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拾遺録6 俺達の決断
12 思わぬ戦闘
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イレーネが何について考え込んでいたのか。
この件については、帰りのゴーレム車で知った。
「結局、テモリやカタサーロで孤児院や学校に似た活動をしているのは、領政がそこまで行き届いていないからですよね」
ぽつりと漏らした、そんな言葉で。
「領主家が何もかも知って手当てするというのは、実際には難しいだろう。伯爵領クラスでも、孤児院や救護院はセドナ教会任せのところがほとんどだしさ。領立の学校については、侯爵領クラスでも無い方が普通だ」
かなり領民の方を見た領政を行っているスリワラ領でも、実際には孤児全員を拾い上げるのは不可能だ。
「理想論は幾らだって言える。ただ実際には、どんな政策を実施するにも金と人が必要だ。そこまで余裕がある領主家なんて、少なくともこの国には無いんじゃないかと思う。ほとんどの領主家と領地は、目先の事を何とかするのでやっとだろう」
これは全国をあちこち回って感じた事だ。
俺達が育ったスリワラ領は、実はかなり恵まれていた。
新規の領地という事で0から政策を実施できたし、国王陛下からの支度金で一気に整えるべきところを整えることが出来た。
他の南部各領は、道路や港の整備がやっとというところが多い。
衛士や領騎士団の整備も充分ではなく、魔物が頻繁に出現したり、領内の治安が今ひとつだったり。
かといって南部よりは歴史が古い東海岸がましかというと、そんな事はない。
西海岸や北部に比べて人口が少なく産業も発達していないことから、税収が少ない。
必然的に領地にかけられる金も少なくなる訳だ。
そして西海岸や北部は歴史があること、人口が多いことがネックになる。
あれこれ既得権が出来ていて、何をするにも抵抗勢力となる。
金持ちもいるがそれ以上に貧民も集まってきて、福祉政策はやるそばからパンクする状態だ。
「インフラの整備も福祉施策も、少し手をつけるだけで大金がかかる。領主家が節約して浮いた程度の金じゃ、たいしたことは出来ない。しかもやればやるほど、新たな要望が出てくるし文句も出てくる。
貧困民対策なんかはむしろ下手に手を出さないほうがいいって論理もあるくらいだ。金を食うばかりで感謝されない。充実させてもすぐに慣れて文句が出まくる。おまけに充実した福祉施策目当てに他からも貧困民が押し寄せてくる。あまり金をかけると普通に税金を払っている一般住民から文句が出る。
俺達みたいに自由勝手な立場で、孤児院だの勉強会だのをやるのは難しくない。ただ領主家として領の施策として行う分には、難しいな」
そこまで言ったところで、俺の偵察魔法が知っている魔力の反応を捉えた。
「ヒューマが来ている。一度止まるぞ」
今は朝10の鐘少し前、場所はバーリの街を通り過ぎたところだ。
テモリまで、残り100離ちょっと。
通常の要件で此処まで出てくる事は、普通なら無い。
何か特殊な商品の買い付けにでも出ているのだろうか。
そう思いつつ、俺は高速移動魔法を解除して、ゴーレム車を道の端に寄せて停める。
ヒューマが出現した。
「ちょっと洒落にならない襲撃を受けてましてね。カイルだけ、大急ぎで拠点に戻って欲しいんですよ」
えっ!?
口調はいつもの調子だが、内容がおかしい。
「襲撃が百人単位で来ても、サリアがいれば問題ないだろ」
「普通ならそうなんですけれどね。魔法が効かない剣士5人が攻めてきたんですよ。何とか応戦していますけれど、少し厳しい状態です。僕じゃ戦力にならないんで、何とか出来そうなカイルを呼びに来たって訳です」
「わかった。ゴーレム車と2人を頼む」
俺はゴーレム車から降りる。
此処で細かい状況を聞くより、少しでも早く向かったほうがいい。
「ええ。急いでお願いします」
俺一人なら、超高速移動魔法を連続で使える。
更に身体強化をかけて全力で走れば、100離なら3半時間で移動可能だ。
俺は、全力で移動を開始する。
◇◇◇
残り10離で、拠点が偵察魔法の視界に入った。
間違いない。拠点の門の外や門と玄関の間の広場で、敵らしい5人とイリア、レウス、レズン、そしてTシリーズゴーレム5体が戦っている。
状況は膠着状態か、やや分が悪い形。
レズンやレウスは防戦一方。
2人対Tシリーズゴーレム5体は、近接戦闘に慣れている分、襲撃側が強い。ゴーレムの数と頑丈さで何とか抑えている形だ。
イリアだけは明らかに優勢だが、彼女はレズンやレウス、ゴーレムをカバーしながら戦っている。
その分相手を完全に攻め切れていない。
最初に攻めるべきなのはレウスの相手か。
いや違う。イリアの相手をさっさと倒して、イリアを遊軍化する方が早そうだ。
そう俺は判断して、自在袋に手を伸ばしつつ超高速移動魔法の最後の一歩を踏み出す。
出現したのは門の中、レウス達より更に玄関寄り。
これは同士討ちを防ぐ為だ。
そして俺は自在袋から投げ槍を取出し、イリアの相手めがけて投げた。
敵は俺の投げた槍を避ける。しかしそれが致命的な隙となった。
奴は次の瞬間イリアのハルバードでぶん殴られて、横へ吹っ飛ぶ。
あれを食らったら再起不能だろう。
むろんアギラが治療すればどうにでもなるけれど。
「ゴーレム側を頼む」
そうイリアに言いつつ、俺はレウス側へ。
「レウス、下がってくれ」
「わかった」
レウスはそこそこ程度に剣や槍を使えるけれど、一流レベルではない。
騎士団の道場や町道場で練習する機会がほとんど無かったからだ。
細身で身長も低めだから、腕力もそこまでない。
身体強化魔法と持ち前の器用さで何とかカバーしているけれど、結構無理をしている。
レウスと入れ替わると同時に、俺はいつもの槍を思い切り振りかぶった形で取り出す。
槍は突いた方がダメージを与えられるが、突く動きは相手に避けられやすい。
槍の軌道を武器で払いつつ、左右に逃れればいいだけだ。
だから確実に仕留めるには、ぶん殴る方が容易い。
より広い範囲を攻撃可能だし、武器の重さと振り下ろす早さが充分早ければ、完全に払うのは困難だ。
身体強化魔法と風属性魔法で、振り下ろす槍の速度を最大限に上げる。
相手に攻撃魔法が効かなくても関係ない。
払おうとした相手の剣ごとぶん殴って、敵を横へと飛ばす。
敵も避けられない事を悟っていたのだろう。
殴ったのと反対の方向へと自分でも飛んで、威力を弱めようとした。
しかし姿勢に無理が生じて、着地時に隙が出来る。
そして着地しようとするなら、足の位置はそう崩せない。
そこを槍で突いて足を封じてしまえば、倒すのは容易い。
先にもう1人を倒しておこうかと思ったところで、その1人をレズンが吹っ飛ばした。
こちらの戦いに気をとられて隙が出来たところ狙い、レズンがシールドバッシュをかけたのだろう。
奴は3腕以上先にある塀にぶつかって、崩れ落ちた。
周囲の魔力と偵察魔法で、イリアの方も敵を倒した事を確認。
ならということで、俺も目の前の相手を槍で殴打して動けなくしておく。
ここまでやれば、あとは俺より適役に任せてしまえばいい。
「サリア、ゴーレムで5人の身体を探ってくれ。魔法無効化のアイテムを持っている可能性が高い」
「わかりました」
スキルで魔法無効を持っている奴なんて、滅多にいない。
20~30年に1人見つかるか程度だ。
現在はカレン団長とかエルディッヒ位だろう。
しかし魔法を無効化するアイテムは幾つか存在するし、作成も可能だ。
多数の魔法使いが必要で時間と手間がかかるから、王立騎士団ですら正規採用していない。
それでも実際に作成して複数個を所持している組織を、俺は知っている。
この件については、帰りのゴーレム車で知った。
「結局、テモリやカタサーロで孤児院や学校に似た活動をしているのは、領政がそこまで行き届いていないからですよね」
ぽつりと漏らした、そんな言葉で。
「領主家が何もかも知って手当てするというのは、実際には難しいだろう。伯爵領クラスでも、孤児院や救護院はセドナ教会任せのところがほとんどだしさ。領立の学校については、侯爵領クラスでも無い方が普通だ」
かなり領民の方を見た領政を行っているスリワラ領でも、実際には孤児全員を拾い上げるのは不可能だ。
「理想論は幾らだって言える。ただ実際には、どんな政策を実施するにも金と人が必要だ。そこまで余裕がある領主家なんて、少なくともこの国には無いんじゃないかと思う。ほとんどの領主家と領地は、目先の事を何とかするのでやっとだろう」
これは全国をあちこち回って感じた事だ。
俺達が育ったスリワラ領は、実はかなり恵まれていた。
新規の領地という事で0から政策を実施できたし、国王陛下からの支度金で一気に整えるべきところを整えることが出来た。
他の南部各領は、道路や港の整備がやっとというところが多い。
衛士や領騎士団の整備も充分ではなく、魔物が頻繁に出現したり、領内の治安が今ひとつだったり。
かといって南部よりは歴史が古い東海岸がましかというと、そんな事はない。
西海岸や北部に比べて人口が少なく産業も発達していないことから、税収が少ない。
必然的に領地にかけられる金も少なくなる訳だ。
そして西海岸や北部は歴史があること、人口が多いことがネックになる。
あれこれ既得権が出来ていて、何をするにも抵抗勢力となる。
金持ちもいるがそれ以上に貧民も集まってきて、福祉政策はやるそばからパンクする状態だ。
「インフラの整備も福祉施策も、少し手をつけるだけで大金がかかる。領主家が節約して浮いた程度の金じゃ、たいしたことは出来ない。しかもやればやるほど、新たな要望が出てくるし文句も出てくる。
貧困民対策なんかはむしろ下手に手を出さないほうがいいって論理もあるくらいだ。金を食うばかりで感謝されない。充実させてもすぐに慣れて文句が出まくる。おまけに充実した福祉施策目当てに他からも貧困民が押し寄せてくる。あまり金をかけると普通に税金を払っている一般住民から文句が出る。
俺達みたいに自由勝手な立場で、孤児院だの勉強会だのをやるのは難しくない。ただ領主家として領の施策として行う分には、難しいな」
そこまで言ったところで、俺の偵察魔法が知っている魔力の反応を捉えた。
「ヒューマが来ている。一度止まるぞ」
今は朝10の鐘少し前、場所はバーリの街を通り過ぎたところだ。
テモリまで、残り100離ちょっと。
通常の要件で此処まで出てくる事は、普通なら無い。
何か特殊な商品の買い付けにでも出ているのだろうか。
そう思いつつ、俺は高速移動魔法を解除して、ゴーレム車を道の端に寄せて停める。
ヒューマが出現した。
「ちょっと洒落にならない襲撃を受けてましてね。カイルだけ、大急ぎで拠点に戻って欲しいんですよ」
えっ!?
口調はいつもの調子だが、内容がおかしい。
「襲撃が百人単位で来ても、サリアがいれば問題ないだろ」
「普通ならそうなんですけれどね。魔法が効かない剣士5人が攻めてきたんですよ。何とか応戦していますけれど、少し厳しい状態です。僕じゃ戦力にならないんで、何とか出来そうなカイルを呼びに来たって訳です」
「わかった。ゴーレム車と2人を頼む」
俺はゴーレム車から降りる。
此処で細かい状況を聞くより、少しでも早く向かったほうがいい。
「ええ。急いでお願いします」
俺一人なら、超高速移動魔法を連続で使える。
更に身体強化をかけて全力で走れば、100離なら3半時間で移動可能だ。
俺は、全力で移動を開始する。
◇◇◇
残り10離で、拠点が偵察魔法の視界に入った。
間違いない。拠点の門の外や門と玄関の間の広場で、敵らしい5人とイリア、レウス、レズン、そしてTシリーズゴーレム5体が戦っている。
状況は膠着状態か、やや分が悪い形。
レズンやレウスは防戦一方。
2人対Tシリーズゴーレム5体は、近接戦闘に慣れている分、襲撃側が強い。ゴーレムの数と頑丈さで何とか抑えている形だ。
イリアだけは明らかに優勢だが、彼女はレズンやレウス、ゴーレムをカバーしながら戦っている。
その分相手を完全に攻め切れていない。
最初に攻めるべきなのはレウスの相手か。
いや違う。イリアの相手をさっさと倒して、イリアを遊軍化する方が早そうだ。
そう俺は判断して、自在袋に手を伸ばしつつ超高速移動魔法の最後の一歩を踏み出す。
出現したのは門の中、レウス達より更に玄関寄り。
これは同士討ちを防ぐ為だ。
そして俺は自在袋から投げ槍を取出し、イリアの相手めがけて投げた。
敵は俺の投げた槍を避ける。しかしそれが致命的な隙となった。
奴は次の瞬間イリアのハルバードでぶん殴られて、横へ吹っ飛ぶ。
あれを食らったら再起不能だろう。
むろんアギラが治療すればどうにでもなるけれど。
「ゴーレム側を頼む」
そうイリアに言いつつ、俺はレウス側へ。
「レウス、下がってくれ」
「わかった」
レウスはそこそこ程度に剣や槍を使えるけれど、一流レベルではない。
騎士団の道場や町道場で練習する機会がほとんど無かったからだ。
細身で身長も低めだから、腕力もそこまでない。
身体強化魔法と持ち前の器用さで何とかカバーしているけれど、結構無理をしている。
レウスと入れ替わると同時に、俺はいつもの槍を思い切り振りかぶった形で取り出す。
槍は突いた方がダメージを与えられるが、突く動きは相手に避けられやすい。
槍の軌道を武器で払いつつ、左右に逃れればいいだけだ。
だから確実に仕留めるには、ぶん殴る方が容易い。
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身体強化魔法と風属性魔法で、振り下ろす槍の速度を最大限に上げる。
相手に攻撃魔法が効かなくても関係ない。
払おうとした相手の剣ごとぶん殴って、敵を横へと飛ばす。
敵も避けられない事を悟っていたのだろう。
殴ったのと反対の方向へと自分でも飛んで、威力を弱めようとした。
しかし姿勢に無理が生じて、着地時に隙が出来る。
そして着地しようとするなら、足の位置はそう崩せない。
そこを槍で突いて足を封じてしまえば、倒すのは容易い。
先にもう1人を倒しておこうかと思ったところで、その1人をレズンが吹っ飛ばした。
こちらの戦いに気をとられて隙が出来たところ狙い、レズンがシールドバッシュをかけたのだろう。
奴は3腕以上先にある塀にぶつかって、崩れ落ちた。
周囲の魔力と偵察魔法で、イリアの方も敵を倒した事を確認。
ならということで、俺も目の前の相手を槍で殴打して動けなくしておく。
ここまでやれば、あとは俺より適役に任せてしまえばいい。
「サリア、ゴーレムで5人の身体を探ってくれ。魔法無効化のアイテムを持っている可能性が高い」
「わかりました」
スキルで魔法無効を持っている奴なんて、滅多にいない。
20~30年に1人見つかるか程度だ。
現在はカレン団長とかエルディッヒ位だろう。
しかし魔法を無効化するアイテムは幾つか存在するし、作成も可能だ。
多数の魔法使いが必要で時間と手間がかかるから、王立騎士団ですら正規採用していない。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
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