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第19話 避難民の帰還
77 避難民帰還 ⑵ と、刑務所と
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何というか、私の予想以上に酷すぎる。
此処で一般の移住者と別けた方がいいだろう。
ついでに言うと、こんな連中なら多少ショックがあっても問題あるまい。
ならさっさと、全在を使って移動させてしまえ。
という事で急遽、移動先となる隔離小屋を全在で作る。
窓は鉄格子入りで、出入口は無しでいいだろう。
床も土で十分だ。
頑丈さだけは間違いない四角い建物が出来た時点で、牛車とその一行を全員収納して、牛車内にいた15人を……
いや、こいつらを一緒にすると、更に内部で面倒を起こしそうだ。
なので隔離小屋を16の区画に仕切って、それぞれの顔は見えないよう明かり取り&空気入れかえ用の鉄格子窓を天井付近に設けた。
つまりは廊下がない独房だ。床は土のままだけれど。
1人ずつその区画に放り込んで、当座の処理は完了。
あとは通常の移住者の処理が終わってから、処理を行うとしよう。
さて、牛車の列が消えて驚いている皆さんに説明だ。
「私はケカハの新しい土地神のコトーミです。これから今回こちらまで来ていただいた経緯と現在の状況を説明したいと思います。右手に見える建物へとお入りください。休憩できる場所と、簡単な間食を用意してあります」
とりあえず何故こうなったのかや、今回の移動の目的、更にはヨーナリ達の身柄確保等について説明する必要があるだろう。
ただ今回は統制がとれていないので、後方にいる人まで待っていると、半時間近くかかりそうだ。
ただこの皆さんは休憩が必要そうだ。
だから軽く食事を出して、ゆっくり休憩して貰おう。
今回の軽食はイナゴマメパウダー入りクッキーではなく、冷たい肉うどんだ。
丼とフォークは300人分用意したから、問題は全く無い。
◇◇◇
トヨハマに出している顕現のほか、アルツァーヤやキンビーラがいる岩場にも顕現を1体出す。
アルツァーヤに説明と許可を貰う為だ。
「すみません。やはり代表者がどうしようもない輩だったようで……」
事前の指示が駄目駄目だろう事、住民に何も言わないで連れ出して来た事、後続600人余が来る様子が無い事をささっと説明。
「……ですので申し訳ありませんが、事態解決の為に今回と明日くらいに避難民の村に行きたいと思うのですが、よろしいでしょうか」
侵略の意図は全く無いし、アルツァーヤも疑うことはないとは思う。
それでも余所様の領地に入るのだから、一言断っておいた方がいいだろう。
「ええ、それはかまいませんわ。ただどれだけ酷いのか、本人を確認したいのですがよろしいでしょうか」
「ええ。トヨハマ施設の裏に作った収容小屋に閉じ込めてあります。見ると腹が立つと思いますが、後で見せしめとして使う可能性があるので、とりあえず動き回れる程度には生かしておいてください」
「わかりました。あと移住者の後続ですが、村を出ていません。それ以上の事については、実際に自分の目で見た方がいいですわ」
なるほど、何かが起こっているという事か。
「わかりました。ありがとうございます」
「私も見学していいだろうか。どんな輩が何をやったかの他に、コトーミがどうやって移住者を移動させているかも見てみたい」
もちろんキンビーラが見学しても問題ない。
「ええ、結構ですわ。向こうにも私の顕現がおりますので、何かありましたらそちらまでどうぞ。それでは避難民の村へ行って参ります」
私の領地の外なので、念のため神力を3,000程確保してから、まずはトヨハマ近くの路上、境の場所へと移動。
あとは先程移住者を見て確認したルートを、目視出来る範囲で瞬間移動して、村を目指す。
道なりで大体12km、歩くと2~3時間の道のりを、全在を使用して10分少々で移動。
村がぎりぎり視界にはいった瞬間、私は村に何が起きたのか理解した。
反乱だ。
武装していた連中が先に行ってしまったので、残った駄目な区長を守るものが何も無くなってしまった。
結果、移動どころか区長が拘束されて終わってしまった訳だ。
此処は領地内ではないから、見える範囲の相手にしか神託を下せない。
とりあえず、出来るだけ多くの人に状況を連絡しようとしたところで、ふっと左側に神力を感じる。
アルツァーヤが出現した。
「コトハマの方は確認しましたわ。良かれと思って放置していたのがまずかったようです」
「いえ、あの者が愚かすぎただけです。ですがこれでは話が進まないので、村民と話し合いをしようと思います」
「でしたら手を貸していただければ、この村の全員に対して、神託を中継致しますわ」
それは大変に助かる。
「お願いします」
アルツァーヤの手は白くて細長く、爪の形も綺麗だ。
勿論神だからこういった部分だってカスタマイズできる。
しかし意識が行き届かない部分については、どうしても原型の差というのが出てしまうものだ。
なんて事を考えつつ、アルツァーヤの手を握って、神託で呼びかける。
『村の皆さん、ケカハの新しい土地神のコトーミです。現在、セキテツの土地神であるアルツァーヤ様の力を借りて、皆さんに語りかけています……』
◇◇◇
残った600人に移住で問題ない事を確認して貰う為、代表10人にケカハの村へ来て貰って状況を確認させるとか。
ヨーナリと来た約100人の荷物を村からケカハへ運ぶとか。
翌日に状況を確認した代表10人をセキテツの避難村に戻して、話し合いを実施。
その2日後、今度はちゃんと調整した上で600人の移動を実施。
つまり移動に合計4日かかった。
あとヨーナリ一族と親衛隊と駄目区長6人は、全知でこれまでの状況を把握した上で、隔離区画入りとした。
一部ガラス張りの隔離区画内で、働いた分に見合った食料を与えるという仕組みだ。
この処分は、ビブラム達元々の村の幹部と、今回やってきた避難民のうちまともな区長3人とで話し合って決めた。
「率直に言って、ヨーナリ達への恨みはかなり強いです。同じ村の中にいた場合、数日で全員闇討ちされるでしょう」
「しかし追放や単なる死罪ですと、元村民の恨みが収まらない可能性が高いです。ここは残酷ですが、ある程度時間をかけて、ヨーナリらが苦しんで倒れていくのを見せる必要があります」
「ただ処分の為に食料を費やすというのは、納得出来ない村民が多いでしょう。自分達が生きる分は自分達で自給し、その上で罰則分を納めるという形が必要です」
やってきた区長3人のそんな意見に、ビブラム達ですら同意した結果が、刑務所というにも過酷な状態になった訳だ。
隔離区画は畑2面(600坪)、浄水、下水あり、最低限の屋根と寝場所ありという造りだ。
周囲を囲んでいる壁の一部はガラス製で、畑や寝場所を視認出来る。
通常の農民のように真面目に働けば、自給以上の食料は確保出来る状況だ。
1日1回、畑の様子を見て、手入れがなされていれば最低限の食料や燃料を小窓から差し入れる。
畑が荒れていたり等、作業の痕跡がない場合は、食料等の差し入れは無い。
農作物が収穫出来れば、その量に応じて罰金額から引かれていく。
罰金が0になれば、隔離区画から出る事が出来るという仕組みだ。
ただし実際に出る事が出来るかは……
「今回入れられた連中のほとんどは、脱出出来ないまま朽ちるでしょう。この10年遊び暮らしたせいで、農業が出来ない身体と精神になってしまっていますから」
区長の1人から出たこの意見が、実際のところだろう。
ただ何人かが無残に倒れる事で、他の者に対する村民の恨みも少しは晴れる可能性がある。
そうしてここから出られる者が何人かいれば、全員が闇討ちに遭うより、少しは救いがあるのかもしれない。
此処で一般の移住者と別けた方がいいだろう。
ついでに言うと、こんな連中なら多少ショックがあっても問題あるまい。
ならさっさと、全在を使って移動させてしまえ。
という事で急遽、移動先となる隔離小屋を全在で作る。
窓は鉄格子入りで、出入口は無しでいいだろう。
床も土で十分だ。
頑丈さだけは間違いない四角い建物が出来た時点で、牛車とその一行を全員収納して、牛車内にいた15人を……
いや、こいつらを一緒にすると、更に内部で面倒を起こしそうだ。
なので隔離小屋を16の区画に仕切って、それぞれの顔は見えないよう明かり取り&空気入れかえ用の鉄格子窓を天井付近に設けた。
つまりは廊下がない独房だ。床は土のままだけれど。
1人ずつその区画に放り込んで、当座の処理は完了。
あとは通常の移住者の処理が終わってから、処理を行うとしよう。
さて、牛車の列が消えて驚いている皆さんに説明だ。
「私はケカハの新しい土地神のコトーミです。これから今回こちらまで来ていただいた経緯と現在の状況を説明したいと思います。右手に見える建物へとお入りください。休憩できる場所と、簡単な間食を用意してあります」
とりあえず何故こうなったのかや、今回の移動の目的、更にはヨーナリ達の身柄確保等について説明する必要があるだろう。
ただ今回は統制がとれていないので、後方にいる人まで待っていると、半時間近くかかりそうだ。
ただこの皆さんは休憩が必要そうだ。
だから軽く食事を出して、ゆっくり休憩して貰おう。
今回の軽食はイナゴマメパウダー入りクッキーではなく、冷たい肉うどんだ。
丼とフォークは300人分用意したから、問題は全く無い。
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トヨハマに出している顕現のほか、アルツァーヤやキンビーラがいる岩場にも顕現を1体出す。
アルツァーヤに説明と許可を貰う為だ。
「すみません。やはり代表者がどうしようもない輩だったようで……」
事前の指示が駄目駄目だろう事、住民に何も言わないで連れ出して来た事、後続600人余が来る様子が無い事をささっと説明。
「……ですので申し訳ありませんが、事態解決の為に今回と明日くらいに避難民の村に行きたいと思うのですが、よろしいでしょうか」
侵略の意図は全く無いし、アルツァーヤも疑うことはないとは思う。
それでも余所様の領地に入るのだから、一言断っておいた方がいいだろう。
「ええ、それはかまいませんわ。ただどれだけ酷いのか、本人を確認したいのですがよろしいでしょうか」
「ええ。トヨハマ施設の裏に作った収容小屋に閉じ込めてあります。見ると腹が立つと思いますが、後で見せしめとして使う可能性があるので、とりあえず動き回れる程度には生かしておいてください」
「わかりました。あと移住者の後続ですが、村を出ていません。それ以上の事については、実際に自分の目で見た方がいいですわ」
なるほど、何かが起こっているという事か。
「わかりました。ありがとうございます」
「私も見学していいだろうか。どんな輩が何をやったかの他に、コトーミがどうやって移住者を移動させているかも見てみたい」
もちろんキンビーラが見学しても問題ない。
「ええ、結構ですわ。向こうにも私の顕現がおりますので、何かありましたらそちらまでどうぞ。それでは避難民の村へ行って参ります」
私の領地の外なので、念のため神力を3,000程確保してから、まずはトヨハマ近くの路上、境の場所へと移動。
あとは先程移住者を見て確認したルートを、目視出来る範囲で瞬間移動して、村を目指す。
道なりで大体12km、歩くと2~3時間の道のりを、全在を使用して10分少々で移動。
村がぎりぎり視界にはいった瞬間、私は村に何が起きたのか理解した。
反乱だ。
武装していた連中が先に行ってしまったので、残った駄目な区長を守るものが何も無くなってしまった。
結果、移動どころか区長が拘束されて終わってしまった訳だ。
此処は領地内ではないから、見える範囲の相手にしか神託を下せない。
とりあえず、出来るだけ多くの人に状況を連絡しようとしたところで、ふっと左側に神力を感じる。
アルツァーヤが出現した。
「コトハマの方は確認しましたわ。良かれと思って放置していたのがまずかったようです」
「いえ、あの者が愚かすぎただけです。ですがこれでは話が進まないので、村民と話し合いをしようと思います」
「でしたら手を貸していただければ、この村の全員に対して、神託を中継致しますわ」
それは大変に助かる。
「お願いします」
アルツァーヤの手は白くて細長く、爪の形も綺麗だ。
勿論神だからこういった部分だってカスタマイズできる。
しかし意識が行き届かない部分については、どうしても原型の差というのが出てしまうものだ。
なんて事を考えつつ、アルツァーヤの手を握って、神託で呼びかける。
『村の皆さん、ケカハの新しい土地神のコトーミです。現在、セキテツの土地神であるアルツァーヤ様の力を借りて、皆さんに語りかけています……』
◇◇◇
残った600人に移住で問題ない事を確認して貰う為、代表10人にケカハの村へ来て貰って状況を確認させるとか。
ヨーナリと来た約100人の荷物を村からケカハへ運ぶとか。
翌日に状況を確認した代表10人をセキテツの避難村に戻して、話し合いを実施。
その2日後、今度はちゃんと調整した上で600人の移動を実施。
つまり移動に合計4日かかった。
あとヨーナリ一族と親衛隊と駄目区長6人は、全知でこれまでの状況を把握した上で、隔離区画入りとした。
一部ガラス張りの隔離区画内で、働いた分に見合った食料を与えるという仕組みだ。
この処分は、ビブラム達元々の村の幹部と、今回やってきた避難民のうちまともな区長3人とで話し合って決めた。
「率直に言って、ヨーナリ達への恨みはかなり強いです。同じ村の中にいた場合、数日で全員闇討ちされるでしょう」
「しかし追放や単なる死罪ですと、元村民の恨みが収まらない可能性が高いです。ここは残酷ですが、ある程度時間をかけて、ヨーナリらが苦しんで倒れていくのを見せる必要があります」
「ただ処分の為に食料を費やすというのは、納得出来ない村民が多いでしょう。自分達が生きる分は自分達で自給し、その上で罰則分を納めるという形が必要です」
やってきた区長3人のそんな意見に、ビブラム達ですら同意した結果が、刑務所というにも過酷な状態になった訳だ。
隔離区画は畑2面(600坪)、浄水、下水あり、最低限の屋根と寝場所ありという造りだ。
周囲を囲んでいる壁の一部はガラス製で、畑や寝場所を視認出来る。
通常の農民のように真面目に働けば、自給以上の食料は確保出来る状況だ。
1日1回、畑の様子を見て、手入れがなされていれば最低限の食料や燃料を小窓から差し入れる。
畑が荒れていたり等、作業の痕跡がない場合は、食料等の差し入れは無い。
農作物が収穫出来れば、その量に応じて罰金額から引かれていく。
罰金が0になれば、隔離区画から出る事が出来るという仕組みだ。
ただし実際に出る事が出来るかは……
「今回入れられた連中のほとんどは、脱出出来ないまま朽ちるでしょう。この10年遊び暮らしたせいで、農業が出来ない身体と精神になってしまっていますから」
区長の1人から出たこの意見が、実際のところだろう。
ただ何人かが無残に倒れる事で、他の者に対する村民の恨みも少しは晴れる可能性がある。
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○○○
旧版を基に再編集しています。
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