君の瞳に僕を映して

たじょう鹿

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ぬくもり

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テレビの画面を見ながらコントローラーを操作する。箕崎の家に来てから対戦のゲームをしている。箕崎とは学校で話すくらいで、二人で遊んだりするのは初めてだ。家族はまだ帰ってきていないようで、ゆっくりしていけよと箕崎に言われた。さっきまで気分が沈んでいたことも忘れて、軽口をたたきあいながら遊んでいると自然と笑顔が増えた。



「元気になったか。」



箕崎が画面から視線をそらさずに言っててくる。やはりばれていたのかと少し気まずさを感じる。こうやって遊びに誘ってくれたのも気を使ってくれていたのかと思うと申し訳ない。



「あー、ばれてた?」



ヘラっと笑う。でも声のトーンは落ちてしまう。箕崎は何も言わなかった。でも空気が優しくて、つい話してしまいそうになる。意地悪でむかつくこともあるけど周りをちゃんと見ていて、優しいところもある。そんな彼になら話してしまってもいいと思った。



「実はさー、すきな、好きなやつがいるんだ、」



下を向いて言う。語尾がだんだんと小さくなっていく。箕崎は「うん」と優しく言う。箕崎の反応が気になりおずおずと顔を上げる。続きを促すような優しい表情をしていた。



「それがさ、えっと、その、男っていうか、浜崎なんだ!」



言いよどんでしまいなかなか言い出せないが、覚悟を決め勢いよく言った。少しの間二人の間に沈黙が流れる。



「そっか。」



静かに箕崎は言葉を落とした。箕崎の表情を見る限りでは軽蔑の色は浮かんでいない。そして優しく微笑んだ。



「濱北に彼女ができたからってことか。」



うなずく。だんだんと視界がにじんできた。また苦い気持ちが胸に広がる。床見ぽたりと涙が落ちた。こんなところを見せて箕崎を困らせたいわけではないのに涙は止まらない。手で目元をぬぐう。



「ごめん、泣くつもりは、なかった、んだけど、」



声を詰まらせながら謝る。すると優しく腕をつかまれた。



「俺も、無理やり聞いてごめんな」



そう言ってそっと抱きしめられる。温かいぬくもりに包まれると気持ちが落ち着くような気がする。こんなに優しいと甘えてしまいそうになる。



「慰めてやろうか?なんてな」



悲しい空気にならないように箕崎が笑いながら冗談を言う。



この時の自分はおかしかったのだと思う。濱北のことでどうしようもなくなってしまったのだ。



「慰めてよ」



箕崎の首に手を回す。箕崎の驚いた目を見ながらそっとキスをした。

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