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42 -キース・アークライト-

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「あ、るじさま・・・?」
「ノア、起きたか」
「す、すみません!!主様のベッドを使うなど!!」
「こら、もう従者じゃないだろう」
「あっ、その、すみません・・・、キース様」
「ん、それより、疲れていたんだろう。まだ夕飯までは時間がある。寝ていろ」
慌てて起き上がったノアをベッドに倒し、掛布団をかけてやる。ほんの数十分ほどしか眠っていないから、まだ寝かせてやれる。さすがに夕飯になったら起こすけどな。
「ね、寝るなら自分の部屋に・・・」
「ダメだ、俺の側で寝ろ」
「・・・、わかりました」
渋々、という表情のノアはそのままベッドに横になりながら俺の方を向く。

「あの、少しお話をしてもかまいませんか?」
「もちろんだ」
珍しく自分から話をしようとするノアに、俺はベッドに座って頭を撫でてやる。すると気持ちよさそうに目を細める彼女。その姿はどこか猫を思い起こさせた。
「ベインズさん、のことで・・・その、お手を煩わせてしまうかもしれません・・・」
「何を言う、俺のノアにアレらは手を出した。俺が始末をつける」
「ですが、あの方は・・・」
「ノア、怖いなら無理をしなくてもいいんだ。お前の過去を知っている、だからなんだ。俺には関係ない、このアークライト家にもな」
「私は、主様や旦那様、奥様、ひいてはアークライト家の名に泥を塗りたくはないのです」
「こういっちゃ夢はないが、実はどこの貴族も厄介で隠したい事情なんてたくさん持ってる。これしきの事が瑕になると言うのであればどの家も今頃瑕だらけすぎて落ちぶれているな」
「そう、なのですか・・・?」
「ああ、そうだ」
これは事実だ。社交界に出ればどこぞの夫人が不倫しただとか、何股かけてるだとか、保険金目的で結婚しただとか、それで殺しただとか、憶測の域を出ない噂話からわりとがっつり本当の話が混じっている。特に多いのは互いに愛人を囲って娘息子が多い家だ。そういった家は家格が低いことが多い、がどちらかが愛人を囲っているのはわりとどこでもある。
「その、主様も好いた方が・・・、いえ、なんでもありません」
「ノア、俺はお前だけだ。疑うようならその身に教えるが」
「だ、大丈夫です!!わかっています!!ただ、もしもの話をしただけです。失礼いたしました」
「それを言うなら、俺の方がノアに聞かないといけないくらいだ」
「えっ?」

自嘲した、ノアを縛り付けているのは俺だ。ノアからはちゃんと好きという気持ちをもらっているから俺は不安に思うことはない。だけどたまに思う、ノアに好きな人ができたら?もしもの話に怖くなる。ノアはある意味、俺しか知らない。他の男を知ってしまってその男を好きになったら?怖くてたまらない。
「主様、私は主様をお慕い申し上げております。この気持ちは主様にたとえ捨てられたとしても変わることはありません」
「俺もだよ、ノア。ノアを愛してる」
「ふふ、両想い、というものですね」
「そうだな」
愛らしく笑うノア、まだ彼女が誰かから与えられる無償の愛を怖がっているのは知っている。でもこれからそれをゆっくりと教えてあげられたらいい。俺はノアを真綿のような愛で包んで守りたいから。
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