筋肉少女まりあ★マッスル 全力全開!

謎の人

文字の大きさ
59 / 70
3話 すずの鬱屈

まりあちゃんはわたしが守る!

しおりを挟む
 
 
「十文字鈴さん!」


 人気のない階段の踊り場で響いた呼び声には、強い決意が含まれていた。


「ボクをその名前で呼ばないで。不愉快」


 片結びにされた髪房が揺れる。
 
 何事かと振り返った鈴は、階上にいるしぐれの姿を認めて、淡々と警告を飛ばした。

 威圧する鋭い眼差しに、しかししぐれはもう怯えなかった。

 ぐっと腹に力を込めて真っ向から睨み返し、宣戦布告の言葉を放つ。


「わたしと戦って」
「……」
「賭けをしましょう。わたしが勝ったら、まりあちゃんに謝って。もうまりあちゃんを苦しませないで」
「苦しませる?」


 意味が分からないと眉根を寄せた鈴に、しぐれは怒りをぶちまける。


「あなたがいきなり現れて、望んでもいない勝負を吹っ掛けて、まりあちゃんを傷つけた! どうすればいいのかって、まりあちゃんずっと苦しんでる!」 
「それはあなたたちが弱いせい」
「そんなことない、十文字さんが来るまでは毎日が本当に楽しかったもの!」


 弱い奴は大人しくしていなければならない。
 強くなければ幸せを享受できない。

 そんなもの暴論だ。

 そんなことはないのだと、今ならはっきりと言い張ることができる。


「わたしは変身できなかったし、足手まといだった。弱虫で、グズで、のろまで、情けなかった……。けど、まりあちゃんと二人で一緒に強くなろうって約束して! 一緒にトレーニングして、一緒に頑張って! それが何より嬉しくて、楽しくて……っ」


 叫ぶごとに想いが溢れる。

 喉が引き攣るように痙攣して、熱い涙で視界がぼやける。

 まりあと過ごした日々は、幸せで一杯だった。

 彼女のために強くなろうと決意を固めて、ようやく一歩目を踏み出したところだった。


「それをあなたが台無しにした! 割って入ってきて、わたしの大切なものを踏みにじった! ―――許せない!」


 しぐれが発する語気の強さに対し、鈴は辟易としたように嘆息を返した。


「大切なものを守れなかったのは、君たちが力不足だから。ボクのせいじゃない。ボクはただ、どちらがより強いか知りたかっただけ」
「そんなのあなたの勝手な理屈じゃないっ。そんなものにわたしとまりあちゃんを巻き込まないでっ」


 止め処なく込み上げてくる激情が、声に変じて鈴を糾弾する。

 こんなの初めてだった。

 誰かを憎いと感じ、邪魔をするなと語気を荒げたのは。
 戦わなければいけないと、自ら覚悟を決めたのは。
 明確な敵意に身を委ねて、感情のままに相手を睨みつけるのは。

 分かっている。
 すべてはしぐれの我がままだ。
 
 以前のようにまりあと一緒にトレーニングできなくなって、魔女退治で置いてきぼりにされるようになって。

 すごく寂しかった。
 まりあにこちらを向いていて欲しかった。

 だから、それを邪魔する鈴のことが許せない。

 自己満足に戦いを欲した鈴と、何も変わらない。

 悩み苦しむあまり、美羽のことを裏切った時から何も変わっていない。

 それでも。

 まりあが隣で微笑んでくれるのなら。
 彼女とともに過ごす日常を取り戻せるのなら。

 拳を握らない理由はどこにもなかった。


「魔法少女だから、強そうだから、戦ってみたいから。……そんなつまらない理由でわたしたちの邪魔をしに来ないで!」


 しぐれは、青色のスクイズボトルのキャップを跳ね上げ、プロテインを一気に飲み干す。

 熱く燃え盛る心のままに、最強の魔法少女へと挑戦状を叩き付けた。


「十文字鈴さん、あなたが邪魔よ。だからわたしが戦う。わたしが倒す。まりあちゃんはわたしが守る!」
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

処理中です...