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2話 ゆかりさんとわたしと、洋館にて
〝その方が楽しいから〟
しおりを挟む長い推理の内容をすべて書いているのでしょう。
ゆかりさんは黙々とすごい勢いでペンを走らせ、何ページにも渡って細かい文字を連ねて行きます。
本当に速筆です。なのに丁寧で読みやすい字です。
気になって覗き込みたいところですが、そこはぐっと我慢の子。
のんびりお茶でも飲んで待つことにします。
注いだ湯呑に茶柱が立ちました。
これは勝利の女神が微笑んだかと思いきや、ゆかりさんの湯呑でした。
「…………」
すすす、と湯呑の位置を動かしていると、こちらに気づいたゆかりさんにほっぺたをむにっと摘ままれました。
大きくて素朴な瞳が問いかけてきます。
〝何をしているの?〟
「いや、つい出来心で……」
じぃーっと見つめられて、両の頬を左右に引っ張られました。
「いひゃいわ、ゆかりしゃん……」
全然痛くはありませんでした。
そうしているうちに、ゆかりさんの答えが出揃います。
ゆかりさんは、右手の人差し指を立てました。まず一つ目の事件ということでしょう。
持ち上げられたスケッチブックには、記者さん焼死のトリックの答えが簡潔に書かれています。
〝まず、みぃちゃんの考えを聞きましょうか〟
訂正。書かれていませんでした。
「なんで、わたし?」
ゆかりさんの解答は実にシンプルです。
〝その方が楽しいから〟
「え、え、そんなこと言われても……」
突然のふりに頭が混乱してしまって、こんな状態ではまともに考えられそうにありません。
とはいえ、あまり待たせる訳にもいかず、とにかく何でも言ってみます。
「えっとね、えっと……ライターが」
すぐさまゆかりさんが身体の前で手を交差します。
〝×〟のジェスチャーです。
「やっぱり駄目かな?」
〝小説本編で一度否定されているトリックは決定打にならないわ。意外性が無くなってしまうから〟
ゆかりさんはわたしの答えを予測していたのでしょう。
スケッチブックのページをいくつか捲ると、既に紙面にそう書かれていました。
さらに続きます。
〝もっとも、それを踏まえた上で、あえてという手法もあるけれど。どうする?〟
ゆかりさんは、首をそっとかしいで訊ねてきます。
「わたしにはさっぱりわからないよ、ゆかりさん……」
わたしは早くもお手上げでした。
少しいじけたような言い方になってしまいましたが、仕方ありません。
だというのにゆかりさんは投げ出したりせず、こんなわたしに付き合ってくれます。
〝それじゃあ、ひとつずつ考えてみましょうか〟
きっと最初からそのつもりだったのでしょう。
スケッチブックにあらかじめ書いた推理は、わたしも理解できるように順序立ててあるのです。
ゆかりさんがそこまでしてくれた以上、応えないわけにはいきません。
姿勢を正して向き直ります。
「よろしくお願いします、ゆかりさん」
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