機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第11章 冬休み

49 新型猛獣系女子

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 見慣れた天井と布団。
 寝ているのは間違いなく俺のあのだだっ広いベッド。

 そして俺と反対方向を向いて積分記号のような形で伸びているのは、Tシャツにホットパンツ姿の奈津希さんだった。
 何故こうなった!

 俺は必死になって昨晩の記憶を辿る。
  ① 風呂でしょうもない馬鹿話をした。
  ② 酒じゃない清涼飲料水だけどアルコール11パーセントを飲んだ。
  ③ いい加減のぼせてきたので上がって、リビングでテレビ見ながら話した。
  ④ 奈津希さんが冷蔵庫に常備菜を仕舞うついでに磯辺揚げやアスパラ炒めを作ったので食べながらコーラを飲んで話した。
  ⑤ 流石に眠くなったので寝た。
  ⑥ 寝た時は俺は一人だった。

 うん、記憶に欠落はない。
 手を出したりやばいことはしていない。

 では、これは何なのか。
 考えても関連する記憶や情報は出てこない。
 ならば。

 昔の人は言いました。
 三十六計逃げるに如かず。

 俺は極力音や振動を発さないように、ゆっくり動いてベッドから出ようとする。
 だが、突如脚を掴まれた。

「こっそり逃げようだなんて寂しいじゃないかハニー」

「誰がハニーですか!」

 さては既に起きていて、俺の出方を伺っていたな。

「そんな、昨日はあんなに激しく愛し合ったのに、酷いわ酷いわ」

 声が凄く嘘くさい。

「そんな記憶も実績もありません」

「バレたか」

「当然です!」

 奈津希さんは俺の脚をやっと離してくれた。

「しかし何がどうなってこうなったんですか。説明と釈明を求めます」

「簡単なことだよワトソン君。君が寝たあと僕も布団に入ったが、どうにも退屈だし一人だと寂しい。
 ついつい君の部屋に来てみるとだ。添い寝してくれと言わんばかりのでかいベッドがある。なので君の布団に潜り込んで一緒に寝てみた。
 上下逆なのは単に僕の寝相が悪いせいだ。Q.E.D」

「誰がホームズですか。それに勝手に異性の布団に入り込まないで下さい」

 通常と性別が逆の気がするが、そんな事かまっていられない。

「まあまあ落ち着け。かの登山家マロリーも言っている。何故人は布団に潜るのか。そこに布団があるからだ」

「いいかげんな名台詞作らないで下さい! ここはチョモランマじゃないんです!」

 駄目だ。
 こんな人相手にしたら俺が持たない。

「まあそれは別として、昨日漬けておいた鶏肉を塩抜きしながら朝ごはんでも作ろうじゃないか。という訳でリビングでのんびり待っていてくれたまえマイ・ダーリン」

 俺は文句を言おうとしてやめる。
 今までにないタイプの猛獣女子だ。
 いちいち反応していたら身が持たない。
 ここはいちいち反応せず体力をセーブしよう。

「それにしても、君のベッドは広くていいな。あれならいろは四十八手が全部試せそうだ」

 朝ごはんを食べながらでも奈津希さんはかっ飛ばす。
 味噌汁もご飯も鮭の切り身も美味しいのに話題がビロウだ。

「どうしても試したいなら俺以外にして下さい」

「なら犠牲者を用意してくれ。できるだけ生きの良い奴がいい」

 犠牲者と言っているあたり、自分のキャラをわかっている。

「3年男子なら魔法工学科の玉川先輩あたりはどうです」

「奴は駄目だ。肝っ玉が小さい。ナニも小さそうだ」

 何という直接的な事を言うんだこの人は。
 何か朝からセクハラを延々とかまされてる気分だ。
 実際その通りなのだが。

「ところで今日はどんな予定なのだフェネック」

 もういちいち突っ込む気力もないので俺は素直に答える。

「何もなければ課題で使う電子基板の発注でもしようかなと」

 全自動草刈り機で使ってしまったアルドゥイーノ2枚とラズパイを補充して注文したい。
 センサ類も使った分を補充して一通り揃えておきたい。

 ここは離島。だから課題が入ってから発注したのでは間に合わない可能性もあるのだ。
 まあ学校の売店でも最低限のチップは販売しているけれど。

「その発注作業は急げば午前中に終わる程度かい」

「まあ、急げば午前中には」

「それなら僕も午前中は鳥ハム作業等を一通りやるから午後はちょっと付き合ってくれないか」

 ああ、素直に答えず一日作業と言っておけばよかっただろうか。
 でもまあ仕方ない。

「まあ予定はないですし、いいですよ」

「よっしゃ!」

 奈津希さんはガッツポーズ。
 しかし午後から何をする気だろう。
 不安だ。

 ◇◇◇
 
 そして午後2時。
 俺は奈津希さんと一緒に、由香里姉の愛車で海の上に来ていた。

 場所は学校の割とすぐ裏。
 直線距離で500メートルも離れていないだろう。
 そして奈津希さんは後ろのドアを全開にして、ぶっとい釣り竿で釣りをしている。

「うーん、ちと入口が狭くて竿が動かしにくいな。今度釣り用に空飛ぶ船1隻建造してくれや」

「適当な筐体は用意してくださいよ」

 そんな事を言いながら釣行中。
 なお、由香里姉は結構簡単に車を貸してくれた。

「ただし公道を走るのだけは禁止ね。あと運転は修限定ね」

 電話で出た制限事項はそれだけ。

 そして釣り道具は奈津希さんの家にあった。
 何でも奈津希さんの父親が趣味で釣りをやっていて道具が揃っているとのこと。

 笑えるくらい太い竿とでっかいリールと太い糸。
 餌は無く代わりに魚の形をした金属製の疑似餌を付けている。

「よし、このまま前方にゆっくり前進!」

 俺は言われたとおりにする。
 なお、俺の魔力だとこの車の速度はせいぜい時速10キロ程度まで。
 だから言われなくともゆっくりになるのだが。

「いやな、昔親父がここで大物を釣ったって言っていたんで、やってみたいと思っていたんだ。今朝ちょうど思いついてな。ただやっぱりバスのドアの中からだと釣りにくいな。視界も悪いし」

「流石に釣りに使うつもりは無かったですしね。魚捕りは何回かしましたが」

「お、釣りじゃなければどうやって獲ったんだ」

「由香里姉に海を凍らないぎりぎりまで冷やしてもらって、浮いてきた魚をでかい網で掬いました」

「うーん、僕の魔法じゃそこまでは出来ないな。広範囲の海水の温度を下げるなんてかなり凶悪な魔力だぜそれ」

 そんな事をいいながら、奈津希さんは疑似餌を投げては引くを繰り返している。

「どうですか、感触は」

「なかなかうまくいかないな。竿を振る代わりに風魔法使っているんで、そんなに船と遜色ない距離飛ばしているつもりなんだが。お、おおおおっ!」
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