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弱虫くんと騎士さま
弱くても…
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***
結局隼人と連絡がつかないまま……
次の日学校に行くと、いつもと違う僕の様子に、周りのみんなは驚いていた。
隼人がいないせいか、僕の周りにはたくさんの生徒が集まった。
「副会長はお休みですか?」
「う、うん…」
「会長! 今日の放課後、お時間ありますか?」
「え、えっと…」
揉みくちゃにされる僕を助けてくれたのは隼人ではなく、
「優那くん!」
隼人の弟——琉夏くんだった。
「助けてくれてありがとう」
「どういたしまして。そういえば、瞬は?」
「速水くんは先生に呼ばれて…」
「あー、部活か」
「琉夏くん……隼人は…?」
彼は困ったように眉を下げた。
「優那くんはさ、兄ちゃんのことどう思ってるの?」
質問に質問をかぶせてくる。
どうやら、僕の問いには答えてくれないらしい。
「仲直りしたい? 会いたい?」
軽く身を乗り出して次々と質問をしてくる彼に圧倒されてしまう。
それに負けないように僕が口を開いた時、チャイムが鳴った。
「時間切れだね。昼休みに聞かせて」
僕が返事をする前に、彼は足早に去っていった。
***
「ここなら誰も来ないから大丈夫だよ」
昼休みになって、琉夏くんは教室まで僕を迎えにきた。
そして人気のない校舎裏へ……
「はい、お弁当」
「え?」
「購買で買ってきた。いつもは兄ちゃんと学食に行ってるんでしょ? でも今日はゆっくり話したかったし、これで我慢してね」
「あ、ありがとう…」
琉夏くんとこうして二人で話すのは、いつ振りだろう。
幼馴染なのに、少し緊張する。
「さっきの続きだけど…兄ちゃんのことどう思ってる?」
「幼馴染」
「あとは?」
「……騎士さま?」
「なんで疑問形なの?」
「なんとなく…」
『騎士さま』って、口に出すのは少し恥ずかしい。
ましてや、その『騎士さま』の弟であり、幼馴染の関係にある彼に対してだ。
「それだけ?」
「それだけって……他に何が、」
「んー……好きな人とか」
彼の言葉に食べていた卵焼きのかけらが変なところに入ってむせた。
「優那くんっ!」
涙目になりながら思いっきり咳込む僕に、「大丈夫!?」と慌ててペットボトルを渡してきた。
それを受け取って急いで流し込む。
やっと治って大きく深呼吸をした。
そんな僕の様子を琉夏くんは大きな目で心配そうに見ていた。
「死ぬかと思った…」
「なんかごめん」
「突然あんなこと言われたら驚くよ」
“好きな人”、なんて……
「兄ちゃんは優那くんのことが大好きだから、優那くんも兄ちゃんのことが大好きなんじゃないかなって思って…」
琉夏くんの言っている“好き”は、
“幼馴染として”とか、“親友として”の意味ではなく、きっと……
「琉夏くん」
「なに?」
「この前、隼人に『好きな人いないの?』って聞いたんだ。そしたら、『好きな人は優那かな』って言われて……」
「うん」
「隼人は冗談で言ったんだろうけど、嬉しかったんだ」
それを聞いて琉夏くんはやさしく微笑んだ。
なんだかくすぐったい気持ちになって、彼から目線をそらした。
「兄ちゃんが聞いたら、すごく喜ぶだろうなぁ」
「……恥ずかしくて、そんなこと言えるわけないよ」
「じゃあ、オレが代わりに伝えてあげようか?」
「遠慮しておきます」
「まあ、本人の口から聞いた方がいいからね」
「そういうことじゃないんだけど」
目の前にいるのは琉夏くんなのに、なぜか隼人と話しているような気がする。
もちろん彼が隼人の弟だっていうこともあるだろうけど、いくら兄弟でもこんな気持ちにはならないと思う。
僕にとって隼人の存在はこんなにも大きかったんだ……
隼人が——大切な人がいなくなって、やっと気がついた。
ここにはいないのに。
どこにいるかもわからないのに。
まずはきちんと謝りたい。
謝っても許してもらえるかなんてわからない。でも言葉にしないと伝わらないから……
「ど、どうしたの…?」
突然肩を震わせる僕に驚いた琉夏くんが問いかける。
こんなにも弱い僕だけど、
「隼人に、会いたい…」
君に伝えたいことがあるんだ。
だから、
「兄ちゃんに連絡してみる」
早く帰ってきて。
結局隼人と連絡がつかないまま……
次の日学校に行くと、いつもと違う僕の様子に、周りのみんなは驚いていた。
隼人がいないせいか、僕の周りにはたくさんの生徒が集まった。
「副会長はお休みですか?」
「う、うん…」
「会長! 今日の放課後、お時間ありますか?」
「え、えっと…」
揉みくちゃにされる僕を助けてくれたのは隼人ではなく、
「優那くん!」
隼人の弟——琉夏くんだった。
「助けてくれてありがとう」
「どういたしまして。そういえば、瞬は?」
「速水くんは先生に呼ばれて…」
「あー、部活か」
「琉夏くん……隼人は…?」
彼は困ったように眉を下げた。
「優那くんはさ、兄ちゃんのことどう思ってるの?」
質問に質問をかぶせてくる。
どうやら、僕の問いには答えてくれないらしい。
「仲直りしたい? 会いたい?」
軽く身を乗り出して次々と質問をしてくる彼に圧倒されてしまう。
それに負けないように僕が口を開いた時、チャイムが鳴った。
「時間切れだね。昼休みに聞かせて」
僕が返事をする前に、彼は足早に去っていった。
***
「ここなら誰も来ないから大丈夫だよ」
昼休みになって、琉夏くんは教室まで僕を迎えにきた。
そして人気のない校舎裏へ……
「はい、お弁当」
「え?」
「購買で買ってきた。いつもは兄ちゃんと学食に行ってるんでしょ? でも今日はゆっくり話したかったし、これで我慢してね」
「あ、ありがとう…」
琉夏くんとこうして二人で話すのは、いつ振りだろう。
幼馴染なのに、少し緊張する。
「さっきの続きだけど…兄ちゃんのことどう思ってる?」
「幼馴染」
「あとは?」
「……騎士さま?」
「なんで疑問形なの?」
「なんとなく…」
『騎士さま』って、口に出すのは少し恥ずかしい。
ましてや、その『騎士さま』の弟であり、幼馴染の関係にある彼に対してだ。
「それだけ?」
「それだけって……他に何が、」
「んー……好きな人とか」
彼の言葉に食べていた卵焼きのかけらが変なところに入ってむせた。
「優那くんっ!」
涙目になりながら思いっきり咳込む僕に、「大丈夫!?」と慌ててペットボトルを渡してきた。
それを受け取って急いで流し込む。
やっと治って大きく深呼吸をした。
そんな僕の様子を琉夏くんは大きな目で心配そうに見ていた。
「死ぬかと思った…」
「なんかごめん」
「突然あんなこと言われたら驚くよ」
“好きな人”、なんて……
「兄ちゃんは優那くんのことが大好きだから、優那くんも兄ちゃんのことが大好きなんじゃないかなって思って…」
琉夏くんの言っている“好き”は、
“幼馴染として”とか、“親友として”の意味ではなく、きっと……
「琉夏くん」
「なに?」
「この前、隼人に『好きな人いないの?』って聞いたんだ。そしたら、『好きな人は優那かな』って言われて……」
「うん」
「隼人は冗談で言ったんだろうけど、嬉しかったんだ」
それを聞いて琉夏くんはやさしく微笑んだ。
なんだかくすぐったい気持ちになって、彼から目線をそらした。
「兄ちゃんが聞いたら、すごく喜ぶだろうなぁ」
「……恥ずかしくて、そんなこと言えるわけないよ」
「じゃあ、オレが代わりに伝えてあげようか?」
「遠慮しておきます」
「まあ、本人の口から聞いた方がいいからね」
「そういうことじゃないんだけど」
目の前にいるのは琉夏くんなのに、なぜか隼人と話しているような気がする。
もちろん彼が隼人の弟だっていうこともあるだろうけど、いくら兄弟でもこんな気持ちにはならないと思う。
僕にとって隼人の存在はこんなにも大きかったんだ……
隼人が——大切な人がいなくなって、やっと気がついた。
ここにはいないのに。
どこにいるかもわからないのに。
まずはきちんと謝りたい。
謝っても許してもらえるかなんてわからない。でも言葉にしないと伝わらないから……
「ど、どうしたの…?」
突然肩を震わせる僕に驚いた琉夏くんが問いかける。
こんなにも弱い僕だけど、
「隼人に、会いたい…」
君に伝えたいことがあるんだ。
だから、
「兄ちゃんに連絡してみる」
早く帰ってきて。
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