8 / 24
第一部:
8 悪役令嬢、ヒロインと遭遇する
春の陽光が、王立学園の白亜の校舎を、残酷なほど鮮やかに照らし出していた。
新学期。
それは、運命という名の残酷な舞台装置が動き出す合図でもある。
私は、濃紺のブレザーに袖を通し、鏡の前で己の覚悟を確かめた。
胸元に刻まれた銀の徽章――最高学年を示すそれは、私がこの物語の終幕に向けて歩み出したことを告げている。
いよいよ、始まるのね……。
原作において、この一年は破滅へのカウントダウン。
聖女の如き微笑みを湛えたヒロインが入学し、王子たちの心を奪い、アルマデリアは嫉妬という名の毒に狂い、奈落へと堕ちていく。
けれど、今の私の胸にあるのは、他者への憎悪ではない。
徹夜で仕上げた、レイナルドへの献身の証――事業計画書という名の福音だ。
しかも、ちょっとだけ推しに褒められた。
「お嬢様、用意が整いましたわ。……その瞳、まるで戦場へ向かう女神のようです」
エイミの声に、私は静かに微笑んだ。
「ええ、これは聖戦よ、エイミ。私は、この世界に、推し活。という名の救済を刻み込むのだから」
★
学園の門をくぐった瞬間、大気の震えが伝わってきた。
ひそひそと囁かれる声。それは、私という存在に向けられた好奇と、困惑と、そして微かな軽蔑が混じり合った不協和音。
「アルマデリア様よ」
「春休み中に商売を始めたという噂は、本当だったのね」
「誇り高き公爵令嬢が、市場の卑俗な熱狂に身を投じるなんて……」
事業計画書を提出したばかりだというのに、話が早すぎる。
冷ややかな視線が、私の肌を刺す。
けれど、私は顎を引き、より優雅に、より堂々と廊下を歩んだ。
私の背負っているのは、単なる商売ではない。
愛の定義を書き換えるという、高潔な革命なのだから。
教室の扉を開けると、そこは社交界の縮図だった。
「アルマデリア様!」
駆け寄ってきたのは、ソフィア・ハーヴェイ。
デビュタント組みの蝶と称される彼女の瞳は、好奇心で爛々と輝いている。
「お久しぶりですわ、ソフィア。その緋色のリボン、今日の陽光によく映えていて素敵よ」
「そんなお世辞より、お聞きしたいのは噂の真相ですわ! 推し活工房……とやらの事業を本当にお始めになったの?」
彼女の言葉に、周囲の令嬢たちが一斉に色めき立った。
「殿下からの正式な認可も得ておりますわ。騎士団の皆様の、魂の美しさを封じ込めた聖遺物を扱っておりますの」
「まあ!」
令嬢たちが、感嘆の吐息を漏らす。
「騎士団……。では、あの氷の騎士、レイナルド卿の肖像も?」
誰かが発したその名に、私の鼓動が不意に乱れた。
「ええ……もちろん。彼の気高さを、掌の中に収めることができますわよ」
「私、どんな犠牲を払ってでも手に入れたいですわ!」
少女たちの情熱は、乾いた草原に放たれた火のように、瞬く間に燃え広がっていく。
しかし、その熱狂を切り裂くように、冷徹な声が響いた。
「……嘆かわしいことですわ」
セシリア・ローレンス。
古き秩序の信奉者である彼女が、扇を鋭く閉じ、私を射抜くような視線を向けていた。
「アルマデリア様。貴女のされていることは、貴族の品位を泥に塗まみれさせる不敬、……いえ、冒涜ではありませんか?」
「品位、かしら?」
「ええ。殿下や騎士の方々を商品として売り捌くなど、淑女の風上にも置けません。私たちは、良縁という名の運命に従い、家の格を守るために生きるべき存在でしょう?」
彼女の言葉は、正論という名の刃だ。けれど、私は一歩も引かなかった。
「セシリア、貴女は知らないのね。愛とは、独占することだけではないわ」
「なんですって?」
「誰かの幸せを願い、その光に照らされるだけで満たされる……。恋よりも純粋で、信仰よりも激しい魂の叫び。私はそれを形にしたいだけ。……貴女の心に、形にできないほどの憧憬あこがれが眠っているのなら、それを否定しないで」
セシリアは唇を噛み、沈黙した。彼女の瞳の奥で、誇りと戸惑いが激しく衝突しているのが見て取れた。
午前の喧騒を抜け、昼下がりの中庭へと向かう。
そこで私は、運命の特異点と邂逅した。
人だかりの中心に立つ、一人の少女。
栗色の髪が春風に揺れ、茶色の瞳には知性の光が宿っている。
清楚でありながら、どこか野生の草花のような力強さを秘めた美貌。
エリーゼ・ミラベル。
彼女はやがて、この世界の真実を司る、天才哲学者となるのだ。
「……あの方が、噂の奨学生?」
「平民でありながら、叡智の寵児と称えられるエリーゼ様よ」
生徒たちの賞賛を浴びながら、彼女は困惑したように、けれど凛とした態度で微笑んでいた。
「……まだまだ未熟な身。皆様と共に、世界の理ことわりを学びたいと願っております」
その清涼な鈴の音のような声。
王子たちが、そしてレイナルドさえもが魅了される理由が、その一瞬で理解できた。
――でも、私は貴女を憎んだりしない。
私は、静かに彼女へと歩み寄った。
周囲の生徒たちが、嵐の予感に息を呑む。
「初めまして。アルマデリア・エルデンベルクよ。最高学年の生徒として、貴女を歓迎するわ、エリーゼ様」
エリーゼが、驚愕に目を見開いた。
「……アルマデリア様? 王太子の婚約者であらせられる、あの……」
「ええ。けれど、今の私にとって最も興味深いのは、貴女が研究しているという――哲学、よ。実は私、最近、恋愛哲学における新境地を開拓しておりますの」
エリーゼの瞳に、知的な好奇心の火が灯った。
「恋愛哲学……! それは、エロスとアガペーの止揚について、でしょうか?」
「もっと切実で、もっと情熱的なものよ。今度、ゆっくりと語り合わないかしら? 貴女の知性と、私の情熱が混ざり合えば、新しい愛の定義が生まれる予感がするわ」
エリーゼは、花が綻ぶような満開の笑みを浮かべた。
「喜んで! アルマデリア様……お噂以上に、不思議で素敵な方ですね」
周囲からは、驚天動地の囁きが漏れていた。
「公爵令嬢が、平民を友として迎えた……?」
「アルマデリア様が、狂われたのではなくて……?」
それらの声を、私は心地よい音楽のように聞き流した。
嫉妬に狂う悪役令嬢は、もういない。
私は、運命という名の脚本を自ら書き換え、新しき愛の布教者として立つ。
庭園の隅、影のように控えるレイナルドの視線を感じる。
彼からすれば、私がヒロインを手懐けているように見えているのかしら。
見ていなさい、レイナルド。
貴方が守ろうとしているこの世界を、私はもっと優しく、もっと尊い場所へと変えてみせる。
私は、エリーゼの手を優しく握り、春の光に満ちた未来を幻視していた。
それは、破滅でも断罪でもない、誰もがそう――推しの光に救われる、新しい愛の地平だった。
新学期。
それは、運命という名の残酷な舞台装置が動き出す合図でもある。
私は、濃紺のブレザーに袖を通し、鏡の前で己の覚悟を確かめた。
胸元に刻まれた銀の徽章――最高学年を示すそれは、私がこの物語の終幕に向けて歩み出したことを告げている。
いよいよ、始まるのね……。
原作において、この一年は破滅へのカウントダウン。
聖女の如き微笑みを湛えたヒロインが入学し、王子たちの心を奪い、アルマデリアは嫉妬という名の毒に狂い、奈落へと堕ちていく。
けれど、今の私の胸にあるのは、他者への憎悪ではない。
徹夜で仕上げた、レイナルドへの献身の証――事業計画書という名の福音だ。
しかも、ちょっとだけ推しに褒められた。
「お嬢様、用意が整いましたわ。……その瞳、まるで戦場へ向かう女神のようです」
エイミの声に、私は静かに微笑んだ。
「ええ、これは聖戦よ、エイミ。私は、この世界に、推し活。という名の救済を刻み込むのだから」
★
学園の門をくぐった瞬間、大気の震えが伝わってきた。
ひそひそと囁かれる声。それは、私という存在に向けられた好奇と、困惑と、そして微かな軽蔑が混じり合った不協和音。
「アルマデリア様よ」
「春休み中に商売を始めたという噂は、本当だったのね」
「誇り高き公爵令嬢が、市場の卑俗な熱狂に身を投じるなんて……」
事業計画書を提出したばかりだというのに、話が早すぎる。
冷ややかな視線が、私の肌を刺す。
けれど、私は顎を引き、より優雅に、より堂々と廊下を歩んだ。
私の背負っているのは、単なる商売ではない。
愛の定義を書き換えるという、高潔な革命なのだから。
教室の扉を開けると、そこは社交界の縮図だった。
「アルマデリア様!」
駆け寄ってきたのは、ソフィア・ハーヴェイ。
デビュタント組みの蝶と称される彼女の瞳は、好奇心で爛々と輝いている。
「お久しぶりですわ、ソフィア。その緋色のリボン、今日の陽光によく映えていて素敵よ」
「そんなお世辞より、お聞きしたいのは噂の真相ですわ! 推し活工房……とやらの事業を本当にお始めになったの?」
彼女の言葉に、周囲の令嬢たちが一斉に色めき立った。
「殿下からの正式な認可も得ておりますわ。騎士団の皆様の、魂の美しさを封じ込めた聖遺物を扱っておりますの」
「まあ!」
令嬢たちが、感嘆の吐息を漏らす。
「騎士団……。では、あの氷の騎士、レイナルド卿の肖像も?」
誰かが発したその名に、私の鼓動が不意に乱れた。
「ええ……もちろん。彼の気高さを、掌の中に収めることができますわよ」
「私、どんな犠牲を払ってでも手に入れたいですわ!」
少女たちの情熱は、乾いた草原に放たれた火のように、瞬く間に燃え広がっていく。
しかし、その熱狂を切り裂くように、冷徹な声が響いた。
「……嘆かわしいことですわ」
セシリア・ローレンス。
古き秩序の信奉者である彼女が、扇を鋭く閉じ、私を射抜くような視線を向けていた。
「アルマデリア様。貴女のされていることは、貴族の品位を泥に塗まみれさせる不敬、……いえ、冒涜ではありませんか?」
「品位、かしら?」
「ええ。殿下や騎士の方々を商品として売り捌くなど、淑女の風上にも置けません。私たちは、良縁という名の運命に従い、家の格を守るために生きるべき存在でしょう?」
彼女の言葉は、正論という名の刃だ。けれど、私は一歩も引かなかった。
「セシリア、貴女は知らないのね。愛とは、独占することだけではないわ」
「なんですって?」
「誰かの幸せを願い、その光に照らされるだけで満たされる……。恋よりも純粋で、信仰よりも激しい魂の叫び。私はそれを形にしたいだけ。……貴女の心に、形にできないほどの憧憬あこがれが眠っているのなら、それを否定しないで」
セシリアは唇を噛み、沈黙した。彼女の瞳の奥で、誇りと戸惑いが激しく衝突しているのが見て取れた。
午前の喧騒を抜け、昼下がりの中庭へと向かう。
そこで私は、運命の特異点と邂逅した。
人だかりの中心に立つ、一人の少女。
栗色の髪が春風に揺れ、茶色の瞳には知性の光が宿っている。
清楚でありながら、どこか野生の草花のような力強さを秘めた美貌。
エリーゼ・ミラベル。
彼女はやがて、この世界の真実を司る、天才哲学者となるのだ。
「……あの方が、噂の奨学生?」
「平民でありながら、叡智の寵児と称えられるエリーゼ様よ」
生徒たちの賞賛を浴びながら、彼女は困惑したように、けれど凛とした態度で微笑んでいた。
「……まだまだ未熟な身。皆様と共に、世界の理ことわりを学びたいと願っております」
その清涼な鈴の音のような声。
王子たちが、そしてレイナルドさえもが魅了される理由が、その一瞬で理解できた。
――でも、私は貴女を憎んだりしない。
私は、静かに彼女へと歩み寄った。
周囲の生徒たちが、嵐の予感に息を呑む。
「初めまして。アルマデリア・エルデンベルクよ。最高学年の生徒として、貴女を歓迎するわ、エリーゼ様」
エリーゼが、驚愕に目を見開いた。
「……アルマデリア様? 王太子の婚約者であらせられる、あの……」
「ええ。けれど、今の私にとって最も興味深いのは、貴女が研究しているという――哲学、よ。実は私、最近、恋愛哲学における新境地を開拓しておりますの」
エリーゼの瞳に、知的な好奇心の火が灯った。
「恋愛哲学……! それは、エロスとアガペーの止揚について、でしょうか?」
「もっと切実で、もっと情熱的なものよ。今度、ゆっくりと語り合わないかしら? 貴女の知性と、私の情熱が混ざり合えば、新しい愛の定義が生まれる予感がするわ」
エリーゼは、花が綻ぶような満開の笑みを浮かべた。
「喜んで! アルマデリア様……お噂以上に、不思議で素敵な方ですね」
周囲からは、驚天動地の囁きが漏れていた。
「公爵令嬢が、平民を友として迎えた……?」
「アルマデリア様が、狂われたのではなくて……?」
それらの声を、私は心地よい音楽のように聞き流した。
嫉妬に狂う悪役令嬢は、もういない。
私は、運命という名の脚本を自ら書き換え、新しき愛の布教者として立つ。
庭園の隅、影のように控えるレイナルドの視線を感じる。
彼からすれば、私がヒロインを手懐けているように見えているのかしら。
見ていなさい、レイナルド。
貴方が守ろうとしているこの世界を、私はもっと優しく、もっと尊い場所へと変えてみせる。
私は、エリーゼの手を優しく握り、春の光に満ちた未来を幻視していた。
それは、破滅でも断罪でもない、誰もがそう――推しの光に救われる、新しい愛の地平だった。
あなたにおすすめの小説
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?
榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した
しかも、悪役令嬢に。
いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。
だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど......
※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて
悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)
ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」
王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。
ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。