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一 章 ・ 女 中
陸. コイバナ
しおりを挟む――ビクッ!!!
前方に気を取られていた左之さんは背後からの声に分かり易く驚く。
隠れてるつもりだった看板に重心をかけてしまったらしく盛大に倒れ込んでしまった。
原田「……総司と桜かよぉぉ…驚かせんなよぉお!」
ガタガタと倒れた看板を直しながら恐る恐る振り返る。
背後にいたのが総司さんと私だと気付いて何故か安堵の表情を浮かべた。
沖田「ふーん、あの子を見てたんだ…。まあ、僕は桜の方が可愛いと思うけど」
原田「確かに桜は可愛い…だが、おまささんは存在自体が神なんだっ!!」
左之さんの横から覗き込んだらしい総司さんが何かを見ながら呟いた。
総司の言葉に異論を唱えようとしたけど、左之さんの方も異論を唱えないで納得してる。
少し恥ずかしげに頬を弛める左之さんの姿に、開きかけていた口を閉じて二人の会話を見守ることにした。
沖田「なら話し掛けて来なよ」
原田「それが出来りゃあ苦労してねぇよぉ…」
どうでも良さ気に冷たく突き放す総司さんに、焦った左之さんは顔を真っ赤にしながら無理無理と首を何度も振る。
原田「そうだ!!協力してくれねぇか!?」
「も、もちろんだよっ!!」
私の存在を思い出したのか、近付いて来た左之さんが必死な形相で肩を掴みながら懇願した。
急に肩を掴まれて拒絶反応で身体が硬くなってしまう。
それを隠すようににっこりと笑顔を向けながら一歩後ずさった。
「ほら、僕の桜に触りすぎだよ…」
私の様子に気付いたらしい総司さんが、左之さんから私を引き剥がす。
背中に引っ付かれる形になってしまったけれど、緊張してしまっていた身体の力が和らいだ気がした。
左之さんから色々と話しを聞いて思ったのは、史実では商家のお嬢さんが左之さんの奥さんになる筈。
しかし、左之さんが教えてくれた人は甘味屋のお嬢さん。
過去が変わってる?
少し不安になったけれど、おまささんって人に何か聞いてみれば分かる事。
それよりも、あんな綺麗な人と仲良くなれるか心配になってしまった。
原田「桜とおまささんが仲良くなってくれれば、自然と俺の事を紹介出来るだろぉ?」
沖田「自分から話し掛ければ良いのに…桜、無理してやらなくて良いんだよ?」
必死に悩み抜いたであろう計画、呆れたように言う総司さんが心配そうな表情浮かべて見つめてくる。
「手伝うって言ったし、ちゃんとやるよ!」
おまささんと仲良くなれるか心配だけれども、必死な左之さんの為に出来る事をしたい。
そう思って笑顔で答えるとガッツポーズをした。
「よ~~し!原田さんハッピーエンド大作戦だ~!」
原田「お、おおう!」
現代用語を無意識に言葉にしてしまいながら笑顔で片手を上に上げる。
左之さんは意味がわからない単語があったらしく一瞬戸惑いを見せるものの真似をしてポーズを取った。
沖田「・・・・何言ってるか分からないけど、桜は何してても可愛いなぁぁ」
眺めていた総司さんは、一つ一つの動作に萌えてるのか弛む口元を手で隠しながら呟いていた。
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