17 / 79
1話 ゆかりさんとわたしと、図書室にて
低脳なサルどもの馬鹿騒ぎ
しおりを挟む「どうしても嫌なら耳を塞いでいなさい」
図書委員さんは何でもないことのように平然とした様子でそう言って、携帯電話を取り出します。
「誰か助けを呼ぶんですか?」
わたしは縋るような気持ちで訊ねますが、図書委員さんは無慈悲に首を横に振ります。
「いいえ。盗撮するの」
「な、何を……?」
「低脳なサルどもの馬鹿騒ぎ」
「…………」
何というか。唖然とする、とはこのような気持ちのことを言うのでしょう。
発言が衝撃的過ぎて、絶句でした。
辛辣な言葉で比喩する図書委員さんは、堪え切れない静かな怒りを胸の内に秘めているようです。
口元が若干引き攣っています。眼鏡の奥の瞳がきつい光を放っています。
あまり聞きたくないような気もしますが、気になったのでわたしは訊ねることにします。
「録画したものを二人に聞かせて、もうやめるように言うつもりですか?」
「違うわ。先生に突きつけてあの二人を処分してもらうのよ」
「しょ、処分って、退学? 何もそこまでしなくても……」
返ってきた答えに、思わずわたしは苦言を呈します。
好きな人と一緒に居ることで嬉しくなって浮かれてしまう気持ちは、まあ分からなくありません。もちろん時間と場所を弁えず、やり過ぎるのは良くないと思いますが。
しかし、図書委員さんの怒りは収まりません。
「いいえ。神聖な学び舎で淫らな行為に及ぼうとする素行不良者を見過ごすわけにはいかないわ」
「ですが、誰かに迷惑をかけているわけでは……」
「私とあなたがまさしく奴らの被害者じゃない」
「それはそうかもしれませんけれど……」
「それに、実害が全くないわけじゃないのよ」
図書委員さんはそう前置きして、つらつらと恨み言を吐き出します。
「最近、汚されてしまう本がとても多いの。そういう本はもう貸し出せないから捨てるしかないわ。やっているのはあの連中よ。みんなが手に取る本を破損させるなんて許せないわ。どういう風に汚れていたかはどうか訊かないで。言いたくないから」
「わたしも聞きたくありません、そんなこと……」
想像もしたくありません。
頭が痛くなりそうです。既にくらくらしています。
図書委員さんは手元の携帯電話を構え直します。
「そういうわけだから、私には彼らの行動を監視して、先生に報告する正当な理由があるの。図書委員として、これ以上本を破損させる現場を見過ごすわけにはいかないわ。悪いけど大人しくしていてね」
「これから起こることも聞きたくないです……」
涙ながらの訴えかけは、残念ながら無視されてしまいました。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる