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一章
誤解されました③
しおりを挟む呼吸を整えながら自分の身体から手を離す。不意に視線を感じて視線の先に意識を向けると、浴室の入口の壁で寄り掛かっているシリウスが飛鳥をジッと眺めていた。
「シ、シリウスさんっ!?」
さっきまでの行為を見られていたのだと気付いて、飛鳥は慌てて湯船の中で自分の胸を腕で隠す。視線に気付いたらしいシリウスが近付いて来て、急いで背中を向けた。
「……媚薬がまだ効いていたのか」
(なっ!!び、やくって…あの、媚薬!?)
ボソッと呟いたらしいシリウスの言葉は、飛鳥の耳にちゃっかりと聞こえてしまう。小屋で感じた初めての快感。その理由を知ってしまい思い出してしまうと、カアァァァっと顔が真っ赤になった。
「……お前…」
背中を向けてたからシリウスには飛鳥の顔は見えない。ホッとしながらも、恥ずかしくてシリウスの顔が見れないし、今度の呟きは途中で止まったみたいで聞こえない。何も言わないシリウスに不安になって顔だけ彼の方に向けると、濡れるのも構わないみたいに湯船の縁に座って飛鳥に手を伸ばしていた。探る様な視線を向けられて少し不安に感じる。頬に触れる骨張った掌が、撫でるように顎に移動すると持ち上げられる。琥珀色の瞳に捕らえられたように動けなくなって、飛鳥はシリウスの視線から逃れられなくなった。
「……アスカ」
「……っ、…ふ…っ…」
初めて呼ばれた。名前を呼ばれただけなのに胸が激しく高鳴り、締め付けられる。ゆっくりと近付いて来るシリウスに飛鳥も同じ速度で目を閉じていき、そして優しく唇が触れた。初めてでも無いのに何でか泣きそうになるほど、飛鳥の胸をきゅうううっと締め付けながらも熱くさせる。顎に添えられていた手が又頬に添えられると、角度を変えて舌が進入してきた。今までの恋人の中で、飛鳥をキスだけで腰を砕けさせる事が出来た人なんていない。なのに、シリウスのキスは飛鳥を夢中にさせてしまう程甘いモノだった。
コンコン、とドアをノックする音が聞こえたような気がする。耳をピクピクさせたシリウスが、唇を離すと銀糸が伸びているのに気付いて舌で嘗め取った。その仕草を潤んだ瞳で眺めていると、シリウスがぐったりしている飛鳥を横抱きして浴槽から出し、タオル掛けに掛かっている大判のタオルを飛鳥の身体に掛けて浴室から寝室に戻る。
「昼食まで少し寝ていろ…」
昨夜から今だけで、何回絶頂を迎えたのだろう。飛鳥の身体は動く事を止めたようにぐったりとしており、シリウスが心配そうに見つめていた。優しい声に導かれるように、飛鳥はふにゃっと破顔するとそのまま眠り始めた。ゆっくりとキングベットに寝かせ、掛け布団で彼女の身体を隠すと飛鳥の額に優しくキスをしてベットから抜け出す。彼女の笑顔を見たシリウスの頬は少し赤く紅潮しているように見えた。
先程と同じようにコンコン、とノックの音が聞こえてシリウスは入るように声を掛ける。ゆっくりと扉が開き、黒髪の可愛い猫の獣人と白髪の美人な猫の獣人が部屋に入って来た。彼女たちはフリフリのメイド服を着ていて目の前にいるシリウスに深々と頭を下げる。二人を一瞥したシリウスの表情は飛鳥と話している時と真逆の無表情。
「お前たちが尽くす主だ。傷一つ付ける事は許さん」
「「自らの命より大切に致します」」
百獣の王らしい威圧感。冷めたい声色で吐き出したシリウスの言葉に、双子の猫メイドはもう一度深々とお辞儀をする。彼女らの言葉に満足したのか振り返り幸せそうに眠る飛鳥を見つめ、フッと表情を和らげるとドアを開けて出て行った。その様子を見ていた双子の猫メイドは顔を見合わせて目を見開き驚愕したのだった。
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