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二章
29,初恋は突然に
しおりを挟む「…は?僕の妹を楊皇子に嫁がせる?僕が寝込んでいる間に何があったのさ」
「ああ…それはな――」
寡雲の言葉で、紫攸は四日前の紅淡を殴った後の話を思い返して話し始めた。
≪回想≫
「昨日の鼠はお前か…」
「何故、俺が紅雪の所に行っていると知ったのでしょうか?」
「はあぁ…。お前の義姉がわざわざ弓を放って教えてくれたぜ、密通してるってな」
昨夜、紅雪の元に現れた事を告げられた紫攸は眉間に皺を寄せる。
紅雪が気付いて逃がしてくれた事を告げられた時、紅淡が不思議そうに質問を投げ掛けた。
のんびりしている部分やお人好しな部分は母方の血筋なのかと聞きたくなるほどの鈍感さ、つい溜息が漏れてしまう。
紅雪の方が外にいて場数を踏んでる分、少しは鋭いかもしれない。
雪華の事を伝えると、ショックを受けたように青白い顔を浮かべて項垂れてしまった。
「狙われてんの紅雪だけだと思ってたが、お前も狙われてるかもしれねえな…」
「そう言われると昔っから毒物に当たったり、夜襲を掛けられたりしていました…俺って狙われてたんですね…」
紫攸の言葉にやっと自分の置かれている状況に気付いたらしい紅淡が呟いた。
<何で、そこまで分かりやすい事されてんのに気付かねえんだよ…>
その言葉を聞いた紫攸のほうが逆に呆気に取られてしまった。
「一応、紅雪の兄だし助けてやるよ。亡命でもしてくるか?」
「……あ、あの…俺を助けてくれた方と婚姻する事が出来るのでしたら亡命します」
「―――は?」
こいつは紅雪の兄だ、兄だ、兄だ、っと一種の暗示をしながら提案をした紫攸の言葉に、またもや意味不明な言葉が紅淡から飛び、とうとう紫攸は間抜けな声を漏らしてしまった。
「昨夜の話に戻るのですが、逃げる最中に屋根から落ちてしまったんです。その時、部屋にいた一人に顔を見られてしまい、衛兵を呼ばれると思ったのですが…俺を匿って下さったんです!!彼女の笑顔を見ると胸が高鳴ってしかたないんです…」
「そいつの名前は聞いたのか?」
衛兵を呼んで欲しかった、そう思ったけれど紅淡の胸が高鳴るところは同感してしまう。
後宮を逃げていたなら女官か、下女か、妃嬪しかいない。
誰かしら名前が分かれば捜し易いと名前を問い掛けると、紅淡は信じられない名前を紡いだ。
「関 詩音様と名乗っておりました」
「本気かよ…」
皇后にしようと企んでいる宰相の孫娘の名前を出した紅淡に、紫攸はメンドクサイ気持ちでいっぱいになる。
どんどん複雑に絡み合って行く、現状に紫攸はとうとう盛大な溜息を漏らしてしまったのだった。
≪回想 終≫
「つー訳で、詩音は紅淡と婚姻を結ぶことにすっから。手も出してねえし俺から言えば、宰相も諦めるだろ」
「楊皇子は詩音を幸せに出来るかい?」
「幸せかは二人が決める事だろ…まあ、紅淡は詩音が初恋らしいぜ」
少し不服そうにしていた寡雲も、初恋と聞けば文句を言えなくなってしまう。
恋愛して婚姻するなど殆んど出来ない程、とても難しいことだった。
「詩音に聞いてくるよ…」
寡雲は、詩音の気持ちを知りたいと思い、後宮の一室にいるだろう妹の下に向かったのだった。
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