君の瞳に僕を映して

たじょう鹿

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溺れたい

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目覚めは最悪だった。瞼が重い。リビングに行くと机の上にはラップのかかったお皿が置いてあるだけで無人だった。母が作ったであろう朝食をレンジで温める。ぼおっとしながら洗面台まで顔を洗いに行く。鏡の中にはひどい顔をした自分が写っていた。



「ははっ、」



乾いた笑いが漏れる。こんな顔で学校いけねぇな。濱北に彼女ができたとしても、今の自分の立・場・が変わることがない。ただ濱北にいちばんができただけ。それだけ、と納得できるほどいい人間ではないと実感した。これから濱北が彼女に向かって笑顔を向ける、好きだとささやく、そんなものを見て自分が耐えられるのか自信がない。でも濱北が好きだからこそ祝福したい。幸せになってほしい。だから次ぎあう時までに覚悟を決めよう。



朝食を食べ、自分の部屋のベッドへ横になる。今日休んだけど大丈夫かという連絡も、太陽が学校に来ないこともそれほど珍しいこともないためこない。濱北とのやり取りをさかのぼって見返す。返信が来るか考えるだけで一喜一憂した会話ばかりで、これに彼女の話題が増えていくと考えると心が締め付けられた。



いつのまにか寝ていて、リビングから聞こえる物音で目を覚ます。母が帰ってきているのだろう。時計を見ると0時を過ぎるころだった。お昼を食べなかったためかおなかがすいている。最近は母の顔を見ていないとリビングに顔を出す。普通に世間話をし母の作った遅い夕食をとる。顔色については触れないでいてくれた。学校についてはできるだけ行くようにお達しをもらったが、怒ったりはしない。忙しい母となかなか一緒にいる時間をとれないだけで、太陽と母は普通に仲がいい。お風呂に入り寝る準備をする。さっきまで寝ていたためかなかなか眠れなかった。



次の日なんとか自分を勇気づけて学校へ行った。教室に入ると濱北と目が合い挨拶をする。やはり好きだ、と実感する。



「おはよ。昨日はどうしたんだ?」



「いやー、体調悪くてさー寝てた。」



嘘ではない。合わせる顔がなかったのは確かだが。



「えっ、教えろよ。お見舞い行ったのに。いつもと同じだと思ってたわ」



少し心配そうな顔で覗き込んでくる。俺のことも心配してくれると知りそれだけでうれしくなった。だが、連絡を送らなくてよかったと胸をなでおろした。あんな顔を見せられないから。

いつもと同じとゆうのは俺が女の子と遊ぶために学校をサボることがあるのを知っているからだ。優しい彼はやめたほうがいいと最初は言っていたが、最近はその話題に触れることがなくなった。呆れられているのかもしれない。



「お見舞いなんていいって、もう元気だし。」



心配をかけないようにヘラりと笑う。濱北は心配そうな光を瞳に閉じ込め「そっか」と笑った。彼女の話題を耳にしたくなくて会話を切り上げようとする。濱北は口を開きかけたが、ちょうどチャイムが鳴った。



休み時間の間も濱北を避けてしまった。気づかれてはいないと思うが、このままではいけないと思いなおし昼食を一緒に取る。その間彼女の話題は出ず、不安の中楽しい時間を過ごした。



放課後になり教室を見回すと濱北はもういなかった。そこに箕崎に声をかけられる。



「大丈夫か?今日なんか気分悪そうだったけど。風邪ぶり返してんじゃないか。」



「大丈夫大丈夫。なんともないよー。なに、心配してくれんのー?」



にやにやと箕崎の顔を見上げる。こいつが心配してくれるなんて珍しい。



「そ。ま、元気ならこれから女と遊びに行くんだが一緒にどうだ。」



ニヒルな笑いをたたえて遊びに誘われる。あまり乗り気になれないが気分転換になるだろうか?



駅前で女の子と合流しカラオケに入る。いつものようにふるまいながら笑顔で女に好感を持たれる話題を話す。その間、濱北の彼女はどんな子だろうと考えてしまい気落ちしてしまう。悶々とした気分になり、お手洗いといい部屋を出る。用を足し、もうこのまま帰ってしまおうかと出口まで歩く。幸い荷物は持ってきているためそのまま帰ろうとする。さっきまでいた部屋の前を通ろうとすると箕崎が立っていた。



「もう帰るのか。」



箕崎に声をかけられる。もしかしたら気持ちが落ち込んでいることに気づかれたのかもしれない。



「あー、気持ちが乗らなくて。誘ってもらったのに悪いな。」



そういい少し笑う。



「そっか。じゃあ、うちでゲームでもしないか。」



箕崎に言われ少し驚いたが、それもいいかもしれない。今家に帰って一人でいたら、いやなことばかり考えてしまうから。



「いいの?いこっかなー」



箕崎は「ああ」といい、穏やかに笑った。

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