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番外編
魔法にかけられて
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「大和田! 大丈夫!?」
「注意してたんだけど、ドレスの裾を踏んじゃって…」
「ごめん。慣れないドレスとヒールなんて履かせちゃったから…いろいろあって大変だったね…」
「速水さんのせいじゃないよ。大変だったのは否定しないけどね」
誓いのキスとか、お姫様抱っことか。
「ねぇ、大和田」
「なに?」
「本当に付き合ってないの?」
「え!?」
「あんなの見せられて…付き合ってないなんておかしい」
「……付き合ってるの、かな?」
『付き合おう』っていう言葉がなくても、想いを伝えあったから、付き合ってるってこと?
「菊地に聞いてみたら?」
「うん…」
「あ、これから表彰式なんだけど、ドレスじゃなくて他の衣装にしよう。メイド服とかあるけど、いかが?」
「…本気で言ってる?」
メイド服なんて断固拒否!
「冗談だよ。やっぱり制服かな。ここの学校の」
「……女子の?」
「当たり前でしょ?」
——コンコンッ
「どうぞ」
「……優那」
「ちょうどよかった。菊地も制服に着替えて」
「…わかった」
「それじゃあ、私は打ち合わせに行ってくるね」
速水さんが出て行って、僕と隼人は教室に二人きりになった。
いろいろあった後だから、彼の顔をまっすぐ見れない。
隼人は僕の背後に回って、スッとドレスのファスナーを下ろした。
「っ、隼人!?」
「着替えるんだろ?」
「そ、そうだけど…」
び、びっくりした……
「変なこと考えた?」
「か、考えてない」
「ふーん…」
不敵な笑みを浮かべる隼人。
ペースに乗せられちゃダメだ!
「着替えるからこっち見ないでね!?」
「何だよ、今更。毎日同じ部屋で生活してるだろ?」
「そうだけど…!」
「……わかったよ。反対側向いて着替えるから」
ドレスを脱いで、女子の制服に着替えていく。
着替えが終わり振り返ると、隼人が笑いながら僕を見ていた。
「隼人!!!」
「なーに?」
抗議しようと彼に近づく。
でも、それは失敗に終わった。
腕を掴まれて、気づけば唇を奪われていた。
「…優那。今どんな格好なのか、忘れないほうがいいよ?」
彼の長くて綺麗な指が僕の唇に触れる。
「……この格好なら、気にせず存分にキスできるな」
「できない!」
「照れてる…?」
「…っ、そんなんじゃないよ! 早く着替えて!」
「はーい」
想いが通じあってから、隼人は意地悪になったし、僕の反応を見て楽しんでいる。
僕が彼のペースに乗せられやすい性格だから尚更。
「怖いくらいに似合ってる」
「それ、褒めてる…?」
「うーん、褒められて嬉しい?」
「いや、複雑」
「だろうな」
女装をして似合ってるね、なんて……
好きな人に言われるのは少し複雑だ。
本当の僕じゃないから。
「どんな姿でも、俺は優那のことが好きだよ」
「……ありがと」
「嬉しい?」
「わかってるくせに…」
「うん、わざと聞いた」
「からかわないで」
「優那が可愛いから……」
再び唇が重なり合う。
「んっ…」
離れようとしても、彼はそれを許さない。
溶けてしまいそうなほど甘い口づけに
全身の力が抜けていくのを感じた。
「……甘い」
隼人の胸に顔を埋めて静かに呟いた。
「耳まで真っ赤」
「隼人のせいだよ…」
「優那が姫にしか見えなくて」
「さっきも“姫”って言ってたよね?」
「名前で呼ばれるのは嫌って言ってたし、とっさに口から出たのが姫だったから」
「……僕も、」
おとぎ話の世界じゃなくて、本当に感じたんだ。
僕の目に映る彼は、まるで……
「…僕も隼人が王子様に見えた。いや、隼人は王子様だよ」
僕の言葉に隼人は一瞬目を見開いて、すぐに僕を強く抱きしめた。
「ありがとう! 優那。俺、今すごく嬉しい」
「隼人は、僕の騎士さまで王子様だね」
「優那は俺のお姫様だよ」
お姫様……喜んでいいのかな?
「……隼人の姫ならいっか」
そっと呟くと「何か言った?」と耳元で囁かれた。
僕は首を横に振ってぎゅっと腕に力を入れた。
ガラガラガラッ——
教室のドアが開いたと思ったら、すぐに閉まった。
「速水さん!」
慌てて彼女を追いかける。
「大和田、ごめん。邪魔しちゃったよね」
「だ、大丈夫だよ。別に、何もしてないし…」
「うん…うまく着替えられなかったんだなって思っておくね」
「え…?」
彼女に言われ視線をずらすと、制服が乱れているのが目に入った。
「ご、ごめん!」
慌てて直したけど、時すでに遅し。
速水さんは「私でよかったね」と笑っていた。
「菊地も気をつけなよ? 学校なんだし」
「……わかってる」
「わかってないじゃない」
呆れたように溜息をついて、僕と隼人の方へ向き直る。
「先に言っておくね。優勝は大和田と菊地。あなたたちだから。何かコメントしないといけないんだって。二人で考えておいて」
「ね、ねぇ、速水さん」
「なに?」
「会長ってバレてる?」
「どうかしら? 一応、優華って名前で登録したけど……」
「出演者の人たちにはバレたんだよね…」
「あー、その件だけど、瞬と菊地の弟くんが裏で動いてくれたからなんとかなったよ」
“裏で動いた”ってなにしたんだろう?
「大和田、メイク直してあげる。菊地は先に行ってて」
「俺も一緒に行くから残るよ」
「わかった」
速水さんは手際よくメイクを直していく。
隼人はそれをじっと見つめていた。
「すごいな、速水って」
「そう? 女子ってみんなこんなもんだと思うけど」
「優那をこんなに可愛くできるのは、速水だけだよ」
「それはどーも」
少し素っ気なくても、隼人に褒められて嬉しそうだ。
「はい、できた」
「さっきとは少し違う」
「よく気づいたね! そうなの。さっきはドレスに合わせて少し華やかに。今は制服だからナチュラルにしてみた」
「メイクってすごい…!」
「今は男の人もメイクする人はするし、興味あったらいつでもどうぞ」
「うん、ありがとう」
速水さんは、別のクラスのメイク直しを急遽手伝うことになったらしく、急いで教室を出て行った。
「俺たちも行くか」
「うん」
隼人の言う通り、この格好だから堂々と手を繋いで歩けるんだ。
周りの視線が少し気になるけど。
「大丈夫だよ、姫」
隼人はいつだって僕の気持ちを読み取って先回りする。
「隼人がいるから、怖くないよ」
終わってほしくないなって思ってることは、バレないように。
もう少しだけ、僕たちに魔法をかけて……
「注意してたんだけど、ドレスの裾を踏んじゃって…」
「ごめん。慣れないドレスとヒールなんて履かせちゃったから…いろいろあって大変だったね…」
「速水さんのせいじゃないよ。大変だったのは否定しないけどね」
誓いのキスとか、お姫様抱っことか。
「ねぇ、大和田」
「なに?」
「本当に付き合ってないの?」
「え!?」
「あんなの見せられて…付き合ってないなんておかしい」
「……付き合ってるの、かな?」
『付き合おう』っていう言葉がなくても、想いを伝えあったから、付き合ってるってこと?
「菊地に聞いてみたら?」
「うん…」
「あ、これから表彰式なんだけど、ドレスじゃなくて他の衣装にしよう。メイド服とかあるけど、いかが?」
「…本気で言ってる?」
メイド服なんて断固拒否!
「冗談だよ。やっぱり制服かな。ここの学校の」
「……女子の?」
「当たり前でしょ?」
——コンコンッ
「どうぞ」
「……優那」
「ちょうどよかった。菊地も制服に着替えて」
「…わかった」
「それじゃあ、私は打ち合わせに行ってくるね」
速水さんが出て行って、僕と隼人は教室に二人きりになった。
いろいろあった後だから、彼の顔をまっすぐ見れない。
隼人は僕の背後に回って、スッとドレスのファスナーを下ろした。
「っ、隼人!?」
「着替えるんだろ?」
「そ、そうだけど…」
び、びっくりした……
「変なこと考えた?」
「か、考えてない」
「ふーん…」
不敵な笑みを浮かべる隼人。
ペースに乗せられちゃダメだ!
「着替えるからこっち見ないでね!?」
「何だよ、今更。毎日同じ部屋で生活してるだろ?」
「そうだけど…!」
「……わかったよ。反対側向いて着替えるから」
ドレスを脱いで、女子の制服に着替えていく。
着替えが終わり振り返ると、隼人が笑いながら僕を見ていた。
「隼人!!!」
「なーに?」
抗議しようと彼に近づく。
でも、それは失敗に終わった。
腕を掴まれて、気づけば唇を奪われていた。
「…優那。今どんな格好なのか、忘れないほうがいいよ?」
彼の長くて綺麗な指が僕の唇に触れる。
「……この格好なら、気にせず存分にキスできるな」
「できない!」
「照れてる…?」
「…っ、そんなんじゃないよ! 早く着替えて!」
「はーい」
想いが通じあってから、隼人は意地悪になったし、僕の反応を見て楽しんでいる。
僕が彼のペースに乗せられやすい性格だから尚更。
「怖いくらいに似合ってる」
「それ、褒めてる…?」
「うーん、褒められて嬉しい?」
「いや、複雑」
「だろうな」
女装をして似合ってるね、なんて……
好きな人に言われるのは少し複雑だ。
本当の僕じゃないから。
「どんな姿でも、俺は優那のことが好きだよ」
「……ありがと」
「嬉しい?」
「わかってるくせに…」
「うん、わざと聞いた」
「からかわないで」
「優那が可愛いから……」
再び唇が重なり合う。
「んっ…」
離れようとしても、彼はそれを許さない。
溶けてしまいそうなほど甘い口づけに
全身の力が抜けていくのを感じた。
「……甘い」
隼人の胸に顔を埋めて静かに呟いた。
「耳まで真っ赤」
「隼人のせいだよ…」
「優那が姫にしか見えなくて」
「さっきも“姫”って言ってたよね?」
「名前で呼ばれるのは嫌って言ってたし、とっさに口から出たのが姫だったから」
「……僕も、」
おとぎ話の世界じゃなくて、本当に感じたんだ。
僕の目に映る彼は、まるで……
「…僕も隼人が王子様に見えた。いや、隼人は王子様だよ」
僕の言葉に隼人は一瞬目を見開いて、すぐに僕を強く抱きしめた。
「ありがとう! 優那。俺、今すごく嬉しい」
「隼人は、僕の騎士さまで王子様だね」
「優那は俺のお姫様だよ」
お姫様……喜んでいいのかな?
「……隼人の姫ならいっか」
そっと呟くと「何か言った?」と耳元で囁かれた。
僕は首を横に振ってぎゅっと腕に力を入れた。
ガラガラガラッ——
教室のドアが開いたと思ったら、すぐに閉まった。
「速水さん!」
慌てて彼女を追いかける。
「大和田、ごめん。邪魔しちゃったよね」
「だ、大丈夫だよ。別に、何もしてないし…」
「うん…うまく着替えられなかったんだなって思っておくね」
「え…?」
彼女に言われ視線をずらすと、制服が乱れているのが目に入った。
「ご、ごめん!」
慌てて直したけど、時すでに遅し。
速水さんは「私でよかったね」と笑っていた。
「菊地も気をつけなよ? 学校なんだし」
「……わかってる」
「わかってないじゃない」
呆れたように溜息をついて、僕と隼人の方へ向き直る。
「先に言っておくね。優勝は大和田と菊地。あなたたちだから。何かコメントしないといけないんだって。二人で考えておいて」
「ね、ねぇ、速水さん」
「なに?」
「会長ってバレてる?」
「どうかしら? 一応、優華って名前で登録したけど……」
「出演者の人たちにはバレたんだよね…」
「あー、その件だけど、瞬と菊地の弟くんが裏で動いてくれたからなんとかなったよ」
“裏で動いた”ってなにしたんだろう?
「大和田、メイク直してあげる。菊地は先に行ってて」
「俺も一緒に行くから残るよ」
「わかった」
速水さんは手際よくメイクを直していく。
隼人はそれをじっと見つめていた。
「すごいな、速水って」
「そう? 女子ってみんなこんなもんだと思うけど」
「優那をこんなに可愛くできるのは、速水だけだよ」
「それはどーも」
少し素っ気なくても、隼人に褒められて嬉しそうだ。
「はい、できた」
「さっきとは少し違う」
「よく気づいたね! そうなの。さっきはドレスに合わせて少し華やかに。今は制服だからナチュラルにしてみた」
「メイクってすごい…!」
「今は男の人もメイクする人はするし、興味あったらいつでもどうぞ」
「うん、ありがとう」
速水さんは、別のクラスのメイク直しを急遽手伝うことになったらしく、急いで教室を出て行った。
「俺たちも行くか」
「うん」
隼人の言う通り、この格好だから堂々と手を繋いで歩けるんだ。
周りの視線が少し気になるけど。
「大丈夫だよ、姫」
隼人はいつだって僕の気持ちを読み取って先回りする。
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