神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第3話 開発作業を開始します

12 高松ではなく中讃の名物

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 天ぷらてんぷらは当然の事ながら、各種作るつもりだ。
 揚げ蒲鉾てんぷらもイトヨリダイ使用の高級品と、カタクチイワシを流用したじゃこ天を作る予定。

 じゃこ天は香川うどん県ではなく、お隣愛媛の特産。
 それでも普通に香川うどん県のスーパに売っている、日常のおかずだ。

 厳密にはホタルジャコという魚で作るだの、エソの皮が入るだの、製造地域によるお約束がある。
 でもジャコとは雑魚のことだから、雑魚であるイワシで作っても間違いじゃない、多分。

 天ぷらてんぷら揚げ蒲鉾てんぷらで、いつもよりアイテム数は格段に増えた。
 それでも『ちょっといい昼食』程度でしかない気がする。
 香川うどん県住民的にちょっと特別な料理で、その上現在の乏しい調味料事情で出来る料理と言えば……

 私はケカハの地の平野部、仮称ケカハ平野をズームしたり、また広範囲に見たりして確認する。

『仮称ケカハ平野は、ケッペンの気候区分ではステップ気候、記号で表すとBSkとなります。また山間部は地中海性気候でCsaです。動植物も地球上の同気候帯に近いものが生息していますが、キツネ類より大型の哺乳類は生息していません』

『大型の哺乳類は・・・・生息していません』か。

「そこそこ大型の鳥はいる? 地球の鶏サイズくらいの」

『鶏はいません。ただしシラプ、地球上ですとサケイに相当する種が、ケカハ平野の中央から北部海岸近くまで生息しています。大きさや見た目はこのようなものです』

 サケイという名は聞いたことが無い。
 でも全知が伝えてきた全体のシルエットは、キジやヤマドリに似ている。
 色が違うし、大きさは鳩より少し大きいくらいだけれど。
 うん、このシラプは使えそうだ。讃岐名物、骨付鳥に。

 厳密には讃岐でも中讃、丸亀藩領域の名物だ。
 それでも香川名物ではあるからいいとしよう。
 本拠地である『骨付鳥一鶴』は丸亀の店だけれど、高松にも支店があるし。

 ただしこの鳥、捕っても大丈夫なくらいに生息しているかが問題だ。
 絶滅されては、ただでさえ脆弱な生物多様性が余計に失われてしまう。

『それなりの数、生息しているので、数十匹捕らえる程度は問題ありません。それに今の時期はまだ過酷な夏の前ですので、もはや繁殖を行えないような老鳥も生き残っています。これらを捕るのであれば、ほぼ次世代への影響は無いでしょう』

 老鳥の方が、骨付鳥として正しい。
 卵を産まなくなった廃鶏を、おやどりと称して食べるのが骨付鳥だ。
 固めの肉をガシガシかみしめて味わう事こそ正解。
 出すときに、ハサミである程度切っておくつもりだけれど。

 鳥さんの命をいただくのは、何か申し訳ない気がする。
 既に魚や貝の命は、大量に頂いてしまっているのに。
 
 しかし私は、生きていく必要があるのだ。だからここで、ためらってはいけない。
 なんて思いつつも、骨付鳥の味を楽しみにしているのもまた確かだったりする。
 
 それじゃシラプの、この夏を超えられなそうで、人間が食べて危険な病気等を持っていない個体を捕まえに行こう。
 そう思うと、全知が場所を教えてくれる。まずは此処から1km程度のところ。
 場所を意識するとともに、私の周囲の景色が変化した。

 ◇◇◇

 シラプ、割と集団で生息しているようだ。
 その気になれば大量乱獲が可能だけれど、各群れで取り敢えず一番ご老体の個体を選んで、14羽ほど捕獲した。

 捕獲と同時に即死させ、血抜きをして、羽をむしって、内臓を抜いて洗って。
 この辺も収納内で意識するだけで出来るのは、正直助かる。

 何せ意識はまだ、21世紀の日本女子。
 実際に首をはねて吊して羽をむしってという作業をするのは、かなり辛い。
 収納内でも同じ事が展開されているのは、わかっているのだけれど。

 半身にした骨付き肉の表面に、まんべんなく塩をすり込んでおけば、下ごしらえ完了だ。
 これは時間停止ではなく、摂氏2℃位で明日まで放置。
 この、どうにでも保存出来る感じが、神の権能という気がする。便利すぎていい。

 本当はあと、胡椒かニンニクが欲しいところだけれど……

『該当する植物は、ケカハの地にはありません』

 そうだろうなとは思っていた。
 まあ肉は、ものと処理が良ければ、塩だけで充分美味い。
 だから骨付鳥は、これで明日、焼けばいいだろう。

 あとは昨日作った、麹菌採取トラップを見に行くとするか。
 移動して、オリーブの枝の間に置いた小麦粉の塊を確認する。

『まだ分離する程は増殖していないようです。表面に湿り気を与え、明日また様子を見ましょう』

 言われた通り『湿気ろ』と念じて、作業完了だ。

 さて食の探求については、今日はこの辺まででいいだろう。
 天ぷらてんぷら揚げ蒲鉾てんぷらを揚げたり、魚のすり身を作って練る作業は夜か、明日にやるとして。

 実は、出来るだけ早くやっておきたい事がある。 
 ため池を作る事だ。

 ここケカハの地が放棄されたのは、乾燥して水が得られないから。
 しかし全く雨が降らない訳では無いし、山間部には川だって流れている。
 だから冬の雨や山間部を流れる川の水を引いて貯めて、地下に水が染み込まない構造の用水で各地へ配水すればいい。

 かつての私の故郷、香川県も水不足で苦しむ場所だった。
 だから先祖の皆様は、ため池を作りまくったのだ。
 満濃太郎、神内次郎、三谷三郎と呼ばれる大きなものから、そこいらの田んぼの間にあるような小さなものまで。

 工事をするなら雨が降る前、夏の乾季のうちにやっておきたい。
 その方がスムーズに出来そうだし、雨が降り始めたらすぐに貯水を開始する事が出来るから。
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