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七不思議 壱
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太陽はとっくに地平線の彼方に沈み、ここぞとばかりに月が天を支配しているその時間。学校に忘れ物をした一人の生徒が学校に忍び込んでいた。明日提出しなければいけない課題のノートを自分の席の机の中に置いてきてしまったのだ。しかもその科目の担任は課題には非常に厳しく、説教されること間違いなしだ。そんなのは御免だ、と思い、学校に忍び込んででもノートを取りに来たのだ。
反面、夜の学校に忍び込むという一種のタブーに近い禁忌を破る背徳感に酔っている自分がいることもまた正直な所だった。
幸い、学校は正門前は急な坂ができており、少し山の中に建っているお陰で、周辺の住宅からは学校の様子が見えない。忍び込んでいる人間がいる、と周辺の住人にバレることはないだろう。
無事に坂を上り切り、正門前に着いた。当然門は閉まっているが、高校生であれば誰でも超えられそうな程度の高さしかない。簡単に飛び超えて学校の敷地に忍び込んだ。
遅くまでやっている部活もない事はないが、流石に夜の十時を回っていると、やっている部活はない。つまり教員は誰もいないのだ。そしてこの学校には警備員もいなければ宿直の教員もいない。警備のけの字も知らないような体制だ。
普段であれば何とも不用心だと苦言を呈する所なのだが、今回は却ってそれが都合良い。神に感謝しつつ、校舎内に入ろうとしたところ。
「…?」
三階に何か光ったものが見えた気がした。
(やっべ、教師が誰かいるのか…!?)
そうであれば見つかると問題だ。きっと説教が始まる。そうなると帰宅する時間も遅くなり、つまり課題する時間も減ってしまうのだ。
(見つからなきゃいいんだろ)
そう思って音を立てないように気を付けて忍び込もうとした時だった。
ふう、と次は二階で光ったものが見えた。しかし直ぐに消えてしまった。
(なんで付けたり消したりしてんだ?)
最初は教員が校舎を見回りしていて、その教員が持っている懐中電灯の明かりだと思った。しかしそうだとするとおかしいことに気が付いた。明かりが消えたり着いたりしているのだ。
そして次は一階でその光がぽおっ、と現れてはすぐに消えを繰り返していた。
(なんだあれ…?)
ノートの事はすっかりと頭の中から消えてしまい、灯の正体が何か、という疑問で一杯になった。一階で現れた時は目の前だった。すぐ近くだ。正体を確認できるはず、と思い校舎内に入ろうとしたその時だった。
「フフフ…」
微かに笑い声が聞こえた。若い女のような声だ。
「フフフ…」
また聞こえた。しかし今度は中年ほどの男性の声だ。
「ハハハ…」
まただ。今度は老人男性のような声だ。
「キャハハハ…」
次は幼い子供の声。
そして。
「キャハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハハハハハ」
四方八方から色んな人間の声が聞こえてきた。しかもその声は段々と近づいてくるのが分かった。
止めに。またぽぉっと、光が廊下の奥に現れた。やけに白い。ふらふらとしている。勝手に脳が見たものが何かを検索し始めた。
「ひ、人魂…」
夏に特集していた心霊番組で見た、と脳が検索を終えた。
人魂。死んだ人間から出るという魂。それが今目の前でふわふわと浮いているのだ。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
笑い声も次第に近づいてくるに連れて大きくなってくる。その時点で完全に脳はパニックを起こしていた。
「うわぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁああぁぁ」
叫びながら逃げ出す。人魂はふわふわと浮いているだけで追いかけてくる様子もない。声も走って逃げると遠のいていく。しかし帰りの道中の記憶がパニックで一切なかった。気が付けば自宅のベッドに潜り込んで頭の天辺まで布団を被ってただただ震えていた。
そして無事に朝を迎えた。母親が起こしに来る時までに何も起こらなかった。だから彼は無事に心霊的な脅威から逃げることができたのだと安心した。
実際彼は今も元気に学校に通っている。無事だ。ただ、その日、課題をやっていないがために教師にこっぴどく怒られたのは当然のことだった。
七不思議 壱 校舎に彷徨う人魂 終
反面、夜の学校に忍び込むという一種のタブーに近い禁忌を破る背徳感に酔っている自分がいることもまた正直な所だった。
幸い、学校は正門前は急な坂ができており、少し山の中に建っているお陰で、周辺の住宅からは学校の様子が見えない。忍び込んでいる人間がいる、と周辺の住人にバレることはないだろう。
無事に坂を上り切り、正門前に着いた。当然門は閉まっているが、高校生であれば誰でも超えられそうな程度の高さしかない。簡単に飛び超えて学校の敷地に忍び込んだ。
遅くまでやっている部活もない事はないが、流石に夜の十時を回っていると、やっている部活はない。つまり教員は誰もいないのだ。そしてこの学校には警備員もいなければ宿直の教員もいない。警備のけの字も知らないような体制だ。
普段であれば何とも不用心だと苦言を呈する所なのだが、今回は却ってそれが都合良い。神に感謝しつつ、校舎内に入ろうとしたところ。
「…?」
三階に何か光ったものが見えた気がした。
(やっべ、教師が誰かいるのか…!?)
そうであれば見つかると問題だ。きっと説教が始まる。そうなると帰宅する時間も遅くなり、つまり課題する時間も減ってしまうのだ。
(見つからなきゃいいんだろ)
そう思って音を立てないように気を付けて忍び込もうとした時だった。
ふう、と次は二階で光ったものが見えた。しかし直ぐに消えてしまった。
(なんで付けたり消したりしてんだ?)
最初は教員が校舎を見回りしていて、その教員が持っている懐中電灯の明かりだと思った。しかしそうだとするとおかしいことに気が付いた。明かりが消えたり着いたりしているのだ。
そして次は一階でその光がぽおっ、と現れてはすぐに消えを繰り返していた。
(なんだあれ…?)
ノートの事はすっかりと頭の中から消えてしまい、灯の正体が何か、という疑問で一杯になった。一階で現れた時は目の前だった。すぐ近くだ。正体を確認できるはず、と思い校舎内に入ろうとしたその時だった。
「フフフ…」
微かに笑い声が聞こえた。若い女のような声だ。
「フフフ…」
また聞こえた。しかし今度は中年ほどの男性の声だ。
「ハハハ…」
まただ。今度は老人男性のような声だ。
「キャハハハ…」
次は幼い子供の声。
そして。
「キャハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハハハハハ」
四方八方から色んな人間の声が聞こえてきた。しかもその声は段々と近づいてくるのが分かった。
止めに。またぽぉっと、光が廊下の奥に現れた。やけに白い。ふらふらとしている。勝手に脳が見たものが何かを検索し始めた。
「ひ、人魂…」
夏に特集していた心霊番組で見た、と脳が検索を終えた。
人魂。死んだ人間から出るという魂。それが今目の前でふわふわと浮いているのだ。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
笑い声も次第に近づいてくるに連れて大きくなってくる。その時点で完全に脳はパニックを起こしていた。
「うわぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁああぁぁ」
叫びながら逃げ出す。人魂はふわふわと浮いているだけで追いかけてくる様子もない。声も走って逃げると遠のいていく。しかし帰りの道中の記憶がパニックで一切なかった。気が付けば自宅のベッドに潜り込んで頭の天辺まで布団を被ってただただ震えていた。
そして無事に朝を迎えた。母親が起こしに来る時までに何も起こらなかった。だから彼は無事に心霊的な脅威から逃げることができたのだと安心した。
実際彼は今も元気に学校に通っている。無事だ。ただ、その日、課題をやっていないがために教師にこっぴどく怒られたのは当然のことだった。
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