未完成のビリーフ

紫苑色のシオン

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幕間 噂

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「本当なんだって!昨日ここで人魂を見たんだって!」
 クラスで男子の一人が頻りに喚ている。どうやら昨日、学校に忘れ物を夜遅くに気付き、取りに来た時に怪奇現象と出くわしたとの内容だった。もちろん最初は笑いものにされ、誰もまともに取り合わなかった。
 夢でも見たのだろう、勘違いだろう、そういった言葉で馬鹿にされるのが関の山だった。そう、最初は、だ。


「美術室で変な事が起きるの」
 その一言で教室の隅を陣とっている女子グループの雑談が始まる。近くの席の男子にとってはそのグループは非常に疎ましいもので、集まるのなら違う場所にしてほしいと思ってはいてもとてもではないが口には出せなかった。仕方なく、興味がない振りをしながら話を盗み聞くことに。
「石膏がね、泣いてたの」
「はぁ?」
 話を聞いていた女子グループの一員と、盗み聞きをしていた男子の声が重なる。その瞬間、女子グループが一斉に男子の方を見る。不味いと思った彼は教室を出るために立ち上がったのだが。
「やっぱあり得ないよね」
 何故か話の中に引き込まれてしまった。

「先生、大丈夫ですか?」
 体を揺さぶられて目を覚ますと、目の前には女子学生がいた。
「えっ…」
 窓からは少し陽射しが入りかけていた。霞む視界をこすりながら時計を見ると時刻は六時半を指示していた。
「えっ…えぇ…」
 音楽室で気を失い、そのまま一晩を明かしてしまったらしい。私を起こした生徒は吹奏楽部の二年生で朝練に来たらしい。その女生徒に昨日起きたことを話した。
 これから一人で誰かが来るまで朝練をするのに辞めてくれと怒られた。笑い飛ばすでもなく、怒るのは話を信用してくれたからのようだ。それほどまでに必死な形相で語っていたそうだ。

 保健室の首吊りの影の話を職員会議の時にした。猿山が受け持つ陸上部全員が目撃し、その様子からとてもではないが嘘だとは思えなかった。事件とはならなくても何かの異常事態なのではないかと、警戒してのことだった。
 その時に、まだ赴任して若い女教師が残業した日にピアノが勝手に鳴っているのを聞いたという。内容こそは全く違うが、これもまた怪奇現象の一つだ。
 全く内容の異なる怪奇現象が二つ。こんな事滅多に起きないどころの話ではない。そう思っていたのだが、美術顧問の教員も、部員たちがこんな話をしているという怪奇現象の話をした。すると立て続けに課題を忘れた生徒が奇妙なことを言っていたと話した。
 怪奇現象がこんなに立て続けに起こるなど、この学校に勤めて長い猿山も初めての異常事態だった。
 これは心霊的なものかどうかはさておき、確かに異常事態であり、何かが起きてからでは遅いと判断され、遅い時間までの部活動が禁止になったことが余計にこの七不思議を広める要因になった。

 幕間 噂 終
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