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第十三話
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森を出てから一日経ち、現在僕達はサディア近辺の街道で、遭遇したゴブリンと戦っていた。
「ソルカ! 一体そっちへ行ったぞ!」
「了解!」
スカーレットの指示を受けた僕は、迫り来るゴブリンに対して正面で剣を構える。
「ギシャー!」
そうゴブリンは叫びながら、小さな棍棒を振り上げながら、馬鹿正直に正面から飛びかかって来た。しかし、僕は冷静にその攻撃を、横に飛び退いて交わしてから、上段で構えた剣を振り下ろし胴体を両断する。
「ふん!」
「グェッ!」
胴体が真っ二つになったゴブリンは、苦痛の声を上げながら、無惨に地面へと転がり息絶える。
「ふふん! 余裕!」
勝ち誇る僕は、彼女に向け親指を立てて合図した。すると、彼女はやれやれと言った感じで頭を振ってから、僕の方へと近づくと、軽く剣の塚で僕の頭を叩いた。
「あだっ! なにするのさぁ」
叩かれた僕は、頭を摩りながら彼女の顔を見上げた。
「敵を倒したからと言って、直ぐに警戒を解くな」
見上げる僕に対して、彼女は少し厳しめの口調でそう言った。
「別に警戒を解いたわけじゃ……一応、魔力感知で周囲を確認してたし」
「お前の未熟な魔力感知で、良くそんな自信を持てたものだな? それに感知範囲外からの奇襲も想定しているのか?」
「うっ……」
「はぁ、獣並みの知性の魔獣ならまだしも、魔物の中には、人に近い知性を持って行動する奴もいる。そう言った奴らは、罠を仕掛けたり、わざと囮を使い油断した所を奇襲したりなど、様々な手で相手を陥れようとしてくるんだ。駆け出し冒険者の多くは、その経験の浅さ故の油断により死ぬ者が多い……だから、確実に安全が確保できるまで、常に気を引き締めておく事を忘れるなよ」
「……分かった。これからは気をつける」
指摘を受けた僕が、そう言って反省をすると、彼女は剣を鞘に納め頷きながら、軽く僕の頭を撫でた。
─────
「ねぇ? ゴブリンって一匹あたりの報酬ってどれ位なの?」
仕留めたゴブリン達の体の一部を切り取っていた僕は、ふとそう彼女に尋ねた。
「銭貨五枚だな。情勢によっては、ほんの少しくらいは上がるだろうが、ギルドの報酬規約ではそうなっている」
「ふーん、案外少ないんだ」
「まぁ、数が多ければこの上なく厄介だが、一匹辺りの強さは大した事は無いからな。恐らくコイツらは、群れから逸れたゴブリンだと思うが、そうだとすると少し変だな……」
そう言った彼女は、何やら訝しげな様子で周囲を見渡していた。
「変って……あ、それってこのゴブリン達が、武器を使ってたから?」
前に本で読んだ事があるのだが、基本ゴブリンは群れで行動する魔物だが、その規模を判断する基準の一つとして、道具や武器を使っているか否かと言うのを見た記憶を思い出した。それによれば、少数のゴブリンが武装をしていたら、大きい群れの囮の可能性が高い為注意が必要らいしい。
「その通りだが……はぁ、それを知っていた上で油断するとは……まぁ、これからは気をつける様にな。それと、サディアに着くまでは、いつでも剣を抜ける様に、準備しておく様に……もしかしたら、この後も戦闘があるかもしれ無いからな」
「あはは……了解しました」
彼女の呆れた様子に、僕は軽く引き攣り笑いをしながら返事をした。
────
その後、スカーレットの予想通り、道中武装したゴブリン達との戦闘を繰り返していた。しかし、特に罠に誘い込まれている気配は無く、寧ろサディアまでの道を塞いでいる様な感じであった。
「んしょっ! ふぅ、これで20匹くらいは倒したよね?」
流石にこうも連戦続きだと、相手がゴブリンとはいえ疲れが溜まるもので、剥ぎ取りをしていた僕は、少し滲んだ額の汗を拭きながら彼女に尋ねた。
「あぁ……しかし、このままだとサディアに着く頃には夕方になっていそうだな」
「夕方かぁ、まぁ僕はもう一日くらい野宿しても良いけど……ん? なんか変な匂いしない?」
ふと僕の鼻に、何やら息の詰まるの様な、少し鼻腔をチクチクと刺激する臭いが漂ってくる。
「ん? 私は特に匂いは感じないが……」
彼女は特に違和感を覚えていない様子で答えた。
「いや、なんか腐敗臭みたいな感じの匂いなんだけど……」
「袋に入れたゴブリンの一部が匂いを放っているんじゃないか? 仮に近場に腐乱死体があれば、私でも直ぐに分かると思うが……何処からだ?」
「あっちの方だよ」
そう言って僕は、臭いがする方へ指を指す。ちょうど、僕達の進行方向の先からきている様だった。
「ふむ……サディアに向かう方角だな。それなら、このまま進めばいずれその臭いの元が、分かるかもな」
「……うん」
そう言って僕達は、サディアに向けて歩き出した。その後はゴブリン達に遭遇する事なく、小一時間ほど順調に進んでいると、ふと遠巻きに一台の荷台の白い天幕の様な物が見え始めた。それと同時に、何やら錆びつきつつも湿り気のある異臭が微かに漂ってくる。
「ねぇスカーレット、この匂いって……」
「あぁ、血の匂いだな。剣を抜いて周囲を警戒しろ」
「了解」
僕はすかさず腰の剣を抜いて、周囲を見渡しながら、魔力感知で隠れている相手がいないか探り始めた。同じ様にスカーレットも剣を抜き、僕の直ぐ先を歩き始める。進むにつれて、先ほど見えていた馬車の荷台の部分の全容が見え始めると、その有様に生唾を飲み込んだ。遠巻きから見たそれは、無惨にも枠枝が天幕を突き破り、車輪が折れた荷車が放置されていたのだった。
「酷い有様だ」
そう言って彼女は、少し歩みを早めて荷台の方へと近づいた。僕も後に続くと、さっき嗅いだ匂いがより強さを増して漂って来た為、思わず鼻を手で覆ってしまう。しかし、彼女は異臭に怯む事なく、馬車の目の前まで進むと、そこで立ち止まってしまった。そんな彼女の背後から、覗き込む様に顔を出した僕は、顔を歪めながら目の前の凄惨的な光景を見てしまった。
「うわ……」
馬車の周りには、十人ほどの兵士らしき人達が、血みどろになりながらそこら中に転がっていたのだ。激しい戦闘の痕跡か、付近の草や土の至る所に血が飛び散り、所々の地面に、大きめの窪みが出来ている。
「全滅だな……恐らく死んでから1時間以上は経過しているだろう」
「……」
彼女が告げた事実に言葉が出なかった。こう言った事はよく起こると、知識の中では知っていたが、実際に目の当たりにすると、否応無しに現実の厳しさを突きつけられる気がした。
「魔物に襲われたのかな?」
「……いや、どうやら魔物だけでは無さそうだ」
そう言って彼女は、一体の死体に近づくとその傷跡を確かめ始めた。その様子を後ろから眺めていると、彼女が「この傷だ」と言って、死体の胸部を指差した。僕も近寄って確認すると、胸部から背中に掛けて皮鎧を貫通した刺し傷があった。
「この傷が、魔物以外もいた証拠なの?」
しかし僕は、この傷が魔物以外もいた証拠になるとは思えなかった為、首を傾げながら彼女に尋ねる。
「まぁ、こればかりは経験がものを言うからな……良いか? 基本的にゴブリンみたいな小柄の魔物では、人間とはいえ革鎧を貫通させる程の力は持っていない。たとえ槍などの、長物を持っていたとしても難しい。"ホブゴブリン"などの上位種ならば可能かもしれないが、それにしては狙いが正確すぎる。何せこの兵士は、心臓を一突きで絶命させられているからな。傷跡の大きさからして、直剣ではなく刺突に特化した武器による物だろう。そしてゴブリン種では、その様な繊細な武器を扱えるほど器用では無い。従って魔物以外の第三者……恐らくは暗殺に特化した人間が介入したと見るのが妥当だ」
「……凄い」
彼女の丁寧な説明を聞いた僕は素直な気持ちを言葉にした。いや、目の前にいる彼女が、熟練の冒険者である事は見ていて分かった。しかし、彼女のそれは、明らかに上位の冒険者の中でも抜きん出た何かを秘めている様に感じた。
(そう言えば、スカーレットの冒険者の階級ってどのくらいなんだろう?)
ふと気になった僕は彼女に聞いてみる事にした。
「ねぇ、スカーレットって冒険者として、ギルドに登録してるんだよね?」
「ん? 勿論登録しているが、突然どうした?」
「いや、ちょっとスカーレットの階級が気になってさ……スカーレットって何級?」
「……そうか、まだお前には話してなかったな。私の階級は──ん? この話はまた後にしよう」
突如、彼女の目つきが鋭くなり、途中で話を打ち切ってしまう。それから、壊れた荷台の先をジッと見つめて、警戒態勢に入ってしまった。
「突然どうしたの?」
そう言って僕も、彼女の視線の先を辿ってみる。すると、遠くの方で何やら土煙が上がっており、徐々に此方へ近づいて来ているのが分かった。
「ねぇ、何か近づいてきるけど、隠れなくて良いの?」
「いや、どうやらその心配は無さそうだが……ソルカ、私の指示があるまで変な動きはするなよ?」
「……分かった」
僕はそう言って頷き、彼女と一緒に近づいてくる者を静かに見据えると、直ぐに土煙の正体がはっきり見え始めた。どうやら、馬に乗った一団のようで、先頭の鉄鎧を身に纏った騎士風の男を筆頭に、ここにある死体と同じ革鎧を着た幾人か後ろに続いている。それから一分もしないうちにここへやって来ると、すかさず僕達の周りを取り囲み始めた。それから、先頭を走っていた鉄鎧の男が話しかけてくる。
「私はアンドリュート伯爵直轄近衛部隊戦士長、ダニエル・リヒター! この状況を説明してもらいたい!」
その言葉と同時に周りの兵士達が、一斉に武器をこちらへと向けてくる。
(これって……かなりヤバい状況なんじゃ)
「ソルカ! 一体そっちへ行ったぞ!」
「了解!」
スカーレットの指示を受けた僕は、迫り来るゴブリンに対して正面で剣を構える。
「ギシャー!」
そうゴブリンは叫びながら、小さな棍棒を振り上げながら、馬鹿正直に正面から飛びかかって来た。しかし、僕は冷静にその攻撃を、横に飛び退いて交わしてから、上段で構えた剣を振り下ろし胴体を両断する。
「ふん!」
「グェッ!」
胴体が真っ二つになったゴブリンは、苦痛の声を上げながら、無惨に地面へと転がり息絶える。
「ふふん! 余裕!」
勝ち誇る僕は、彼女に向け親指を立てて合図した。すると、彼女はやれやれと言った感じで頭を振ってから、僕の方へと近づくと、軽く剣の塚で僕の頭を叩いた。
「あだっ! なにするのさぁ」
叩かれた僕は、頭を摩りながら彼女の顔を見上げた。
「敵を倒したからと言って、直ぐに警戒を解くな」
見上げる僕に対して、彼女は少し厳しめの口調でそう言った。
「別に警戒を解いたわけじゃ……一応、魔力感知で周囲を確認してたし」
「お前の未熟な魔力感知で、良くそんな自信を持てたものだな? それに感知範囲外からの奇襲も想定しているのか?」
「うっ……」
「はぁ、獣並みの知性の魔獣ならまだしも、魔物の中には、人に近い知性を持って行動する奴もいる。そう言った奴らは、罠を仕掛けたり、わざと囮を使い油断した所を奇襲したりなど、様々な手で相手を陥れようとしてくるんだ。駆け出し冒険者の多くは、その経験の浅さ故の油断により死ぬ者が多い……だから、確実に安全が確保できるまで、常に気を引き締めておく事を忘れるなよ」
「……分かった。これからは気をつける」
指摘を受けた僕が、そう言って反省をすると、彼女は剣を鞘に納め頷きながら、軽く僕の頭を撫でた。
─────
「ねぇ? ゴブリンって一匹あたりの報酬ってどれ位なの?」
仕留めたゴブリン達の体の一部を切り取っていた僕は、ふとそう彼女に尋ねた。
「銭貨五枚だな。情勢によっては、ほんの少しくらいは上がるだろうが、ギルドの報酬規約ではそうなっている」
「ふーん、案外少ないんだ」
「まぁ、数が多ければこの上なく厄介だが、一匹辺りの強さは大した事は無いからな。恐らくコイツらは、群れから逸れたゴブリンだと思うが、そうだとすると少し変だな……」
そう言った彼女は、何やら訝しげな様子で周囲を見渡していた。
「変って……あ、それってこのゴブリン達が、武器を使ってたから?」
前に本で読んだ事があるのだが、基本ゴブリンは群れで行動する魔物だが、その規模を判断する基準の一つとして、道具や武器を使っているか否かと言うのを見た記憶を思い出した。それによれば、少数のゴブリンが武装をしていたら、大きい群れの囮の可能性が高い為注意が必要らいしい。
「その通りだが……はぁ、それを知っていた上で油断するとは……まぁ、これからは気をつける様にな。それと、サディアに着くまでは、いつでも剣を抜ける様に、準備しておく様に……もしかしたら、この後も戦闘があるかもしれ無いからな」
「あはは……了解しました」
彼女の呆れた様子に、僕は軽く引き攣り笑いをしながら返事をした。
────
その後、スカーレットの予想通り、道中武装したゴブリン達との戦闘を繰り返していた。しかし、特に罠に誘い込まれている気配は無く、寧ろサディアまでの道を塞いでいる様な感じであった。
「んしょっ! ふぅ、これで20匹くらいは倒したよね?」
流石にこうも連戦続きだと、相手がゴブリンとはいえ疲れが溜まるもので、剥ぎ取りをしていた僕は、少し滲んだ額の汗を拭きながら彼女に尋ねた。
「あぁ……しかし、このままだとサディアに着く頃には夕方になっていそうだな」
「夕方かぁ、まぁ僕はもう一日くらい野宿しても良いけど……ん? なんか変な匂いしない?」
ふと僕の鼻に、何やら息の詰まるの様な、少し鼻腔をチクチクと刺激する臭いが漂ってくる。
「ん? 私は特に匂いは感じないが……」
彼女は特に違和感を覚えていない様子で答えた。
「いや、なんか腐敗臭みたいな感じの匂いなんだけど……」
「袋に入れたゴブリンの一部が匂いを放っているんじゃないか? 仮に近場に腐乱死体があれば、私でも直ぐに分かると思うが……何処からだ?」
「あっちの方だよ」
そう言って僕は、臭いがする方へ指を指す。ちょうど、僕達の進行方向の先からきている様だった。
「ふむ……サディアに向かう方角だな。それなら、このまま進めばいずれその臭いの元が、分かるかもな」
「……うん」
そう言って僕達は、サディアに向けて歩き出した。その後はゴブリン達に遭遇する事なく、小一時間ほど順調に進んでいると、ふと遠巻きに一台の荷台の白い天幕の様な物が見え始めた。それと同時に、何やら錆びつきつつも湿り気のある異臭が微かに漂ってくる。
「ねぇスカーレット、この匂いって……」
「あぁ、血の匂いだな。剣を抜いて周囲を警戒しろ」
「了解」
僕はすかさず腰の剣を抜いて、周囲を見渡しながら、魔力感知で隠れている相手がいないか探り始めた。同じ様にスカーレットも剣を抜き、僕の直ぐ先を歩き始める。進むにつれて、先ほど見えていた馬車の荷台の部分の全容が見え始めると、その有様に生唾を飲み込んだ。遠巻きから見たそれは、無惨にも枠枝が天幕を突き破り、車輪が折れた荷車が放置されていたのだった。
「酷い有様だ」
そう言って彼女は、少し歩みを早めて荷台の方へと近づいた。僕も後に続くと、さっき嗅いだ匂いがより強さを増して漂って来た為、思わず鼻を手で覆ってしまう。しかし、彼女は異臭に怯む事なく、馬車の目の前まで進むと、そこで立ち止まってしまった。そんな彼女の背後から、覗き込む様に顔を出した僕は、顔を歪めながら目の前の凄惨的な光景を見てしまった。
「うわ……」
馬車の周りには、十人ほどの兵士らしき人達が、血みどろになりながらそこら中に転がっていたのだ。激しい戦闘の痕跡か、付近の草や土の至る所に血が飛び散り、所々の地面に、大きめの窪みが出来ている。
「全滅だな……恐らく死んでから1時間以上は経過しているだろう」
「……」
彼女が告げた事実に言葉が出なかった。こう言った事はよく起こると、知識の中では知っていたが、実際に目の当たりにすると、否応無しに現実の厳しさを突きつけられる気がした。
「魔物に襲われたのかな?」
「……いや、どうやら魔物だけでは無さそうだ」
そう言って彼女は、一体の死体に近づくとその傷跡を確かめ始めた。その様子を後ろから眺めていると、彼女が「この傷だ」と言って、死体の胸部を指差した。僕も近寄って確認すると、胸部から背中に掛けて皮鎧を貫通した刺し傷があった。
「この傷が、魔物以外もいた証拠なの?」
しかし僕は、この傷が魔物以外もいた証拠になるとは思えなかった為、首を傾げながら彼女に尋ねる。
「まぁ、こればかりは経験がものを言うからな……良いか? 基本的にゴブリンみたいな小柄の魔物では、人間とはいえ革鎧を貫通させる程の力は持っていない。たとえ槍などの、長物を持っていたとしても難しい。"ホブゴブリン"などの上位種ならば可能かもしれないが、それにしては狙いが正確すぎる。何せこの兵士は、心臓を一突きで絶命させられているからな。傷跡の大きさからして、直剣ではなく刺突に特化した武器による物だろう。そしてゴブリン種では、その様な繊細な武器を扱えるほど器用では無い。従って魔物以外の第三者……恐らくは暗殺に特化した人間が介入したと見るのが妥当だ」
「……凄い」
彼女の丁寧な説明を聞いた僕は素直な気持ちを言葉にした。いや、目の前にいる彼女が、熟練の冒険者である事は見ていて分かった。しかし、彼女のそれは、明らかに上位の冒険者の中でも抜きん出た何かを秘めている様に感じた。
(そう言えば、スカーレットの冒険者の階級ってどのくらいなんだろう?)
ふと気になった僕は彼女に聞いてみる事にした。
「ねぇ、スカーレットって冒険者として、ギルドに登録してるんだよね?」
「ん? 勿論登録しているが、突然どうした?」
「いや、ちょっとスカーレットの階級が気になってさ……スカーレットって何級?」
「……そうか、まだお前には話してなかったな。私の階級は──ん? この話はまた後にしよう」
突如、彼女の目つきが鋭くなり、途中で話を打ち切ってしまう。それから、壊れた荷台の先をジッと見つめて、警戒態勢に入ってしまった。
「突然どうしたの?」
そう言って僕も、彼女の視線の先を辿ってみる。すると、遠くの方で何やら土煙が上がっており、徐々に此方へ近づいて来ているのが分かった。
「ねぇ、何か近づいてきるけど、隠れなくて良いの?」
「いや、どうやらその心配は無さそうだが……ソルカ、私の指示があるまで変な動きはするなよ?」
「……分かった」
僕はそう言って頷き、彼女と一緒に近づいてくる者を静かに見据えると、直ぐに土煙の正体がはっきり見え始めた。どうやら、馬に乗った一団のようで、先頭の鉄鎧を身に纏った騎士風の男を筆頭に、ここにある死体と同じ革鎧を着た幾人か後ろに続いている。それから一分もしないうちにここへやって来ると、すかさず僕達の周りを取り囲み始めた。それから、先頭を走っていた鉄鎧の男が話しかけてくる。
「私はアンドリュート伯爵直轄近衛部隊戦士長、ダニエル・リヒター! この状況を説明してもらいたい!」
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