こした事案だろう。
被害者Zがエトで、被害者Yがニナだ。
しかし自然発生ではなく、意図して扇動した奴がいたという訳か。
なかなか面倒な奴がいたものだ。
そう思いつつ先を読み進める。
『事案② 組織化
2月10日14時ころ、犯人Aは、食堂で同じ出身の者同士で話し合っているグループそれぞれのリーダー格である犯人B、犯人Cに対し『学習が進まない者に対しても、外出や奨学金を貰える権利がある』旨を説いて、協力者としました。
なおその際、他のグループのリーダー格である犯人Dにも話を持ちかけていますが、犯人Dはこれを断っています。
なおその後犯人A、犯人B、犯人Cのグループが犯人Dのグループに罵声を浴びせる等嫌がらせをした件については、犯人Dらが即座に指導員に訴えた結果、魔法的措置により犯人A、犯人B、犯人Cのグループに対して犯人Dのグループ員に対する魔法的接近防止措置、及び一定以上の音量による話しかけ防止措置を取りました』
この書き方だと、犯人Aは意図してゾンビ共を組織化した様だ。
そんな事を考えて実行する暇と頭があるなら、真面目に学習を進めろ。
そう私は思うのだけれど、違うのだろうか。
『事案③ つきまとい等
以降、犯人A、犯人B、犯人C、及びそれぞれのグループ員、合計8名は、施設の門の出入りを確認したり、外出可能な者と判明した被害者Yに仲間になる様つきまとったりといった行動を繰り返しました。
具体的には朝、夕の食事配給時、運動の為に寮から外出した際に近づき、仲間になる様にと声をかけています。なお被害者Yは毎回申し出を断るとともに、もう声をかけないよう要請しています。
この声かけは合計41回確認されました。1回ごとの詳細についてはこちらです。なお毎回、施設からは注意の連絡を各実施者宛てに出しています。また声かけを行った者に対し、被害者Yに直接に触れる事と、一定以上の音量で話しかける事を魔法的に禁止しています。
またグループ員に指示し、被害者Yの寮室を1日2回訪問させ、勧誘させようと試みました。なお被害者Yはどの訪問に対しても、寮室の扉を開けず、応答しませんでした。
これは合計20回確認されています。1回ごとの詳細についてはこちらです。こちらも毎回、施設からは注意の連絡を各実施者宛てに出しています。
また犯人Dも独自に被害者Yに対し、朝、夕の食事配給時、やはり仲間になる様に要請しました。
これは合計19回確認されています。1回ごとの詳細はこちらです。これも毎回、施設からは注意の連絡を犯人D宛てに出しています』
この被害者Yは間違いなくニナだろう。
しかし部屋訪問だけで20回か。
ニナが何回か私の部屋に避難してきたのも当然という気がする。
あと注意の連絡を受けたりとか、魔法であれこれ禁止された時点で、これはまずいと気付かないのだろうか。
まあそれでも大丈夫だと判断したからこそ、こんな感じになったのだろうけれど。
『事案④ 脅迫、つきまとい、その他事案
これら犯人A、犯人B、犯人Cの方針に疑問を持った被害者X、被害者W、被害者Vは、それぞれグループを脱退しようと決意しました。
そして犯人A、犯人B、犯人Cは、脅迫及び暴力で脱退を阻止しようとしました。
これらについての詳細はこちらです。
本件で傷害行為を行った犯人Bは、3日間の自室謹慎処分となりました。また犯人A、犯人B、犯人C及びそのグループ員については、自室を出る事が出来る時間を7時30分から16時30分までに制限しました』
エトの時やニナの時と違い、自室謹慎処分や時間制限なんて具体策が出てきた。
つまりはまあ、それほど酷い何かがあったという事だろう。
傷害行為とか書いてあるし。
見ると怒り以上に疲れを感じそうだから、詳細は見ない。
見なくても問題は無いだろうし、事実関係は変わらないから。
『事案⑤ 掲示板関連1
2月18日10時、食堂に掲示板が開設され、書き込みが可能となりました。
犯人Aは犯人B、犯人Cと共謀し、自分達のグループ員を増やし、または自分達のグループを優位にする為、掲示板を独占しようと企て、周囲のテーブルを占拠し、近づく者に対する執拗な声かけを行いました。
実施したのは犯人A、犯人B、犯人C、及びそれぞれのグループ員です。これらの者には即時警告を出すとともに、書き込み時以外は掲示板に近づけない様、特殊魔法で対策をしました』
何というか、そんな事までしていたのか……
これはもう、反社会的勢力という奴ではないのだろうか。
社会というか施設だから、反施設的勢力だけれども。
『事案⑥ 掲示板関連2
掲示板占拠に失敗した犯人Aらは、嘘の書き込みによりグループを増強しようと企み、グループ員に大量の書き込みを行わせました。ですがその大半は事実と異なる記載であった事から、施設が逐次消去した結果、残ったのは1割程度となっています。
なおその後、独自魔法による遠隔書き込みに対し、施設に苦情を申し入れたのは、犯人Aに指示されたグループの1名です』
何でもかんでもやっているな、本当に。
それだけの労力を学習に使えばと思うのだけれど、きっとそういった事が無理な性格なのだろう。
いい加減食傷気味だけれど、半ば惰性で先を確認する。
『事案⑦ 不正侵入他
2月19日の掲示板書き込みから、20日に外出を伴う実習が行われると確信した犯人Aは、犯人A、犯人B、犯人Cのグループ員のうち、犯人Cを含む6名に対し、2月20日7時から共用棟2階の第一教室を見張るよう命令しました。
なお第一教室を指定したのは、前回の実習が第一教室を使っていた事からです。7時というのは、それより早い時間には召集はないだろうと考えた事と、7時30分以前は自分やグループ員が部屋から出られない事からです。
また偵察魔法はこういった時に備えて、部下に使えそうな魔法を調べさせ、何人かに覚えさせておいたものです。また犯人Dも同様の事を考え、2月20日、自身に隠蔽魔法をかけて共用棟2階に侵入していました』
そんな検索なんて事をする手間暇があれば……
何回も思ったそんな事を思いつつ、更に先を見る。
『特別科目の授業を開始する為に指導員が教室に入ったところ、侵入者1名と監視者6名の存在を確認しました。
指導員が教室内からの退去と監視の停止を求めた結果、犯人Dはこれに応じて教室から出ました。しかし残り6名は警告に従わなかった事から、施設管理者権限で寮室内にいた6名の身柄を確保。
更に調査の結果、これらの指示が犯人Aから出ている事が確認された為、犯人A、犯人B、犯人C、及びこの時点で活動していたグループ員全員を魔法的に拘束。更に犯人Dも確保しました。
調査の結果、犯人A、犯人B、犯人Cは通常の教育では更生不能と判断され完全矯正処分が決定。犯人D、及び犯人A、犯人B、犯人Cらのグループ員のうち行動が悪質だった者5名を、自室謹慎処分としました』
これで事実関係は終わりか。
そう思ったのだけれど、説明はまだまだ続いている。
『次は犯行の動機についてです……』
はあ、そう思いつつ、先を読んでしまう。
◇◇◇
そして16時過ぎ。
私は例によって夕食の配給で、ニナと一緒に列に並んでいる。
「疲れた表情をしていますけれど、何かあったのでしょうか?」
「何というか、疲れるものを読んでしまって」
犯人Aの犯行の動機が、私が想像出来る範囲を超えていた。
『自分の現在の待遇や今後の生活を良くする為、施設に負荷を与えて影響力を確保する』なんて発想は、私の頭では浮かんでこない。
反社会的というか何というか……
「理解出来ないものは、理解しない方がいいという事もあると思います。もちろん科目や課題は別ですけれど」
ニナ、私が何を読んで疲れたのか、わかって言っている気がする。
でも確かにそれが正しいのかもしれない。
性格や志向がナチュラルに反社会的なんてのは、理解出来ない方が正しいのだろう。
「確かにそうだね。考えすぎないようにする」
「ええ。此処も静かで安全になりました。今はそれで充分です」
やっぱりニナ、わかっているな。
そう思いつつ私は頷いた。
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