病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

文字の大きさ
155 / 266
第18章 めでたく夏合宿

第147話 避暑地リゾート

しおりを挟む
 コイはいかにも高原という感じの場所だった。
 街そのものは山の中の湖沿いに出来たそれほど大きくない街だ。主な産業は観光。避暑地としてや登山、湖でのレイクスポーツの拠点としてこの辺では有名らしい。

「何か絵に描いた高原と湖って感じだよね」

「実際その通りなのだ。それを意図して開発した場所なのだ」

「北部や西部は夏蒸し暑い。だから夏休みは長いバカンスを取る」

 そう言えば授業で習ったな。国の北側、ハツカイ・チーとかシンコ・イバシ等は夏蒸し暑いって。

「でもそれじゃこの別荘借りてよかったのかな」

「心配ないのだ。実はここ以外にもいくつも貸別荘があるのだ」

 えっ。

「ここの別荘って子爵家の専用じゃなくて貸別荘だったのか」

「コイでは私有の建物は一切建てられない。子爵家経営の観光公社がホテルも貸別荘も商店街も全て所有している。乱開発で観光地としての価値が落ちないように。ここまでの乗り合いバスまで含めた一体経営だ」

「うちの一大産業なのだ」

 この辺ではそんな産業も成り立っているのか。でもウージナあたりではバカンスでも遠くへ出かけるなんて事は無かったぞ。
 でもコイの街には結構人がいたな。商店街をさっと見ただけだけれど賑わっていたし。

「元々は林業すら無い場所だったのだ。でも父の部下が遠出して遊ぶ場所を作ったら今までに無いから面白いのでは無いかと思いついたのだ。10年位前から細々開発を始めて今では我が領地の稼ぎ頭なのだ」

 そうか、リゾートという概念を発見した訳か。そこで俺は殿下が言っていた事を思い出す。
 確かにこれはこの世界には無かった概念だ。これを思いついた部下さんも異世界の記憶を持っていたのだろうか。

「でも夏はいいとして冬はどうするんだろう」

「温泉と雪遊びの場所をオープンしたのだ。これも最近かなり好評なのだ」

 スキーリゾートみたいなものも作ってあると。

「でもそれなら貸別荘料金を払わないとまずいだろ」

「出資者枠で年間延べ2000人日使える権利を持っているのだ。例えば定員10名の別荘なら1年間で合計200日借りる事が出来るのだ。今回はその枠内で使うから問題ないのだ。実際使い切ることもないから気にしなくていいのだ」

 会員制リゾートと同じような仕組みになっている訳か。なかなか先進的なシステムだ。ますます異世界の知識、それも俺のいた現代日本にかなり近い世界の知識のような気がする。

「そういえば昨年位に雑誌の特集でもやっていたな。今山岳リゾートが新しいって」

 ヨーコ先輩は色々怪しい雑誌を好んで読んでいる。
 
「大分きれいになったよな。最初に別荘に来た頃と比べると」

「店も色々集めたのだ。今はお願いしなくても来てくれるようになったのだ」

「なら早速車を置いて街の方へ行ってみましょう」

「そうですわね」

 荷物を別荘に入れると皆で街の方へと歩いていく。

 商店街も今までの街とはかなり違った。垢ぬけた生活感のない綺麗な街並みと店。観光地的なアウトレットというかそんな感じだ。
 お洒落な店とか話題の店、ちょっと美味しそうな食べ物屋が並んでいる。

「楽しいなこれは」

 女性陣は色々な店へと右往左往という感じ。俺とシンハ君、それにタカス君はそのたびに取り残される。
 よく見ると所々にあるベンチに女性陣から取り残された男性陣が座っていた。

「見事だなこれは。観光地の雰囲気とちょっといいお買い物とがうまく合っている」

「これもここの開発を思いついた社員の思いつきらしい。今は公社の理事長だけれど。最初の数年は有名店なんかにお金をこっちから払って来てもらったそうだ。それを続けて5年くらいしたら一気に人気観光地になった。今では高いテナント料を払ってもここに店を出したい業者が山ほどいる」

 うん、ますます俺のいた世界的な発想だと思う。全く同じではないが同じような発展をした世界の発想に違いない。
 まあ俺の勝手な予想だけれど。

 そのまま夕食も商店街にあったシンコ・イバシの有名店の支店で食べた。
 見本で出ていた料理が大変美味しそうだったのもある。でも主な理由は女性陣のショッピングで時間が遅くなってしまったからだ。

「本店はちょっとお高めだけれど美味しくてお勧めなのだ」

 地元シンコ・イバシ出身者がそういうので味については安心して店に入る。ピザだのスパゲティだの牛筋肉すじにくサラダだの、ウージナでは見ない料理を大量注文。
 豚肉にドレッシングをかけて食べる冷製料理なんかも面白い。じっくり焼き上げた分厚い牛タンもいい感じ。鹿肉のカルパッチョもなかなか美味しい。

 ただ、うちの連中が満足するまで注文するととんでもないことになる訳で……

「税金を払った時以来のショックです」

 代金を払ったナカさんの台詞だ。実際いくらかかったのかを聞く勇気は俺にはなかった。

 さて、その日はもう遅かったので一休み。何せ結構疲れた。王宮から出発して車で移動して魔法銀ミスリル買ってまた車で移動。ここコイについたら商店街散策だ。
 実は最後の商店街散策が一番疲れたような気がする。きっと気のせいでは無い。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

処理中です...