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第11章 冬休み
50 二人揃ってしまったぞ
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「どうしました」
「やべええ、でかいのキター! 踏ん張りきかねー!」
奈津希さんが足と肘で何とか身体を支えつつ、竿を握っているのが見えた。
リールを巻くなんて動作は出来そうにない。
とにかく竿を離さず持っていることと、自分が外へ落ちないようにするので精一杯という感じだ。
「何なら魔法で始末して下さい。海へ落ちるよりマシでしょう」
「そそそ、そうだな」
何せ魚の引く力で車まで横に動き出している状態。
俺も運転席から離れられない。
不意に横への動きが止まった。
「よっしゃ! 何とか仕留めたぞ」
「どうです。どんなですか」
後ろでリールを巻き上げる音。
「ちょっと持ち上げるのが無理っぽい。できるだけ岩を避けて、浜の方へ超ゆっくりと前進できないか。獲物はとりあえず凍死させたから大丈夫だ」
どんな大物だ。
そう思いながら、俺は注文通りできるだけ岩のない深めのところを選んで、ゆっくり車を飛ばす。
「よしよしよしよしよし、っと。じゃあな」
ちょっと車が揺れた。
ミラーを見ると、いたはずの奈津希さんがいない。
浜についた途端飛び降りたらしい。
俺は車を狭い浜の上に横になるように砂の上に降ろし、外へ出てみる。
ちょうど奈津季さんが竿とリールと波とを使って、獲物を浜へと引き上げているところだった。
ってこれはひょっとして。
「まさかマグロですか。こんな近場で」
「惜しいな。こいつはイソマグロ、似てるけどマグロ程美味くはないかな。でも悪かない」
丸々とした胴体に長さは奈津希さんの頭と胴を足したくらい。
でかい。そして太い。
「うーんこれ運が悪いとシガテラ毒あるんだよな」
「って、どうすれば毒があるか分かるんですか」
「医療魔法使える奴なら毒があるか判定できる……って、あいつもう寮に帰っているかな」
奈津希さんはホットパンツのポケットからスマホを取り出した。
どこかへ電話をかけている様子。
「もしもし、私リカちゃん、おい切るな冗談だ。実はちょっと頼みたいことがあってさ、学校の修の工房前まで来てくれないか。
あ、それは大丈夫だ僕も昨日入ったから。ん、8日朝までは修だけらしい。ん、わかった。あ、それは僕が用意する。じゃあ頼むな」
何だろう。
何度か俺の名前が聞こえた気がする。
不安だ。
しかし奈津希さんは妙に爽やかな笑顔で俺の方を向く。
「毒見役は確保したぜ。そういう訳で学校の修の工房前まで、レッツゴーだ!」
俺の遅い運転でも、最短距離を飛べば学校まではすぐ。
そしてその人物は、ミレーのディパックを右肩に下げて俺達を待っていた。
「あけましておめでとうございます。お久しぶりです」
学生会次期会長、風遊美さんだ。
確かに彼女なら医療魔法も持っているし毒があるかどうか判断もできるだろう。
「すみません。休み中呼び出してしまって」
「それよりさ、これよこれ。こっちだ」
奈津希さんが風遊美さんをキャンピングカーの中へ引っ張り込む。
「って何を……何ですかこれは!」
「今釣ってきたんだけどシガテラ毒が心配でさ。ちょっと判定してくんない」
「そんな面白い事は最初から誘って欲しいですね」
ちょっと風遊美さんはむくれ顔。
「まさかこんなのいきなり釣れると思わなかったからさ。で毒はどうだ」
風遊美さんはちょっと目を細めて巨大魚の方を見る。
「これ位なら大丈夫ですね。一人で全部食べたりしなければ、ですけれど」
「ならOKだ。じゃあ修、また運転頼む」
「運転って、何処へですか」
「マンションの屋上で僕と魚を下ろした後、駐車場に車を止めて玄関から入ってきて部屋の窓開けてくれないか。これ結構重くて持ちにくいんだ」
「風遊美さんは」
「私は修君と一緒に行きます」
との事なので、俺は運転席に戻り車を発進させる。
◇◇◇
風呂の蓋の上に新聞紙を何枚も敷き詰め、その上に重い魚を置く。
ちなみにこの魚、家の体重計で測ったら11キロもあった。
「よし、じゃあ今日はイソマグロのフルコースな」
奈津希さんはそう言って、長い包丁で捌き始める。
近くにいると邪魔だろうし色々飛んだりもしている。
だから俺と風遊美さんはリビングへと移動した。
「ところで修君、奈津希はいつからここに泊まっているの」
「昨日学校から帰る途中偶然会って、それからです」
「何か変な事されなかった」
「大丈夫です、ってそんな大げさな」
「他の学年は奈津希の実態を知らないからです。そうですよねセクハラ大魔王さん」
「さあ、何のことかな」
風呂場から返事が返ってくる。
「奈津希は入学時の1学年全員が集まったオリエンテーションでの自己紹介の時、
『オトコが欲しいですが女の子でもいいです。僕と気持ちいいことする友だちになって下さい』
と言ってドン引きさせて以来、我が学年最大の地雷とされています。それでも秋まで2年生の可愛い彼女さんがいらっしゃいましたが、あの娘はどうされたのでしょうか」
「彼女と気持ちよくなりたいから通販でローション買って、一緒にプレイしようぜと誘ったら逃げられた。絶対お互い気持ちよくなれると思うんだけどな」
「と、こんな感じですわ」
風遊美さんはお手上げポーズをして見せた。
それにしてもいちいち返事が返ってくるあたり律儀ではある。
しかし彼じゃなくて元彼女持ちか。
「でもまだ穴で遊んでないから僕は処女だよ。何なら修の身体で試してみるかい。今なら特価提供中」
「まだ結構です」
「まだというなら先々希望はあるのかな」
「とりあえず18禁ですから」
確かにセクハラ大魔王だ。
昨晩からそうだったのだけれども。
「ですから奈津希がいる間、私もお目付け役でここに泊まります。よろしくお願いしますね」
えっ。
予想外の展開。
でも確かに知らないうちにベッドに潜り込まれたりするよりは、お目付け役がいた方がいいかもしれない。
それにしても一人のんびり過ごす計画が何故こうなったんだ。
不用意に奈津希さんを招き入れたのが敗因だろうか。
「やべええ、でかいのキター! 踏ん張りきかねー!」
奈津希さんが足と肘で何とか身体を支えつつ、竿を握っているのが見えた。
リールを巻くなんて動作は出来そうにない。
とにかく竿を離さず持っていることと、自分が外へ落ちないようにするので精一杯という感じだ。
「何なら魔法で始末して下さい。海へ落ちるよりマシでしょう」
「そそそ、そうだな」
何せ魚の引く力で車まで横に動き出している状態。
俺も運転席から離れられない。
不意に横への動きが止まった。
「よっしゃ! 何とか仕留めたぞ」
「どうです。どんなですか」
後ろでリールを巻き上げる音。
「ちょっと持ち上げるのが無理っぽい。できるだけ岩を避けて、浜の方へ超ゆっくりと前進できないか。獲物はとりあえず凍死させたから大丈夫だ」
どんな大物だ。
そう思いながら、俺は注文通りできるだけ岩のない深めのところを選んで、ゆっくり車を飛ばす。
「よしよしよしよしよし、っと。じゃあな」
ちょっと車が揺れた。
ミラーを見ると、いたはずの奈津希さんがいない。
浜についた途端飛び降りたらしい。
俺は車を狭い浜の上に横になるように砂の上に降ろし、外へ出てみる。
ちょうど奈津季さんが竿とリールと波とを使って、獲物を浜へと引き上げているところだった。
ってこれはひょっとして。
「まさかマグロですか。こんな近場で」
「惜しいな。こいつはイソマグロ、似てるけどマグロ程美味くはないかな。でも悪かない」
丸々とした胴体に長さは奈津希さんの頭と胴を足したくらい。
でかい。そして太い。
「うーんこれ運が悪いとシガテラ毒あるんだよな」
「って、どうすれば毒があるか分かるんですか」
「医療魔法使える奴なら毒があるか判定できる……って、あいつもう寮に帰っているかな」
奈津希さんはホットパンツのポケットからスマホを取り出した。
どこかへ電話をかけている様子。
「もしもし、私リカちゃん、おい切るな冗談だ。実はちょっと頼みたいことがあってさ、学校の修の工房前まで来てくれないか。
あ、それは大丈夫だ僕も昨日入ったから。ん、8日朝までは修だけらしい。ん、わかった。あ、それは僕が用意する。じゃあ頼むな」
何だろう。
何度か俺の名前が聞こえた気がする。
不安だ。
しかし奈津希さんは妙に爽やかな笑顔で俺の方を向く。
「毒見役は確保したぜ。そういう訳で学校の修の工房前まで、レッツゴーだ!」
俺の遅い運転でも、最短距離を飛べば学校まではすぐ。
そしてその人物は、ミレーのディパックを右肩に下げて俺達を待っていた。
「あけましておめでとうございます。お久しぶりです」
学生会次期会長、風遊美さんだ。
確かに彼女なら医療魔法も持っているし毒があるかどうか判断もできるだろう。
「すみません。休み中呼び出してしまって」
「それよりさ、これよこれ。こっちだ」
奈津希さんが風遊美さんをキャンピングカーの中へ引っ張り込む。
「って何を……何ですかこれは!」
「今釣ってきたんだけどシガテラ毒が心配でさ。ちょっと判定してくんない」
「そんな面白い事は最初から誘って欲しいですね」
ちょっと風遊美さんはむくれ顔。
「まさかこんなのいきなり釣れると思わなかったからさ。で毒はどうだ」
風遊美さんはちょっと目を細めて巨大魚の方を見る。
「これ位なら大丈夫ですね。一人で全部食べたりしなければ、ですけれど」
「ならOKだ。じゃあ修、また運転頼む」
「運転って、何処へですか」
「マンションの屋上で僕と魚を下ろした後、駐車場に車を止めて玄関から入ってきて部屋の窓開けてくれないか。これ結構重くて持ちにくいんだ」
「風遊美さんは」
「私は修君と一緒に行きます」
との事なので、俺は運転席に戻り車を発進させる。
◇◇◇
風呂の蓋の上に新聞紙を何枚も敷き詰め、その上に重い魚を置く。
ちなみにこの魚、家の体重計で測ったら11キロもあった。
「よし、じゃあ今日はイソマグロのフルコースな」
奈津希さんはそう言って、長い包丁で捌き始める。
近くにいると邪魔だろうし色々飛んだりもしている。
だから俺と風遊美さんはリビングへと移動した。
「ところで修君、奈津希はいつからここに泊まっているの」
「昨日学校から帰る途中偶然会って、それからです」
「何か変な事されなかった」
「大丈夫です、ってそんな大げさな」
「他の学年は奈津希の実態を知らないからです。そうですよねセクハラ大魔王さん」
「さあ、何のことかな」
風呂場から返事が返ってくる。
「奈津希は入学時の1学年全員が集まったオリエンテーションでの自己紹介の時、
『オトコが欲しいですが女の子でもいいです。僕と気持ちいいことする友だちになって下さい』
と言ってドン引きさせて以来、我が学年最大の地雷とされています。それでも秋まで2年生の可愛い彼女さんがいらっしゃいましたが、あの娘はどうされたのでしょうか」
「彼女と気持ちよくなりたいから通販でローション買って、一緒にプレイしようぜと誘ったら逃げられた。絶対お互い気持ちよくなれると思うんだけどな」
「と、こんな感じですわ」
風遊美さんはお手上げポーズをして見せた。
それにしてもいちいち返事が返ってくるあたり律儀ではある。
しかし彼じゃなくて元彼女持ちか。
「でもまだ穴で遊んでないから僕は処女だよ。何なら修の身体で試してみるかい。今なら特価提供中」
「まだ結構です」
「まだというなら先々希望はあるのかな」
「とりあえず18禁ですから」
確かにセクハラ大魔王だ。
昨晩からそうだったのだけれども。
「ですから奈津希がいる間、私もお目付け役でここに泊まります。よろしくお願いしますね」
えっ。
予想外の展開。
でも確かに知らないうちにベッドに潜り込まれたりするよりは、お目付け役がいた方がいいかもしれない。
それにしても一人のんびり過ごす計画が何故こうなったんだ。
不用意に奈津希さんを招き入れたのが敗因だろうか。
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