異世界まではあと何日

於田縫紀

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第5章 1週間後の現況は

第20話 働き過ぎでノックアウト

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 家へ無事到着。
 まずは買って来たものを冷蔵庫へ。
 
 そして次はテーブルに移動。
 タブレットを起動してメモ帳を開く。
 
 ここに異世界に行く際に必要なものを随時メモしている。
 思いついた時にメモしておかないと用意出来ずに向こうで困るかもしれないから。

 〇 床と壁と天井がある家
 〇 ベッド、布団一式含む
 〇 テーブル、椅子含む
 〇 キッチンにある鍋全部
 〇 包丁全部、キッチン用ハサミ、その他カトラリー全部
 〇 洗面器
 〇 ボディソープ
 〇 ボディブラシ
 〇 服、今持っているもの下着から全て
 〇 下着とTシャツ、軍手の追加分
 〇 タオル全部+やや多めに
 ……etc
 こんな感じで改行しながらテキストファイル形式で書いている。
 
 スマホを出して一時メモを起動。
 スーパーでメモした内容を見ながら鶏さばきセットをタブレットの方のメモに加える。

 〇 手斧
 〇 木製の手ごろな台
 〇 ロープ
 〇 バケツ
 〇 寸胴鍋 最低でも30cmクラス

 よし、忘れないうちにメモに追加出来た。
 任務完了だ。

 それにしても昨日、今日とかなり動けた。
 買い物をしたり長時間外を歩いたり。
 我ながら進歩したものだ。
 なかなか宜しい。

 なら今度からベッドではなく、このテーブルで勉強したり持ち物計画を練ったりしようかな。
 食事も自炊して。
 材料は買ってきて冷蔵庫に入っている。
 
 なら計画のファイルもパソコンに移動させよう。
 キーボードの方が画面タッチより文字入力が早い。
 スピーカーの音質もましな筈だ。

 パソコンでやるならただのメモ、テキストファイルよりも表計算シートの方がいい。
 様式を同一にすればカット&ペーストでWebサイトの持ち物リストへ動かすのも簡単。

 勿論直接サイトの方にメモした方が早い事は早いだろう。
 しかしその前にワンクッション置いて検討する余地を作っておきたい。
 こうしておけば加除訂正する際に前のデータを残しておけるなんて利点もある。
 よし、パソコンを起動だ。

 最近起動していないけれど大丈夫かな。
 そう思いつつ電源ボタンを押す。
 数秒後、ディスプレィが初期画面を表示した。
 パスワードを打ち込んでやると無事デスクトップ表示となる。

 この画面を見るのも久しぶりだなと思う。
 画面の背景はは大学時代に行ったサバイバル合宿の時のもの。
 私と坂入先輩がそれぞれ自分が釣った獲物を持ってポーズしている。

 私は全長30㎝超の黒鯛を抱え満面の笑顔。
 坂入先輩はこの時不調でちっこいサバを持ってぶぜんとした表情。
 もっとも先輩はこの後でかいイカを釣り上げたのだけれども。
 
 こんな場所にまた行けるんだな。
 もし移住計画が本物ならば。
 そう思いながらブラウザを起動し、オンラインの表計算を開く。
 あと移住計画のサイトも別窓で開いてと。
 持ち物リストの画面へと移動。

 移住計画の持ち物リストの項目名のところにカーソルを移動。
 シフトを押しながらカーソルキーをだだっと左移動。

 おし、コピー出来た。
 表計算のワークシート最上段に項目名をペーストする。
 これで項目名が持ち物リストと同一の並び順となった。

 次はデータ移動だ。
 タブレットとパソコンとケーブルつないでファイルを移動させ、メモをエディタで開く。
 メモをコピーして、ワークシートの項目名のところに貼り付ければ移動作業は完了だ。

 ただ、メモと項目名では書き方がかなり異なる。
 だからここからは記載内容の正規化というか整備作業。

 取り敢えずマクロをささっと作って項目名の『〇 』部分をまとめて削除。
 あとは手作業で『ベッド、布団一式含む』を『ベッド』、『布団一式』へと行を増やしてなおす等の作業を行う。

 最後の行、寸胴鍋まで終わって一息。
 時計を見るともう午前8時になっている。

 うん、いい仕事をした。
 そう思いながら出来たワークシートを眺める。 
 こうなるとただのメモというより計画のリストという雰囲気になるな。

 そんな事を思った時だった。
 私は異変に気付いた。

 何か調子が悪い気がする。
 胃か胸かがむかむかする気がする。
 明らかに気持ち悪い。

 久しぶりにしっかり服を着て動いたせいだろうか。
 ブラも胸部を圧迫しているし。

 急いで服を脱ぎ捨てる。
 下着も含め全部だ。
 たたむのはあとでいい。
 今は気持ち悪さの方が優先だ。

 全部脱いだ。
 しかしこれでも気持ち悪さが収まらない。
 しかも脚も節々が痛い気がする。
 駄目だ。
 自動保存が有効なのを確認してワークシートを閉じ、パソコンをシャットダウン。
 電源が切れるのを待たずそのままベッドへ避難。

 筋肉痛になるにしても早すぎる。
 これは単なる疲れだろう。
 久しぶりに服を着て長時間歩いたのだから仕方ない。

 脳みその一部はそう冷静に判断をしている。
 しかし身体の大部分はいう事をきかない。

 気持ち悪い。
 節々が痛い。
 更に脚の一部がむずむずとしてきた。
 どうしよう、何とかしたい。
 このままでは耐えられない。

 どうにもならない衝動が私を襲う。
 うつが酷い時によく襲ってきたおぼえがある衝動が。

 もう自分自身ではどうしようもない。
 私はベッドから手をのばしてグッズを取る。
 固形バランス栄養食の箱と薬袋と水のペットボトル。

 固形バランス栄養食を水で押し流し、更に不調時用の頓服も1錠水で押し流す。
 あとは薬が効くか眠ってしまうまで我慢だ。
 呼吸をゆっくり正確に行う事を心掛けつつ耐える。

 気持ち悪さ、何とかしたさはおさまらない。
 更にマイナスな感情まで襲ってくる。

 どうせこの異世界移住なんて詐欺なのだろうとか。
 だから勉強や運動なんてしても無意味だとか。
 
 どうせ復職しても意味はあまりないとか。
 このまま独りで何も為す事なく死んでいくのだろうとか。
 苦しい思いをしてまで生きている意味はないだろうとか。
 
 死にたくなってきた。
 死にたい感情が襲ってきた。
 移住計画に出会ってから感じなくなっていたのに。

 死んだ方が楽だ。
 耐えていても意味なんてない。
 そんな押し寄せてくる声に必死で抗う。 
 
 早く薬よ効いてくれ。
 さもなくば睡魔、さっさと私を攫ってくれ。
 そう思いながら私は気持ち悪さと死にたさに抗い続ける……
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