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一 章 ・ 女 中
陸. おでかけ
しおりを挟む着替え終わって、総司さんとの待ち合わせ場所に向かう。
途中で、平助くんと新八さんと左之さんの三人が何かを話しているのに気付いたけれど左之さんの真剣な表情を見て、気付かれないようにその場から離れた。
「…恋愛相談でもしてたのかな」
平助くんは別として、新八さんは女性に困っていない様子。
門前の掃除をしている時に、新八さん宛のラブレターを時々頼まれていたのを思い出す。
総司さんから恋話を聞いたせいで直ぐに左之さんと恋愛を結び付けそうになってしまう。
「桜…どうかした?」
「え、ああ…お待たせ」
いつの間にか隣にいた総司さんが、ぼけっとしている私に声を掛ける。
考え事しながら歩いてたらいつの間にか待ち合わせ場所に着いていたらしい。
声をかけられて総司さんの存在を認識する。
少し驚いた表情をしながら総司さんと視線を合わせた。
「何かあった? 」
「なに食べようか考えてた…」
ぼけっとしていた理由を問われているのだと気付くも、立ち往生してまで話す内容でもない。
言ってて先走り過ぎたかと内心後悔しても遅く、少しびっくり顔になってる総司さんから視線を外した。
「食い意地はってるとか言わないでね…」
あながち間違えでもないから余計に恥ずかしくって頬を紅潮させながら呟いた。
「僕も早く食べたいから、一緒だね」
ぽんぽん、と頭を撫でながら微笑んだ総司さんが優しい声で頷く。
総司さんの大きな手と表情が私をめいいっぱい甘やかすその行動を嫌とも思わず、逆に安心していた。
「一緒っ」
逆に総司さんと一緒にいると子供に戻っている感覚になる。
それが嫌とも思わないのは何故なんだろう。
そう思いつつ、それを止めようとは思っていなかった。
「迷子にならないように手を離しちゃ駄目だよ?」
「はーい」
頭を撫でていた手が離れ、総司さんの大きな手が私の手を包み込む。
迷子扱いする総司さんに腹を立てれないのは経験してるから。
素直に返事をし、慣れ親しんだように手を握り返すと総司さんに引かれるまま歩き出した。
* * *
総司さんと一緒に、町の甘味処を一店舗ずつ食べ歩きしながら楽しんでいた。
「そこを角を曲がれば美味しい甘味処だ……は?」
最後の甘味処に行く道を案内していた総司さんが途中で呆れた声を漏らした。
「総司さん、どうしたの?――あれって、左之さん?」
「……あんな大きな図体、左之しかいない」
立ち止まった総司さんに話し掛けながら彼の視線の先を見ると、物陰に隠れてるような体勢の後姿を見つけた。
後姿に見覚えがあった桜は、総司に視線を戻しながら聞いてみる。
溜息を漏らした総司さんが呆れたような表情を浮かべたまま頷いた。
「隠れてるのかな?」
「…隠れられてないけどね」
地面に置かれた看板らしき物に左之さんはくっ付いてる。
道端に大きな図体が小さな看板にしがみ付いてるなんて他人から見たら不審者にしか見えない。
知り合いだから見守っていたけれど、総司さんの方は邪魔されたせいで機嫌が悪い。
どうでも良さそうに呟いた総司さんは、私の手を引いて左之さんに近付いた。
「ねえ、斬られたいの?」
この言葉は最近の総司さんにとっては通常運転。
一緒の時に邪魔されると出てしまうらしい。
「何してるの?」
総司さんの言葉に苦笑しながらも、左之さんに声をかけた。
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