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第19話 避難民の帰還
76 避難民帰還 ⑴
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今回の受け入れも、手順そのものは前回と同様だ。
ただ人数が9倍に増えている上、ビブラムとエイダンからこんな報告を受けてもいる。
「次の受け入れについて、長のヨーナリではなく区長のタクザ、シノヲ、ジエルから連絡が来ております。長のヨーナリから移動日以外の指示が一切来ていないので、道中の混乱を避ける為、3区の住民297名は早朝に出て、8の鐘頃にはトヨハマにつく予定だそうです」
「住民を直接まとめる立場の区長は、現時点で9人おります。うち7人がヨーナリの親族か友人です。そのうちシノヲを除く6人は実務能力がほとんど無く、税収の調査でさえ実際は実態に即さない数値を出してくる状態でした。
今回の移動計画の立案や、区民への周知が上手くいっているかは疑問です。そもそも長であるヨーナリが10日前の時点で移動日以外の指示をしていない以上、すんなり当日で移動が終わるとは私には思えません」
何というか、酷い有様だ。
思わず私がこう聞いてしまった位だ。
「そのヨーナリにも、まともな幕僚というか補佐官はいないの?」
「旧ケカハ国衙には30人の事務官がおりましたが、避難前にオーギらが去ったり、避難後のヨーナリの専横に耐えかねて去ったりして、本来の事務官は1人、エイダンしか残りませんでした」
「ヨーナリは追加で側近を10名採用しました。いずれも事務官というよりは親衛隊的な武力担当で、村人に禁じられた刀や槍を持ち、サネソンとともに村人を抑圧していました。
事務作業については昨年の8月まで、事実上エイダンが一人でまわしていました。しかし移動まであと1年だし、うるさい邪魔者がいなくても大丈夫だろうという事で、先遣隊に出されました」
なるほど。
つまり事務能力がある補佐官はいないという事か。
ならビブラム達やイルザ達が来た時のようにすんなり行く訳はないと。
「わかりました。先程の3つの区の住民以外は、当日以降、こちらから迎えに行く可能性を考慮しましょう。セキテツの土地神には私から話をしておきます」
更に幹部連中と話し合って、アルツァーヤにもあれこれ依頼して、更に私個人でもあれこれ準備して、そして当日の受け入れ。
◇◇◇
前夜に準備して、暗いうちに避難先を出た3つの区の304人は、事前連絡通り朝8の鐘前に到着。
魔法を授与し荷物を預かった後、荷車3台と徒歩とで村を目指して貰う。
ここまでは良かった。
しかしその後が……
こちらからの通達では、待ち合わせはセキテツとの国境で朝10の鐘の時間、問題がありそうな場合は応相談としていた。
これはアルツァーヤ経由で正式に伝えてもらっている。
先行した3区の区長は『移動日だけを知らされた』というから、伝達そのものは届いている筈だ。
「書状をそのまま向こうの代表者という方にお渡ししたから、大丈夫だと思ったのですけれどね」
アルツァーヤ自身もそう言っている。
今回もいつもの岩場で、うどんを肴に酒を嗜みながら帰還者の皆さんが来るのを待っているのだ。
もちろんキンビーラもいる。
海神らしく、いりこの天ぷらやいりこの佃煮なんてのをメインにつまみながら、酒を飲みつつのんびりとしている。
「ええ。残念ながらあの男とその取り巻きは愚か者だったようです。私なりの処理をしますけれど、もし仰りたい事がありましたら出てきていただいて結構です」
「わかりました。基本的には、こちらで状況を観察させていただく方針でまいりますわ」
私の意図はアルツァーヤに伝わったようだ。
という事でのんびり待っていると、10時過ぎに牛車4台と徒歩あわせて102人がやってきた。
なお牛車の速度は私が予想していたのよりは速い。概ね時速4~5km程度。人が歩く速度とほぼ同じだ。
牛車のうち1台は箪笥だの屏風だの座卓だの畳だのといった家財道具、もう1台は麦や米、乾燥肉等の食料、残り2台には太ましい輩が合計15人乗っている。
そして牛車の後に、1kmくらい人の列が伸びている。
人数が多いからというのではなく、統制がとれていないという感じだ。
ついでに言うと先行している約300人と今回の約100人の後は、今のところ感知出来ない。
何というか、ボロボロだ。
あとビブラム達や先行する約300人の集団は、しっかり統制がとれていたのだという事を実感した。
「とりあえず出迎えと処理の為、行ってきます」
キンビーラ達にそう声をかけて、国境へと移動。
先頭を行く牛車の100m位前へと出現する。
牛車は私の10m手前で停まった。
まずは従者らしい若い男が降りて、私の方へ走ってくる。
「こちらは本日ケカハへと帰還する、ヨーナリ・ルロキ・イーザキ様です。失礼ですがケカハの新しい土地神様でいらっしゃいますでしょうか」
自分の主人に様を付けるのは、この世界の場合ありなのだろうか。
『正式には無しです。ただそういった教養はまだこの世界では一般化していません。ですので地方農村レベルでは誤用とされない場合も多い模様です』
全知がそう言うなら、まあそうなのだろう。
そう思いつつ返答する。
「ええ。コトーミです。とりあえず確認したい事がありますから、この先右側にある休憩所に入って待つように願います」
「わかりました。それでは御指示通り、そちらの休憩所に入ります」
若い男は一礼すると、牛車へ戻っていく。
途中で先頭の牛車の車副の男に何か指示しただけで、後ろを歩く者達には特に何も指示する様子なく牛車に乗り込んだ。
そしてそのまま、牛車は動き始める。
後ろへの指示はどうなっているのだろう。
『ヨーナリの直轄区の住民は、朝7の鐘の時刻に全員集合するよう命令され、集合した時点でそのまま前の牛車に続いて歩くようにと指示されました。
なおそれ以前に、移動日程や、そもそも何処へ何の為に移動するか等についての説明は一切ありませんでした。ですので一般住民は集合時の服装のまま、家財道具等も一切持たず、ここまで歩かされている状態です」
なんだそれは……
ただ人数が9倍に増えている上、ビブラムとエイダンからこんな報告を受けてもいる。
「次の受け入れについて、長のヨーナリではなく区長のタクザ、シノヲ、ジエルから連絡が来ております。長のヨーナリから移動日以外の指示が一切来ていないので、道中の混乱を避ける為、3区の住民297名は早朝に出て、8の鐘頃にはトヨハマにつく予定だそうです」
「住民を直接まとめる立場の区長は、現時点で9人おります。うち7人がヨーナリの親族か友人です。そのうちシノヲを除く6人は実務能力がほとんど無く、税収の調査でさえ実際は実態に即さない数値を出してくる状態でした。
今回の移動計画の立案や、区民への周知が上手くいっているかは疑問です。そもそも長であるヨーナリが10日前の時点で移動日以外の指示をしていない以上、すんなり当日で移動が終わるとは私には思えません」
何というか、酷い有様だ。
思わず私がこう聞いてしまった位だ。
「そのヨーナリにも、まともな幕僚というか補佐官はいないの?」
「旧ケカハ国衙には30人の事務官がおりましたが、避難前にオーギらが去ったり、避難後のヨーナリの専横に耐えかねて去ったりして、本来の事務官は1人、エイダンしか残りませんでした」
「ヨーナリは追加で側近を10名採用しました。いずれも事務官というよりは親衛隊的な武力担当で、村人に禁じられた刀や槍を持ち、サネソンとともに村人を抑圧していました。
事務作業については昨年の8月まで、事実上エイダンが一人でまわしていました。しかし移動まであと1年だし、うるさい邪魔者がいなくても大丈夫だろうという事で、先遣隊に出されました」
なるほど。
つまり事務能力がある補佐官はいないという事か。
ならビブラム達やイルザ達が来た時のようにすんなり行く訳はないと。
「わかりました。先程の3つの区の住民以外は、当日以降、こちらから迎えに行く可能性を考慮しましょう。セキテツの土地神には私から話をしておきます」
更に幹部連中と話し合って、アルツァーヤにもあれこれ依頼して、更に私個人でもあれこれ準備して、そして当日の受け入れ。
◇◇◇
前夜に準備して、暗いうちに避難先を出た3つの区の304人は、事前連絡通り朝8の鐘前に到着。
魔法を授与し荷物を預かった後、荷車3台と徒歩とで村を目指して貰う。
ここまでは良かった。
しかしその後が……
こちらからの通達では、待ち合わせはセキテツとの国境で朝10の鐘の時間、問題がありそうな場合は応相談としていた。
これはアルツァーヤ経由で正式に伝えてもらっている。
先行した3区の区長は『移動日だけを知らされた』というから、伝達そのものは届いている筈だ。
「書状をそのまま向こうの代表者という方にお渡ししたから、大丈夫だと思ったのですけれどね」
アルツァーヤ自身もそう言っている。
今回もいつもの岩場で、うどんを肴に酒を嗜みながら帰還者の皆さんが来るのを待っているのだ。
もちろんキンビーラもいる。
海神らしく、いりこの天ぷらやいりこの佃煮なんてのをメインにつまみながら、酒を飲みつつのんびりとしている。
「ええ。残念ながらあの男とその取り巻きは愚か者だったようです。私なりの処理をしますけれど、もし仰りたい事がありましたら出てきていただいて結構です」
「わかりました。基本的には、こちらで状況を観察させていただく方針でまいりますわ」
私の意図はアルツァーヤに伝わったようだ。
という事でのんびり待っていると、10時過ぎに牛車4台と徒歩あわせて102人がやってきた。
なお牛車の速度は私が予想していたのよりは速い。概ね時速4~5km程度。人が歩く速度とほぼ同じだ。
牛車のうち1台は箪笥だの屏風だの座卓だの畳だのといった家財道具、もう1台は麦や米、乾燥肉等の食料、残り2台には太ましい輩が合計15人乗っている。
そして牛車の後に、1kmくらい人の列が伸びている。
人数が多いからというのではなく、統制がとれていないという感じだ。
ついでに言うと先行している約300人と今回の約100人の後は、今のところ感知出来ない。
何というか、ボロボロだ。
あとビブラム達や先行する約300人の集団は、しっかり統制がとれていたのだという事を実感した。
「とりあえず出迎えと処理の為、行ってきます」
キンビーラ達にそう声をかけて、国境へと移動。
先頭を行く牛車の100m位前へと出現する。
牛車は私の10m手前で停まった。
まずは従者らしい若い男が降りて、私の方へ走ってくる。
「こちらは本日ケカハへと帰還する、ヨーナリ・ルロキ・イーザキ様です。失礼ですがケカハの新しい土地神様でいらっしゃいますでしょうか」
自分の主人に様を付けるのは、この世界の場合ありなのだろうか。
『正式には無しです。ただそういった教養はまだこの世界では一般化していません。ですので地方農村レベルでは誤用とされない場合も多い模様です』
全知がそう言うなら、まあそうなのだろう。
そう思いつつ返答する。
「ええ。コトーミです。とりあえず確認したい事がありますから、この先右側にある休憩所に入って待つように願います」
「わかりました。それでは御指示通り、そちらの休憩所に入ります」
若い男は一礼すると、牛車へ戻っていく。
途中で先頭の牛車の車副の男に何か指示しただけで、後ろを歩く者達には特に何も指示する様子なく牛車に乗り込んだ。
そしてそのまま、牛車は動き始める。
後ろへの指示はどうなっているのだろう。
『ヨーナリの直轄区の住民は、朝7の鐘の時刻に全員集合するよう命令され、集合した時点でそのまま前の牛車に続いて歩くようにと指示されました。
なおそれ以前に、移動日程や、そもそも何処へ何の為に移動するか等についての説明は一切ありませんでした。ですので一般住民は集合時の服装のまま、家財道具等も一切持たず、ここまで歩かされている状態です」
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