ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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第20章 ダンジョン攻略依頼

第166話 見守ろう

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 食事後は迷宮ダンジョン内の地図を描く作業から開始。

「下書きを描く。気になった事があったら言って欲しい」

 私の偵察魔法は迷宮ダンジョンの入ってきた口からこっち側まで全部を見ることが可能だ。
 だからおぼえていない場所も現物確認で描く事が出来る。

 起点は向こう側の広場からにしよう。この辺とこの辺に洞窟があって、入口は土砂が侵入して……

「フミノ、ひょっとして偵察魔法で全部見えるの?」

 バレたか。まあリディナだから仕方ない。

「一応。ただ描くのは今回通ったところだけにするつもり」

「でも明日から探索する為には他の場所もわかった方がありがたいかな。それにギルドもその方が助かると思うよ。だから魔法で見える部分は全部描いて、実際に通った部分と魔法で見た部分はわかるようにしておいてくれればいいかな」

 確かにそれもそうだ。そんな訳で予定変更。今回通っていない方のトンネルいや洞窟も、避難口からその間を結ぶ細いわき道も描いていく。

 ただ大きな分岐から別れた洞窟の先がよく見えない。距離の問題では無い。何か偵察魔法が使えない別の要因があるようだ。

「明日はもう1本、こっちの同じような洞窟を通って、その後この分岐から奥へ向かう形かな。この奥はどんな感じ?」

「わからない。私の魔法でも見えない」

 南北の洞窟から分岐の洞窟が伸び、それらが合流しているところまでは見えるから描ける。ただその少し先で偵察魔法が使用出来なくなる。

 魔力や属性レベルが不足している訳では無い。クロッカリ討伐で空属性はレベルアップしたし魔力も更に増えた。

 だからこれは魔法の力が不足している訳ではない。何か別の原因だ。

「そこからが本来の迷宮ダンジョンという事なのかな。フミノの魔法でも見えないとなると」

「大変そうですね。見える洞窟だけでもこれだけ魔物がいたんですから」

 確かにそうだな。中で分岐の先を確認した時の事を思い出す。

「無理はしないから大丈夫。厳しそうなら戻って雑魚を狩りまくればいいし。それだけでも迷宮ダンジョンの力は弱まるらしいから」

 リディナもその辺の事については知っていたようだ。

 地図を描き終わったら街へ向けて移動開始だ。

「今度は私がライ君を操縦します」

 セレス、まだまだ訓練モードのようだ。

「疲れたら無理しないで交代してね」

「魔力が切れそうになったらお願いします」

「なら中間地点まで行ったら交代しようか。私も訓練したいし」

「わかりました」
 
 リディナの方も訓練モードの模様。

 ただ当たり前だが迷宮ダンジョン外は魔物が少ない。だから速度もそこそこ出せる。途中セレスがリディナとライ君担当を交代しても1時間かからずにテラーモの街に到着。

 冒険者ギルドに直行して状況を話し、地図と魔石を提出する。

「ありがとうございます。これで数日間は魔物の出現が抑えられるでしょう。またこの地図もありがたいです。2本の洞窟が貫通している事もこれでわかりましたし、中の構造もある程度掴めました。
 それでこの依頼はどうされますか。更に探索及び討伐を続けられますか?」

「ええ、そうする予定です」

「わかりました。それでは褒賞金を計算して参ります。少々お待ち下さい」

 そんな感じで受け取った褒賞金はなんと小金貨7枚と正銀貨5枚75万円分。金貨は額面が高くて使いにくいから全部正銀貨で貰ったけれど、なかなかいい額だ。

「それじゃ街から出て家を出そうか」

「そうですね」

 何か忘れている、もしくは足りないような気がしつつも私はライ君とゴーレム車を出す。

 乗車して気づいた。
 いつもは冒険者ギルドで用件が終わった時、リディナがこの辺の美味しい店についてギルドの人に尋ねる。しかし今回はそれが無かった。

 どうやらリディナ、見える以上に疲れているようだ。なら今度の操縦は私がやろう。

「今度は私が操縦する」

「お願いしていい」

「勿論」

 うん、やっぱり2人とも疲れているな。運転する気力か魔力が残っていないのか、それとも運転すると事故りそうだという感じなのか。それともその両方か。

 いずれにせよ私が操縦して正解のようだ。そんな事を思いながらライ君を操縦し街の外、洞窟方向へ移動開始。 

迷宮ダンジョン攻略って儲かるんですね」

 セレスがしみじみという感じでそんな事を言った。

「あれだけ魔物が多ければね。今回もほとんどはコボルト討伐の褒賞金だし」

 確かに200匹以上を倒している。コボルト以外も何匹かいた。だからよく考えれば当然の金額だ。

「確かにそう言われてみればそうですよね。リディナさんは前だから私よりずっと大変だったんじゃないですか」

「風魔法は射程が長いから割と楽だよ。威力を強めればまとめて倒せるし。素材になる獲物には向かないけれど」

「私ももう少し訓練して射程の長い攻撃魔法をおぼえた方がいいですね」

 風属性の魔法の方が水属性の魔法より遠くへ届きやすい。その分セレスは近くで魔物を倒さなければならない訳だ。

「でも森なんかで討伐する際はそんなに射程いらないし、水属性の方が便利だよね」

「何属性が一番いいんでしょうか」

「一長一短があるし適性もあるから難しいよね」

 確かにリディナの風魔法はバッサリかバラバラ状態。
 だから素材を取る時には向かないよな。

 2人とも会話はしているが外を見たりはしない。椅子に深く座り込んだまま、動かず会話だけしている状態。

 やっぱり相当疲れている。だから偵察魔法で良さそうな場所を探しまくりながら操縦。
 半時間くらいで良さそうな場所に無事到着。さっさと家を出してくつろぎモードへ突入だ。

「今日の夕食は出来合いの料理デーリシーが大量にあるからそれでいいと思う。リディナもセレスもゆっくり休んだ方がいい。いつでも食べられるように共用の自在袋に入れておく」

 私らしくないかもしれないけれどそんな事まで提案。

「ありがとうフミノ。でももう少し特訓してから休もうと思うの。伸ばしたい属性の魔法を魔力が無くなる寸前まで使う事を繰り返せばレベルが上がりやすいんだよね。最近その辺の訓練をあまりしていなかったから、これを機会に再開しようと思って」

「そうですね。私もやります」

 開拓村だのラツィオだの他人がいる場所で泊まるとそういった訓練をやりにくい。だから最近はほとんどそんな訓練をやっていなかった。
 ただ昔と比べて今は2人とも魔力がそれなりに大きい。使い切るまでやるのは疲れる筈だ。

「無理はしないで」

「大丈夫です。今日はここで泊まりですから」

 うん、今日は私、リディナとセレスの様子を見守っていた方が良さそうだ。2人が無理をしないように、何かありそうならすぐ対処出来るように。

 そういえば私はいつもその役をリディナにやって貰っていたな。今更ながらその事に気づく。
 ごめんリディナ、そういった事にいままで気づかないで。そしてありがとう。今後は私も少し色々考えるから。
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