167 / 322
第31章 魔法の勉強会
第253話 教材の作成計画
しおりを挟む
勉強会が終わった。
片付けた後、5人で聖堂から歩いて帰る。
「この感じなら皆、次回も来てくれるかな」
「そうですね。お昼も美味しそうに食べていましたし」
確かに今回の勉強会は成功だったな。
そう私も思う。
参加者52人のうち45人が灯火魔法を使えるようになったし、残りの7人も灯火魔法の代わりに水を出す魔法が使えるようになった。
両方できるようになった子も5人いた。
他にはステータスを書いたカードの見方を説明し、数字の読み書きの練習もした。今日練習した数字の読み方と意味、次回まで何となくでいいから覚えていてくれればいいのだけれど。
「楽しかった」
これはレウス君だ。
レウス君は今回の勉強会の内容は全部学習済み。だから退屈になるかなと少し心配していた。
でも同じくらいの年齢の子と色々話す事が出来て楽しかったらしい。私達も一安心だ。
「私も楽しかったです。この村、こんなに子供がいたんですね。今まで知りませんでした」
サリアちゃんも同年代の女の子と話したり、勉強会でわからない部分を教えたりしていた。
おかげでサリアちゃんの周囲だけ、他より進みが良かった位だ。
「ただ次回までは同じような感じで出来るけれど、3回目からは少し難しくなるかもしれないね。簡単に覚えられる魔法がなくなるし、文字の勉強を本格的に始めるし」
「それなんですけれど、私とサリアで少し考えた事があるんです」
セレスとサリアちゃんで考えた事か。山羊さんの手伝いの時に話しあったのかな。
「何かな?」
リディナの問いかけで、セレスがサリアちゃんに目配せする。サリアちゃんから話すように、という事だろう。
「魔法の勉強で使っている、フミノさんが書いたものがありますよね。あれを魔法ごとにわけて、私やレウスでもわかるように簡単な言葉で書き換えるんです。
文字が読めれば魔法の覚え方が解る。それなら難しくても読んでわかろうとするんじゃないか。そう思うんです」
セレスがよく言ったねという感じで頷いて、後を続ける。
「ひとつの魔法に1枚ずつ、簡単な文章で説明が書いてある。そんな教材を作ろうと思うんです。
この作業は私とサリア、レウスの3人でやろうと思います。フミノさんやリディナさんは難しい言葉を無意識に使ってしまいますから。
これを使えば興味があったり適性があったりする魔法を選んで覚える事ができますし、文字を読む勉強をする気にもなる。
そう思うのですけれどどうでしょうか?」
なるほど、確かに良さそうだ。
スティヴァレ語の表記は表音文字だ。だから日常で使っている簡単な言葉で書かれた文章なら、文字から音へ変換出来れば意味を理解出来る。
「なら最初は文字の読み方だけ教えて、あとはその教材をやるようにすればいい訳だね」
「そうです。文字が読める子は先に教材を始めて貰えばいいかと思います」
よく出来た案だ。でもひとつ心配がある。サリアちゃん、レウス君、そしてセレスの仕事量だ。
「何なら私が山羊ちゃんのお仕事、手伝おうか?」
私より先にリディナがそう尋ねた。
「それなら山羊ちゃんを放牧した後の監視を御願いして良いですか? 朝一番の乳搾りや餌やり、放牧までは私達3人でやりますから」
「監視なら私がやる?」
偵察魔法はリディナより私の方が得意だ。いざとなれば任意の場所にゴーレムを出すなんて事も出来る。
「フミノには出来上がった教材の監修を御願いしたいかな。あと複写作業もね。
それにフミノが訳したあの本、魔法の他にも役に立つ知識が書いてあるって言っていたよね。その部分もスティヴァレ語に翻訳できれば教材も充実するんじゃないかな」
リディナの言うとおりだ。大事典、魔法部分以外はまだほとんど翻訳していない。
確かに薬草とか魔物の知識とか、役に立つ事が多く書いてある。あの知識を教材にして子供たちに教えれば、生活に役立つだろう。
「わかった」
多分セレスの目的は教材作りだけではない。
この作業はサリアちゃんやレウス君の勉強にもなる。更に専門の仕事が出来た事で2人、特にサリアちゃんの自己肯定感とか自信とかに結びつけるなんて事も考えているのだろう。
「まずは全属性のレベル1魔法分を、出来るだけ今週中に作ってしまおうと思っています。1日につき2枚作れれば5日で10枚は出来ますよね。そうすれば3回目の勉強会には充分間に合うと思いますから。
その時はレウスにも頑張ってもらうつもりです。もし読めなくて困っている子がいたら教えて上げて下さい」
「そうする」
なるほど、友達作りにも役に立つと。一石何鳥になるのだろう。思った以上に考えられている作戦だ。
さて、もうすぐお家というところでレウス君からこんな提案が。
「いつもより遅いから、エルマがまだかなまだかなと待っていると思う。だから皆で迎えに行こう」
確かに。いつもならお昼前に迎えに行っているのに、今日はお昼を半時間過ぎている。
「そうだね。皆で一緒に行けばエルマも喜ぶよね」
「うん!」
レウス君はエルマくんが大好きで、エルマくんもレウス君が大好きだ。
2人とも何気に相手を弟分だと思っている節がある。でも順位争いみたいな事をする訳ではない。弟分だし好きだから世話してやる。お互いそう見ているような感じだ。
そこが見ていて無茶苦茶微笑ましい。
片付けた後、5人で聖堂から歩いて帰る。
「この感じなら皆、次回も来てくれるかな」
「そうですね。お昼も美味しそうに食べていましたし」
確かに今回の勉強会は成功だったな。
そう私も思う。
参加者52人のうち45人が灯火魔法を使えるようになったし、残りの7人も灯火魔法の代わりに水を出す魔法が使えるようになった。
両方できるようになった子も5人いた。
他にはステータスを書いたカードの見方を説明し、数字の読み書きの練習もした。今日練習した数字の読み方と意味、次回まで何となくでいいから覚えていてくれればいいのだけれど。
「楽しかった」
これはレウス君だ。
レウス君は今回の勉強会の内容は全部学習済み。だから退屈になるかなと少し心配していた。
でも同じくらいの年齢の子と色々話す事が出来て楽しかったらしい。私達も一安心だ。
「私も楽しかったです。この村、こんなに子供がいたんですね。今まで知りませんでした」
サリアちゃんも同年代の女の子と話したり、勉強会でわからない部分を教えたりしていた。
おかげでサリアちゃんの周囲だけ、他より進みが良かった位だ。
「ただ次回までは同じような感じで出来るけれど、3回目からは少し難しくなるかもしれないね。簡単に覚えられる魔法がなくなるし、文字の勉強を本格的に始めるし」
「それなんですけれど、私とサリアで少し考えた事があるんです」
セレスとサリアちゃんで考えた事か。山羊さんの手伝いの時に話しあったのかな。
「何かな?」
リディナの問いかけで、セレスがサリアちゃんに目配せする。サリアちゃんから話すように、という事だろう。
「魔法の勉強で使っている、フミノさんが書いたものがありますよね。あれを魔法ごとにわけて、私やレウスでもわかるように簡単な言葉で書き換えるんです。
文字が読めれば魔法の覚え方が解る。それなら難しくても読んでわかろうとするんじゃないか。そう思うんです」
セレスがよく言ったねという感じで頷いて、後を続ける。
「ひとつの魔法に1枚ずつ、簡単な文章で説明が書いてある。そんな教材を作ろうと思うんです。
この作業は私とサリア、レウスの3人でやろうと思います。フミノさんやリディナさんは難しい言葉を無意識に使ってしまいますから。
これを使えば興味があったり適性があったりする魔法を選んで覚える事ができますし、文字を読む勉強をする気にもなる。
そう思うのですけれどどうでしょうか?」
なるほど、確かに良さそうだ。
スティヴァレ語の表記は表音文字だ。だから日常で使っている簡単な言葉で書かれた文章なら、文字から音へ変換出来れば意味を理解出来る。
「なら最初は文字の読み方だけ教えて、あとはその教材をやるようにすればいい訳だね」
「そうです。文字が読める子は先に教材を始めて貰えばいいかと思います」
よく出来た案だ。でもひとつ心配がある。サリアちゃん、レウス君、そしてセレスの仕事量だ。
「何なら私が山羊ちゃんのお仕事、手伝おうか?」
私より先にリディナがそう尋ねた。
「それなら山羊ちゃんを放牧した後の監視を御願いして良いですか? 朝一番の乳搾りや餌やり、放牧までは私達3人でやりますから」
「監視なら私がやる?」
偵察魔法はリディナより私の方が得意だ。いざとなれば任意の場所にゴーレムを出すなんて事も出来る。
「フミノには出来上がった教材の監修を御願いしたいかな。あと複写作業もね。
それにフミノが訳したあの本、魔法の他にも役に立つ知識が書いてあるって言っていたよね。その部分もスティヴァレ語に翻訳できれば教材も充実するんじゃないかな」
リディナの言うとおりだ。大事典、魔法部分以外はまだほとんど翻訳していない。
確かに薬草とか魔物の知識とか、役に立つ事が多く書いてある。あの知識を教材にして子供たちに教えれば、生活に役立つだろう。
「わかった」
多分セレスの目的は教材作りだけではない。
この作業はサリアちゃんやレウス君の勉強にもなる。更に専門の仕事が出来た事で2人、特にサリアちゃんの自己肯定感とか自信とかに結びつけるなんて事も考えているのだろう。
「まずは全属性のレベル1魔法分を、出来るだけ今週中に作ってしまおうと思っています。1日につき2枚作れれば5日で10枚は出来ますよね。そうすれば3回目の勉強会には充分間に合うと思いますから。
その時はレウスにも頑張ってもらうつもりです。もし読めなくて困っている子がいたら教えて上げて下さい」
「そうする」
なるほど、友達作りにも役に立つと。一石何鳥になるのだろう。思った以上に考えられている作戦だ。
さて、もうすぐお家というところでレウス君からこんな提案が。
「いつもより遅いから、エルマがまだかなまだかなと待っていると思う。だから皆で迎えに行こう」
確かに。いつもならお昼前に迎えに行っているのに、今日はお昼を半時間過ぎている。
「そうだね。皆で一緒に行けばエルマも喜ぶよね」
「うん!」
レウス君はエルマくんが大好きで、エルマくんもレウス君が大好きだ。
2人とも何気に相手を弟分だと思っている節がある。でも順位争いみたいな事をする訳ではない。弟分だし好きだから世話してやる。お互いそう見ているような感じだ。
そこが見ていて無茶苦茶微笑ましい。
454
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。