23 / 34
四章
離れました⑤
しおりを挟む
「おねえちゃん…泣いてるの?大丈夫?」
「…大丈夫だよ。それより、どうして1人でいるの?」
「…ふぇ?」
災いの元である飛鳥が、ここにいたらシリウスに迷惑が掛かってしまう。エクステリア国から離れないと、と思いながらも腕の中にいる可愛い子供を飛鳥は置いていけなかった。それに、少しでもシリウスの近くに居れるのならここから離れたくない。そんな想いが、涙となって流れていたのかもしれない。飛鳥は子供に言われて、自分が泣いている事に気付いた。にこっと笑い大丈夫と伝えると、子供と視線を合わせて今まで疑問に思っていた質問を投げ掛けてみる。質問の意図が分からないのか、きょとん、と首を傾げる子供の表情と仕草に、飛鳥は胸に矢を射抜かれてしまった。
「ひとりじゃないよ!」
可愛い!!!そう思いつつ、質問の答えを考えついたらしい子供が、飛鳥に向かってニコッと満面の笑顔を浮かべながら答えた。1人だと思っていた自分の耳に入って来た衝撃発言。静かにしてみると、1階の廊下や部屋からは足音や話し声が聞こえていた。今までどこにいたのかと聞きたくなる程の大人数がせっせと仕事に励むように早足で廊下を歩いているみたい。飛鳥は不法侵入で捕まってしまうのではと不安になってしまった。捕まれば本当にシリウスの邪魔になってしまう。しかし、飛鳥のそんな焦りを全く持って知らない子供は、さっきまで泣いてたのが嘘のようにニコニコとずっと笑顔。しかも、自分から離れる様子も見せない。
「……えっと」
「ボクの名前はシリア!…これ、父さまの名前から取ってくれたんだっ!」
「…シリアくん……お父さんのお名前は?」
少年の名前を知らないのにやっと気付いて戸惑いを見せる。それに気付いたシリアが自分の名前を伝えてくれた。ピンっと立ったケモ耳と尻尾、ニッと八重歯を見せて笑うシリアは、自分の名前が自慢なのだろう。だが、名前を聞いてしまった飛鳥は、それを余裕で見ている事など出来なかった。シリアなんて名前をエクステリア国で聞いた事がなかったから。まだ、見たこともないシリウスの五歳の弟の名前はイーシャン。てっきりイーシャンだと思っていた飛鳥は戸惑いを覚えて、ついシリアの父親の名前を尋ねてしまっていた。
「……?シリウスだよ!ボクの父さまはエクステリアの国王さまで、母さまは人間なんだけど、父さまにすっごい愛されててっ。でも、母さまが初めてライオン族の女の子を生んだから――」
両親がとても好きなのが、シリアの口調や態度でとても伝わってくる。しかし、飛鳥は頭上にタライを落とされてしまったような衝撃と、予想が当たっていた消失感で胸が苦しかった。シリアの名前は、シリウスのシリと、リリアスのアから取ったのだろう。自分が居なくなったあと、彼は婚約者を見つけたのだろうと直ぐに予想が出来てしまった。
(転送に失敗するなら、もっと違う場所に連れてってくれれば良かったのに・・)
飛鳥はシリアが喋り続けている内容が頭に入らず、相槌を打つ事しか出来なかった。このままここにいれば、また泣いてしまうかもしれない。彼らの幸せな夫婦の姿を見る前に、早くこの場から離れたい衝動に駆られてしまった飛鳥はシリアを離すと無意識に駆け出していた。廊下を走っている姿を、怪訝そうに見ているメイドや執事たちが見えたけど気にする余裕もなく、屋敷から飛び出してしまう。その後ろからシリアが追って来ているなんて全く気付く事が出来ず、ただ飛鳥は夢中で走り続けていた。
そんなシリアと飛鳥の姿を、屋敷の窓際から眺めている二人の人物がいた。
「本当に、昔から変わっていないな…」
「ふふ…それでも、私を愛してくれてる?」
「俺は変わらず、お前しか愛せないよ」
「…私も永遠に貴方だけ」
男は妻の腰に腕を回して、昔を思い出してクスッと笑う。妻が、旦那を見つめて問い掛けると、心外だとばかりに苦笑を浮かべた男は妻を抱きかかえ、そのままベットに連れ込ていく。妻を押し倒しながら耳許で囁くと、妻も最愛の男の首に腕を回しながら幸せな笑みを向けたのだった。
「…大丈夫だよ。それより、どうして1人でいるの?」
「…ふぇ?」
災いの元である飛鳥が、ここにいたらシリウスに迷惑が掛かってしまう。エクステリア国から離れないと、と思いながらも腕の中にいる可愛い子供を飛鳥は置いていけなかった。それに、少しでもシリウスの近くに居れるのならここから離れたくない。そんな想いが、涙となって流れていたのかもしれない。飛鳥は子供に言われて、自分が泣いている事に気付いた。にこっと笑い大丈夫と伝えると、子供と視線を合わせて今まで疑問に思っていた質問を投げ掛けてみる。質問の意図が分からないのか、きょとん、と首を傾げる子供の表情と仕草に、飛鳥は胸に矢を射抜かれてしまった。
「ひとりじゃないよ!」
可愛い!!!そう思いつつ、質問の答えを考えついたらしい子供が、飛鳥に向かってニコッと満面の笑顔を浮かべながら答えた。1人だと思っていた自分の耳に入って来た衝撃発言。静かにしてみると、1階の廊下や部屋からは足音や話し声が聞こえていた。今までどこにいたのかと聞きたくなる程の大人数がせっせと仕事に励むように早足で廊下を歩いているみたい。飛鳥は不法侵入で捕まってしまうのではと不安になってしまった。捕まれば本当にシリウスの邪魔になってしまう。しかし、飛鳥のそんな焦りを全く持って知らない子供は、さっきまで泣いてたのが嘘のようにニコニコとずっと笑顔。しかも、自分から離れる様子も見せない。
「……えっと」
「ボクの名前はシリア!…これ、父さまの名前から取ってくれたんだっ!」
「…シリアくん……お父さんのお名前は?」
少年の名前を知らないのにやっと気付いて戸惑いを見せる。それに気付いたシリアが自分の名前を伝えてくれた。ピンっと立ったケモ耳と尻尾、ニッと八重歯を見せて笑うシリアは、自分の名前が自慢なのだろう。だが、名前を聞いてしまった飛鳥は、それを余裕で見ている事など出来なかった。シリアなんて名前をエクステリア国で聞いた事がなかったから。まだ、見たこともないシリウスの五歳の弟の名前はイーシャン。てっきりイーシャンだと思っていた飛鳥は戸惑いを覚えて、ついシリアの父親の名前を尋ねてしまっていた。
「……?シリウスだよ!ボクの父さまはエクステリアの国王さまで、母さまは人間なんだけど、父さまにすっごい愛されててっ。でも、母さまが初めてライオン族の女の子を生んだから――」
両親がとても好きなのが、シリアの口調や態度でとても伝わってくる。しかし、飛鳥は頭上にタライを落とされてしまったような衝撃と、予想が当たっていた消失感で胸が苦しかった。シリアの名前は、シリウスのシリと、リリアスのアから取ったのだろう。自分が居なくなったあと、彼は婚約者を見つけたのだろうと直ぐに予想が出来てしまった。
(転送に失敗するなら、もっと違う場所に連れてってくれれば良かったのに・・)
飛鳥はシリアが喋り続けている内容が頭に入らず、相槌を打つ事しか出来なかった。このままここにいれば、また泣いてしまうかもしれない。彼らの幸せな夫婦の姿を見る前に、早くこの場から離れたい衝動に駆られてしまった飛鳥はシリアを離すと無意識に駆け出していた。廊下を走っている姿を、怪訝そうに見ているメイドや執事たちが見えたけど気にする余裕もなく、屋敷から飛び出してしまう。その後ろからシリアが追って来ているなんて全く気付く事が出来ず、ただ飛鳥は夢中で走り続けていた。
そんなシリアと飛鳥の姿を、屋敷の窓際から眺めている二人の人物がいた。
「本当に、昔から変わっていないな…」
「ふふ…それでも、私を愛してくれてる?」
「俺は変わらず、お前しか愛せないよ」
「…私も永遠に貴方だけ」
男は妻の腰に腕を回して、昔を思い出してクスッと笑う。妻が、旦那を見つめて問い掛けると、心外だとばかりに苦笑を浮かべた男は妻を抱きかかえ、そのままベットに連れ込ていく。妻を押し倒しながら耳許で囁くと、妻も最愛の男の首に腕を回しながら幸せな笑みを向けたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる