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一 章 ・ 女 中
漆. 夢
しおりを挟むいつの間にか、寄り掛かったまま寝てしまったらしい。
どうしようか悩むが、このまま此処で夜を明かせば桜が風邪を引くだろう。
相手から触れられるのを拒む仕草をする桜に触れるのを躊躇うが、気を取り直して横抱きすると立ち上がった。
「軽い…(しかし、小さいな…)」
そう思った時、自分の胸が速くなっていることに気付いた。
呼吸困難になる程の速さでは無いが、桜を抱いている腕が少し震えている。
戸惑いながらも桜を落とさないように、腕に力を込めて彼女の自室に急いだ。
*****
『仕方ないんだ…』
『そんな!血が繋がって無くてもあの子は私たちの娘よ!』
お父さん…?お母さん…?
何の話をしてるの…?
ねえ、答えてよ!!!
『俺たちの娘だからこそ行かないといけないんだ…分かってくれるだろ?』
『……ええ、引き取る時から私たちは覚悟していた。あの子が可愛くて忘れていたわ』
『俺たちの子供だからきっと大丈夫さ。あの子の人生はあそこにある…俺の人生も、ね…』
『あの子のお陰で私たち一緒に居れるのよね…信じましょう』
お父さん!お母さん!何を知ってるの!?
人生って何!?あそこってどこ!?
ねえ、答えてよぉおおおおおおお!!!!!
*****
――ガバッ!!!!
一気に布団を捲って息を整えた。
「どーゆう事…?あの夢は…、聞いた事ある…」
いつの間に自室に戻って来たのかとか考える余裕も無い。
夢の内容を思い出そうと記憶を辿る。
「あ…中学の時…夜中に話してた…内容?」
ドクンっと心臓が跳ねた。
思考回路が破裂してしまいそうで必死で落ち着こうとする。
「えっ…えっ…、お父さんとお母さんは…知ってた…?」
夢の内容が頭を駆け巡り正常な判断をする事なんて出来なかった。
今まで夢を見ても思い出せない事ばっかりだったのに、今回の夢こそ忘れていて欲しかった思ってしまう。
「知ってて送り出した?何で?どうしてっ?(私が要らなくなった…?)」
そう思った瞬間、サァーっと血の気が引いたのが分かった。
「い…いやあああああああああああああ!!!!!」
頭を押さえて悲痛な声で叫び踞った。
私は、お父さんとお母さんに愛されてない?
私は、もう要らない子になっちゃったの?
私は、もう誰にも愛されないの?
誰か…私を助けて!!!!!!
暗い渦の中に身を投げられた気持ちになり声が枯れるまで叫び続けた。
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