ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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第33章 対・竜種作戦 

おまけ(舞台裏) 迷宮攻略のおみやげ

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 しくじった、そう改めて思う。
 何がかというと魔石や魔物類についてだ。

 カラバーラ付近は温暖だ。
 トロルが住むような高く寒い山は無い。
 洞窟や迷宮ダンジョンもいまのところ発見されていない。

 こういった場所にある冒険者ギルドでトロルやコボルトの魔石を出すと、間違いなく質問される。
 何処で倒した魔物なのかを。

 勿論これは冒険者ギルドが褒賞金をケチりたいからではない。
 業務上、魔物の出没状況を把握する必要があるからだ。
 しかし私としては正直に答える訳にはいかない。
 迷宮ダンジョン攻略をしたというのは秘密なのだから。

 そんな訳で大量の魔石や魔物の死骸はギルドでお金に換えられず、そのままアイテムボックスに眠っている。

 お金に換えられない事は帰ってきた日の夜に気付いた。
 だから子供達が寝た後、リディナとセレスに話した。

「そんな訳で今回はお金にならない。ごめん」

「大丈夫ですよ。私達はお金に困っていないですから」

 セレスの言葉にリディナが頷いて、そして続ける。

「そうそう。それに本当にお金に困った時は、北部の高山地帯にあるギルドに行って提出すればいいしね。フミノならその気になれば日帰り出来るでしょ。
 それまではアイテムボックスに入れておけばいいじゃない。どうせ残り容量を気にする必要は無いんだから」

 そのとおりなのだけれど、何か申し訳ない。

「それに無事帰ってきてくれればそれで充分だからね」

 全くもって申し訳ない気になる。
 何かお土産を買ってくれば良かったかな。
 ロンバルドでテイクアウトでも探して。

 とにかくすぐに帰りたくて、ついつい一気にお家まで直行してしまったのだ。

 ただあそこで一度落ち着いて、家に帰る時間を延ばしてお土産を探してなんて私に出来ただろうか。
 間違いなく出来ない。自信を持って言える。

 なら他に何かあそこで得たものは……
 レベルアップや対人恐怖解消なんてのはあった。
 でもそれは私の個人的な事だ。

 あ、でも待てよ。
 他に入手した物は無いわけでもない。
 倒した魔物の装備だ。

 防具類は魔物の血や体液で汚れているので使わない方がいい気がする。
 でも武器は売れるかもしれない。

 コボルトやアークコボルトのボロな武器は値段がつかないだろう。しかしコボルトキングやコボルトジェネラル、コボルトナイトやアークトロルのものなら……

 これらの魔物はそこそこいい武器を持っていた。これらの武器は魔物と同様に迷宮ダンジョン内で生成するらしい。

 最初のコボルトキングの槍だけは落として曲がってしまった。でもあれだって修理すれば使えるだろう。
 他の魔物の武器は、良さそうなものについては壊れないようしっかりアイテムボックスに収納してある。

「倒した魔物が持っていた武器だけれど、冒険者ギルドで売れる?」

 そんな訳で出してみる。コボルトキングの槍が10本(うち曲がっているもの1本)、コボルトジェネラルの両手剣3本、コボルトナイトの片手剣1本、突撃槍1本、盾2個。
 
 あとはエルダーコボルトの短剣、アークトロルの斧もいいかも。この辺は大量に狩ったから在庫豊富。なのでとりあえずその一部だけ。

「どれも何か良さそうな武器だね。でもこれも冒険者ギルドに持っていったら出所を聞かれるんじゃないかな」

「そうですね。かといってカラバーラの武器屋では買取をしてくれない気がします」

 確かにそうだなと納得する。この中では安物っぽいエルダーコボルトの短剣だって金属の質がいい分高価だろう。
 でも、それならやっぱり今回の件ではただ働きという訳か。まあ依頼を受けなかったのだから仕方ないけれど。

「ところでこの槍、ちょっと試してみていい?」

 リディナが見ているのはコボルトキングの槍だ。

「勿論」

 リディナ、武器を使えるのだろうか。でもそう言えばラツィオで出会ったリディナの学校時代の友達が何か言っていたような気がする。

『剣も得意だったしやっぱり剣士系?』

 そんな感じで。
 でも手に取ったのは剣ではなく槍だ。何故だろう。

「ちょっと外で試してみるね。槍を振り回すから家の中で待っていて」 

 リディナは槍を持って出ていく。勿論偵察魔法で様子を伺う。
 
 リディナは右手を前、左手を後ろに持っていく形で槍を構えた。そして突いたりふり下ろしたり、回して持ち替えたりなんてやっている。

 私は槍の事は全くわからない。けれど何となく形になっているなというのは感じ取れる。どうやらリディナ、槍も使えるようだ。

 リディナは小さく頷くと家の方へ戻ってきた。

「この槍、なかなか使いやすいね。少し重いけれど軽く身体強化をかければ問題無いし。何ならこれ、使ってもいい?」

「勿論。でもリディナが槍を使える事を知らなかった」

「私もです」

 私が知らないならセレスも知らないだろう。

「学校時代に一通り習ったんだよ、剣も槍も盾術も。
 本当は剣の方が得意なんだけれどね。魔物相手なら間合いを取れる槍の方がいいかなと思って。
 勿論普段は魔法を使うつもりだよ。でも念の為、魔法以外もある程度使えるようにしておいた方がいいしね」

 なるほど、理解した。

「わかった。それではこの槍を整備しておく」

「フミノさん、武器も整備出来るんですか?」

 よくぞ聞いてくれたセレスさん。ならば答えてしんぜよう。

「今回迷宮ダンジョンで戦った結果、魔法のレベルが上がってスキルも強化された。金属の成分や構造の調整が可能になったから、剣や槍などの武器も問題無く作れるし整備出来る。

 多分、魔道具も作れる。ただ布類の縫製は自信無い。必要な場合は既製品なり誰かに作って貰ったのをベースにする必要がある」

「……魔物の討伐でそんな事まで出来るようになるんですね」

 セレス、それを私に言われても困る。

「私もその辺はよくわからない」

「まあ出来るようになるのはいい事だし、それでいいじゃない」

「それもそうですね」

 その通りだ。便利なら、それでいいのだ!
 今はそう思う事にする。

 ◇◇◇

 その後、リディナは1日に半時間30分程度、槍の訓練をするようになった。
 何と言うかリディナが槍を使う動き、見ていて格好いい。
 私はこういった武道系の知識はないけれど、そう感じるのだ

 ただリディナが嫌がるかもしれないので、偵察魔法でこっそり観察。
 ストーカーのようだけれど仕方ない。

 でも待てよ、私の考えている事って概ねリディナにバレているんだよな。
 ひょっとしてこうやってこっそり見ているのもバレているのだろうか。
 多分大丈夫だと思うけれど……
 大丈夫かな……
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