ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

文字の大きさ
213 / 322
拾遺録1 カイル君の冒険者な日々

俺達の決意⒁ 竜種討伐者(ドラゴン・スレイヤー)

しおりを挟む
 なるほど、国の守護たる騎士団として、アルベルト氏の言っている事は正しいし納得できる。
 それに百卒長という立場なのに、一介の新米冒険者パーティに対しここまで誠実に回答してくれた事は評価していい。
 評価していいなんて言い方は上から目線で失礼なのだろうけれど。

「仮定の話にも関わらず、真摯に答えていただいてありがとうございます」

 ヒューマも俺と同意見の様だ。

「いえ。むしろお恥ずかしい話です。断固として討伐する、そう言い切れる実力が無いというだけの話ですから。
 それと今の仮定の話はお互い、ここだけの話という事にしましょう。他に聞きつけられて面倒な事になったら大変ですから」

 これはきっと俺達の事を考えた上での発言だ。
 今の話を公開されても第四騎士団としては問題ない。
 あくまで仮定の話で、その仮定は俺達側のヒューマから振ったのだから。

 一方、振った方の俺達パーティはゴーレムを複数体運用している。
 だから今の仮定の話が広まると、『実際にはそういった事が出来るのではないか』という疑いを持たれかねない。
 疑いというか、実際に出来るだけの戦力を持っているのだけれども。

 そうなった場合、更なる疑いがかかるおそれがある訳だ。
 ただ監視だけしていた場合、迷宮ダンジョンを攻略可能だった筈なのに、自分達の利益の為に攻略しなかったとか。
 逆にリントヴルムを倒そうとして失敗した場合、わざと倒さなかったとか。

 つまり今のヒューマとアルベルト氏のやりとりは、こういう意味だったのだろう。

『こちらにはこういう方法でリントヴルムと戦う用意があるけれど、どうだろうか?』

『確実に倒せる場合で無ければ手を出さないほうがいい。こちらも今の話は聞かなかったことにする』

 こんな感じで。

 もちろんヒューマはアルベルト氏を信用できると判断した上で、話を投げたのに違いない。
 昨日外出した際に、調査に来訪しそうな魔法偵察部隊隊員について調べたなんて可能性もある。
 ヒューマならそれくらいやりかねない。

「リントヴルム級の魔物は王国騎士団であっても未だ討伐に成功していません。此処以外でも魔物狩りをして迷宮ダンジョンの力を弱め、魔物の弱体化をはかる方法が取られています。
ただ……」

 ただ、何なのだろう。
 アルベルトさんは少しためらうかのように言葉を少し止めた後、続きを口にする。

「ここからの話は一般には知らされていません。ですがもし貴方方があのリントヴルムを倒すべきだ、そんな義務感を感じているならば。
 おそらくは大丈夫だろう、そうわかって貰う為にお話いたしましょう」

 そんな意味ありげな前置きの後、軽く一呼吸して、そしてアルベルトさんは話し始める。 

「実は国内にもあのリントヴルムを倒せる方はいます。王国騎士団の者ではなく、一介の冒険者ですけれど。
 
 実は数年前、国内のある迷宮ダンジョン竜種ドラゴンが出現したのです。ただその竜種ドラゴンがスティヴァレを襲う事はありませんでした。ある冒険者が1人で倒してしまいましたから」

 竜種ドラゴンを1人で倒した?
 聞き違いではないよな。
 アルベルトさんの話は続く。

「これは一般には知られていませんが事実です。私自身がゴーレム経由の偵察魔法で、竜種ドラゴンが倒されたところを確認しましたから。

 ただその冒険者は自分が目立つ事を望みませんでした。ですから冒険者ギルドにその旨を報告する事もなく、迷宮ダンジョンを去ったのです。

 ですから知っている人は限られています。報告を上げた私と当時の騎士団の大幹部、そして国のごく一部の上層部だけです。

 その冒険者ならおそらく今回のリントヴルムでも問題なく倒すことが出来るのでしょう。ただ正直なところ頼るのは非常に申し訳ないのです。目立つ事を望まず、表舞台に出る事を避けている方ですから。

 ただ本当に危機がやってきた時は、きっと何とかしてくれるのだろう。私はそう思っています。

 ですからまあ、今回のリントヴルムの件について、貴方方が全てを背負う必要はありません。王国騎士団の一員である私がこんな事を言うのはおかしいのかもしれませんけれど」

 そんな化物みたいな冒険者がこの国にいるのか。 
 何と言うか、世の中、上を見るととんでもない。
 ただ何となく何か、思い当たる事があるようなないような……
 そう俺が思っていた時だった。

「アルベルトさん、失礼ですがかつて第六騎士団でシンプローン迷宮ダンジョンにいらっしゃった事がありますでしょうか。偵察魔法小隊の小隊長で」

 サリアが突然、よくわからない事を尋ねる。
 アルベルト氏は一瞬だけ表情を変えかけたが、すぐ先程までのごく柔和な表情に戻って口を開いた。

「ええ、その通りです。ひょっとしてこのパーティは南の方からいらっしゃったのでしょうか」

 どういう意味だろう。
 確かにカラバーラは南の方には違いないけれど。
 俺は何もわからないまま、サリアとアルベルト氏のやりとりを注視する。

「ええ。フミノさんから話は伺っています。あの時は大変世話になったと。おかげで余計な事を気にせず、気持ちよく討伐に集中できたと」

 どういう事だ、今のサリアの言葉は。
 フミノ先生とアルベルトさんとの間に接点があったと聞こえるのだけれど。
 そして今の話の流れは、もしかしたら、まさか……

「なるほど、このパーティはフミノさんの関係者なのですか。それなら納得です。ゴーレムを多数運用している事も、全員が強力な魔法使いである事も」

 今の言葉で俺にはわかった。
 アルベルト氏がフミノ先生の事を良く知っている事を。
 ゴーレムを多数運用する強力な魔法使い。
 まさにフミノ先生そのものだ。

「私達は全員、フミノ先生達の教え子です。10ヶ月ほど前に冒険者になる事を認めて頂いて、ゴーレム車とゴーレム、装備を譲り受けてこうして旅をしています」

「なるほど。それならリントヴルムの討伐もそれなりに勝算があって仰ったのでしょう。
 もしよろしければ、作戦を伺ってもよろしいでしょうか。勿論強制ではありませんし、伺った作戦についても当座は何処にも報告しません」

 サリアは頷く。

「わかりました。でもその前に、うちのパーティの方にも説明をさせて下さい。フミノさんが竜種ドラゴンを討伐した件については、この中では私しか知らない話ですから」

 確かにフミノ先生が竜種ドラゴンを討伐したなんて話は初耳だ。

 しかし実は今の会話の途中から、何となくそんな予感はしていたのだ。
 竜種ドラゴンを単独で相手にするような化物級の魔法使いなんて、そうはいないだろうから。
しおりを挟む
感想 132

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。