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一章
03,予期せず訪れた来訪者《2018.06.23改稿》
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都の中心部にある王宮から東に抜けた一角には、商団が多く賑わいを見せ、そして様々な容姿の人々が集まっていた。
そこの数店舗ある小さな甘味処の一つに、白銀の髪の女性が働いている。
この女性こそが、六歳まで後宮で暮らしていた国王陛下の娘、楊 紅雪だった。
「二番卓、焼き団子と饅頭二人前!四番卓は、みたらし団子を三人前だって!」
「はいはい、今準備しますね」
紅雪が注文を取り、女将さんが調理する。
こうして十年の歳月を、二人三脚で頑張ってきた店は他の店よりも賑わいをみせていた。
白銀の髪色、蒼珠のまん丸な瞳、笑った時に薄くなる桃色の唇、全てが紅雪を美しく見せるもの。
彼女が目当てで常連になったお客がいる程だった。
「紅雪、出来たよ。持ってておくれ」
「はーい」
女将は、美しく物静かな見た目に反して、ちょこまかと動きまくる彼女を穏やかな眼差しで見つめた。
お客が引っ切りなしに詰め掛けるので、厨房を守る女将も片付けの為に表に出る。
紅雪がお茶のお代わりをお客に楽しそうに振る舞う様子を微笑ましく見ながら、空いた席の食器を片付けていた。
汚れた食器を持ち厨房に戻ろうとしたが、入口に人の気配を感じて女将は視線を向けた。
――ガシャンッ!!!!
大きな音に驚いて振り返る。
紅雪から少し離れた場所で、女将が何故か固まったように動かない。否、動けなかった。
「さ、宰相様…」
少し震えている女将を心配して近づけば、女将の口からとんでもない名前が飛び出した。
宰相って、国王陛下の政務を補佐する最高位の官史でしょ。
それが何で、こんな小さな店に来るの?
てか、女将さんは何で宰相様の顔知っているの?
紅雪は纏まらない疑問を口に出せずに心の中で問い掛けたけど、声に出してないせいで疑問に答えてくれる人は勿論いなかった。
緊迫した空気を肌に感じ取ったお客たちは卓上にお金を置いて、そそくさと店から逃げ出して行くけど、野次馬のように店の外から様子を見ていた。
店内には、私と女将と宰相の三人だけ。
宰相の視線が女将から私へ向けられてドキッとして急に緊張してくる。
威圧的な視線に無意識に背筋を伸ばした時、突然、宰相が何故か深々と頭を下げた。
その突然の行動に驚いたのは紅雪と野次馬たちだけで、女将は驚くこともせず、ただ戸惑いの表情を隠すことが出来ずに宰相を見つめていた。
「紅雪…様。宰相様のお言葉をお聞き下さい」
宰相の行動の意図、女将さんの驚かない理由を理解出来なくて戸惑いの視線を向けると、女将は何かを覚悟したかのような、しっかりとした声で私の名に敬称を付け何故か敬語を使う。
呼ばれた私は、女将の敬語を使う意味も意図も理解出来なかった。
ただ言われた通りに宰相へと視線を向けた。
「紅雪様、私は李 宝徳と申します。これから共に王宮へと参りましょう。王太子殿下がお待ちです」
宰相の言葉を聞いて、何故底辺にいる自分に会うのか、そう疑問に思う前に(一瞬だけ考えたけど)フッと目の前が真っ暗になってしまった。
身体の力が抜けて倒れ込んでしまうが、地面に叩き付けられる前に誰かの腕に支えられる。
何かを思い出すのを拒む様に頭がズキズキと痛み出してしまい、私はそのまま意識を手放してしまった。
そこの数店舗ある小さな甘味処の一つに、白銀の髪の女性が働いている。
この女性こそが、六歳まで後宮で暮らしていた国王陛下の娘、楊 紅雪だった。
「二番卓、焼き団子と饅頭二人前!四番卓は、みたらし団子を三人前だって!」
「はいはい、今準備しますね」
紅雪が注文を取り、女将さんが調理する。
こうして十年の歳月を、二人三脚で頑張ってきた店は他の店よりも賑わいをみせていた。
白銀の髪色、蒼珠のまん丸な瞳、笑った時に薄くなる桃色の唇、全てが紅雪を美しく見せるもの。
彼女が目当てで常連になったお客がいる程だった。
「紅雪、出来たよ。持ってておくれ」
「はーい」
女将は、美しく物静かな見た目に反して、ちょこまかと動きまくる彼女を穏やかな眼差しで見つめた。
お客が引っ切りなしに詰め掛けるので、厨房を守る女将も片付けの為に表に出る。
紅雪がお茶のお代わりをお客に楽しそうに振る舞う様子を微笑ましく見ながら、空いた席の食器を片付けていた。
汚れた食器を持ち厨房に戻ろうとしたが、入口に人の気配を感じて女将は視線を向けた。
――ガシャンッ!!!!
大きな音に驚いて振り返る。
紅雪から少し離れた場所で、女将が何故か固まったように動かない。否、動けなかった。
「さ、宰相様…」
少し震えている女将を心配して近づけば、女将の口からとんでもない名前が飛び出した。
宰相って、国王陛下の政務を補佐する最高位の官史でしょ。
それが何で、こんな小さな店に来るの?
てか、女将さんは何で宰相様の顔知っているの?
紅雪は纏まらない疑問を口に出せずに心の中で問い掛けたけど、声に出してないせいで疑問に答えてくれる人は勿論いなかった。
緊迫した空気を肌に感じ取ったお客たちは卓上にお金を置いて、そそくさと店から逃げ出して行くけど、野次馬のように店の外から様子を見ていた。
店内には、私と女将と宰相の三人だけ。
宰相の視線が女将から私へ向けられてドキッとして急に緊張してくる。
威圧的な視線に無意識に背筋を伸ばした時、突然、宰相が何故か深々と頭を下げた。
その突然の行動に驚いたのは紅雪と野次馬たちだけで、女将は驚くこともせず、ただ戸惑いの表情を隠すことが出来ずに宰相を見つめていた。
「紅雪…様。宰相様のお言葉をお聞き下さい」
宰相の行動の意図、女将さんの驚かない理由を理解出来なくて戸惑いの視線を向けると、女将は何かを覚悟したかのような、しっかりとした声で私の名に敬称を付け何故か敬語を使う。
呼ばれた私は、女将の敬語を使う意味も意図も理解出来なかった。
ただ言われた通りに宰相へと視線を向けた。
「紅雪様、私は李 宝徳と申します。これから共に王宮へと参りましょう。王太子殿下がお待ちです」
宰相の言葉を聞いて、何故底辺にいる自分に会うのか、そう疑問に思う前に(一瞬だけ考えたけど)フッと目の前が真っ暗になってしまった。
身体の力が抜けて倒れ込んでしまうが、地面に叩き付けられる前に誰かの腕に支えられる。
何かを思い出すのを拒む様に頭がズキズキと痛み出してしまい、私はそのまま意識を手放してしまった。
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