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日常と変化
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いつもと変わらない日だった。夏の終わりかけ。空気が澄んで少ししみる。
もうすでに学校は始まっており、焦ってもおかしくない時間なのだが牧太陽マキタイヨウはあくびをしながらだらだらとバス停から学校までの道をあるく。
太陽は性に奔放であり、はちみつ色に染めた髪と両耳のピアスに端正で甘い顔立ちをしていることもあり、女性にもてる。軽い性格も相まって、いわゆるセフレと呼ばれる女性が複数いる。昨夜もセフレの一人と遅くまで楽しんでいたため家に帰ったのが2時過ぎで、起きた時には学校には間に合わないと悟った。
教室が見えると自然に鼓動が高鳴る。
太陽は同じクラスに好きな人がいた。誰にでも優しくて気遣いができて、頼りにもなる。西端な顔立ちも相まって、男女問わず人気がある。嫌いになる人なんていないんじゃないかというほどにいいひと。濱北総悟ハマキタソウゴ、彼は男だ。
彼と話すようになり、人となりに触れるたび惹かれていった。恋焦がれていった。でもこの思いを伝えることは絶対にないと心に決めている。太陽は濱北の本当の幸せを望んでいる。そこに自分はいないと、そう思っている。普通の幸せをつかんでほしいと。それこそ太陽のエゴでしかないのだが。
教室に入る前にチャイムが鳴る。ちょうど授業が終わったようだ。椅子の引く音が聞こえてがやがやとうるさくなる。教室に入ると顔なじみにあいさつを交わす。
「寝坊か?昨日も遅くまで遊んでたんだろ。」
耳になじんだ声をかけられる。180㎝以上ある長身と程よい筋肉がついた体をしている端整な顔の黒髪の男。箕崎燿大ミザキアキヒロ。何というかこいつはフェロモンをまとっている。むかつくほどかっこいい。こいつもめちゃくちゃモテてセフレもたくさんいる。学校の二大チャラい男としてセットにされることが多い。
「あー、まあ。お前も昨日は遅刻してただろ。」
箕崎も昨日遅刻してきた。朝から誘われたとか何とか言って。
箕崎と軽口をたたいていると、濱北に声をかけられる。ドキッと胸が音を立てる。動揺を悟られないようにヘラりと笑い返事を返す。その間にも気持ちが上昇する。学校に来れば好きな人と会える、会話もできる、笑いかけてもらえる。そんな幸せをかみしめる。これからもそんな日々が続いてほしいと願っていた。だが濱北の言葉に心が冷えた。
「太陽に紹介したい人がいるんだけど、」
なぜかすごく嫌な予感がしてその先を聞きたくなかった。顔がこわばる。
「実は、彼女ができたんだ」
一瞬反応ができなかった。無理やり笑顔を作る。頭の中は真っ白で、でも口からはするりと言葉が出た。
「まじか!ついに濱北に彼女が!」
教室の中からも祝福の声と女子の嘆く声が遠くで聞こえた。
声色も違和感がないように明るい声を出そうと頑張る。頑張ろうと思うのに心が悲鳴を上げてツキンと痛くなる。今まで濱北には彼女がいなかった。なぜいないのか疑問に思うことは少なくなかったが、考えないようにしてきた。濱北に彼女ができたとき、自分がどうなるのか考えたくなかったから。でも確かに濱北に恋人がいないことに、太陽の何かが抑えられていた。
それから何を話したか鮮明に覚えていない。彼女がどんな子か気になるとか、ぜひ会いたいだとか言った気がする。でもはっきりと覚えているのはおめでとうと言えなかったことだけ。
一日授業に身が入らなかった。いつも真面目に聞いているわけでもないのだが居眠りすることもなくどこか上の空であった。いつの間にかすべての授業は終わており放課後になっていた。もう何もやる気が起きない。スマホにはセフレからのお誘いが来ているが、そういう気分にもなれず一人で家に帰宅する。
太陽は母子家庭で一軒家に住んでいる。太陽が中学に上がるころ父が病気で他界し、それからは母と二人で暮らしている。母は仕事で帰宅する時間が遅い。今日もまだ帰ってきていなかった。いつものように夕食を作る気にもなれず自分の部屋に閉じこもった。
いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていた。でも考えたくなかった。たわいのないことで笑いあって、一緒に遊んで、幸せだった。それだけでいいと思っていた。でも濱北が誰かのものになるなんて。こんなにも苦しいだなんて思っていなかった。
自分で自分の肩を強く握る。正しい言葉は口から洩れなかった。ただ瞼を強く閉じ頬を冷たいもので濡らした。どれほど嘆いたのだろう。気づくと眠っていた。
もうすでに学校は始まっており、焦ってもおかしくない時間なのだが牧太陽マキタイヨウはあくびをしながらだらだらとバス停から学校までの道をあるく。
太陽は性に奔放であり、はちみつ色に染めた髪と両耳のピアスに端正で甘い顔立ちをしていることもあり、女性にもてる。軽い性格も相まって、いわゆるセフレと呼ばれる女性が複数いる。昨夜もセフレの一人と遅くまで楽しんでいたため家に帰ったのが2時過ぎで、起きた時には学校には間に合わないと悟った。
教室が見えると自然に鼓動が高鳴る。
太陽は同じクラスに好きな人がいた。誰にでも優しくて気遣いができて、頼りにもなる。西端な顔立ちも相まって、男女問わず人気がある。嫌いになる人なんていないんじゃないかというほどにいいひと。濱北総悟ハマキタソウゴ、彼は男だ。
彼と話すようになり、人となりに触れるたび惹かれていった。恋焦がれていった。でもこの思いを伝えることは絶対にないと心に決めている。太陽は濱北の本当の幸せを望んでいる。そこに自分はいないと、そう思っている。普通の幸せをつかんでほしいと。それこそ太陽のエゴでしかないのだが。
教室に入る前にチャイムが鳴る。ちょうど授業が終わったようだ。椅子の引く音が聞こえてがやがやとうるさくなる。教室に入ると顔なじみにあいさつを交わす。
「寝坊か?昨日も遅くまで遊んでたんだろ。」
耳になじんだ声をかけられる。180㎝以上ある長身と程よい筋肉がついた体をしている端整な顔の黒髪の男。箕崎燿大ミザキアキヒロ。何というかこいつはフェロモンをまとっている。むかつくほどかっこいい。こいつもめちゃくちゃモテてセフレもたくさんいる。学校の二大チャラい男としてセットにされることが多い。
「あー、まあ。お前も昨日は遅刻してただろ。」
箕崎も昨日遅刻してきた。朝から誘われたとか何とか言って。
箕崎と軽口をたたいていると、濱北に声をかけられる。ドキッと胸が音を立てる。動揺を悟られないようにヘラりと笑い返事を返す。その間にも気持ちが上昇する。学校に来れば好きな人と会える、会話もできる、笑いかけてもらえる。そんな幸せをかみしめる。これからもそんな日々が続いてほしいと願っていた。だが濱北の言葉に心が冷えた。
「太陽に紹介したい人がいるんだけど、」
なぜかすごく嫌な予感がしてその先を聞きたくなかった。顔がこわばる。
「実は、彼女ができたんだ」
一瞬反応ができなかった。無理やり笑顔を作る。頭の中は真っ白で、でも口からはするりと言葉が出た。
「まじか!ついに濱北に彼女が!」
教室の中からも祝福の声と女子の嘆く声が遠くで聞こえた。
声色も違和感がないように明るい声を出そうと頑張る。頑張ろうと思うのに心が悲鳴を上げてツキンと痛くなる。今まで濱北には彼女がいなかった。なぜいないのか疑問に思うことは少なくなかったが、考えないようにしてきた。濱北に彼女ができたとき、自分がどうなるのか考えたくなかったから。でも確かに濱北に恋人がいないことに、太陽の何かが抑えられていた。
それから何を話したか鮮明に覚えていない。彼女がどんな子か気になるとか、ぜひ会いたいだとか言った気がする。でもはっきりと覚えているのはおめでとうと言えなかったことだけ。
一日授業に身が入らなかった。いつも真面目に聞いているわけでもないのだが居眠りすることもなくどこか上の空であった。いつの間にかすべての授業は終わており放課後になっていた。もう何もやる気が起きない。スマホにはセフレからのお誘いが来ているが、そういう気分にもなれず一人で家に帰宅する。
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