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彼女になった理由
気づいて、気づかない。
しおりを挟む――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ああ、この服もいいわね」
人々の声が飛び交う賑わった街角。
色とりどりの服を着飾った人形と見比べ、鏡を見て少女はうっとりとしたように言った。
「この服似合うかしら?」
花咲くような笑顔でこちらを見る少女は、隣に立つ青年の姉だ。
片手に花の刺繍を纏う、可愛らしいデザインのスカート。
薄ピンクのそれはどことなく、清廉な雰囲気の少女に似合うであろう。
しかし、青年が口に出した言葉は違った。
「姉さん、姉さんにはこっちが似合う」
片手には少し、大胆な黒。
レースが折り重なるようなスカートのフリルドレス。
可愛いというよりは綺麗よりのそれ。
少女は拗ねたような声をあげた。
「ええ、でもあの子が着るのよ?」
とぽつり言葉を吐いた。
少年はえ?といったように表情を曇らせる。
それに少女は気づかないまま、自分の選んだ服と
青年が選んだ服を見比べて悩みこむ。
「姉さんが着るのは選ばないの?」
青年は残念そうに他の服に視線を落とす。
どことなく悲しげな雰囲気で、洋服を眺める。
姉さんと言われた少女は察したのか、察していないのか。
おそらく気づいていない声色で、答えた。
「選ばないつもりだったけど、この服好き・・・かな?」
その言葉を聞いて、青年の沈んだ気持ちは晴れる。
姉さん、と艶っぽい声に肩を揺らす少女。
どこかおびえた様子に見えるそれを青年は、
嬉しいと勘違いしたのかさらに詰め寄った。
少女の手からいくつかの服が剥ぎ取られる。
ほら姉さんほかにも服を選ぼうと言って、彼女の持っていた服を籠に入れてしまう。
少女は慌ててそれを止めようとするが、あっさり躱されてしまう。
「あああ、そんなに買えませんよ今は手持ちが」
そう青くした少女は少しばかり可哀そうで、不憫だった。
「いいよ僕が買う、だから姉さんの服もみよう」
そういって近場にいた、メイドのような服を着た定員に籠を渡す。
手を伸ばすが、素敵な彼氏さんですね。お預かりします。
そういってお邪魔虫は退散しますの面持ちで、カウンターへと立ち去ってしまう。
お腹が痛いと言わんばかりの少女に、満足そうな青年。
「そうだね、姉さんにはこれも――」
少女の溜息は気づかれないうちに空気へと溶けていった。
袋をいくつか持ち、私は部屋へと戻った。
中にある服のほとんどは弟が選んだものだ。
あんなに嬉々として服を買ってどうしたのだろう、
そんなに何が楽しいのかわからないけれど機嫌が損ねたわけじゃないならいい。
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