はやゆうの話

皇 晴樹

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10月31日

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十月三十一日
そう、今日はハロウィン。

この学校では午後から、ハロウィンパーティーが開催される。

数年前、当時の生徒会長が大のイベント好きで、
校長先生をはじめとする先生方全員に許可をもらったらしい。

それから伝統として受け継がれてきた。

『先生も生徒も仮装をして全員で楽しむこと』

それがこのパーティーのルール。

昨年はただ純粋に楽しんでいたけど、今年は生徒会長としてパーティーの運営などを行わなければならない。
あくまでも生徒会主催なのだ。


「優那っ」

隼人はいつも以上に機嫌が良い。
語尾にハートマークが付いていそうな、いや確実に付いている名前の呼び方。
声が弾んで……声だけじゃなくて体まで弾んでいる…気がする。

「こっち向いて。優那」
「…撮りすぎ」

さっきから隼人は僕を被写体にして、たくさん写真を撮っている。
シャッター音が鳴り響く生徒会室。

「ほら、隼人。開会式始まるから。行くよ!」
「……今日は俺が姫枠?」
「隼人はヴァンパイア、でしょ?」
「じゃあ、あとで優那の血…もらえる?」
「あげない」

少しだけ口角を上げて隼人を見ると、彼もニヤリと笑って
「ふーん、そっか」と意味深な言葉を呟いた。


「生徒会長挨拶。大和田会長、登壇をお願いします」

バクバクと速くなる心臓を抑えながら、ステージに立つ。
いつもなら緊張しすぎて倒れそうになるけど、
あれ? 今日は……怖くない、かも。

怖くない、というより面白い。

だって、魔女や狼男、キョンシー、警察官、ゾンビ……
僕を見ているのは普段目にしないような彼らだから。

異世界に迷い込んだみたい。不思議な気持ち。



「優那、今日は楽しそう」
「うん! 楽しいよ」
「それは良かった」 
「僕らもお菓子貰いに行こう?」

隼人は僕の手を取ってマントに隠す。

「こうしてれば、周りから見えないだろ?」
「そうだね。行こ!」

まさかあんなことが起こるなんて……
この時の僕は知る由もなかった。


「たくさん貰えたね!」
「うん」
「速水さんのお菓子、手作りだって!」
「うん」
「これ、僕は青なんだけど、隼人は何色?」
「うん」
「ねぇ、隼人。誰もいないよ?」
「うん」

様子がおかしい。
僕の手をしっかりと握って迷いなく足を進める。

「隼人!!」
「…着いた」

足を止めた場所は、生徒会室。

生徒会室があるのは別校舎。
こっちはパーティーの範囲外のはず、なのに。

ガチャンッ——

「え…?」

鍵、閉めたよね?

「trick or treat」
「お、お菓子ならたくさんあるよ」

隼人は静かに首を横に振って、僕に近づいてくる。

「それはいらない」
「な、何言って…」
「俺が欲しいのは、優那だから」

不敵な笑みを浮かべ僕をソファに押し倒した。

「優那は俺にとって甘いお菓子」

そう言って唇を重ねる。
何度も、何度も……


「…………や、」
「……ゆうな」
「はや、と……だ、め…」

抵抗してるのに、うまく腕に力が入らず無意味だ。

「ちょっと、……いっ、」

隼人は僕の首筋にそっと触れて、やさしく微笑む。

「……ごちそうさまでした」



ヴァンパイアと王子様。

今日だけの特別な関係。

ヴァンパイアは王子の血より、唇を好む。

王子は甘い吐息を漏らし、
その度にヴァンパイアは嬉しそうに口角を上げる。


「苦しい?」
「苦しく、ないよ」

ヴァンパイアは王子を起き上がらせると、包み込むように抱きしめた。

王子はそっと呟く。
「君以外を愛せなくなってしまった」と。

ヴァンパイアはなにも答えなかったが、
その代わりに抱きしめる力を強めた。
「それでいいんだよ」とでも言うように……


王子の首筋に残る 鬱血痕。

ヴァンパイアとの契約の証。

その印が消えてしまっても、彼らの愛が消えることはない。

一日だけとは言わず、この先ずっと愛を誓った彼らなら……

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