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終章
50,初恋のその先へ (終)
しおりを挟む「今度、紫峰国に行く事にした」
突然、白蘭宮に現れた紫攸が開口一番に言い放つ。
「…何処に行くと言いました?」
「一応の名目は外交だ…だが、実際は違うけどな」
呆気に取られた一同。
代表となった紅雪が紫攸に問い掛けた。
紅雪の腰に腕を回し抱き締めながら本当の目的を口にする。
「私も行けるのですか?」
「お前が行かないのなら俺も行かねえよ。夢のお告げが紫峰国なら行ってみるしかねえよな」
後宮に入れば廃妃になる以外一生出ることは出来ないと言われていた。
不安げな表情で問い掛けると、紫攸がニッと笑いながら紅雪の白銀髪の頭部に自分の額を乗せる。
「……楽しみです」
「出発は二月後。しっかり静養して必ず治せよ」
今から行く気になってしまった紅雪に出発日を知らせると一瞬残念そうに眉が垂れるが、ウキウキする気持ちは消えないのか、そわそわしていた。
ちゅっ、と額に口付けを落とした紫攸が紅雪の艶やかな白銀髪を撫でる。
肩より上まで短かった髪は、あの日からつけ毛が不要な程また長くなっていた。
「少し庭園を散歩しないか?」
「…………っ。―――はい」
「良かった…なら、行こう」
紫攸が少し緊張気味に問い掛けると紅雪の表情は曇り、腕の中で少し震えていた。
しかし意を決して同意をすると、緊張していた紫攸の表情が和らぐ。
今回は紫攸も一緒なので、他の者たちは紅雪の傍から離れて、他の仕事をしに行っている。
腕に回した腰を支えて先に進む紫攸の後を、紅雪は陛下に守られていると感じながら付いていった。
***
もう、石道には血痕の跡は無い。
紅雪が思い出さないように必死に消してくれたのだろう事が窺えた。
紫攸は初めて紅雪に逢った大木の前に立つと彼女から離れて一度深呼吸をする。
「紅雪、俺と初めて逢った日を覚えているか?あの日、俺は母上に紅雪に逢えと言われたが、逢わずに帰ろうとしたんだ。…だが、お前が偶然現れた。白銀の髪は魅力的に映り、濁り気の無い蒼珠の瞳。見惚れる程にお前は美しかった…初めて恋を知った」
あの日、ここで初めて本当の紅雪を見た想いを紫攸は語り始める。
そして、振り返ると紅雪の前に跪いて彼女の右手に触れた。
「…紫攸様?」
「俺はお前を守ると今度こそ本当に誓う。二度と違える事は無いと約束しよう。――紅雪、愛している」
語り始めた内容に感動していたら、跪いた紫攸の行動に動揺する。
しかし、次がれる誠心誠意の告白は紅雪の胸に自然と染み込み、胸を高鳴らせた。
「……わ、私は―――っ」
「分かっている。それでも俺の半身はお前だけ。一喜一憂するのも、胸が焦がれるのも、胸を高鳴らせる事が出来るのも紅雪だけなんだ…だから、二度と傍を離れないと誓ってくれ」
紅雪は自分の身体が穢れてしまったことを口にしようとすると、紫攸が微笑みを向ける。
知っていても、変わらずに愛を囁いてくれる紫攸の気持ちに涙が溢れた。
「……誓います。二度と紫攸様から離れません」
「…っ、――紅雪!!!」
泣きながら微笑むと紅雪は自分の気持ちを伝えた。
紫攸が満面の笑みを浮かべ立ち上がり紅雪を抱き締める。
喜びを伝えるように口付けをする紫攸の背中に腕を回した。
背中に回した紅雪の右手薬指には、翡翠の指輪が月明かりに照らされて光っている。
彼女が指輪に気付くのはもう少し後かもしれない。
月と満天の星空が見つめる中、紫攸と紅雪は何度もキスをした。
――1stシーズン 終
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