ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

文字の大きさ
101 / 322
第22章 冒険者ではないお仕事

第192話 今日も引きこもり

しおりを挟む
「想像できない金額です。これって人が使える金額なのでしょうか……」

 セレスの言うとおりだ。私も同意とばかり頷かせて貰う。

 今は3階建てのお家の1階リビング。3人で座卓を囲んでいる。

 先程までイオラさん&シモーヌさんと事務所で契約の話し合いをしていたのだ。ただ今回はちょっと金額が大きく条件も複雑。
 だから条件記載の契約書を一度持ち帰り、3人で再検討している状態。

「条件としては妥当かな。大規模鉱山全体に対する案件だし、専用新設計のゴーレム15頭分も含んでいるしね。金額も妥当な線だと思うよ。
 ただそれでも一応図書館で最近の取り引き事例を確認してみるつもり。絶対大丈夫だと思うけれど、確認するのも相手に対する礼儀みたいなものだから」

「リディナさんがいて良かったです。こんな金額判断できません」

 うんうんまったくだ。私も大いに頷かせて貰う。

「ただ図書館で確かめる前に聞くけれど、フミノ、ゴーレム15頭を作るのは大丈夫かな? 他にも監修とか追加製作時の依頼なんかもあるけれど問題ない?」

「大丈夫」

 そこは即答できる。真っ先に確認した。この契約、居所が定まらない私でも問題ないように出来ている。

 追加製作依頼や改修時の相談等の事項についてもそうだ。たとえば連絡は商業ギルドを通して半年以内となっている。よく考えられているなと思う。

「それじゃ私は契約事例の確認をしに図書館に行ってくるね。フミノやセレスはどうする?」

「私は少し街を回ってこようと思います」

「私は此処でゴーレム製作の準備をする」

 15頭、それも私が新規に作成するゴーレムだ。じっくり取り組みたい。
 将来にわたってある程度使い続けられる余裕ある性能とか、過酷な環境でも使い続けられる耐久性とか、素人でも維持可能な整備性とか。

「わかった。それじゃお昼には帰ってくるから。行ってくるね」

「私も出掛けてきます」

 2人を送り出した後、私は作業場になっている平屋へ。
 基本にするのは採掘用ゴーレムの性能。実はまた1頭借りてきている。05君と同じタイプの新型採掘用ゴーレム、06君だ。

 移動性能等の基本性能は勿論、現状と同程度以上にする必要がある。採掘も出来るようにした方が運用上楽だろうから。
 そして実用品である以上、耐久性や整備性も考慮しなくてはならない。最低でもこの06君並みかそれ以上。

 そんな訳で各部の構造と使用素材を再確認。

 05君の時にも一度調べた。しかし新たなゴーレム製作となるとまた視点が異なってくる。性能に関わる部分だけで無く使用素材や耐久性まで再確認する必要があるから。

 こんなリバースエンジニアリングみたいな事をすると地球なら問題になるかもしれない。しかし此処はスティヴァレ、知的財産権などという概念はあまり重要視されない。だから問題はない、きっと。

 ふむふむ、やはり脚の下半分、胴の下回りは鉄ではなく黄銅を使うのが正しいようだ。ただ異なる種類の金属が接触していると錆びやすいなんて事を何処かで読んだ気がする。

 この辺は06君、どう処理しているのだろう。全体を調べる。どうやら亜鉛部分をかわりに腐食させる事で対応しているのか。なるほど、参考になる。

 勿論全く同じにする訳では無い。私なりの流儀もある。整備のために分解をしやすい構造にするとか、できるだけ部品点数を少なくするとか、それでも可動部はベアリングを必ずかませるとか。

 少しずつ構造を見直し、図を描いたりメモしたりして構想を見える形にしていく。
 重さは自在袋、それも普及品に入る程度までとか、全長は狭い坑内で転回出来るようにできる限り短くとか、足を曲げればレール用の車輪が出る仕組みは必要だろうかとか。

 難しい。でも楽しい。

 形はどうやら05君や06君とかなり変わりそうだ。バーボン君改2やWシリーズの狼型ともまた違う。
 猪型だ。体内容積を大きく取り、更に軽量化と単純化の為にくびれ等を極力無くし形状を単純化した結果こうなった。

 この国の人はこの猪の形に対して、忌避反応等が無いだろうか。私の常識がスティヴァレの一般とは異なる事はわかっている。後でリディナやセレス、更に念のためイオラさんにも聞いておこう。

 採掘性能は今までのゴーレムとほぼ同じ。収納も同等。
 歩行速度は時速7離14km位まで牽引力とバーターで可変。同じ条件なら06君の5割増し程度の出力。
 ブレーキ制御その他の牽引用ゴーレムとしての性能も専用設計だけに05君より遙かに上。

 予算的にも問題ないように考えた。たとえば使用する魔法金属は高価な魔法銀ミスリルを少なめにして、代わりに魔法銅オリハルコンを多用する。

 魔法銀ミスリルを少なめにしながら出力を上げるため、受容体の面積は大きくしている。脳にあたる部分だけで無く脊椎や胸椎上部まで延ばした状態だ。
 この大きくした部分は強度材にもなっている。だから無駄にはなっていない。

 ただ首がほとんど動かなくなった。でも目が左右についているので視界が人間より遙かに広い。だから問題は無いだろう。

 また重さは少し増えてしまいそうだ。それでも1重6kg程度で済むと思う。簡略化した部分も多いから。

 これで概念設計は出来た。厳密な設計図ではない。しかし私はこれで製作することが出来る。でもイオラさんに見て貰う為、ある程度は清書しよ……

「フミノ、いい?」

 びくっ、ちょっと驚いてすぐ気づく。大丈夫、リディナだ。

「大丈夫。何?」

「もう夕ご飯だよ」

 もうそんな時間なのか。てっきりまだ昼前くらいの気分だったのだ。
 しかし偵察魔法で見る外の風景は既に暗い。この平屋には窓がないので気づかなかったけれども。

「ごめん」

「本当はお昼ご飯の時に呼ぼうとしたんだけれどね。ちょっと声をかけられない感じだったから」

 しまった、いわゆるゾーンに入ってしまっていたようだ。ついつい夢中になるとこうなってしまう。気に入った本を読んでいるときとかも。

「出来るだけ気をつけるようにする」

「あまり気にしなくていいよ。それに本やこういった工作に夢中になるのは悪くないと思うし」

 ありがとうリディナ。でも今度から出来るだけ気をつけるから。そう思いながらとりあえず、机を概念図や筆記用具ごとそのまま収納。

 リディナに続いて平屋の外へ。3階建ての方へ移動する途中にふと思い出したので尋ねてみる。

「リディナ、この国の普通の人って猪に拒絶反応とか、ある?」
 
「特にないと思うよ。畑を荒らされる農家なんかは憎く思っているかもしれないけれど。でも何で?」

 大丈夫か、良かった。しかし明日、念の為イオラさんにも聞いておこう。

「実は……」
 
しおりを挟む
感想 132

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。