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3話 すずの鬱屈
え、嫌だよ
しおりを挟む「外国人さん?」
「そうは見えないけど……。魔法少女のほかに魔術師っていうのがあるのかも」
反応に困ったまりあは小声でしぐれに助けを求めるが、しぐれはしぐれで困惑を深めるばかり。
魔女を倒すために魔獣から魔力を授かって変身するのが魔法少女だ。
同じように、魔術師と呼ばれる魔法の使いが存在するのか。
かがみんがいないと、どうにも答えが出ない。
どうしたものかと悩み始めた時、ふとベルが左手に持つ黒い物体に目がいった。
「あ、〝魔女の卵〟」
魔女を打ち倒すことによってのみ、手に入れることのできる魔力の器たる卵。
それが彼女の手にあるということは、つまりそういうことだ。
合点がいった。
「なあんだ、さっきの魔女はあなたが倒してしまったの? じゃあ仕方ないか」
やや緊張を砕いて口を開くと、ベルはピクリと眉を動かし、ほんのわずかに興味惹かれた素振りを見せる。
まりあとしぐれの顔をそれぞれ一瞥し、短く質問する。
「……君たちも魔女を?」
「そうだけど。さっき取り逃がしちゃったからここまで追ってきたの」
「そう……。獲物を奪ってしまったことは申し訳ないと思う」
「や、別にどうでもいいけど」
「謝罪の代わりに」
言いながら、真っ直ぐに突き付けられる宝杖。
「え、なあに?」
反射的に身体を仰け反らせたまりあに、ベルは無表情のまま告げる。
「勝負をしよう。君が勝ったら〝魔女の卵〟を譲る。負けたらボクがもらう」
「え、嫌だよ」
「……何故?」
まりあの即答に、ベルは怪訝そうに小首を傾げた。
「何故って言われても。だって、魔法少女同士……ううん、魔術師だとしても。特に戦う理由はないし」
「卵は?」
「別にどうしても欲しいわけじゃないもの。それはあなたが勝ち取ったものだし、あなたのものでいいよ」
「……」
「えっと、どうして睨むの?」
「他の物を賭けてもいい。ボクが負けたら君の願いを叶えてあげる。どう?」
「えっと、どうやって? あなたの魔法で?」
「そんなことは気にしなくていい、勝つのはボクだから」
「……」
会話にならなかった。
まりあは苦笑いを零す。
まるで、決められた言葉のみを吐き出す機械を相手におしゃべりしているようだ。
「勝負をしよう、君の強さを知りたいから」と、ベルはそれしか言わない。
まりあは首を横に振り続ける。
間違ったことは言っていないはずだ。
戦う理由がない、だから戦わない。
初対面の相手と殴り合うだなんて、野蛮なことをする気はない。
至極当たり前のことであり、不機嫌な眼差しで抗議されるような謂れはない。
しかしまりあの主義主張に反して、ベルが放つ敵意はますます膨れていく。
少し、不味いかも知れない。
そう判断したまりあは、刺さるような視線に背中を向ける。
厄介ごとはごめんだ。
「帰ってトレーニングの続きやろうか、しぐれ。……しぐれ?」
早々に切り上げようとするまりあの袖を、しぐれが引っ張った。
見れば、顔色が悪く少し青ざめている。
「どうしたの?」
訊ねてもこちらを見ようとせず、しぐれは酷く怯えた様子でベルを凝視していた。
「やだ、なんだかあの人、怖い……」
「怖い?」
いったい何が怖いというのか。
疑問とともに視線を向ければ、再び敵意の籠った眼差しと目が合った。
その顔に浮かぶのは相変わらずの無表情のはずなのに、口元が薄く微笑んでいるように見える。
明らかに挑発されている。
「……」
まりあの眼差しも、やや険しいものに変わる。
怯えるしぐれを背中に庇い、改めてベルと対峙した。
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