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冬
ポインセチア
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***
12月24日。
クリスマスイブはいつもよりご来店されるお客様が多い。
とても嬉しいことだけど、一緒に過ごす人がいない私にとっては少し寂しい。
「すみません。もう終わりですか?」
お店の看板を中に入れるために外に出ると、聞き慣れた声がした。
「今日は少し早めに閉めようかと……でも、まだ大丈夫ですよ」
「本当ですか? ありがとうございます」
急いで来たのか、彼の息が少し上がっているように感じた。
「ポインセチアをください」
「はい。只今、お包みいたしますね」
「……あの」
「はい?」
振り返ると、少し顔を赤くした彼が細長い箱を手にしていた。
「これ、よかったら貰ってください」
「え?」
「クリスマスプレゼント、です。いつもやさしく対応してくださるお礼です」
「お、お礼だなんて…仕事ですし」
「受け取ってください!」
そんなに強く言われたら……
「あ、ありがとうございます。開けてみてもいいですか?」
「はい」
箱を開けると、綺麗な花のチャームがついたペンダントが入っていた。
「わあ! すっごく素敵ですね!」
「貴女に似合うと思って…」
「本当にいただいてもいいんですか?」
「はい!」
「大切にしますね。あ、そうだ! 少し待っていてください」
私は急いで裏にある自宅に戻った。
「……お待たせしました。これを、どうぞ」
「ありがとうございます。綺麗なスノードームですね!」
「私が作ったんです。気に入っていただけたら嬉しいのですが…」
「手作りですか!? すごいですね! 家に飾ります」
まるで子どもみたいに目をキラキラと輝かせてスノードームを見つめる彼に、思わず笑ってしまう。
「ふふっ」
「え? 僕、何か変なこと言いました?」
「いえ。可愛らしいな、と思って…」
「か、可愛らしい…?」
「スノードーム、喜んでいただけてよかったです」
彼は恥ずかしそうに笑って、スノードームを鞄にしまった。
「長居してしまってすみません。ありがとうございました」
「こちらこそ、引き止めてしまって…ペンダントもありがとうございました。素敵なクリスマスをお過ごしください」
「メリークリスマス」
彼はそう言い残して店を出た。
☆☆☆
彼に貰ったペンダントをつけて鏡を見る。
私のために、選んでくれたんだよね……?
すごく、嬉しい。
心があったかくなって、体がふわふわと軽くなったような不思議な感覚。
熱くなった頬をおさえて、その場にしゃがみ込む。
クリスマス…悪くないかも。
12月24日。
クリスマスイブはいつもよりご来店されるお客様が多い。
とても嬉しいことだけど、一緒に過ごす人がいない私にとっては少し寂しい。
「すみません。もう終わりですか?」
お店の看板を中に入れるために外に出ると、聞き慣れた声がした。
「今日は少し早めに閉めようかと……でも、まだ大丈夫ですよ」
「本当ですか? ありがとうございます」
急いで来たのか、彼の息が少し上がっているように感じた。
「ポインセチアをください」
「はい。只今、お包みいたしますね」
「……あの」
「はい?」
振り返ると、少し顔を赤くした彼が細長い箱を手にしていた。
「これ、よかったら貰ってください」
「え?」
「クリスマスプレゼント、です。いつもやさしく対応してくださるお礼です」
「お、お礼だなんて…仕事ですし」
「受け取ってください!」
そんなに強く言われたら……
「あ、ありがとうございます。開けてみてもいいですか?」
「はい」
箱を開けると、綺麗な花のチャームがついたペンダントが入っていた。
「わあ! すっごく素敵ですね!」
「貴女に似合うと思って…」
「本当にいただいてもいいんですか?」
「はい!」
「大切にしますね。あ、そうだ! 少し待っていてください」
私は急いで裏にある自宅に戻った。
「……お待たせしました。これを、どうぞ」
「ありがとうございます。綺麗なスノードームですね!」
「私が作ったんです。気に入っていただけたら嬉しいのですが…」
「手作りですか!? すごいですね! 家に飾ります」
まるで子どもみたいに目をキラキラと輝かせてスノードームを見つめる彼に、思わず笑ってしまう。
「ふふっ」
「え? 僕、何か変なこと言いました?」
「いえ。可愛らしいな、と思って…」
「か、可愛らしい…?」
「スノードーム、喜んでいただけてよかったです」
彼は恥ずかしそうに笑って、スノードームを鞄にしまった。
「長居してしまってすみません。ありがとうございました」
「こちらこそ、引き止めてしまって…ペンダントもありがとうございました。素敵なクリスマスをお過ごしください」
「メリークリスマス」
彼はそう言い残して店を出た。
☆☆☆
彼に貰ったペンダントをつけて鏡を見る。
私のために、選んでくれたんだよね……?
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心があったかくなって、体がふわふわと軽くなったような不思議な感覚。
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