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3巻
3-3
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本日の夕食は肉煮込み。定番だなと思ったら少し違う。
「鹿肉が減ってきたから、今日のは羚羊肉。調理法も変えてみたよ。煮込みじゃなくて焼き煮って言うんだけれどね。味付けもかなり濃いめ。セレスの口にあわないようなら言って。他のメニューのストックもあるから」
確かに汁が少なめで色も濃い。こんな料理は過去に作っていないはず。ということはだ。
「私が出た後、料理したの?」
「帰ってくるのが遅くなりそうだと思ったから」
「ゴブリンを倒したり、盗賊を見張ったりしながら?」
「最初に来たゴブリン二匹を倒したとき、言っておいたの。『うるさいと魔物が寄ってきやすいよ。あと私の攻撃魔法は、もう一人と違ってこれしかないから、大人しくして』って。そうしたら後は静かなものよ」
完全に脅しだ。ゴブリンをすっぱりやった後にこんなことを言われたら、確かに黙るしかない。
リディナ、逞しくなったな。
「それより早く食べよ。フミノの感想も聞きたいし」
そんなわけで早速いただく。あれ、甘い。そして肉がやっぱり違う。牛肉っぽい?
「牛の肉っぽい」
「うん、羚羊は牛に似た味なんだよ。食べ比べると、少しだけ味が濃い感じかな。だから味付けは濃いめがいいの」
それで今までと違って、濃いめの甘辛味というわけか。あと、これと何か似た味を知っているような感じがする。気のせいだろうか。そうだ、すき焼きだ。調味料はかなり違う。醤油ではなく魚醤で、砂糖ではなく水飴、なおかつ香草類も入っている。しかし全体としては、間違いなくすき焼きの味だ。
見かけはすき焼きではない。一人分ずつ皿に盛ってあるし、豆腐も白滝もない。しかし舌が、これはすき焼きだと訴える。
ならばこうしてやろう。私は適当な深皿を七枚、平皿を一枚出す。深皿の一つに卵を六個入れ、平皿にご飯を軽く盛る。このご飯は共用分で、自分用は小さめの深皿一つに軽く盛って、と。
出した生卵は『生みたてすぐに自在袋に入れたので生でもOK』という触れ込みのもの。なお鶏ではなく、アヒル系の鳥の卵だ。この国ではこちらが一般的だから。大量に買ってあるので、これくらい使う分には問題ない。
「フミノ、それどうするの?」
「こうする」
深皿を一枚とり、そこに卵を割ってかき混ぜる。煮込みの味がたっぷり染みた肉をとって、生卵につけ、ご飯と一緒にいただく。美味しい。高級なすき焼きの味がする。食べたことはないけれど。
「それってフミノの国の食べ方なの?」
「よく似た料理がある。それ専用の食べ方」
まさかこんなところで本格的すき焼き……ではないけれど、似たようなものを食べるとは思わなかった。美味しい。食が進む。
「セレスも遠慮しないでどうぞ。フミノの食べ方は真似してもしなくてもいいからね。あと口にあわなかったら言ってね」
「私も食べていいんですか?」
「もちろん。お金もかかっていないしね。お肉はフミノや私が狩ったときに傷つけちゃって、高く売れないものを使っているから。遠慮しないでどうぞ」
リディナの風の刃を使うと、獲物を両断してしまう。そうなると売値が落ちてしまうので、自家消費となるわけだ。だから鹿や羚羊、オークなどの肉や皮に価値がある魔獣や魔物を討伐するときは、できるだけ私の土埋め作戦で仕留める。それでも狙えない場合もある。
結果として自家消費用のストックがたまる。おかげでこうやって食事が豊かになるわけだ。
「ありがとうございます」
セレスはそう言ってから、まずはパンをそのまま口にする。
「美味しいです。柔らかいし風味もよくて」
「ありがとう。それ、私が焼いたんだ。買うより安くできるし、材料も好みのを選べるしね。あとはおかずもどうぞ。ラルドも自由に使って」
「でも申し訳ないです。服も借りてしまっていますし、返せる当てもないですから」
「フミノは五着は同じ服を持っているはずだし。とりあえず今日は食べて、ぐっすり寝て」
「ありがとうございます」
よしよし、セレスもおかずを食べはじめた。
「この焼き煮という料理も美味しいです。初めて食べました」
「ここより北の中央山地の方、パスタライ地方の料理なんだ。あの辺は羚羊が結構出るから。羚羊が獲れたら、大きくて平たい鉄鍋でこの焼き煮を作るの。最初に脂を入れて焼いた後、香草と酒とお肉を入れて焼いて、タレを入れて、最後に野菜を入れて煮えたら完成」
「よく食べられるんですか」
「この前までは鹿肉を使っていたから、作っていなかったな。これは羚羊のお肉で作るものだから。あと丁寧に話さなくていいよ、普段の話し方で」
「わかりました」
うーむ、これが地なのだろうか。それに、やっぱり声や表情に感情が感じられない。
また、セレスの今後という心配もある。家族や頼れる親戚とかがいるかどうか。ステータス表示での年齢は十一歳。この齢では、孤児院などの保護施設に入るのは無理だろう。かといって、ちょうどいい仕事がすぐに見つかるとは限らない。
今のところは、リディナはセレスに細かいことを聞かない方針のようだ。なら、とりあえずリディナに任せよう。対人技能は私とリディナとでは天と地ほどの差があるから。
「うーん、やっぱり卵を生で食べるのって抵抗あるよね。試すかどうか迷うな」
リディナが私の食べ方を見て、そんなことを言う。それならば次の提案だ。
「こういう料理法もある」
もう一つ皿を出す。焼き煮のおかずを皿に並べるように載せて汁をかけ、上に溶き卵を回しかける。焼き煮の方から熱を通して、沸騰したら卵の表面だけさっと熱をかけて軽く固める。深皿にごはんを軽く盛り、この上に今作った卵とじを汁ごとかければ完成だ。
すき焼きの卵とじ丼、いや開化丼というべきだろうか。その辺の厳密な定義を私は知らない。ここは日本ではないから関係ないけれど。念のため試食。うん間違いない味だ。
「食べてみて。こんな感じ」
皿ごとリディナに渡す。リディナは受け取って、まずは卵部分から口に運んだ。次にご飯と一緒に。さらにはお肉やおかずの入った部分とご飯を一緒に。
「あ、これ美味しいかも。これもフミノの国の食べ方?」
「そう」
「ならやってみるね」
それならばということで深皿を追加で四皿出す。早速リディナが調理を開始。やはり私よりリディナの方が、手つきも魔法も上手だ。この辺は料理技能の差なのだろう。
リディナは作った卵とじ丼をセレスに渡した。
「試しに食べてみて。お米の料理はあまり一般的じゃないから、口にあわないかもしれない。駄目なら私が食べるし、好きならもう一個私の分を作るから。ただ無理して食べないでね。好みもあるし」
「ありがとうございます」
セレスは最初の一口をゆっくり口に運び、そしてさらに二口食べて頷く。
「美味しいです。クスクスとはまた少し違った味と食感なんですね。上のおかずとよく合います」
「味をつけないまま米をふっくらさせるのが、フミノの国のやり方なんだって。私もわりと好きだから、うちの夕食はこのお米を出すことも多いんだよ」
リディナはセレスがさらに食べるのを見て、自分用の卵とじ丼を作りはじめた。
それにしても物凄く久しぶりだ、甘い料理を食べるのは。フルーツ系とかおやつ系なら確かに甘い味のものもあった。しかしおかず系の料理ではおそらくこの世界に来て初めて。
これは何かに応用ができそうな気がする。丼系だけではない。他にも何か甘味を使えそうな気が。今すぐには思いつかない。しかし何かあったような気がする……
夕食後、リディナと私は、寝室仕様にしたゴーレム車へ移動する。
セレスには、家の下段ベッドを使うように言っておいた。本棚についても説明したところ、植物図鑑を見ながら寝るそうだ。ただセレスは文字が読めないらしい。だから絵だけ見ることになる。
彼女は灯火魔法も使えない。だからバーボン君を家に入れている。そうすれば、私がバーボン君を通して魔法を使えるから。寒い、暑い、照明を消す、照明をつけるなど、セレスの要望については、バーボン君経由で私が聞いて魔法を発動させる形だ。
さて、ゴーレム車内で横になってリディナと会議。なおリディナは秘話魔法を発動させている。
「リディナ、セレスをどう思う?」
私はセレスの感情のなさについて、聞いたつもりだった。
「今はまだわからないけれどね。悪い子じゃないとは思う。ただ文字や数字、簡単な計算は教えないとね」
これは明らかに、私の質問の意図と別の回答だ。どうにでも取れる私の質問の仕方が悪い。
もう少し考えた上で、次の質問をする。
「表情や声から感情が感じられない。大丈夫だと思う?」
「今は心配しなくていいと思うよ」
リディナからはそんなあっさりとした返答。
「どうして」
「人って環境が酷すぎて、そのままだと耐えられないときはね、考えたり感じたりする心の一部を凍らせてしまうことがあるの。全部感じたら耐えられないから。これは自分だという感覚さえ凍らせもする。自分でなければ痛くないし苦しくない。あの子も酷い目に遭ったんだろうと思う。フミノの服を着ているということはきっと、フミノがそうせざるを得ない状態だったんだろうしね」
さすがリディナだ。状況をほぼ把握している。そして心を凍らせるという意味も、私は理解できる。ここではない世界で、そうする必要があった時代を過ごしたから。
「でもそれだからこそ、私たちは心配しなくていいし、心配しても仕方ない。セレスの凍った心や実感が戻るのを待つしかない。せめて前よりはましな環境と生活でね。ゆっくりと気長に」
確かに言う通りだなと納得する。
「実際、フミノも私と会った頃は酷かったよ。あの子と状態は少し違うけれどね。フミノの場合は人に対する恐怖以外には特に何もない、生きていければいいという感じで。それでもきっとフミノとしては、あれである程度回復した状態だったんだろうと思う」
言われてみれば確かに。あの頃は生きていければいいとだけ思っていた。あと他人がとにかく怖かった。あの頃に比べれば、かなりましになっているんだな、私も。
「私もまた違うけれど、きっと酷かったんだろうと思う。ただフミノが私を助けてくれた。だから今の状態まで戻れた。実のところあの頃、フミノと出会う寸前までは、絶望と怒りだけで生きている感じだったしね。けれど怒りの対象の半分があのとき死んじゃって。そしてフミノにはどうやっても怒りようがなくて、むしろ人がよすぎて危なっかしく見えて。おかげで自分がなんとかしなきゃと思えて。時々自分の今までを思い出して、死にたくなったときもあったかな。でも私がいないとフミノが大変。そう思えばそうするわけにもいかなくて。そんなこんなで気づけば、今はこんな感じ。日々楽しんでいる状態になれたわけ」
リディナがそんな状態だったなんて、私は気づいていなかった。自分のことだけで、いっぱいいっぱいだったから。今までの間、ずっと。
「だから今のセレスについても、心配しなくていいと思う。でも一応、偵察魔法で注意しておいた方がいいかな。自分に対しての実感が戻ってくると、急に死にたくなるときがあるから。私の場合は、自分がいなくなるとフミノが大変だと思えたのが、命綱になったんだけれどね」
確かに最初の頃のリディナと今のリディナは感じが違う。うまく表現できないけれど、今の方が柔らかい雰囲気だ。
「だから私は、セレスのその点については心配していないかな。私がもし心配するとしたら、セレスではなくフミノのこと。もしセレスにとっていい形での引き取り手がない場合、きっとフミノはこのパーティにセレスを入れて、一緒にやっていこうと思うはず。違うかな?」
リディナは、私が話を持ち出す前に、そこまで考えていたようだ。おそらくは私以上に。
リディナの話は、さらに続く。
「私も今は反対じゃない。むしろ賛成。でもこの調子でやっていって、この先大丈夫かなとは思うの。私もフミノに助けてもらったんだから、そんなことを思う資格はないのかもしれないけれど。フミノって見ていると本当に人がいい。人が嫌いとか怖いとか言っているくせに、誰かが困っていると助けようとするし」
いやリディナ、それは違う。私は人がいいから助けているわけじゃない。そもそも他人を助ける、なんてことをしているわけじゃない。
「でもフミノは、とっても強いけれど冒険者でしかない。領地持ちの貴族とか大商人とかではない。だからできることには限界がある。見える範囲にも限界がある。助けたいけれど助けられない、そんなときがいつか来るかもしれない。だから今のうちに聞いておきたいの。私たちができることなんて限られている。助けられる人より助けられない人の方が遥かに多い。それでも今のまま、誰かが困っていたら助けていくの? どう思っているの?」
私は思い出す。アコチェーノにいたとき、リディナにこのままアコチェーノに留まるかどうか、考えるように言われたあの日を。
あのときに気づいたのだ。私は私がしたいようにやっていると。
私は人助けをしたいわけじゃない。私は自分がしたいようにやっているだけ。しかしどう言えば伝わるのだろう。真剣かつ必死に考えて言葉を並べて、動きにくい口に出す。
「私は他人を助けたいわけじゃない。私はリディナが思っている以上に、自分のことでいっぱいいっぱい。他人のことを考える余裕は全然ない。リディナがさっき話してくれたことだって気づかなかった」
難しい。うまく言葉にできない。でも言葉にしないと伝わらない。言葉に出さなくても分かってくれるなんて考えはただの甘え。だから必死に言葉を絞り出す。
うまく言おうなんて考えない。どうせ私の対人能力ではそんなことはできない。とにかく伝わるように。リディナには伝わってほしいから。
「私はきっと、リディナが思っている以上に自分勝手で我儘。自分のことしか考えていない。自分のことしかわからない。他人のことまでわからない。他人がどう思っているかなんて、わからない。自分ではないから、わからない」
これはついさっき感じたことだ。リディナがどう感じていたか、私は全然わかっていなかったから。
さて、ここからが本題。どう言えば伝わるだろう。わからない。でもとにかく伝えなければ。
「私がやったことで、相手が助かったかはわからない。助かったと思ったかもわからない。自分じゃないからわからない。だから私の基準は、私がそうしたいと思うか思わないか。それが全て」
「でもそれならなぜ、そうしたいと思ったのかな? 私のときだって、まだ私がフミノの手伝いをするって言う前だよね。フィリロータのときだって、デゾルバ男爵領のときだって、フミノは見返りとか全く考えてなかったよね。それとも東の国に、そんな信仰か何かがあるの? そうすれば救われるというような」
この質問なら簡単に答えられる。
「宗教は信じていない。神という存在そのものは実在する。あることがあって知っている。でも神がそうやって一人ひとりの行動を全部見て判断して、何かを決めているかどうかはわからないし、知らない。だからそれを判断基準にはできない」
さっきの質問のおかげで、次の言葉も出てくる。
「私が知っているのは自分のことだけ。自分がどうされるとどう感じるかだけ。飢えれば苦しいと思うし、怪我をすれば痛いと思う。病気になれば苦しいし、死ぬのは嫌だと思う。他人であっても、そういう状況は見たくない。見ると想像してしまう。痛いのを苦しいのを思い出してしまう。だから嫌だ。そういう状態を見たくないし感じたくない。それだけで、それ以上じゃない」
あと少し違う何かがあるような気がする。でも、うまく言えない。うまく言葉にできない。
つまり私がやっていることは他人のためじゃなくて、自分のためなのだ。そうか、このフレーズも入れておこう。その方がわかりやすい。
「だから私がやっていることは、他人のためじゃない。自分のため。自分がやりたいと思っているからやっているだけ」
これでやっと私が実際に感じていることの六割くらいだ。人に伝えるのはやっぱり難しい。
「つまりフミノは他人のためじゃなくて、自分のためにしているってことでいい?」
まさにその通りだ。頷きつつ返答する。
「そう。他人は自分じゃないからわからない。だから私が判断する自由があってした判断は、全部私がそのときそうしたいという理由で判断した。それだけ」
このことに気づかせてくれたのは、リディナだ。経緯は上手く説明できないけれども。
「でも私はおかげで助かったよ。フィリロータの村の人だって、アコチェーノのトンネルができたことだって、デゾルバ男爵領のことだって、助かった人は大勢いるし、喜んだ人も大勢いると思う。それでも単に自分のためにしたって言えるの?」
「その場の全員が、私がそうすることを望んでいるとは限らない。望んでいても、私にはわからない。だから私は、私の判断で私がしたいことをした。そういう意味ではただの傲慢。喜ばれたというのは、結果がよかっただけ」
「なら、助かったと思った人や、喜んでくれた人がいたということは、嬉しくないの?」
リディナの質問。ここはちょっと説明が必要だ。微妙な部分だから。
「もちろん喜んでくれた人が多ければ嬉しい。問題はそうでない場合だ。フィリロータでもアコチェーノでもデゾルバ男爵領でも、依頼はなく私がそうしたいからしただけ。だから結果が悪かった場合は私のせい。そうしたいと思ってやった私のせい」
「結果として、どれもよかったと思うけれど」
「そうなったのは結果論。もちろんみんなが喜んでくれて私も嬉しい。でも仮にそうならなかった場合、責任は私にある。誰かが仮にそうすることを望んでいたとしても、その誰かのせいじゃない。実際に決めて行動した私の責任。もちろん実際に全部の責任をとれるとは思わないけれど」
あ、リディナの苦笑の気配。壁代わりのテーブル板のせいで顔は見えないけれどなんとなくわかる。でもなぜ苦笑したのだろう。私にはわからない。わからないままリディナが口を開く。
「なんとなくわかったかな。今の話で」
「何が?」
「とりあえず今は、心配はしなくていいだろうってこと」
何がどうなのか、私が把握できていない中、リディナはさらに続ける。
「何はともあれ、明日は街に行って衛士に報告だね。セレスのことは明日の朝、私がセレスに聞いてみるね。これからどうするつもりか。もしよさそうな身の寄せ先がないなら、このパーティの三人目ということでいい? 二人用の部分は少し滞在して直すことにして」
何を心配しなくていいのか、今の話がなぜその辺に繋がるのか。私にはわからない。
でも結論は間違いなく妥当だろう。だから私は頷く。いや頷いても、この状態ではリディナに見えないな。きちんと声で返事をしよう。
「わかった。私もそれでいいと思う」
「わかった。それじゃ今日はおやすみなさい」
「おやすみなさい」
リディナは灯火魔法を解除、ゴーレム車の中は暗くなった。今ひとつわからないけれど、とりあえず問題はないようだ。私はそう思って、それまで頭の片隅でぼんやり確認していたセレスの方を改めて意識する。
セレスはまだ植物図鑑を手にしている。本が気に入ったようで、一枚一枚の絵をじっくり見ながら。
ならセレスが寝るまで、私は討伐でもするとしよう。バーボン君を通したセレスの確認、このあたり一帯の監視、そして魔物・魔獣討伐。視界三つを操るのも、今の私には難しくない。
この付近はある程度リディナが退治したようで、魔物の気配は感じない。そして雨期だけれど雨が降っていないので、スライムもいない。もう少し範囲を広げてみる。いたいた。一匹小銀貨三枚毎度お馴染み安物が。早速小遣い稼ぎをさせてもらうとしよう。
いつも思うのだけれど、リディナは朝に強い。そして私は朝に弱い自覚がある。だから最近は、偵察魔法で日の出を感じると自動的に目覚めるよう、魔法を組んでいる。
起きて思考がある程度動きはじめたら、状態異常解除の魔法を発動。この世界の魔法では、睡眠も状態異常の一種とみなされている。だから状態異常解除の魔法で、睡魔はある程度飛ばせる。
ついでに言っておくと、状態異常解除の魔法で解除可能なのは、睡眠や毒などの一時的に陥ったものだけ。私の対人恐怖症のような、慢性的状態異常は解除不能だ。
概ね半時間後、やっと私の思考回路が動き出す。ここから髪を整えたり顔を洗ったり服を着替えたりと、朝の支度に半時間程度。つまり日の出から約一時間後、やっと私はリディナの前に出られる状態になる。
既にこの頃には、リディナは朝食を作り終えている。何時に起きているのだろう。朝食のために夜中から起きているとすれば、申し訳ない。そう思ったから、一度調べてみた。偵察魔法のトリガーを、リディナの起床にあわせただけだけれども。
なんということはなかった。日の出の時間、つまり私と同じだった。ただ起きてから動けるようになるまでが、私より遥かに早いだけ。
なんてことをぼーっと考えながら、自分に状態異常解除レベル2の魔法をかける。
そうだ、そういえば今日はセレスも一緒だった。どうしているだろう。バーボン君の感覚を使って確認した。セレスはすでに起きて、リディナと何か話をしながら、家で朝食を作っている。
出遅れたな。いつものことか。櫛で髪を整え、濡らした布で顔を拭く。窓と戸を全開にして中の空気を入れ替え、マットと布団を収納してゴーレム車を座席状態に転換する。ついでにさっと掃除をしてと。ゴーレム車の外に出て、そして家の扉をノックする。
「おはよう。どうぞ」
その声で私は中へと入る。
第二話 三人目の仲間と
「朝食は移動しながら食べよう。その方が時間を節約できるから。盗賊どもの声を聞きながら朝食ってのも、趣がないしね」
そんなリディナの提案で、朝食はゴーレム車で。メニューは概ねいつもと同じでパン、サラダ、ロースト鹿肉、豆のスープ、チーズ、ラルド。スープがこぼれる心配はない。ゴーレム車はゆっくりだし、サスペンション完備。スープ用の皿も、ゴーレム車で食べるときは深いものを使っている。
「でもフミノさん。リディナさんが一緒に冒険者をやろうと誘ってくれたのですけれど、いいのでしょうか。私はなんの技能も持っていません。力も弱いですし、文字の読み書きもできません。当然魔法も使えませんし、役に立てることはないと思うのですけれど」
セレスの自己評価は、随分と低いようだ。
「何か冒険者の他に、やりたいことがある? あるなら考える」
「力もないですし、あてにできる知り合いもいません。娼館に身売りするくらいしかできないです」
うーん、何か思い出すな。
「誰かから似たようなことを以前聞いた。次の仕事を見つけないと、一週間後には売春街行き。だから雇ってくれって」
「私だけれどね、それって」
リディナも覚えていたか。
「それで、フミノはどう思う」
「問題ない。才能もある。少し訓練すれば私より魔法を使えるはず」
これは本当だ。ステータスを見たから間違いない。
氏名:セレス 11歳 女性
生命力:88 魔力:40 腕力:22 持久力:28 器用さ:50 素早さ:48 知力:43
職業:無職 装備武器:なし 攻撃力:12 装備防具:なし 防御力:8
使用可能魔法系統:地1/水3/火1/風1/空1
使用可能魔法:なし
スキル:自然言語理解(1)
状態異常:衰弱(1)/栄養失調(1)/気力減退(3)
称号など:無能/無力な人形/市場マスター
一見酷い数値に見えるかもしれない。しかし今は状態異常で、本来の数値からかなり下がっているはずだ。しかも年齢は私やリディナより四歳下。毎日まともなものを食べて運動すれば、この状態異常は消える。そうすれば、ステータスも上がるに違いない。さらに魔力が40もある。出会ったときのリディナより高い値だ。そして水属性に3の適性がある。鍛えれば、すぐに攻撃魔法を覚えるだろう。一ヶ月もあれば十分戦力になりそうだ。
ところで市場マスターとは、どういう称号なのだろうか。よくわからない。
「慰めはいいです。何もできないって昔から言われていましたから」
いや違う。
「私もリディナも、他人の能力を見ることができる。だからセレスがどんな能力を持っているか、診断が可能。確かに即戦力にはならない。でも一ヶ月あれば、その辺の冒険者より強くなれる」
「本当だよ。私にもそう見えているから」
ここからはリディナに任せよう。食べながら会話を考えながらでは、バーボン君の操縦がおろそかになる。街も近づいてきたし、できれば操縦に専念したい。
「鹿肉が減ってきたから、今日のは羚羊肉。調理法も変えてみたよ。煮込みじゃなくて焼き煮って言うんだけれどね。味付けもかなり濃いめ。セレスの口にあわないようなら言って。他のメニューのストックもあるから」
確かに汁が少なめで色も濃い。こんな料理は過去に作っていないはず。ということはだ。
「私が出た後、料理したの?」
「帰ってくるのが遅くなりそうだと思ったから」
「ゴブリンを倒したり、盗賊を見張ったりしながら?」
「最初に来たゴブリン二匹を倒したとき、言っておいたの。『うるさいと魔物が寄ってきやすいよ。あと私の攻撃魔法は、もう一人と違ってこれしかないから、大人しくして』って。そうしたら後は静かなものよ」
完全に脅しだ。ゴブリンをすっぱりやった後にこんなことを言われたら、確かに黙るしかない。
リディナ、逞しくなったな。
「それより早く食べよ。フミノの感想も聞きたいし」
そんなわけで早速いただく。あれ、甘い。そして肉がやっぱり違う。牛肉っぽい?
「牛の肉っぽい」
「うん、羚羊は牛に似た味なんだよ。食べ比べると、少しだけ味が濃い感じかな。だから味付けは濃いめがいいの」
それで今までと違って、濃いめの甘辛味というわけか。あと、これと何か似た味を知っているような感じがする。気のせいだろうか。そうだ、すき焼きだ。調味料はかなり違う。醤油ではなく魚醤で、砂糖ではなく水飴、なおかつ香草類も入っている。しかし全体としては、間違いなくすき焼きの味だ。
見かけはすき焼きではない。一人分ずつ皿に盛ってあるし、豆腐も白滝もない。しかし舌が、これはすき焼きだと訴える。
ならばこうしてやろう。私は適当な深皿を七枚、平皿を一枚出す。深皿の一つに卵を六個入れ、平皿にご飯を軽く盛る。このご飯は共用分で、自分用は小さめの深皿一つに軽く盛って、と。
出した生卵は『生みたてすぐに自在袋に入れたので生でもOK』という触れ込みのもの。なお鶏ではなく、アヒル系の鳥の卵だ。この国ではこちらが一般的だから。大量に買ってあるので、これくらい使う分には問題ない。
「フミノ、それどうするの?」
「こうする」
深皿を一枚とり、そこに卵を割ってかき混ぜる。煮込みの味がたっぷり染みた肉をとって、生卵につけ、ご飯と一緒にいただく。美味しい。高級なすき焼きの味がする。食べたことはないけれど。
「それってフミノの国の食べ方なの?」
「よく似た料理がある。それ専用の食べ方」
まさかこんなところで本格的すき焼き……ではないけれど、似たようなものを食べるとは思わなかった。美味しい。食が進む。
「セレスも遠慮しないでどうぞ。フミノの食べ方は真似してもしなくてもいいからね。あと口にあわなかったら言ってね」
「私も食べていいんですか?」
「もちろん。お金もかかっていないしね。お肉はフミノや私が狩ったときに傷つけちゃって、高く売れないものを使っているから。遠慮しないでどうぞ」
リディナの風の刃を使うと、獲物を両断してしまう。そうなると売値が落ちてしまうので、自家消費となるわけだ。だから鹿や羚羊、オークなどの肉や皮に価値がある魔獣や魔物を討伐するときは、できるだけ私の土埋め作戦で仕留める。それでも狙えない場合もある。
結果として自家消費用のストックがたまる。おかげでこうやって食事が豊かになるわけだ。
「ありがとうございます」
セレスはそう言ってから、まずはパンをそのまま口にする。
「美味しいです。柔らかいし風味もよくて」
「ありがとう。それ、私が焼いたんだ。買うより安くできるし、材料も好みのを選べるしね。あとはおかずもどうぞ。ラルドも自由に使って」
「でも申し訳ないです。服も借りてしまっていますし、返せる当てもないですから」
「フミノは五着は同じ服を持っているはずだし。とりあえず今日は食べて、ぐっすり寝て」
「ありがとうございます」
よしよし、セレスもおかずを食べはじめた。
「この焼き煮という料理も美味しいです。初めて食べました」
「ここより北の中央山地の方、パスタライ地方の料理なんだ。あの辺は羚羊が結構出るから。羚羊が獲れたら、大きくて平たい鉄鍋でこの焼き煮を作るの。最初に脂を入れて焼いた後、香草と酒とお肉を入れて焼いて、タレを入れて、最後に野菜を入れて煮えたら完成」
「よく食べられるんですか」
「この前までは鹿肉を使っていたから、作っていなかったな。これは羚羊のお肉で作るものだから。あと丁寧に話さなくていいよ、普段の話し方で」
「わかりました」
うーむ、これが地なのだろうか。それに、やっぱり声や表情に感情が感じられない。
また、セレスの今後という心配もある。家族や頼れる親戚とかがいるかどうか。ステータス表示での年齢は十一歳。この齢では、孤児院などの保護施設に入るのは無理だろう。かといって、ちょうどいい仕事がすぐに見つかるとは限らない。
今のところは、リディナはセレスに細かいことを聞かない方針のようだ。なら、とりあえずリディナに任せよう。対人技能は私とリディナとでは天と地ほどの差があるから。
「うーん、やっぱり卵を生で食べるのって抵抗あるよね。試すかどうか迷うな」
リディナが私の食べ方を見て、そんなことを言う。それならば次の提案だ。
「こういう料理法もある」
もう一つ皿を出す。焼き煮のおかずを皿に並べるように載せて汁をかけ、上に溶き卵を回しかける。焼き煮の方から熱を通して、沸騰したら卵の表面だけさっと熱をかけて軽く固める。深皿にごはんを軽く盛り、この上に今作った卵とじを汁ごとかければ完成だ。
すき焼きの卵とじ丼、いや開化丼というべきだろうか。その辺の厳密な定義を私は知らない。ここは日本ではないから関係ないけれど。念のため試食。うん間違いない味だ。
「食べてみて。こんな感じ」
皿ごとリディナに渡す。リディナは受け取って、まずは卵部分から口に運んだ。次にご飯と一緒に。さらにはお肉やおかずの入った部分とご飯を一緒に。
「あ、これ美味しいかも。これもフミノの国の食べ方?」
「そう」
「ならやってみるね」
それならばということで深皿を追加で四皿出す。早速リディナが調理を開始。やはり私よりリディナの方が、手つきも魔法も上手だ。この辺は料理技能の差なのだろう。
リディナは作った卵とじ丼をセレスに渡した。
「試しに食べてみて。お米の料理はあまり一般的じゃないから、口にあわないかもしれない。駄目なら私が食べるし、好きならもう一個私の分を作るから。ただ無理して食べないでね。好みもあるし」
「ありがとうございます」
セレスは最初の一口をゆっくり口に運び、そしてさらに二口食べて頷く。
「美味しいです。クスクスとはまた少し違った味と食感なんですね。上のおかずとよく合います」
「味をつけないまま米をふっくらさせるのが、フミノの国のやり方なんだって。私もわりと好きだから、うちの夕食はこのお米を出すことも多いんだよ」
リディナはセレスがさらに食べるのを見て、自分用の卵とじ丼を作りはじめた。
それにしても物凄く久しぶりだ、甘い料理を食べるのは。フルーツ系とかおやつ系なら確かに甘い味のものもあった。しかしおかず系の料理ではおそらくこの世界に来て初めて。
これは何かに応用ができそうな気がする。丼系だけではない。他にも何か甘味を使えそうな気が。今すぐには思いつかない。しかし何かあったような気がする……
夕食後、リディナと私は、寝室仕様にしたゴーレム車へ移動する。
セレスには、家の下段ベッドを使うように言っておいた。本棚についても説明したところ、植物図鑑を見ながら寝るそうだ。ただセレスは文字が読めないらしい。だから絵だけ見ることになる。
彼女は灯火魔法も使えない。だからバーボン君を家に入れている。そうすれば、私がバーボン君を通して魔法を使えるから。寒い、暑い、照明を消す、照明をつけるなど、セレスの要望については、バーボン君経由で私が聞いて魔法を発動させる形だ。
さて、ゴーレム車内で横になってリディナと会議。なおリディナは秘話魔法を発動させている。
「リディナ、セレスをどう思う?」
私はセレスの感情のなさについて、聞いたつもりだった。
「今はまだわからないけれどね。悪い子じゃないとは思う。ただ文字や数字、簡単な計算は教えないとね」
これは明らかに、私の質問の意図と別の回答だ。どうにでも取れる私の質問の仕方が悪い。
もう少し考えた上で、次の質問をする。
「表情や声から感情が感じられない。大丈夫だと思う?」
「今は心配しなくていいと思うよ」
リディナからはそんなあっさりとした返答。
「どうして」
「人って環境が酷すぎて、そのままだと耐えられないときはね、考えたり感じたりする心の一部を凍らせてしまうことがあるの。全部感じたら耐えられないから。これは自分だという感覚さえ凍らせもする。自分でなければ痛くないし苦しくない。あの子も酷い目に遭ったんだろうと思う。フミノの服を着ているということはきっと、フミノがそうせざるを得ない状態だったんだろうしね」
さすがリディナだ。状況をほぼ把握している。そして心を凍らせるという意味も、私は理解できる。ここではない世界で、そうする必要があった時代を過ごしたから。
「でもそれだからこそ、私たちは心配しなくていいし、心配しても仕方ない。セレスの凍った心や実感が戻るのを待つしかない。せめて前よりはましな環境と生活でね。ゆっくりと気長に」
確かに言う通りだなと納得する。
「実際、フミノも私と会った頃は酷かったよ。あの子と状態は少し違うけれどね。フミノの場合は人に対する恐怖以外には特に何もない、生きていければいいという感じで。それでもきっとフミノとしては、あれである程度回復した状態だったんだろうと思う」
言われてみれば確かに。あの頃は生きていければいいとだけ思っていた。あと他人がとにかく怖かった。あの頃に比べれば、かなりましになっているんだな、私も。
「私もまた違うけれど、きっと酷かったんだろうと思う。ただフミノが私を助けてくれた。だから今の状態まで戻れた。実のところあの頃、フミノと出会う寸前までは、絶望と怒りだけで生きている感じだったしね。けれど怒りの対象の半分があのとき死んじゃって。そしてフミノにはどうやっても怒りようがなくて、むしろ人がよすぎて危なっかしく見えて。おかげで自分がなんとかしなきゃと思えて。時々自分の今までを思い出して、死にたくなったときもあったかな。でも私がいないとフミノが大変。そう思えばそうするわけにもいかなくて。そんなこんなで気づけば、今はこんな感じ。日々楽しんでいる状態になれたわけ」
リディナがそんな状態だったなんて、私は気づいていなかった。自分のことだけで、いっぱいいっぱいだったから。今までの間、ずっと。
「だから今のセレスについても、心配しなくていいと思う。でも一応、偵察魔法で注意しておいた方がいいかな。自分に対しての実感が戻ってくると、急に死にたくなるときがあるから。私の場合は、自分がいなくなるとフミノが大変だと思えたのが、命綱になったんだけれどね」
確かに最初の頃のリディナと今のリディナは感じが違う。うまく表現できないけれど、今の方が柔らかい雰囲気だ。
「だから私は、セレスのその点については心配していないかな。私がもし心配するとしたら、セレスではなくフミノのこと。もしセレスにとっていい形での引き取り手がない場合、きっとフミノはこのパーティにセレスを入れて、一緒にやっていこうと思うはず。違うかな?」
リディナは、私が話を持ち出す前に、そこまで考えていたようだ。おそらくは私以上に。
リディナの話は、さらに続く。
「私も今は反対じゃない。むしろ賛成。でもこの調子でやっていって、この先大丈夫かなとは思うの。私もフミノに助けてもらったんだから、そんなことを思う資格はないのかもしれないけれど。フミノって見ていると本当に人がいい。人が嫌いとか怖いとか言っているくせに、誰かが困っていると助けようとするし」
いやリディナ、それは違う。私は人がいいから助けているわけじゃない。そもそも他人を助ける、なんてことをしているわけじゃない。
「でもフミノは、とっても強いけれど冒険者でしかない。領地持ちの貴族とか大商人とかではない。だからできることには限界がある。見える範囲にも限界がある。助けたいけれど助けられない、そんなときがいつか来るかもしれない。だから今のうちに聞いておきたいの。私たちができることなんて限られている。助けられる人より助けられない人の方が遥かに多い。それでも今のまま、誰かが困っていたら助けていくの? どう思っているの?」
私は思い出す。アコチェーノにいたとき、リディナにこのままアコチェーノに留まるかどうか、考えるように言われたあの日を。
あのときに気づいたのだ。私は私がしたいようにやっていると。
私は人助けをしたいわけじゃない。私は自分がしたいようにやっているだけ。しかしどう言えば伝わるのだろう。真剣かつ必死に考えて言葉を並べて、動きにくい口に出す。
「私は他人を助けたいわけじゃない。私はリディナが思っている以上に、自分のことでいっぱいいっぱい。他人のことを考える余裕は全然ない。リディナがさっき話してくれたことだって気づかなかった」
難しい。うまく言葉にできない。でも言葉にしないと伝わらない。言葉に出さなくても分かってくれるなんて考えはただの甘え。だから必死に言葉を絞り出す。
うまく言おうなんて考えない。どうせ私の対人能力ではそんなことはできない。とにかく伝わるように。リディナには伝わってほしいから。
「私はきっと、リディナが思っている以上に自分勝手で我儘。自分のことしか考えていない。自分のことしかわからない。他人のことまでわからない。他人がどう思っているかなんて、わからない。自分ではないから、わからない」
これはついさっき感じたことだ。リディナがどう感じていたか、私は全然わかっていなかったから。
さて、ここからが本題。どう言えば伝わるだろう。わからない。でもとにかく伝えなければ。
「私がやったことで、相手が助かったかはわからない。助かったと思ったかもわからない。自分じゃないからわからない。だから私の基準は、私がそうしたいと思うか思わないか。それが全て」
「でもそれならなぜ、そうしたいと思ったのかな? 私のときだって、まだ私がフミノの手伝いをするって言う前だよね。フィリロータのときだって、デゾルバ男爵領のときだって、フミノは見返りとか全く考えてなかったよね。それとも東の国に、そんな信仰か何かがあるの? そうすれば救われるというような」
この質問なら簡単に答えられる。
「宗教は信じていない。神という存在そのものは実在する。あることがあって知っている。でも神がそうやって一人ひとりの行動を全部見て判断して、何かを決めているかどうかはわからないし、知らない。だからそれを判断基準にはできない」
さっきの質問のおかげで、次の言葉も出てくる。
「私が知っているのは自分のことだけ。自分がどうされるとどう感じるかだけ。飢えれば苦しいと思うし、怪我をすれば痛いと思う。病気になれば苦しいし、死ぬのは嫌だと思う。他人であっても、そういう状況は見たくない。見ると想像してしまう。痛いのを苦しいのを思い出してしまう。だから嫌だ。そういう状態を見たくないし感じたくない。それだけで、それ以上じゃない」
あと少し違う何かがあるような気がする。でも、うまく言えない。うまく言葉にできない。
つまり私がやっていることは他人のためじゃなくて、自分のためなのだ。そうか、このフレーズも入れておこう。その方がわかりやすい。
「だから私がやっていることは、他人のためじゃない。自分のため。自分がやりたいと思っているからやっているだけ」
これでやっと私が実際に感じていることの六割くらいだ。人に伝えるのはやっぱり難しい。
「つまりフミノは他人のためじゃなくて、自分のためにしているってことでいい?」
まさにその通りだ。頷きつつ返答する。
「そう。他人は自分じゃないからわからない。だから私が判断する自由があってした判断は、全部私がそのときそうしたいという理由で判断した。それだけ」
このことに気づかせてくれたのは、リディナだ。経緯は上手く説明できないけれども。
「でも私はおかげで助かったよ。フィリロータの村の人だって、アコチェーノのトンネルができたことだって、デゾルバ男爵領のことだって、助かった人は大勢いるし、喜んだ人も大勢いると思う。それでも単に自分のためにしたって言えるの?」
「その場の全員が、私がそうすることを望んでいるとは限らない。望んでいても、私にはわからない。だから私は、私の判断で私がしたいことをした。そういう意味ではただの傲慢。喜ばれたというのは、結果がよかっただけ」
「なら、助かったと思った人や、喜んでくれた人がいたということは、嬉しくないの?」
リディナの質問。ここはちょっと説明が必要だ。微妙な部分だから。
「もちろん喜んでくれた人が多ければ嬉しい。問題はそうでない場合だ。フィリロータでもアコチェーノでもデゾルバ男爵領でも、依頼はなく私がそうしたいからしただけ。だから結果が悪かった場合は私のせい。そうしたいと思ってやった私のせい」
「結果として、どれもよかったと思うけれど」
「そうなったのは結果論。もちろんみんなが喜んでくれて私も嬉しい。でも仮にそうならなかった場合、責任は私にある。誰かが仮にそうすることを望んでいたとしても、その誰かのせいじゃない。実際に決めて行動した私の責任。もちろん実際に全部の責任をとれるとは思わないけれど」
あ、リディナの苦笑の気配。壁代わりのテーブル板のせいで顔は見えないけれどなんとなくわかる。でもなぜ苦笑したのだろう。私にはわからない。わからないままリディナが口を開く。
「なんとなくわかったかな。今の話で」
「何が?」
「とりあえず今は、心配はしなくていいだろうってこと」
何がどうなのか、私が把握できていない中、リディナはさらに続ける。
「何はともあれ、明日は街に行って衛士に報告だね。セレスのことは明日の朝、私がセレスに聞いてみるね。これからどうするつもりか。もしよさそうな身の寄せ先がないなら、このパーティの三人目ということでいい? 二人用の部分は少し滞在して直すことにして」
何を心配しなくていいのか、今の話がなぜその辺に繋がるのか。私にはわからない。
でも結論は間違いなく妥当だろう。だから私は頷く。いや頷いても、この状態ではリディナに見えないな。きちんと声で返事をしよう。
「わかった。私もそれでいいと思う」
「わかった。それじゃ今日はおやすみなさい」
「おやすみなさい」
リディナは灯火魔法を解除、ゴーレム車の中は暗くなった。今ひとつわからないけれど、とりあえず問題はないようだ。私はそう思って、それまで頭の片隅でぼんやり確認していたセレスの方を改めて意識する。
セレスはまだ植物図鑑を手にしている。本が気に入ったようで、一枚一枚の絵をじっくり見ながら。
ならセレスが寝るまで、私は討伐でもするとしよう。バーボン君を通したセレスの確認、このあたり一帯の監視、そして魔物・魔獣討伐。視界三つを操るのも、今の私には難しくない。
この付近はある程度リディナが退治したようで、魔物の気配は感じない。そして雨期だけれど雨が降っていないので、スライムもいない。もう少し範囲を広げてみる。いたいた。一匹小銀貨三枚毎度お馴染み安物が。早速小遣い稼ぎをさせてもらうとしよう。
いつも思うのだけれど、リディナは朝に強い。そして私は朝に弱い自覚がある。だから最近は、偵察魔法で日の出を感じると自動的に目覚めるよう、魔法を組んでいる。
起きて思考がある程度動きはじめたら、状態異常解除の魔法を発動。この世界の魔法では、睡眠も状態異常の一種とみなされている。だから状態異常解除の魔法で、睡魔はある程度飛ばせる。
ついでに言っておくと、状態異常解除の魔法で解除可能なのは、睡眠や毒などの一時的に陥ったものだけ。私の対人恐怖症のような、慢性的状態異常は解除不能だ。
概ね半時間後、やっと私の思考回路が動き出す。ここから髪を整えたり顔を洗ったり服を着替えたりと、朝の支度に半時間程度。つまり日の出から約一時間後、やっと私はリディナの前に出られる状態になる。
既にこの頃には、リディナは朝食を作り終えている。何時に起きているのだろう。朝食のために夜中から起きているとすれば、申し訳ない。そう思ったから、一度調べてみた。偵察魔法のトリガーを、リディナの起床にあわせただけだけれども。
なんということはなかった。日の出の時間、つまり私と同じだった。ただ起きてから動けるようになるまでが、私より遥かに早いだけ。
なんてことをぼーっと考えながら、自分に状態異常解除レベル2の魔法をかける。
そうだ、そういえば今日はセレスも一緒だった。どうしているだろう。バーボン君の感覚を使って確認した。セレスはすでに起きて、リディナと何か話をしながら、家で朝食を作っている。
出遅れたな。いつものことか。櫛で髪を整え、濡らした布で顔を拭く。窓と戸を全開にして中の空気を入れ替え、マットと布団を収納してゴーレム車を座席状態に転換する。ついでにさっと掃除をしてと。ゴーレム車の外に出て、そして家の扉をノックする。
「おはよう。どうぞ」
その声で私は中へと入る。
第二話 三人目の仲間と
「朝食は移動しながら食べよう。その方が時間を節約できるから。盗賊どもの声を聞きながら朝食ってのも、趣がないしね」
そんなリディナの提案で、朝食はゴーレム車で。メニューは概ねいつもと同じでパン、サラダ、ロースト鹿肉、豆のスープ、チーズ、ラルド。スープがこぼれる心配はない。ゴーレム車はゆっくりだし、サスペンション完備。スープ用の皿も、ゴーレム車で食べるときは深いものを使っている。
「でもフミノさん。リディナさんが一緒に冒険者をやろうと誘ってくれたのですけれど、いいのでしょうか。私はなんの技能も持っていません。力も弱いですし、文字の読み書きもできません。当然魔法も使えませんし、役に立てることはないと思うのですけれど」
セレスの自己評価は、随分と低いようだ。
「何か冒険者の他に、やりたいことがある? あるなら考える」
「力もないですし、あてにできる知り合いもいません。娼館に身売りするくらいしかできないです」
うーん、何か思い出すな。
「誰かから似たようなことを以前聞いた。次の仕事を見つけないと、一週間後には売春街行き。だから雇ってくれって」
「私だけれどね、それって」
リディナも覚えていたか。
「それで、フミノはどう思う」
「問題ない。才能もある。少し訓練すれば私より魔法を使えるはず」
これは本当だ。ステータスを見たから間違いない。
氏名:セレス 11歳 女性
生命力:88 魔力:40 腕力:22 持久力:28 器用さ:50 素早さ:48 知力:43
職業:無職 装備武器:なし 攻撃力:12 装備防具:なし 防御力:8
使用可能魔法系統:地1/水3/火1/風1/空1
使用可能魔法:なし
スキル:自然言語理解(1)
状態異常:衰弱(1)/栄養失調(1)/気力減退(3)
称号など:無能/無力な人形/市場マスター
一見酷い数値に見えるかもしれない。しかし今は状態異常で、本来の数値からかなり下がっているはずだ。しかも年齢は私やリディナより四歳下。毎日まともなものを食べて運動すれば、この状態異常は消える。そうすれば、ステータスも上がるに違いない。さらに魔力が40もある。出会ったときのリディナより高い値だ。そして水属性に3の適性がある。鍛えれば、すぐに攻撃魔法を覚えるだろう。一ヶ月もあれば十分戦力になりそうだ。
ところで市場マスターとは、どういう称号なのだろうか。よくわからない。
「慰めはいいです。何もできないって昔から言われていましたから」
いや違う。
「私もリディナも、他人の能力を見ることができる。だからセレスがどんな能力を持っているか、診断が可能。確かに即戦力にはならない。でも一ヶ月あれば、その辺の冒険者より強くなれる」
「本当だよ。私にもそう見えているから」
ここからはリディナに任せよう。食べながら会話を考えながらでは、バーボン君の操縦がおろそかになる。街も近づいてきたし、できれば操縦に専念したい。
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