5 / 53
一章
04,王太子の命よりも重い指令《2018.06.24改稿》
しおりを挟む「……ん?―――!!?」
目を開けると視界に見えた違和感に驚いて飛び起きてしまう。
豪華な装飾、置物、高価な品々が沢山置かれた部屋をぐるっと見渡して、気絶している間に連れて来られたのだと気付いた。
直ぐにこの場から逃げたい衝動に駆られてしまうけど、安易に逃げて捕まった時にどうなるか解らないので逃げるという選択は今の所しない方が無難だと思いつつ。
(・・・何で、懐かしいと思うのかな)
部屋に関して一度も懐かしいとは思わなかったのに、鼻で嗅いだ室内の御香や体感に触れる空気が懐かしいとまで感じる程、何故か私の五感が刺激されている。
その理由を探ろうと考えていたら、部屋の扉がギィと音を立てて開いた。
先程会った宰相と一緒に室内に入って来た女将が、いつもと違い正装で現れて私に近付いて来る。
侍女姿の女将がスススッと慣れた様子で一度私に頭を下げた後、頭を下げたまま壁際に移動すると、その場所に見たことも無い初対面の三十代位の男が不機嫌そうな表情で立っていた。
紅雪の視線は無意識に相手の顔面を避け、威圧感を漂わせた男が着ている衣服に向かう。
赤色の袍に、腰に下がる翡翠の佩玉。
着用している衣服、纏う雰囲気や威圧感、そして視界に掠った赤髪が男の正体が誰なのかを物語っていた。
「楊 紅雪、王太子殿下に拝謁致します」
誰に言われるまでもなく寝所から出ると、王太子の前で跪いて最高礼をとりながら目の前の人に挨拶をする。
頭上に降り注がれる殿下の視線には侮蔑の感情が滲んでいる様で、私の頬には冷や汗が流れていた。
「一応、旬果に教育されたようだが…まだまだだ。必ず半月以内に完璧に仕上げるんだ――宰相、旬果・・わかったな?」
「御意」
「かしこまりました」
最高礼を取らされたまま頭上から交わされる会話を聞いていると、何となく自分が連れて来られた理由が予想出来てしまい脳が危険信号を発している。
私の予想が外れるように心の中で祈願していたけれど、王太子の「立て」の声が頭上から聞こえてくると、存在を思い出してくれたらしい殿下の視線を受けながらゆっくりと立ち上がった。
「お前は我が義妹達の代わりに蒼鳴国に嫁いで貰う。拒否など認めない。我が国の為に身を捧げろ」
(やっぱり。でも、陛下には嫁がせられる娘がいた筈だよね…あー・・・向こうの皇帝ってお爺ちゃんだったわ…)
外れて欲しかった予想通りの言葉、どう考えても齢六十過ぎの蒼鳴国の枯れた皇帝に子煩悩と知られる陛下が愛娘たちを差し出す姿など想像出来なかった。
表情は変えずに赤髪でもない私に命令を与えた理由を探ろうと、
「私は王女ではありません。王族では無いと髪色で直ぐに気付かれてしまうのではないでしょうか…」
無礼を承知で問い掛けてみる。
王族は、赤を主体とした髪色しか産まれない事は町中の誰でもが知っている。
それなのに何故、滅多に居ない白銀色で異質の私を指名したのか、その理由が知りたくなった。
「髪色など、どうとでもなる。お前は言われた通りに王女教育を受け、蒼鳴国に嫁げば良いのだ」
「殿下の命に従います」
不敬だと罵られる事は無かったけど、指名した理由は教えてくれる気がないらしい。
これ以上の質問は許してくれない雰囲気で、深々とお辞儀をして王太子の意思に従うしか私には出来なかった。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる